著者
松嶋 登 高橋 勅徳
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.43-52, 2009-09-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
58

制度的企業家は,組織(主体)にとって制度とは何か,そして研究者にはいかなる分析が求められるのかという,制度派組織論のハード・コアに立ち戻る問いとして提示された.制度は,実践を通じて物象化され,抽象的ながら社会的事物として自明性を帯びることで,組織が意識的に考慮すべき環境となる.このとき制度に支配的権力を読み解き,抵抗しようとするエージェンシーを獲得した主体が,企業家である.結果,制度化は,制度を媒介にした政治的闘争のプロセスとして捉え直される.そして研究者には,進歩的イメージを有する「企業家」の分析を通じて,既存の制度の政治的闘争に不可避に関与しつつも,批判的に対峙するというリサーチ・プログラムが提示される.
著者
木下 大樹 大塲 洋介 富張 瑠斗 山中 祥太 宮下 芳明
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2022-HCI-199, no.37, pp.1-8, 2022-08-15

多くのポインティング手法の評価実験ではできるだけ速く正確にタスクを行うように指示される.速さと正確さはトレードオフの関係にあるため,それぞれにどれだけの重みを置くかは参加者にゆだねられてしまう.例えば,エラーしにくいポインティング手法を提案して評価実験をする場合,正確さに重きを置く参加者が多いと,従来手法との差が出ない可能性がある.本稿では,速さと正確さに対するバイアスがポインティング手法の評価結果へ与える影響を調査した.ニュートラル,速さ重視,正確さ重視の 3 種類のバイアスでポインティングタスクを行う実験を,十字カーソルとバブルカーソルの 2 種類のカーソルで実施した.結果,バイアスとカーソルの間に交互作用がみられ,バイアスが正確さ重視になることでカーソル間のエラー率の差が小さくなることがわかった.このことから,速さと正確さに対するバイアスが評価結果に影響を与える可能性が示唆された.一方で,正確さ重視においてもバブルカーソルの方が十字カーソルよりも有意にエラー率が低く,バブルカーソルはバイアスによらず有効な手法であると示された.ポインティング手法の評価実験において,複数のバイアスを条件に含めてタスクを行うことで,多彩な状況(たとえば,ユーザが確実にエラーをせずにボタンを選択したい状況)を考慮した評価が行えると考えられる.
著者
王 鋒 佐川 貢一 猪岡 光
出版者
Japan Human Factors and Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.191-200, 2000-08-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
20
被引用文献数
24 21

本論文では, 自動車の進行方向の速度変動に起因する乗り心地に関して検討する. 自動車走行中に伴う速度変動に対して, 乗り心地評定実験を行い, 乗り心地評定値と速度変動を表す諸物理量との関連を検討した. 進行方向の加速度およびジャークを説明変量とし, 被験者の乗り心地評定値を目的変量として, これらを関係付ける線形重回帰モデルを構築し, 客観的な乗り心地指数を定式化することを試みた. その結果, 実験より得られた被験者の乗り心地評定値と構築したモデルより推定した乗り心地指数との間に高い相関があり, 提案した線形重回帰モデルを用いた乗り心地評価の手法が有効であることが確認された. こうした研究を進めることにより, 乗り心地を規定する物理的情報をある種の乗り心地指数として運転者にフィードバックすることで運転手の運転手法を改善し, 乗客に優しい運転が実現できることが期待される.
著者
山中 進
出版者
THE TOHOKU GEOGRAPHICAL ASSOCIATION
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.147-155, 1979 (Released:2010-04-30)
参考文献数
15

This report mainly concerns the progress and the background of sake breming, lumbering and wood working of Yuzawa city during the industrial revolution of Japan.The results are summarized as follows.By the opening of the Dou-line in 1905, commodity system flows which previously had depended upon the road or the river transportations were converted to the utilization of the railway.Consequently Yuzawa city changed its position as the gateway to Tokyo and the commodity system flows and the spacial mobility of population were widened. This made Yuzawa city as the center of that area. This fact means a great deal to the development of regional industry.Innai (silver mining town), which has prospered greatly since the beginning of 1700, had been breeding the regional economy of Yuzawa for last three hundred years. This prosperious regional economy has contributed a great deal to the development of sake brewing, lumbering and wood working from the beginning of the 1910's to the 1920's.The economic contribution of the landowners or the rich merchants and the political influence of the prefectural, and other local politicians, such as member of Chamber of Commerce and Industry, also revealed their efforts in the development of this area.
著者
田中 正晴
出版者
高知人文社会科学会
雑誌
高知人文社会科学研究 = Research Reports of the Kochi Society of Humanities and Social Sciences (ISSN:21882479)
巻号頁・発行日
no.5, pp.49-62, 2018-03-20

会議名:高知人文社会科学会第5回総会及びシンポジウム「高知の環境紛争 科学、法、デモクラシー」 開催地:高知大学朝倉キャンパス共通教育1号館127教室 日時:2017年3月4日
著者
角野 充奈 浦 光博
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.105-117, 2008 (Released:2008-03-19)
参考文献数
19

人々には,他者の言動に対応した属性を推論する傾向があり(対応推論),その傾向は,他者の言動が社会的に拘束されていると知っていても生じることが明らかにされている(対応バイアス)。対応バイアスは,容易には消失しないことから,非常に強固な現象であると捉えられているが,それゆえに,対応バイアスやその基礎となる対応推論を促進・抑制させる要因について検討した研究も存在する。本研究では,日本語における一人称代名詞「私」が明示,もしくは,省略された文章が,対応推論に及ぼす効果について,2つの研究で検討を行なった。研究1では,Jones & Harris(1967)の態度帰属の実験方法を踏襲し,書き手が立場を選択できない状況で書いた,日本語の一人称代名詞が明示された文章を読んだ場合に,省略された文章を読んだ場合よりも,対応推論が促進されることが示唆された。研究2では,日本語の一人称代名詞の有無に加え,書き手の真の態度を正確に判断するよう実験参加者に教示するか否かを状況操作して検討を行なった。その結果,正確な判断をするよう教示されずに一人称代名詞のある文章を読んだ場合に,最も対応推論が促進されることが示唆された。文化的背景に基づく要因と対応バイアスや対応推論との関連性,および,今後の研究の課題について考察した。

3 0 0 0 気候学

著者
福井英一郎 著
出版者
古今書院
巻号頁・発行日
1938
著者
浅見 敬三
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.75-80, 1971-04-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
45
出版者
内務省警保局
巻号頁・発行日
vol.第9号, 1930
著者
神田 知紀
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.11, pp.776-781, 2017 (Released:2017-11-25)
参考文献数
25
被引用文献数
1

ガドリニウム造影剤は一般的に用いられるMRI造影剤である. ガドリニウムは強い毒性をもつため, ガドリニウム造影剤は投与後すぐに排泄されるように設計されている. ところが, 近年ガドリニウム造影剤が脳内に残留することが画像所見から明らかになり, ガドリニウム造影剤の安全性が揺るがされている. しかも体内に残留するガドリニウム量は市販されている造影剤間でも異なり, 造影剤間の格差が生じている. 現時点までの知見および安全性の考え方について概説した.
著者
宮尾 学
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.120-131, 2011-03-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
35

本稿では,製品カテゴリを再定義する製品開発について,技術の社会的形成アプローチによる事例研究を行った.企業レベルでは開発中の製品についての柔軟な解釈とその収結のプロセスが観察され,市場レベルでは競合や消費者に新たな製品の解釈が普及し,製品カテゴリが再定義されるプロセスが観察された.またその際には,様々な制度的・構造的要因や物的要因が利用されていた.これらのことから製品カテゴリを再定義するプロセスは,様々な主体が制度・構造や物を利用し,柔軟な解 釈を特定の解釈に収結させるプロセスとしてモデル化できることが示唆された.
著者
宮坂 宥勝
出版者
智山勧学会
雑誌
智山學報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.71-87, 1993-12-12

漢訳『摩登伽経』は、経名の通りにマータンガ(matanga)すなわちチャンダーラにまつわる経典として、夙に知られる。本経に登場するマータンガ種族のトゥリシャンク(Trisanku.漢訳、帝勝伽)王は、チャンダーラ出身である。この王を中心とした物語は『ディヴィヤーヴァダーナ』(Divyavadana)、叙事詩『ハリヴァンシャ』(Harivamsa)などにも伝える。階級批判さらには社会的差別の否定がストーリーのなかでどのように展開するかを考察するのが本稿である。前回発表した同題(一)の続篇になる。なお前篇のチャンダーラ観の構成は、次のとおりである。(1)階級批判もしくは社会的差別の対象としての存在。(2)救済譚における存在。(3)出家についての比喩。(4)差別是認または社会的差別さらには蔑視対象。(5)尊格化。(6)その他。