著者
服部 尚道 黒岩 俊之 早川 正 吉住 陽行
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 = Concrete journal (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.275-281, 2012-03-01
参考文献数
11

京急蒲田駅付近連続立体交差事業における高架橋築造工事では,営業線直上に高架橋を構築するため,移動式直接高架施工機とハーフプレキャスト(以下,HPCa)工法を組み合わせた直接高架工法を適用した。移動式直接高架施工機は,基礎杭打設と部材架設が行える施工機である。HPCa工法は工場製作のプレキャスト部材を現地で組み立てラーメン高架橋を構築する技術で,梁とスラブに適用した国内2件の工事実績がある。本稿では,柱に初めてHPCa工法を適用した本事業における,工法選定理由,HPCa工法の概要,工事概要および施工概要について報告する。
著者
榎村 寛之
出版者
法制史学会
雑誌
法制史研究
巻号頁・発行日
vol.59, pp.53-79,en5, 2010

<p>本稿は律令国家の初期段階における神祇祭祀法について、社会に対する法の効能と社会における法の受け取られについて考察するものである。<br>国家的な祭祀とは、習俗ではなく、国家の形成過程における重要な「政治」であった。七世紀後期の日本社会においては、祭祀は税の体系を維持するほどの効力があった反面、全国的な統制は未成立だった。<br>日本最初の総合的な法典である、「大宝律令」のうち「神祇令」は、「慣習としての祭祀」を「イデオロギー統制」に転化させる側面を持ち、祭祀に縛られた未開社会から社会が祭祀を規制し、国家が統制する文明社会への転機に出現した法といえる。しかしながら、社会体制の異なる唐の祠令から継授したという側面があるので、その内容には極めて不完全な部分が残されていたことが近年の研究により明らかにされている。<br>神祇令の目的は、多様な神から、「神祇」と呼ばれる神を抽出することである。神祇とは、天神地祇のことで、「天皇中心の国家秩序を確認するために有効な神」であり、その基盤イデオロギーは天孫降臨であったと見られる。祠令が、中国の伝統的祭祀すべての規定を意識しているのに対し、神祇令は「未定型の祭祀を神祇官の下に法として整理する」ための法だということができる。神祇令は神を定義する法なのである。ところが、国家的注釈書である『令義解』では、神祇令の注解は、天神地祇の定義をしていないことをはじめ、総体に些末な語義の注釈に留まり、法の観念性やその実効性についての議論には至っていない。これが九世紀前半の律令法の理解の実態であった。<br>神祇法を支える意識に大きな転換が見られるのは、一〇世紀に法細則を集成した『延喜式』の「神祇式」である。神祇式の条文からは、唐の祠令を読み込み、その解釈を日本社会に適合させようとする努力が読み取れる。例えば、国家的祭祀のシンボルである伊勢神宮は、八世紀末の政治改革によってその統制が強められ、国家的な位置づけが明確になるが、神祇式はその意識の下で書かれている。また、伊勢神宮に奉仕する未婚の皇族女性である斎王は、神祇令には定義されなかったが、神祇式では、天皇の命令で置かれることが明記されている。天皇祭祀の存在を前提にした事務規定に過ぎなかった神祇令とは違い、神祇式は、王権祭祀の内容にまで踏み込んで規定した法なのである。<br>すなわち、延喜神祇式は単なる神祇令の細則ではなく、天皇の祭祀を含め、祭祀全般を法で規制することに一部成功した、画期的な法だといえる。<br>神祇式によって、天皇の責任下でシステム化された国家祭祀体制が確立された。すなわち、地域に定着した「神祇」意識と国家祭祀の方向性がようやく連動し、共通した神意識の形成が形成される道筋ができた。それは「神祇令」という「理念的な統治法」が「神祇式」という「実効性のある行政法」へ転換したことを意味するのである。</p>
著者
広田 光一 廣瀬 通孝
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.38(2002-HI-098), pp.13-18, 2002-05-17

五感情報通信という言葉が広く使われるようになってきた。このような興味のひとつの側面は従来扱われてこなかった感覚情報をメディア技術に導入することである。本稿では触角および嗅覚情報の伝達について筆者らの試みを紹介する。触覚情報の伝達のひとつの方法は接触などのインタラクションの対象となるものを触覚的なモデルとして構築し仮想空間の中で再現することである。嗅覚情報はこれを構成する匂いの要素(原臭)が明らかになっておらずしたがって任意の匂いを扱うことは難しいが、匂いの種類を限定することでこれを電子的なメディアで扱うことはある程度可能になってきている。
著者
江村 正一 早川 大輔 陳 華岳 正村 静子
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.45-50, 2003 (Released:2008-06-11)
参考文献数
30
被引用文献数
3 3

新生子および成獣ライオン Panthera leo の舌表面を肉眼的および走査型電子顕微鏡で観察した.ライオンの舌の先端は円く,舌背側面には糸状乳頭,茸状乳頭および有郭乳頭が観察され,舌尖の腹側面の一部にも糸状乳頭が見られた.糸状乳頭は舌表面全域に見られ,舌尖の周辺部の糸状乳頭はそれ以外の場所の糸状乳頭に比し小型であった.また,糸状乳頭は舌の場所により異なる形態を示した.新生子の糸状乳頭は形態的に未発達で,その先端部が浅く陥凹しており,突起状を示さなかった.茸状乳頭は,糸状乳頭の間に散在して見られ,その分布は舌体に比し舌尖周辺部において密であった.有郭乳頭は舌体と舌根との境界領域に観察された.さらに,糸状乳頭の発育は茸状乳頭および有郭乳頭に比し遅かった.なお,葉状乳頭はいずれのステージでも観察されなかった.

3 0 0 0 OA [師守記] 64巻

著者
中原師守//〔著〕
出版者
巻号頁・発行日
vol.巻12 康永三年八月, 1339
著者
吉成 怜子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.65-78, 2006-03-01

『欲望という名の電車』(AStreetcarNamedDesire,1947)は、いうまでもなくテネシー・ウィリアムズ(Tennessee Williams,1911-83)の代表作である。ヒロインであるブランチ(Blanche)について彼は、「ブランチはわたしだ」と自らが語ったように、さながらブランチを彷彿とさせるようなアルコール中毒、男性遍歴などの諸行は、決して社会に受け入れられそうもなかった。ウィリアムズが演劇界の巨人でありながら、異端者として生きてなお、彼が究極的に求め続けたものは、アメリカ南部に育まれた繊細で優雅な心情への愛着だった。われわれ現代人は経済的発展を追い求めるあまり、ともすれば他者への優しさや思いやりなどをないがしろにしてきた。その憂いをブランチのたった一人の戦いとして、ウィリアムズはこの作品を執筆したともいえる。そのブランチの負け戦だと知りながら戦う姿を本論では検証してゆきたい。ブランチアメリカ南部
著者
石川 毅彦 パラディ ポールフランソワ 藤井 隆一 依田 眞一
出版者
日本熱物性学会
雑誌
熱物性 (ISSN:0913946X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.61-66, 2005-04-30 (Released:2008-10-27)
参考文献数
25
被引用文献数
3 5

過冷却状態を含むタングステン融体の熱物性値を静電浮遊炉を用いた無容器法により測定した。その結果、3125~3707K の温度範囲において測定された密度はρ(T) =16.7(±0.33)x10³-1.08(±0.08)(T-Tm) (kg⋅m-3) (融点Tmは3695K )となり、熱膨張率は6.6 x 10-5 K-1 となった。同様に3398~3695K の温度範囲において、表面張力はγ(T) =2.48x10³(±75)-0.31(±0.08)(T-Tm) (10-3N⋅m-1)、粘性係数はη(T) =0.11(±0.02)exp[12.8(±4.1)x104/(RT)] (10-3Pa⋅s)となった。
著者
多田 伶 勝又 壮太郎
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.111-121, 2020 (Released:2021-04-21)
参考文献数
44

In this study, the moderating effect of consumers' information processing on post-purchase evaluations in an environment characterized by information overload was examined. Although it is important to understand how information processing during decision-making affects post-purchase evaluations, which include satisfaction with one's decision and repurchase intention, the influence of information processing on evaluations after purchasing is not well understood. Based on the unconscious thought study, two modes of thinking were compared: conscious thought and unconscious thought. To examine purchasing behavior regarding DVD players and window curtains, we conducted an online survey and performed path analyses. The results indicated that conscious thought had a negative impact on satisfaction with decision when consumers were confused by information overload. Moreover, it was suggested that unconscious thought had a positive impact on repurchase intentions when consumers felt confused by information overload. Finally, some implications and future research issues were addressed.
著者
稲川 郁子
出版者
日本体育大学
雑誌
日本体育大学紀要 (ISSN:02850613)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.1083-1093, 2021

This paper is about Ju-no-Kata, one of the seven types of Kata handed down in Kodokan. It is based on “Judo-Hongi,” written by Jigoro Kano, and “A Study of Teaching Methods in Ju-no-Kata,” written by Kunio Murakami. The method is to sort out the characteristics of these documents and to focus on the passages that mention Maai. Kano attempted to convey the correct Ju-no-Kata movements and their sig-nificance to practitioners. Murakami wrote mainly about the rational teaching method of Ju-no-Kata. The waza in which relatively large differences were found in the descriptions of the both documents were Naname-uchi and Tsuki-age. The waza with relatively significant changes after the publication of both docu-ments was Katate-age. From several discourses, it can be seen that Kano had a flexible attitude toward the modification of Kata. After Kano’s death, the Kata underwent several minor revisions due to research by Kodokan students. The current unified view is contained in a textbook published by Kodokan. Some of the descriptions are different from those of Kano and Murakami. In recent years, Kata has become a competition. The judging criteria for Kata competitions clearly states “position and Maai.” The concept of Maai is im-portant for each competitor, instructor, and judge. In Kata, it is important to understand the significance of each movement, and to practice with an awareness of the Maai necessary for the expression of Riai.
著者
二宮 紀子
雑誌
十文字学園女子大学紀要 = Bulletin of Jumonji University (ISSN:24240591)
巻号頁・発行日
no.50, pp.123-136, 2020-03-28

今年度4 月にМ L 教室が設置されたことを機に、幼児教育学科のピアノ演奏に関わる科目、特に「音楽基礎Ⅱ」( 1 年次後期開講)の準備講座を自主ゼミという形で開講した。また現行では子どもの歌の伴奏法の内容を扱っている「保育内容の指導法(音楽表現)」( 3 年次前・後期開講)の授業をМ L 教室で行った。本稿はこの2 つの実践の報告である。М L 教室では学生一人に1 台の電子ピアノが割り当てられるため、楽譜の読み方や子どもの歌の伴奏を考える際に必要となってくる音楽理論を、実際に弾いて音として確かめながら学ぶことができる。その利点を生かしながら、受講者全員でまずピアノの課題の楽譜を、あるいは子どもの歌を全員でドレミで歌い、拍に合わせてリズムを叩くという準備を行ってから弾くという学習を行った結果、読譜力の育成、音楽理論理解、ピアノの演奏技術習得に効果が認められたことを、講座終了後の学生の姿や授業終了後に行った学生アンケートの分析から見ることができた。日本の音楽教育で読譜や理論の学びを難しいものにしている原因の一つがドレミ唱法の混乱である。ハニホヘトイロハという音名を定めておきながら、固定ド唱法と称してドレミを音名としても使い、階名であるドレミとの混乱を招いた。ピアノを弾くというだけであれば、五線による楽譜もピアノの鍵盤も固定ドの原則で作られているので、固定ドだけを学べばよいと考える教員もいる。しかし、音楽のしくみ、音階や和音の機能などは移動ド(階名)の考え方に基づいていること、何より保育者になる学生達には子どもの声の高さに合わせて自在に高さを変えて歌える力を身につけてもらいたいことから、階名としてのドレミ唱法を理解してほしいと考えている。学生が、混乱を招きかねない2 種類のドレミ唱法を経験しながら奏法と理論をどのように学んだか、М L 教室ならではの学習の流れと工夫点を振り返り今後の授業実践に反映させたい。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1473, pp.22-25, 2009-01-12

「1年前は1日に2000食ほど作っていたけど、今は650〜680食まで減ってしまった。こんな経験は初めてですよ」 愛知県小牧市の弁当宅配業を営む藤原繁味さんはため息交じりでこう話す。藤原さんの愛称は「マルシア」。20年前に来日した日系ブラジル人の2世だ。14年前にブラジル料理の弁当の宅配業を始めた。
著者
芥川 恵造 毛利 浩
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.204-210, 1997 (Released:2007-07-09)
参考文献数
15
被引用文献数
5 2
著者
末續 鴻輝
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.230-235, 2017-11-03

完全情報ゲームの多くの研究は2人プレイのものに限定され,3人以上でプレイするゲームに関する研究は,Li[1]や,Straffin[2],Propp[3]などの研究があるものの,その絶対数は少ない.その理由の一つには,3人以上のゲーム独自の問題がある.2人ゲームにおいては,ゲーム木をすべて書き下し,終了局面から再帰的に遡ることで,それぞれの局面において先手に必勝手順が存在するか,あるいは後手に必勝手順が存在するかどうかを判定することができる.しかしながら,3人以上のゲームにおいては,このように一意に勝者を定めることはできない.本研究では,Liが導入した順位の拡張とも言える概念を導入し,よく知られた完全情報ゲームNIMの多人数版の解析を行う.さらにこれが,正規形のゲーム (最後の着手をしたプレイヤーの勝ちとなるゲーム)だけでなく逆形のゲーム (最後の着手をしたプレイヤーが負けとなるゲーム)を含めた拡張となっていることを示す.