著者
三浦 玲一 川端 有子 戸田山 みどり 渡辺 美樹
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

戸田山の日本における『ちびくろサンボ』の受容史研究から、児童文学の評価においては、「優れた」作品であることが、(児童文学として)「教えるに値する」という価値観/イデオロギーと密接に繋がっていることが示された。渡辺の考察は、このことと関連して、児童文学においては、先行する作品から断絶することで成立する独創性(オリジナリティ)の重視が比較的希薄なこと、同時に、ある種の作品においては、児童文学のコンヴェンション/規範に積極的に依拠しようとする姿勢が見られ、それが評価されていることを調査した。非政治的な「美学的価値」や作者の「オリジナリティ」の虚構性は、いわゆる文学研究においても(多くの論争を巻き起こしながら)既に指摘されている点である。本研究は、そのような性質が、より明示的、あからさまに承認されている場としての「児童文学」を対象とした。個々の作品がその固有性としてもつ、オリジナルな美学的価値とは、20世紀初頭のいわゆるハイ・モダニズムの時代に、芸術としての文学という体制が確立すると共に、自明視されることになる。エレイン・ショウォールターの著作に代表されるような、歴史的なジェンダー研究は、このハイ・モダニズム体制の成立を、文学が(性的な含意を伴った)「表現」として認知される過程と同時進行し、それゆえ、このような美学の成立は、世紀転換期のジェンダー配置の転換と、密接に結び付いていることを示唆している。三浦および川端の研究は、クィア理論以降の拡張されたセクシュアリティの理解から見るとき、児童文学のテクストとみなされるものも亦、セクシュアリティ、ジェンダーの力学から構成されており、そこでは、「児童文学」であることからむしろ積極的に、伝統、規範に依拠しようとしつつ、そのことでむしろ逆説的に、転覆的なジェンダーを描くこととなった諸作品のありようを考察した。
著者
布山 美慕 日高 昇平 諏訪 正樹
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

読書に熱中し思わず我を忘れて読んでしまう,という読書体験は多くの人が有する. 本研究では,熱中状態は,主観に現れる心的状態であり,かつ動作や心拍数の変化に現れる身体的状態であると仮説をたて,読者の映像,心拍数,加速度,読後の主観データを取得した.分析の結果,主観的な熱中度合いの評価を含む複数のデータ間に相関が見られ、主観に沿いつつ,客観的データで熱中状態の一側面を説明できることがわかった.
著者
薬袋 秀樹
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会春季研究集会発表論文集
巻号頁・発行日
pp.37-40, 2013-05

日本図書館情報学会2013年春季研究集会:2013年5月25日(土)筑波大学春日エリア
著者
黒佐 和義
出版者
北隆館
雑誌
新昆虫 (ISSN:05830524)
巻号頁・発行日
vol.7, no.7, pp.35-38, 1954-07
著者
南雲 直子 久保 純子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.141-152, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
14
被引用文献数
2 8

2011年8月~10月に大規模洪水が発生したカンボジアのメコン川下流平野を対象とし,首都プノンペンを中心とした地域で洪水と微地形に関する調査を行った.衛星画像を用いて浸水範囲を把握し,水文データ等を入手するとともに,2012年3月の現地調査では洪水痕跡より浸水深を測定した.その結果,微地形と浸水範囲・浸水深の対応が良好に見られた.洪水はメコン川の氾濫原を利用して流下するとともに,トンレサップ川沿いでは深く湛水し,通常の雨季には浸水することのない高位沖積面にまで洪水が達した.これは近年最大規模といわれた2000年洪水に匹敵する規模であった.また,浸水域に比較すると相対的な被害は大きくなかった.カンボジアのメコン川はほとんど築堤が行われておらず,伝統的な地域に住む人々は毎年の洪水を経験しながらも,その環境に適応し,洪水リスクを最小限にするような土地利用や生活様式を続けている.

4 0 0 0 OA 集成内科学

著者
馬場辰二 著
出版者
集成社
巻号頁・発行日
vol.第2, 1937
著者
松浦 直毅
出版者
日本アフリカ学会
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.77, pp.19-30, 2010-12-31 (Released:2013-12-06)
参考文献数
38

多くのアフリカ諸国でみられるように,アフリカ中部のガボン共和国では,病気の治療や家族関係,仕事,そして政治的な問題の解決のためにおこなわれる伝統儀礼が,広く人びとのあいだで信じられ,利用されている。なかでも「ピグミー」と呼ばれる人びとは,豊富な植物の知識をもち,超自然的な力をそなえた存在として特別視されている。本稿では,ガボン南部のピグミーの1グループであるバボンゴの伝統儀礼について,以下の2点を明らかにする。(1)バボンゴは,周縁的な村に暮らしていながらも,伝統儀礼を通じて政治的な権力者を含めた都市の人びととの関係を築いている。(2)現金収入の乏しい村に暮らすバボンゴにとって,伝統儀礼が貴重な収入源となっている。これまでの研究では,ピグミーが周縁的な存在であるために,外部世界と関わるには近隣農耕民に対して政治的に依存せざるをえないこと,近代的な国家システムへの参与が困難であることが指摘されてきた。しかしながら,ガボン南部のバボンゴは,周縁的な存在であるために逆に外部の人びとから伝統儀礼が価値づけられ,その能力が頼られることで,農耕民に依存することなく外部世界とかかわり,伝統儀礼の担い手として独自の社会的地位を築いているといえる
著者
小松 佐穂子 箱田 裕司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.513, pp.7-12, 2001-11-11
被引用文献数
1

本研究では髪の色が人物印象に与える効果と顔の平凡性-個性との関係について検討した。80名の被験者に画像処理によって髪の色を変化させた日本人男女の顔画像を呈示し、16の印象評定項目について7段階尺度を用い印象評定を行なった。得られたデータをもとに因子分析を行なった結果、一般的望ましさ、快活性の2因子が抽出された。各顔刺激の平均評定値を用いて分散分析を行なった結果、一般的望ましさ、快活性の因子それぞれにおいて髪の色の効果が認められた。また、髪の色と顔の平凡性-個性の交互作用が認められた。これは髪の色は顔の印象形成に影響を与えること、さらに顔の平凡性-個性と相互に作用して影響を与えることを示唆している。
著者
俵 浩三
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-15, 1993-08-27
被引用文献数
1 1 1

植物への理解を深めることは造園学の重要な基礎となるが,植物情報源として大きな役割をはたす植物図鑑の発達史は,造園史,植物学史,理科教育史の分野を含めて十分に研究されていない。そこで,(1)明治以降に出版された一般野生植物を対象とする植物図鑑の発達史を展望して時代区分を行い,その特徴を明らかにするとともに,(2)とくに明治40年ころに近代的,啓蒙的植物図鑑を出現させた原因には,当時の初等理科教育における博物重視と,画一的ではない「身近な自然」を教科書とする教育の方針があったこと,(3)さらに「牧野植物図鑑」の成立には,牧野を敬愛す人々によってつくられた英雄伝説的な'誤伝"があること,を明らかにした。
著者
三輪 唆矢佳 安藤 聡子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.833-841, 2014

進化を続ける世界のサイエンスコミュニティーの中で,各大学が独自性を「見える化」し,内外からの評価を向上させるには,一貫したポリシーに基づく戦略が必要である。その戦略策定の各段階において,エビデンスデータの活用が必須となっている。本稿では,現在の日本の状況を概観するとともに,国内5大学(名古屋大学,東京大学,慶應義塾大学,山口大学,岡山大学)における実際の先進的な分析,活用事例を紹介する。さらに,研究分析に用いるエビデンスデータの中核の1つを成す,ビブリオメトリクスの可能性や名寄せについても言及する。
著者
鈴木 一正 呉 海元
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会論文誌 (ISSN:13425668)
巻号頁・発行日
vol.26, no.9, pp.323-329, 2013 (Released:2013-12-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

In this paper, we propose automatic hair detection and tracking system at video-rate by using Kinect to capture color and depth information. Our system has the following three ideas simultaneously: 1) Simple and high-speed system is built by the general technique using distance information. 2) Using a 6D feature vector to describe both the 3D color feature and 3D geometric feature of each pixel uniformly. Classifying pixels in images into foreground (e.g. hair) and background with K-means clustering algorithm. 3) Automatic learning and updating the cluster centers of foreground and background before and during hair tracking. This ability makes our system can track hairs robustly, which does not depend on its hair color and style, and even before a background with similar color of hair. Our system becomes a robust head tracking system if the face and hair are set as foreground.