著者
森本 昭彦 ブラナプラサプラット アヌクル 三野 義尚 兼田 淳史 郭 新宇
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

タイの首都バンコクに面する北部タイランド湾は高い生産性を持ち、タイの水産業にとって重要な海域である。近年の急激な経済発展により大量の有機物や栄養塩が4つの大きな河川を通して湾内に流入し、その結果富栄養化となり赤潮や貧酸素水塊など海洋環境が悪化している。実際、北部タイランド湾の東部の貝の養殖場では、貧酸素水塊によると思われる大量斃死が毎年起こっている。このような状況にもかかわらず、北部タイランド湾での観測データは限られており、湾全体の溶存酸素の分布やその季節変化は分かっていない。本研究では、北部タイランド湾全域をカバーする観測点において、2014~2015年にかけて計7回の船舶観測を実施した。その結果、貧酸素水塊は6月~11月の間見られ、底層での溶存酸素濃度は1mg/l以下とほぼ無酸素状態であることが分かった。また、貧酸素水塊の分布は6月に湾奥中央部のチャオプラヤ川沖、その後湾奥北東部に広がり9月には湾のほぼ半分の海域で貧酸素化し、11月には湾奥北西部へと分布域が変わっていた。注目すべきことは、貧酸素水塊が6月~11月にかけて分布域を湾東部から湾西部へと変わることである。熱帯に位置するこの湾では、水温は鉛直的に一様であり密度成層は河川からの淡水供給により形成される。したがって、貧酸素水塊の分布は河川からの低塩分水の分布と関係すると予想されるが、両者を比較したところ必ずしも一致していなかった。一方、水中の酸素消費速度は、上層でのクロロフィルa濃度と高い相関を持っており、鉛直的な有機物の供給が貧酸素水塊の形成に大きく関係していることが示唆された。成層強度、酸素消費速度、クロロフィルa濃度などと底層での溶存酸素濃度を比較したが、これらの比較から貧酸素水塊の東から西への分布の移動を説明できなかった。 貧酸素水塊の分布位置が変わる月は、南西モンスーンから北東モンスーンに変わる時期であった。このことは、風の場の変化による湾内の流れの変化し、その結果として貧酸素水塊が移流されている可能性を示唆する。そこで、3次元の数値モデルを構築した。本モデルは、南の開境界で潮汐変動を与え、また主要な河川からの河川流量、海面での風と熱フラックスを与えることで、観測を行った2014年~2015年の潮流、密度流、吹送流を再現した。モデルは湾内の潮汐、水温・塩分分布をよく再現できた。この物理モデルの結果を見ると、貧酸素水塊の分布域が湾の東側から西側へ変わる時に下層の流動場が変化していることがわかった。現在、この物理モデルに栄養塩、植物・動物プランクトン、デトリタス、溶存酸素を構成要素とする低次生態系モデルの結合を行っている。発表時には、物理-低次生態系モデルの結果から、貧酸素水塊の形成とその挙動の要因について示す予定である。
著者
糠明珊
雑誌
日本教育心理学会第58回総会
巻号頁・発行日
2016-09-22

目 的 台湾では,携帯電話という撮影機器が入手しやすくなるため,いつでも誰でも簡単に撮影できる生活になっている。それに伴い,盗撮のニュースもしばしば流れ,ほとんどが常習犯である。盗撮が絶えないのは,おそらく人々の意識にかかっているだろう。というのは,盗撮が発覚されないのは勿論,盗撮が発覚されても,摘発しないことも考えられる。それは,盗撮の多発につながり,女性にとってますます不安全な環境になっていくだろう。 盗撮事件に対する意識を調査することで,大学生の態度を把握でき,盗撮事件の対処がどんな影響を及ぼすかについての検討を含め,より安全な環境作りに役立つだろう。方 法 2015年12月に大学生44名(男性36名,女性8名)を対象にアンケート調査を行った。まず,盗撮事件及び立件するまでのパス図を説明してから,アンケートに質問を答えてもらった。 台湾では,盗撮は親告罪なので,被害者から告訴しないと立件されない。図1に示した通り,盗撮が発覚され,被害者に知らせ,さらに告訴しない限り,立件が成り立たない。盗撮が立件されなけらば,被害者がますます増えていくだろう。それで,盗撮が立件するためには,事件にかかわる(犯罪現場または盗撮写真,ビデオの目撃など)人々の協力は不可欠である。本研究は異なる立場の質問を設定し,調査と共に,多角から盗撮事件を考える機会を与え,教育の役割も果たしていく。結果及び検討事件設定:ある場合に,A大学のAさんがトイレで,Bさんを盗撮したことが知らされた。 問1の結果に示した通り,どの立場も告発する傾向が高い。盗撮者が知り合いであれば,告発に迷う回答が多くなった。具体的には,友達にチャンスをあげたい,友情に支障をきたされたくない,告発に面倒などの理由が記述された。 問2の結果に示した通り,Bさん及び恋人,家族の答えの一致性が現れ,告発の期待度が高く,その理由に,被害者であるBさんの知る権利が強調された。 問3の結果に示した通り,告訴する答えが一番多かった。告訴しないのは,Bさんの二次被害の危惧が主な理由であった。
著者
瀬古 弘 小司 禎教 堀田 大介 小泉 耕 幾田 泰酵
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

大雨に供給される下層インフローの水蒸気分布を改善することにより,降水予報の精度を向上させることが期待できる.ここでは船舶GNSSで得られた東シナ海の水蒸気量をデータ同化に用い,九州北部で発生した大雨へのインパクトを調べた.船舶GNSSのデータ同化により,東シナ海の水蒸気分布が修正し,九州北部の大雨の降水予報が改善する場合もあることが確認できた.さらにバイアス補正と正時に加えて15分前,30分前の観測値を加えた実験の結果から,より正しい可降水量をより多くの点で与えることが重要であることがわかった.本研究は,「ビッグデータ同化とAI によるリア ルタイム気象予測の新展開」(JST AIP JPMJCR19U2), ポスト「京」プロジェクト重点課題4「観測ビッグデー タを活用した気象と地球環境の予測の高度化」(課題 ID: hp190156)の 支援を受けたものです.
著者
及川 輝樹 中野 俊 荒井 健一 中村 圭裕 藤田 浩司 成毛 志乃 岸本 博志 千葉 達朗 南里 翔平
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

飛騨山脈南部の岐阜県・長野県県境に位置する乗鞍火山の最近約1万年間の噴火史を,テフラ層序とAMS 14C年代測定を基に明らかにした.なお本報告は,乗鞍岳火山防災協議会が行った調査を基にして,その後検討を加えたものである.かつて乗鞍火山における最近1万年間の活動中心は,火口縁に最高峰の剣ヶ峰(3026m)がある権現池火口の他,恵比須岳火口にもあるとされていた.しかし,恵比須岳火口起源のテフラとされていた噴出物は,年代や記載岩石学的特徴から,その火口起源のものではないことが明らかとなった.そのため,最近1万年間の活動中心は権現池火口周辺に限られる.最近1万年間における乗鞍火山の噴火活動は,テフラ層序に基づくと,少なくともマグマ噴火を2回,水蒸気噴火を10回行っている.マグマ噴火は,いずれも水蒸気噴火に始まるが,その後火山灰を放出する噴火とスコリアを放出する噴火がそれぞれ発生した.スコリアを放出する噴火は,その初期に小規模な火砕流も発生した.総テフラ噴出量は数100~1000万/m3オーダである.なお,権現池火口周辺から流れ出た溶岩のうち,保存のよい微地形が残存する溶岩も3ユニットあることから,溶岩を流す噴火も完新世に3回発生した可能性がある.また,個々の水蒸気噴火の総噴出量は,数10~数100万m3オーダとなる.最新の噴火は,約500年前に発生した水蒸気噴火である.およそ7300年前に降下した鬼界アカホヤ火山灰より上位のテフラユニットの数から算出した噴火頻度は,800年に一回となる.近隣の焼岳火山(100~300年/回)と比べると噴火頻度は少ないが,桁違いに少ないわけではない.
著者
麻生 大 星野 健 大竹 真紀子 唐牛 譲
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

Introduction:JAXA aims to conduct sustainable lunar exploration activities in the next 50 years, such as operation of lunar base with international partners and private sectors. To realize this goal, we will conduct technology demonstration step-by-step. JAXA envisions our space exploration as the extension from the Low Earth Orbit (LEO) to the Moon and Mars, with our international partners, in order to advance our contribution to intellectual assets.In October last year, the Japanese government announced its decision to officially join the international space exploration, and to proceed on coordination in the several areas including sharing of data acquired from our lunar exploration missions and technologies for lunar landing site selection.Japanese lunar exploration missions:Regarding lunar surface robotic missions, JAXA is developing Smart Lander for Investigating the Moon (SLIM), which aims to demonstrate the high-precision landing technology. The targeted launch year is 2021. Following this SLIM mission, a lunar polar exploration mission is aimed at investigating the water ice resources in the lunar polar region. This is a collaborative mission with Indian Space Research Organisation (ISRO).Objectives of the lunar polar exploration:In addition to the scientific interest about the origin and concentration mechanism of the water ice, there is strong interest in using water ice (if present) as an in-situ resources. Specifically, using water ice as a propellant will significantly affect future exploration scenarios and activities because the propellant generated from the water can be used for ascent from the lunar surface.Because of the existing limited remote-sensed data, we need to find out, by direct measurement on the lunar surface, the presence of water ice, it’s quantity, quality (pure water or contain other phases such as CO2 or CH4), and usability (how deep do we need to drill or how much energy is required to get water) in order to assess if we can use it as resources. Obtaining data to understand the principle of the water distribution and concentration is necessary to estimate the quantity and quality of water across the Moon.Status on the mission:ISRO/JAXA are jointly conducting the conceptual design (i.e. Phase-A study) under the Implementation Arrangement (IA) for the lunar polar exploration mission, in which JAXA provides a launch vehicle and a rover while ISRO provides a lander. System Requirement Review (SRR) is scheduled for this year. JAXA selected function and specification of several instruments, which will be loaded on the rover or the lander.Spacecraft configuration:The spacecraft system is based on direct communication with the Earth. The target mass of the spacecraft (incl. payload and propellant) is about 6ton and the payload mass is about 350kg. After the spacecraft reaches the Moon, it is inserted into a circular orbit having a 100km altitude via a few orbital changes. During powered-descent phase, the position of the lander is estimated by landmark navigation using shadows created by the terrain. After landing, the rover is deployed on the lunar surface using ramps. The rover then prospects water ice with its observation instruments.Landing site selection:We are down-selecting the candidates of landing site of the lunar polar region using the following parameters as constraints:- Continuous daytime: equal or more than 60days.- Continuous nighttime: equal or less than 14days.- Comm. capability: equal or more than 25%.- Land inclination: equal or less than 10deg.As a trial of the landing site selection, sunshine is simulated using digital elevation models to obtain the sunlight days per year and the number of continuous sunshine periods at each site. The maps of simulated communication visibility from the Earth and the slope are created.Conclusion:In this presentation, we will introduce current status on Japanese lunar exploration missions, focusing on a lunar polar exploration.
著者
藤澤伸介
雑誌
日本教育心理学会第60回総会
巻号頁・発行日
2018-08-31

問題と目的 葉状図形とは,正方形に内接する2つの四分円弧に囲まれた2頂点図形のことで,「正方形の面積×0.57」を暗記して求積問題に対処する抜け道指導が小学生になされていることが問題視されている。藤澤(2002a,2002b)で指摘されている「ごまかし勉強」を促す指導になっているためだ。藤澤(2017)では,高校生になっても0.57指導の影響は強く残っており,その記憶が概念の意味理解や円滑な問題解決思考の働きを抑制している可能性が示されている。記憶に思考抑制効果があるとすれば,指導直後はさらに抑制効果が大きいであろう。 本研究では,藤澤(2017)で使用されたのと同一課題を中学入学直後の1年生に与え,高校生より大きな抑制現象が見られるかを調査した。方 法 首都圏にある私立の中高一貫校(入試Aランク校:藤澤(2017)の調査対象校と同一)の中1男子86名を対象に,1辺8cmの正方形に内接する葉状図形の面積を,設問(1)π≒3.14,設問(2)π≒3.142に場合分けして計算させる出題の質問紙調査をし,解法を分析した。(解答時間は約10分である。)実施に当たっては結果が成績評価に影響しないことを対象者に伝え,無記名用紙を使い,調査者には本人特定が一切不可能な体制にした。結 果 数学的解法は,円周率をπとし一般式32π-64を導出した後,πに2種の円周率を順に代入すればよい(モデル化型)。或は2題の解法が同一なので,片方の計算過程を利用して,他方の異なる部分の計算だけを行っても解が求められる(数値利用型)。更にモデル化を一切考えずに,2設問を別問題と考え,個々に初めから数値を順に計算して解を求める方法もある(算数解答型)。この3タイプが正攻法である。 86名中正攻法による解答は,70名(81%)であったが,そのすべてが算数解答型で他の2タイプは存在しなかった。 本調査で設問(1)をπ≒3.14とし,設問(2)をπ≒3.142にしてあるのは「正方形面積×0.57」という便法が適用できない時に,どう対処するかを見るためである。 正攻法ではない「正方形の面積×0.57」の利用者は16名(19%)であり,設問(1)はその全員が正解であったが,π≒3.142の設問(2)は,11名が正攻法で正解になり,5名は正しい解法に辿り着かず不正解となった。この5名の内訳は,3名が空欄で,2名は設問(1)の数値と全く掛け離れた数値を解答していた。考 察 藤澤(2017)に示された,同一問題に対する同一学校の高校生の結果と比較すると,「正方形の面積×0.57」の利用者は高校生の場合,85名中6名(7%)であるから,中学生の方が多く利用していることがわかる(百分率の検定:1%水準で有意差あり)。入学直後であるため,指導影響がそれだけまだ強く残っているということである。 設問(1)を0.57を利用して解いた16名のうち5名が設問(2)を解けなかったことは,どう解釈すべきだろうか。可能性としては,(a)葉状図形求積問題は難問のため,0.57が利用できる(1)だけ解答した。(b)難問ではないのに,0.57利用習慣が思考を抑制し,解けるはずの(2)が解けなかった。の2つが考えられる。0.57の数値を暗記させる指導は,必ずしも受験生の全員が受けているわけではないにもかかわらず,(1)の問題は81%の70名が正攻法で解いていることを考えると,(b)の思考抑制の確率が高いであろう。 ごまかし勉強を誘発するテスト出題や指導は依然として衰えておらず,0.57を意味なく暗記させる指導はその最たる例である。試験を乗り切る指導に悪影響はないと便法指導者達は主張するが,この数値暗記によると考えられる思考抑制現象は受験後も残るのである。便法指導を行う教育は,意味理解を軽視した学習観を植えつけやすいので要注意である。0.57=π/2-1を利用して0.571を導き,解答した答案もあったが,こうできるような指導なら0.57でも問題はないのである。
著者
井尻 暁 谷川 亘 村山 雅史 徳山 英一
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

近年、画像解析処理の向上により、デジタルカメラ等で撮影した多視点画像からの対象物の三次元形状復元(Structure from Motion = SfM)が精度良くできるようになってきている。地理学や考古学分野ではこの手法を取り入れて、ドローン撮影による地形データの取得や考古遺構調査の記録に活用されている。水中の調査でも戦争遺跡や珊瑚の記録等で同技術が応用されつつあるが、まだ事例が多いとはいえず、問題点もあまり整理できていない。一方、高知大学と海洋研究開発機構は、684年の白鳳地震により一夜として沈んだとされる村「黒田郡」の謎を明らかにするために、高知県沿岸部海底の調査を実施している。その海底調査では、海底対象物の形状を精度よく計測・記録する必要があるが、これまで音響調査や潜水士による測定方法で実施してきた。しかし、対象物が非常に浅部にある場合や小さい場合、こうした調査手法では精度良いデータは得られない。一方、SfM写真測量技術を用いれば、上記問題を解決できる可能性がある。そこで本研究では、黒田郡の海底調査で得られた画像データを用いてSfMによる対象物の三次元形状復元を試みた。また、海底から採取した試料を簡易プールに移して、水中画像によるSfMの問題点を評価した。撮影カメラはオリンポスのTGシリーズを用いた。また、3Dモデルの構築はAgisoft社のmetashapeを用いた。野見湾の海底で撮影した約30枚の水中画像により、高解像度の3次元海底地形データを再構築することができた。一方、野見湾で見つかった蛸壺は、視界がわるく、精度の良い3次元形状の復元はできなかった。本研究では、爪白海底で見つかった石柱と野見湾の蛸壺を用いて水中と陸上で撮影した条件による3Dモデルを比較して違いを考察する。また、陸上においても撮影が難しい光に反射しやすい対象物の撮影方法についても検討する。本研究の一部は高銀地域経済振興財団の助成金により実施された。
著者
米田 英嗣 市村 賢士郎 西山 慧 西口 美穂 渡邊 智也
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

物語を読むことは、物語に記述された世界、登場人物が経験する出来事を疑似的に体験することであり、読者の脳の中で行われる現実世界のシミュレーションとも言える (米田, 2010; Mar & Oatley, 2008)。本研究では、小説を読むことによって社会的能力の向上がみられるかどうかを、教育介入前のプレテスト、介入直後のポストテスト、介入一ヵ月後のフォローアップテストを用いて検討した。小説読解トレーニングにおいて、ストレンジストーリー課題で心情理解の成績が向上したのに対し、アニメーション課題では、介入の効果が出なかったことから、近転移のみが見られることが明らかになった。社会的能力は、小説読解をトレーニングをしたときのみ向上することがわかった。本研究から、プレ・ポストデザインを用いた小説読解トレーニングによる社会的能力向上の長期的効果を明らかにした。
著者
山田 賢治 松山 康成
雑誌
日本教育心理学会第62回総会
巻号頁・発行日
2020-09-16

近年,児童生徒の問題行動に対して学校規模ポジティブ行動支援(School-Wide Positive Behavior Support; 以下,SWPBS)が取り組まれつつある(庭山, 2020; Sugai & Horner, 2006)。日本においても小中学校や高等学校において実践が取り組まれているが,SWPBSが学校適応に及ぼす効果については,小学校では明らかにされつつあるものの,中学校では未だ効果が検証された例は見られない。そこで本研究では,公立中学校の1〜3年生の通常学級に在籍する生徒(計9学級,275名)と教職員を対象に中学校でのSWPBSに取り組み,学校適応 (Q-U) に及ぼす影響を検討した。実践は,具体的には1学期にあいさつ運動(全校生徒対象),2学期に,教師の言語称賛増加を目的とした研究授業(3年生対象)と,生徒の言語称賛増加を目的とした研究授業(1年生対象)を実施した。その結果,学校適応(Q-U)における友人との関係および学習意欲,教師との関係,配慮スキル,学級との関係,かかわりスキルにおいて有意な差が認められた。
著者
丸山 茂徳
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

地球上で生命が誕生するためには、満足しなければならない条件が少なくとも9つある。その9つとは、(1)エネルギー源(電離放射線と熱エネルギー)、(2)栄養塩の供給(リン、カリウム、レアアース元素など)、(3)生命構成主要元素の供給、(4)CH4, HCN, NH3などの還元ガスの濃集、(5)膜やRNAを合成するための乾湿サイクル、(6)非毒性の湖水環境、(7)Naの少ない水、(8)非常に多様な環境、(9)周期的環境、である。この9つの条件に基づいて、これまでに提案されてきた生命誕生場;(1)ダーウィンの提案したWarm Little Pondとそこから派生した生命のスープ仮説、(2)パンスペルミア、(3)火星説、(4)深海熱水系説、(5)島弧のヒューマロール仮説、(6)自然原子炉間欠泉説、を検証してみる。我々の考える最も理想的な生命誕生場は冥王代の表層環境に普遍的に存在したと考えられる自然原子炉間欠泉説である。この説が提案する生命誕生場は、生命誕生場に必要な9つの条件をすべて満たし、生命誕生のための「ゆりかご」を提供することができる。世界の地質記録に基づいて考えると、冥王代地球における環境変動が一連の前駆的化学進化を支配したと考えられる。そして、環境変動への受動的応答として生命が誕生したと考えられる。 生命の起源に代表される複雑系科学に取り組む際に重要なことは、カール・ポッパーが提案した検証可能性である。検証可能性を踏まえてモデルを提案することによって、生命の起源の解読が可能になるはずである。