著者
解良 武士 河合 恒 大渕 修一
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.227-233, 2019-07-25 (Released:2019-07-31)
参考文献数
41

サルコペニアの最初の概念が提唱されてから,サルコペニアの操作的定義はいくつかの変遷を経てきた.2018年,欧州連合学会(EWGSOP2)から新しいコンセンサスが発表された.新しいサルコペニアのコンセンサスの特徴は,筋力をより重視したことと,SARC-Fと呼ばれるスクリーニングツールを使うことを提唱していることである.本稿ではこのSARC-Fについて,その特徴,サルコペニアや他のスクリーニングツールとの関連,妥当性,さらにその問題などについて解説する.
著者
黒石 憲洋 佐野 予理子 クロイシ ノリヒロ サノ ヨリコ Norihiro KUROISHI Yoriko SANO
雑誌
国際基督教大学学報. I-A, 教育研究 = Educational Studies
巻号頁・発行日
no.49, pp.67-78, 2007-03-31

日本人における「ふつう」概念の重要性について再検討するため,場面想定法を用いた実験的質問紙調査をおこなった.仮想場面として,他者との違いが量的に示される場面と質的に示される場面において,それぞれに拘束力の高い状況と低い状況を設定した.各場面において,周囲と同じ行動をとる他者あるいは周囲と異なる行動をとる他者を提示し,その他者に対する対人認知を測定した.結果として,いずれの場面においても,「ふつう」認知は周囲と同じ行動をとるかどうかにより影響を受けていた.また,他者との違いが量的に示される場面においては,遂行の高低に応じて対人認知が変化したが,それらの効果に「ふつう」認知による媒介はみられなかった.日本人における「ふつう」概念は,他者存在に向けられたものではなく,自己の状態として認知される場合にのみ,重要となる可能性が示唆された.
著者
沢井 かおり 渡辺 賢治
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.203-207, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
29

防風通聖散はメタボリック症候群の治療薬として広く知られている。精神科領域では合併症としての肥満治療に用いられるが,精神症状そのものに主方として奏効した報告はほとんどない。症例は63歳のうつ病男性で,主訴は抑うつ症状である。特にきっかけなく抑うつ症状が増悪し,本が読めず好きな読書を楽しめなくなった。男性更年期を疑い,漢方治療を希望して受診した。やや実証,やや熱証,気滞,血虚と診断し,排便困難感を重視して防風通聖散を開始した。8週後本が読めるようになり,3ヵ月後には読書やテレビに集中できるようになった。その後下痢傾向になったため内服を漸減し,10ヵ月後終診となった。防風通聖散は,肥満治療のみならず,証によっては精神症状そのものに応用できる可能性が示唆された。
著者
難波 幸弘 榊原 敏之
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
油化学 (ISSN:18842003)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.593-598, 1985-08-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
46
被引用文献数
1 1
著者
Hiroshi Takagi Akihiko Ito Heon-Sook Kim Shamil Maksyutov Makoto Saito Tsuneo Matsunaga
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
SOLA (ISSN:13496476)
巻号頁・発行日
pp.2021-037, (Released:2021-10-13)
被引用文献数
2

Numerous wetlands, including the world's two largest contiguous wetlands, lie along the free-flowing Paraná and Paraguay Rivers that travel the length of subtropical South America (SSA) region. These wetlands are floodplains that are inundated with rising river water in flood events; their morphology and area are highly changeable with flooding extent. The long-term variability of methane emission from this wetland hotspot and its sensitivity to meteorological conditions are not well known. We herein explore this unknown using space-based estimates of methane flux for SSA region between 2009 and 2015 along with data of water balance. We find that methane emission from this region coherently varies with precipitation and inundation areal extent.
著者
Fumiaki Fujibe Jun Matsumoto
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
SOLA (ISSN:13496476)
巻号頁・発行日
pp.2021-038, (Released:2021-10-13)
被引用文献数
4

Using vital statistics data from 1995 to 2019, the relationships among interannual variations of total mortality, heat-stroke mortality, and temperature in summer were assessed in an attempt to estimate excess deaths in hot summer years in Japan. The number of deaths in July and August increased by 1.1% for each 1°C increment of summer mean temperature over Japan, with an eight-fold larger range of interannual variation than the more narrowly defined heat-stroke deaths. This fact implies that excess deaths due to heat are about eight times more prevalent than heat-stroke deaths and can be on the order of 10,000 in a hot summer year. Analyses by age group and cause of death indicated that excess deaths are largely associated with cardiovascular and respiratory diseases among elderly people.
著者
竹内 一将
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.599-607, 2015-08-05 (Released:2019-08-21)

To be, or not to be, that is the question. -ハムレットに登場するこの有名な台詞は,父の仇討という後戻りできない選択に葛藤するハムレットの苦悩を描いたものである.ここまで複雑な状況は珍しいかもしれないが,後戻りができない変化というものは,自然現象においても様々な場面で起こりうる.例えば,近年よく耳にする生物種の絶滅危惧問題は,ひとたび絶滅してしまえば,その種はもう二度と現れないからこそ,大きな問題になる.物理学においても,低温の量子流体における量子渦や,連鎖的超新星爆発による銀河の星形成のモデルなど,一旦なくなったり止まったりするとなかなか元の状態に戻らなくなる現象は珍しくない.一般に,「一度入ったら二度と出られない状態」は吸収状態と呼ばれる.先程の生物種の例では,個体が一匹もいなくなった状態が吸収状態である.こうしてみると,環境などのパラメータが変わることで引き起こされる,絶滅するか否かという命運の変化は,吸収状態に落ちるか落ちないかという,一種の相転移だと考えられる.このような吸収状態転移は,統計力学,特に非平衡の統計力学の対象として長らく研究が続けられてきた.そして,少なくとも単純な理論的設定の下では,様々なモデルが普遍的な非平衡臨界現象を示すことが明らかになった.Directed Percolation(DP,異方的浸透現象)普遍クラスと呼ばれるこの臨界現象は,最も基本的な非平衡相転移として理論的に深く理解されており,高エネルギー物理におけるRegge極の場の理論とも直接の対応関係を持つ.一方,実験的には,DP臨界現象の十分な証拠は長らく見つからなかったのだが,著者らは2007年,液晶の乱流状態において,DPクラスの臨界現象が明瞭に現れることを発見した.DP臨界現象が実験的に確認されたという事実が意味するのは,それが理想的な条件下のみで現れる理論的産物ではなく,現実の非平衡現象を記述する力を持っているということである.現に,近年になって,流体における層流-乱流転移や,コロイド,超伝導渦の運動の可逆性に関する相転移など,いくつかの具体的な現象と吸収状態転移との関わりが実験的にも明らかになってきた.本解説記事では,液晶乱流における実験事実の紹介を軸として,吸収状態転移,特にDPクラスがどのようなものかを概観する.非平衡臨界現象の理論の一般的枠組みや,DPとRegge極の場の理論との関わりについても簡単に触れ,それがどのような実験事実で検証されたかを述べる.そのうえで,流体系やコロイド,超伝導渦などで吸収状態転移がいかに現れるか,近年の実験的進展も紹介する.非平衡系を構成する多数の自由度が「生きるか,死ぬか」.その狭間には,非平衡臨界現象の興味深い物理学があるということを感じて頂ければ幸いである.

3 0 0 0 OA 百花村物語

著者
佐藤春夫 著
出版者
湘南書房
巻号頁・発行日
1948
著者
中島 経夫 藤岡 康弘 前畑 政善 大塚 泰介 藤本 勝行 長田 智生 佐藤 智之 山田 康幸 濱口 浩之 木戸 裕子 遠藤 真樹
出版者
The Japanese Society of Limnology
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.261-270, 2001
被引用文献数
5

1998年3月から2000年11月にかけて,琵琶湖南湖周辺の10市町村の琵琶湖岸,内湖,河川,水路,池など879地点を調査し,16科42属55種(亜種を含む)の魚類を採集した。オイカワ,カワムツA型,カワムツB型,タモロコ,カマツカ,ギンブナ,アユ,トウヨシノボリなどの在来種は多くの調査地点に分布していた。一方,外来種のブルーギルやオオクチバスも多くの調査地点で採集された。分布パターンを魚種で分類するためにクラスター分析を行った結果,AからDの4つのクラスターが不明瞭ながら認められ,分布パターンと地形との間に関係が認められた。オイカワやカマツカに代表されるクラスターAとタイリクバラタナゴやメダカに代表されるクラスターBの多くは,デルタ帯,扇状地帯に広く分布するが,カワムツA型やタモロコに代表されるクラスターBの一部はデルタ帯に分布しない。その一方で,カワムツB型に代表されるクラスターCは丘陵地に分布し,ブルーギル(クラスターD)はデルタ帯に分布していた。タモロコやカワムツA型などクラスターBの一部の魚種はブルーギルの影響を強く受けているものと思われた。
著者
田名部 雄一
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.161-173, 1990-09-30

食物忌避現象には、その社会におけるタブー(宗教的タブーも含む)によって表れているものと、その民族の体質(遺伝子による)によってその食物の消化・吸収・利用ができないために表れているものとがある。いずれの場合にも、ある食物に対する忌避現象は偶然に生じたものではなく、その根底に社会的な必要性があったことは無視することはできない。本論文では、この問題を、(1)肉食の完全な忌避、(2)牛肉食の忌避、(3)豚肉食の忌避、(4)犬(狗)肉食の忌避、(5)牛乳の利用に対する忌避、(6)飲酒に対する忌避に分けて記述した。
著者
Masahiro Ishikane Yusuke Miyazato Satoshi Kustuna Tetsuya Suzuki Satoshi Ide Keiji Nakamura Shinichiro Morioka Harutaka Katano Tadaki Suzuki Norio Ohmagari
出版者
National Institute of Infectious Diseases, Japanese Journal of Infectious Diseases Editorial Committee
雑誌
Japanese Journal of Infectious Diseases (ISSN:13446304)
巻号頁・発行日
pp.JJID.2020.240, (Released:2020-05-29)
参考文献数
14
被引用文献数
1

We report a case of patient in Japan with Coronavirus disease 2019 (COVID-19) with false-negative of reverse transcription polymerase chain reaction for Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 of pharyngeal swab, from a Chinese traveller returning from Wuhan, Hubei Province, China. If a patient is clinically or epidemiologically suspected of COVID-19, appropriate infection and prevention control measures such as standard, contact, and droplet precaution are needed until the patient is proven to be true-negative.
出版者
日経BP
雑誌
日経トップリーダー = Nikkei top leader (ISSN:24354198)
巻号頁・発行日
no.443, pp.16-18, 2021-08

カスタマーハラスメントに悩まされる現場はこの数年で急増している。小売り、流通、サービスや介護の現場で顕著だ。国や行政の取り組みも進みつつある。厚労省は企業向け指針を今年度に作成する。