著者
藤本 早苗 小椋 たみ子 渡辺 俊太郎
雑誌
大阪総合保育大学紀要 = Osaka University of Comprehensive Children Education (ISSN:18816916)
巻号頁・発行日
no.14, pp.13-28, 2020-03-20

女性の社会進出が進み、一日の多くの時間を保育施設で過ごす子どもの数も増加する中で、集団への適応の如何は子どもにとって大きな課題となり得る。本研究では、社会的スキル、実行機能及び言語能力の3者を適応に関わる領域として捉え、幼児期におけるそれら3領域の関連を検討することを目的とした。近畿圏内の保育所、幼稚園、認定こども園の担任保育士に質問紙調査を実施し、3歳後半から6歳の就学前児 652 名に対する回答を得た。それらの保育者評定の得点について因子分析した結果、社会的スキル3下位尺度(主張スキル・協調スキル・自己統制スキル)、実行機能2下位尺度(抑制力・状況対応力)、言語能力2下位尺度(外言活用力・メタ言語活用力)を抽出した。分散分析の結果、7下位尺度の全てにおいて、性別と年齢の交互作用は有意ではなく、それぞれの主効果のみが有意であった。具体的には、女児が男児よりも有意に得点が高く、また、5歳前半児がそれ以前の年齢群よりも有意に得点が高かった。パス解析の結果、言語能力から社会的スキルと実行機能への影響が大きいこと、そして、言語能力の中でも、外言やメタ言語を活用する能力の発達が、幼児期における社会的スキル及び実行機能の獲得・発達に対して、共通の重要な要件となっている可能性が示唆された。
著者
鈴木 二正 芳賀 高洋 大川 恵子 村井 純
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.10-19, 2016-10-07

昨今,3Dプリンタの教育利活用が注目されている.数年前までは非常に高価で,工業高校や専門学校,あるいは大学でなければ購入が難しかった3Dプリンタも,いまでは,個人で手軽に購入が可能となっている.しかし,いまのところ,3Dプリンタ学習は,中学校技術科や高校,専門学校,大学が中心で,小学校低学年で実践された例は確認できていない.そこで本稿では,小学校2年生に3Dプリンタ学習を実践し,小学校低学年では,どのような学習が可能かを検討した.
著者
姜 奉植
出版者
岩手県立大学高等教育推進センター
雑誌
リベラル・アーツ = Liberal arts (ISSN:18816746)
巻号頁・発行日
no.10, pp.35-54, 2016-03

한국어는 구어에서 음운 변화가 활동적으로 일어난다. 음운 변화는 규칙적으로 일어나고 있어 학습자(일본어를 모어로 하는 한국어 학습자. 이하 ‘학습자’로 약칭.) 들에게 발음 규칙을 제정하여 교육하고 있는 것이 현실인데 본고에서는 표준발음으로 인정치 않는 ㅎ음 약화와 중모음의 단모음화, 변자음화 현상까지 넣은 12개의 음운 변화를 다루었다. 특히 학습자들이 12개의 음운 변화를 빨리 이해하는 데에 주안을 두었는데 음운 변화를 빨리 이해하면 할수록 그만큼 음운 변화에 대한 습득도 빨라진다고 판단했기 때문이다. 음운 변화 이해를 도모하기 위해서 먼저 일본어에서 일어나는 유사한 음운 현상을 찾아냈고, 이를 통해 한일어 간의 음운 변화를 비교할 수가 있는데, 학습자 들은 한국어의 음운 변화를 논리적으로 수월하게 이해하게 되는 효과가 있으며 또한 음운 변화의 습득도 이해도가 향상된 만큼 빨라지는 효과가 기대된다고 하겠다.
著者
中島 経夫
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.162, pp.49-63, 2011-01-31

コイ科魚類の咽頭歯がもつ生物学的特性から,遺跡から出土する咽頭歯遺存体を分析することによって先史時代の人々の漁撈活動の様子を知ることができる。日本列島では,縄文時代からイネの栽培が始まり,弥生時代には灌漑水田での稲作が始まる。淡水漁撈の場と稲作の場が重なりあってきた。西日本の縄文・弥生時代の遺跡から出土する咽頭歯遺存体についての情報がある程度蓄積し,淡水漁撈と稲作の関係について述べることができるようになった。西日本の縄文・弥生時代における漁撈の発展は,稲作との関係から,0期:水辺エコトーンでの漁撈が未発達の段階,Ⅰ期:水辺エコトーンでの漁撈が発達する段階(Ia期:原始的稲作が行われていない段階,Ib期:漁撈の場での原始的稲作が行われる段階),II期:稲作の場(水田)での漁撈が発達する段階,に分けることができる。長江流域では,Ia期に漁撈の場(水辺エコトーン)でのイネの種子の採集が加わる。長江流域の漁撈と稲作の関係については,咽頭歯遺存体から多くを述べることができない。というのは,これまで,中国での咽頭歯遺存体についての詳しい研究は,河姆渡文化期の田螺山遺跡の例をのぞいてまったくない。今後,新石器時代の遺跡から出土する咽頭歯遺存体の研究が進むことによって,漁撈と稲作の関係や稲作の歴史について言及できるはずである。
著者
都 勇志 木谷 裕紀 小野 廣隆
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:21888736)
巻号頁・発行日
vol.2022-GI-47, no.14, pp.1-7, 2022-03-11

ゲームの難易比較や AI ベンチマークの妥当性評価などのため,二人零和有限確定完全情報ゲームの「複雑さ」の計量が様々な形で研究されている.代表的な「複雑さ」の尺度の一つが状態空間数であり,これは初期局面から到達可能な局面数として定義されている.本研究では将棋の状態空間数の見積もりを行う.禁則ルールの多さなどから将棋の厳密な状態空間数を測ることは容易ではないが,2008 年の篠田の研究により 4.65×1062 と 9.14×1069 の間の値を取ることがわかっている.本研究では将棋の状態空間数のより正確な評価を行い,2.45×1064 と 6.78×1069 の間の値を取ることを示す.上界値の評価については持ち駒が少ないほど局面のパターンが増えることに注目した計量方法を提案する.下界については,篠田により提案された駒配置のテンプレートを改良し,これに基づく解析を行う.また将棋から派生したゲームである 5 五将棋についても状態空間数が 13 桁から 20 桁の間であることを示す.
著者
伊土 誠一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.2534-2542, 1993-12-15

ソフトウェアの聞発において・潜荏バグ数を精度よく推定できれぱ、効率のよい信頼性保証活動が可能となり、適切なソフトウェア聞放時期が決定できる。従来は、開発途中までのバグの発生数の経時変化を把握し、それをソフトウェア信頼度成長モデルにあてはめることにより、潜在バグ数を推定する方法が主に開発されてきた。この手法はデバグや試験のプロセス、横軸として何を採用するかが堆定精度こ大きく影響する。本論文では、バグ摘曲工程の途中のプロセスが潜在バグ数推定精度に影響を与えない特徴をもち、野生動物の頭数なぎを捧定する手段としてよく知られている「蒲獲・再捕獲法」をソフトウェアのバグ数推定に適用することを考える。それには、2つの間題を解決する必要がある。1つは、対象プログラムに埋め込んだバグをどのように選定するかである。これはバグ数の推走精度に大きく影響する。2番目は、バグ数推定のために埋め込むバグが発生することによるトラブルである。本来の品質保証作業の進捗に影響を与えないような工夫が必須である。本稿では、これらの課題を解決する「バグ摘獲・再捕獲法」を提案する。さらに、ここで提案した方法論とバグ捕獲・再捕獲法のために聞発したツールを、実際に商用に供する大規模ソフトウェアに適用した事例を紹介する。最後に、本方式とソフトウユア信頼度成長モデルとの推定精度の比較等の考察により、バグ捕獲・再捕獲法の有効性を示す。
著者
城戸 佳織
出版者
岐阜薬科大学
巻号頁・発行日
2020-03-10

2019年度
著者
川崎 賢太郎
出版者
農林水産省 農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 = Journal of Agricultural Policy Research (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.33, pp.63-75, 2020-12-28

近年,農業政策分野においてEBPM(Evidence-Based Policy Making,エビデンスに基づく政策立案)という考え方が浸透しつつあるが,そこでの最も重要な概念は,対象とする政策が各種アウトカムに与える「因果関係」である。本稿では因果関係を推計する手法の一つである,「回帰不連続デザイン(Regression Discontinuity Design)」に焦点を当て,その基本的な概念や農業経済学分野における応用例,我が国の農業分野に適用するための課題について論じる。Causality plays a key role in evidence-based policy making, and there are several econometric methods that quantify it. This article reviews applications of regression discontinuity design in the field of agricultural economics and discusses several issues that should be considered when applying this method to agricultural policies.
著者
新垣 拓 防衛研究所地域研究部
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.18-19, 2018-12

米国の核兵器運用に同盟国を参画させるという核共有制度は、2つの形式をとりながらアイゼンハワー政権において開始された。第1には、NATOの枠組みとは別に、英国に配備したソー・ミサイルを米英2国間で運用する制度であり、第2には、NATOの枠組みにおいて、英国も含むNATO加盟国との2国間協定に基づいてイタリアとトルコに配備したジュピター・ミサイルや戦術核兵器を運用した核備蓄制度であった。ただし、同政権では、これらの2国間・核共有にとどまらず、第3の核共有制度が検討されていた。それは最終的に、NATO内にMRBM戦力部隊を段階的に創設するという、1960年12月のハーター提案というかたちで同盟国に示されることとなった。すなわち、即応性が高くソ連本土を射程に収めるポラリス・ミサイルを、原潜艦隊という海上プラットフォームに基づき多国間で運用する共有制度を、新たに打ち出したのであった。本稿では、未公刊の一次史料に依拠しながら、どのように多国間核共有論が形成・共有されるようになったのか、なぜMRBMが共有対象に選択されたのか、なぜ政権末期というタイミングでの提案に至ったのかという観点から分析を行うことで、米国政府内の主要な政策主体の認識や、核共有の在り方に関する政策論議を明らかにする。
著者
鈴木 靖民
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.152, pp.315-327, 2009-03-31

7世紀,推古朝の王権イデオロギーは外来の仏教と礼の二つの思想を基に複合して成り立っていた。遣隋使は,王権がアジア世界のなかで倭国を隋に倣って仏教を興し,礼儀の国,大国として存立することを目標に置いて遣わされた。さらに,倭国は隋を頂点とする国際秩序,国際環境のなかで,仏教思想に基づく社会秩序はもちろんのこと,中国古来の儒教思想に淵源を有する礼制,礼秩序の整備もまた急務で,不可欠とされることを認識した。仏教と礼秩序の受容は倭国王権の東アジアを見据えた国際戦略であった。そのために使者をはじめ,学問僧,学生を多数派遣し,隋の学芸,思想,制度などを摂取,学修すると同時に,書籍や文物を獲得し将来することに務めた。冠位十二階,憲法十七条の制定をはじめとして実施した政治,政策,制度,それと不可分に行われた外交こそが推古朝の政治改革の内実にほかならない。
著者
笠岡 誠一 中島 滋
出版者
文教大学女子短期大学部
雑誌
研究紀要 = Annual Reports of Studies (ISSN:03855309)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.13-15, 2000-12-01

我が国において、干物は保存性の高い食品として古くから利用されてきた。また近年では、その独特のうま味とテクスチャーから、日常食品としても好まれている。このうま味の一因として、乾燥工程における水分量の減少により、魚肉中の呈味成分が濃縮されることがあげられる。また呈味成分の中で遊離アミノ酸および核酸は、タンパク質および核酸分解酵素の働きにより分解生成物が生成されれば、濃縮される以上に濃度が高くなることが考えられた。分解酵素の作用に関する研究は、酵素活性が強いことが知られている貝類に関する報告と、白色筋のミンチのみを原料とした著者らの報告以外はほとんど行われていない。本研究は、日常的に食する干物の呈味性を、分解酵素の作用により高めることを目的としている。今回は、アジ干物製造工程における水分量変化と遊離アミノ酸量変化を測定し、タンパク質分解酵素の働きを検討した。また、製造工程における脂質量変化と呈味との関連についても検討した。