著者
岡本 葵 藤田 英典
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際基督教大学学報. I-A 教育研究 = Educational Studies (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
no.51, pp.93-102, 2009-03-31

アファーマティブ・アクションの目的は,過去の社会的・構造的差別によって何らかの不利益を被ってきた人々に対して積極的な配慮を行うことによって,実質的な機会均等を社会全体として達成することにある.しかし,今日,この概念の起源国アメリカにおいて,アファーマティブ・アクションを「逆差別」「反能力主義」とする批判が増加している.本稿は,アメリカにおけるアファーマティブ・アクションの展開を概観する中で,真の意味での「能力主義」を達成するためには,実質的な「機会均等」をめざすアファーマティブ・アクションの実施が有効な手段になり得ることを検討する.
著者
田中 晋平
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.89-108, 2023-02-25 (Released:2023-03-25)
参考文献数
23

1974年に大阪で安井喜雄たちが創立した《プラネット映画資料図書館》は、映画のフィルムや関連資料の収集・保存に加えて、自主上映活動を続けてきたグループである。本論では、筆者が〈神戸映画資料館〉で担当した《プラネット》に関する資料(自主上映会のためのチラシや機関誌など)の整理作業を踏まえ、1970年代半ばから1980年代後半までに開催されたその上映活動の歴史的な役割を考察する。具体的には、《プラネット》の上映を実現してきた人間およびモノのネットワークに注目し、自主上映と新たに勃興したミニシアターなどの映像文化との差異を明らかにしたい。まず《プラネット》の前身となる上映活動として、1960年代末に結成された《日本映画鑑賞会OSAKA》の時代に遡り、関西における自主上映の地層を検討する。次にフィルム・コレクターや他の上映グループとの関係性を構築しながら、《プラネット》の活動が展開され、国内外で製作された古典的映画、アニメーション、ドキュメンタリー映画、実験映画・個人映画におよぶ多様な作品が上映されてきた経緯を確認したい。また論点として、自主上映グループが、モノとしてのフィルムをいかに確保し、活動を行ってきたのかに着目する。さらに1980年代後半に《プラネット》が関わった「OMSシネデリック」のシリーズなどを取り上げ、自主上映の活動とミニシアター文化との差異について論じる。
著者
棚次 亘弘 成尾 芳博 倉谷 健治 秋葉 鐐二郎 岩間 彬 TANATSUGU Nobuhiro NARUO Yoshihiro KURATANI Kenji AKIBA Ryojiro IWAMA Akira
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集: 液水/液酸エンジンの開発研究報告 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.55-106, 1983-03

The Institute of Space and Astronautical Science (ISAS) has developed the two thrust level of LH_2/LOX propulsion system; one is the 7-ton thrust level one and the other is the 10-ton thrust level one. The 7-ton thrust level engine was aimed at usimed at using for the second stage of the Mu vehicle. And the 10-ton thrust level engine is planned to back up the H-1 project being performed by the National Space Development Agency (NASDA). The both engines are the gas generator cycle which consists of the tubular wall thrust chamber, the "ISAS Arrangement" turbopump, the "reverse-flow" type gas generator and the solidpropellant turbine spinner. The development of the 7-ton thrust level engine has started in 1976. By 1980 have almost finished the development tests of its major components. In early 1980 the engine system has been integrated and then the verification tests have been carried out. On the other hand, the development study of the 10-ton thrust level engine started in 1979. In midyear 1981 the engine system has been completed. The both engines were combined with the battle-ship type of tank system, and stage firing tests were carried out successfully from Sep. 1981 through Apr. 1982. The 7-ton thrust level engine worked well within the range from 78% to 1l8% of its rated power. And the 10-ton thrust one worked well within the range from 75% to ll3%. In the present paper, an outline of the LH_2/LOX engine systems developed in ISAS, the progress in the establishing of an operation of engine systems and the performance capability of two systems are described.
出版者
政策研究大学院大学 / National Graduate Institute for Policy Studies
雑誌
科研費「核不拡散体制の成立と安全保障政策の再定義」プロジェクト
巻号頁・発行日
2023-02

インタビュー対象者 : 宮本 雄二 (ミヤモト ユウジ) インタビュアー : 岩間陽子, 合六強, 高橋和宏, 武田悠, 吉田真吾インタビュー期間 : 2021/2/8 - 2021/3/8

28 0 0 0 OA 電気事業要覧

著者
逓信省電気局 編
出版者
電気協会
巻号頁・発行日
vol.第〔5〕回, 1912
著者
川畑 貴裕 久保野 茂
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.27-32, 2018-01-05 (Released:2018-09-05)
参考文献数
14

今から約138億年前,誕生直後のわれわれの宇宙は「ビッグバン」と呼ばれる高温・高密度の状態にあった.ビッグバン理論によると,宇宙開闢の約10秒後から20分後にかけて「ビッグバン元素合成」(Big Bang Nucleosynthesis: BBN)が起こり,陽子と中性子を起点とする原子核反応によって水素,ヘリウム,リチウムなどの軽元素が生成された.このとき生成された元素の組成について,観測による推定値と理論計算による予測値を比較することは,宇宙創生のシナリオを明らかにするうえで,重要な知見を与えてくれる.BBNにおける4Heと重陽子の生成量は,観測による推定値と理論予測値が非常によく一致する一方で,7Liについては,生成量の観測推定値が理論予測値の約1/ 3でしかないという重大な不一致が知られている.この不一致は「宇宙リチウム問題」と呼ばれ,ビッグバン理論に残された深刻な問題として大きな関心を集めている.宇宙リチウム問題を巡っては,いくつかの解決策が提案されており,それらは三つに大別される.一つ目は,観測から7Liの原始存在量を推定する方法に問題があるという説であり,二つ目は,宇宙リチウム問題の原因を標準理論を超える新物理に求める説である.そして,三つ目は,BBN計算に用いられている原子核反応率に誤りがあるという説である.しかし,現時点でこれらの説を決定づける実験的・観測的な証拠は見つかっておらず,宇宙リチウム問題は,宇宙物理学だけでなく,天文学,原子核物理学,素粒子物理学までも巻き込んだ物理学における重要な問題となっている.原子核物理学の観点からこの問題を考察すると,7Liは主に7Beが電子捕獲崩壊することで生成される.しかし,7Beを生成する反応については,すでに複数のグループによる測定がなされており,BBN計算の結果を大きく変化させる余地はない.近年,7Beの生成率ではなく,7Beを他の原子核に転換する反応に注目すべきとの指摘がなされている.もし,BBNの過程で,7Beが7Liへ崩壊する前に他の原子核へ転換する反応の寄与が増大すれば,BBN計算における7Liの生成量が減少し,宇宙リチウム問題を解決できる可能性がある.7Beを転換する反応として有力視されていたのが,n+7Be→4He+4He反応である.しかし,7Beと中性子はどちらも短寿命の不安定核であるため,この反応を直接に測定することは容易でなく,これまで,BBNに関係するエネルギー領域における断面積は測定されていなかった.このような状況のなか,我々は大阪大学核物理研究センターにおいて,逆反応である4He+4He→n+7Be反応を測定し,詳細釣り合いの原理に基づいてE=0.20–0.81 MeVのエネルギー領域におけるn+7Be→4He+4He反応の断面積を初めて決定することに成功した.その結果,n+7Be→4He+4He反応の断面積は,BBN計算にこれまで用いられてきた推定値より約10倍も小さく,宇宙初期において中性子が7Beと衝突し二つの4Heに分解する反応の寄与は小さいことが明らかになった.残念ながら,宇宙リチウム問題の謎はさらに深まる結果となったが,今回の成果は標準模型を超える新しい物理の探索や,原子核反応率の見直しなど,さらなる研究を動機づけるに違いない.
著者
三田村 仰 松見 淳子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.257-270, 2009-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

発達障害児の保護者は子どもが通う学校の教師に対し、しばしば子どものニーズに応じた支援について依頼・相談を行う。より円滑で効果的な教師とのコミュニケーションを目指し、5名の発達障害児の保護者を対象に機能的アサーション・トレーニング(以下、トレーニング)を行った。トレーニングは、間接表現をも丁寧な自己表現として教える機能的アサーションの枠組みに基づいていた。保護者から得たアセスメント結果をもとに、トレーニングでは、保護者から教師への機能的なコミュニケーションを目標として、参加者に丁寧な表現と具体的な表現のスキルをトレーニングした。トレーニング効果は、担任教師との面談場面をイメージしての面談ロールプレイ・アセスメントをもとにABデザインで評価された。その結果、5名の参加者いずれも介入期においてべ一スライン期よりも丁寧で具体的な依頼・相談を行っており、介入期の依頼・相談がべ一スライン期の依頼・相談よりも望ましいと現役教師によって評定された。
出版者
内務省地理局
巻号頁・発行日
vol.巻之235 那賀郡之1,巻之236 那賀郡之2,巻之237 那賀郡之3,巻之238 児玉郡之1,巻之239 児玉郡之2,巻之24, 1884
著者
平松 隆円
出版者
佛教大学教育学部学会
雑誌
佛教大学教育学部学会紀要 (ISSN:13474782)
巻号頁・発行日
no.10, pp.175-181, 2011
被引用文献数
1

人は不快な感情を最小限にし、快の感情を最大限にしようと、様々な行動をおこなう。そのような感情調整行動の一つに、化粧がある。本研究の目的は、化粧のもつ日常的な感情調整作用に注目し、男子大学生15名(平均年齢=20.87歳、SD=0.62)を対象に、化粧行動としてのマニキュアの塗抹がもたらす感情調整作用について検討することである。マニキュア塗抹前後の感情の変化をProfile of Mood States(POMS)によって測定したところ、マニキュアの塗抹にともない、「混乱」が有意に低下することが明らかとなった。本研究の結果から、マニキュアの塗抹は部分的ではあるが、リラクセーションに有用であることがわかった。化粧行動感情調整作用マニキュアリラクセーション男子大学生
著者
鈴木 利保
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.92-107, 2006 (Released:2006-01-24)
参考文献数
30

日常臨床で麻酔科医が頻繁に使用する種々の針について, その歴史, 構造, 使いやすさについて解説し, 理想的な針について考察した. 多くの針はメーカーが設計・製造を行い, 使用者である医師の主観的評価のみがあり, その特性が客観的に評価されていない. これらの針を用いた手技は, 生体にとって侵襲的であり, ときに多様な合併症を引き起こし, 死に至る例の報告もある. われわれ医師は, 用いる針の特性を十分に理解し, 合併症を起こしにくい器材を世に出す必要がある. その際には, 使いやすさをわれわれ自身が客観的に評価する必要がある. こうすることにより, 患者と医療従事者の安全が守られると考える.