著者
中濵 直之 瀬口 翔太 藤本 将徳 有本 久之 伊藤 建夫 藤江 隼平 高柳 敦
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
大阪市立自然史博物館研究報告 = Bulletin of the Osaka Museum of Natural History
巻号頁・発行日
vol.73, pp.91-105, 2019-03-31

京都府に位置する京都大学芦生研究林は設立以降多くの研究者により利用・調査されているが,ニホンジカによる食害やナラ枯れにより,動植物相は2000年代以降大きく変化している.甲虫類( 鞘翅目) については1970年代にまとまった調査が行われているものの,近年まとまった報告はない.そこで本研究では,2008年から2016年にかけて甲虫相の調査を実施した.その結果,66科496種1,123個体の甲虫が記録され,そのうち7科14種は京都府新記録だった.本調査では,腐朽木に依存する甲虫や地表性甲虫が特に多く得られた.ニホンジカの増加やナラ枯れなどの生態系変化は,現時点では地表や腐朽木を生活場所とする甲虫相には負の影響を与えていないかもしれない.一方で,得られた草本植物食甲虫の数は少数だった.ニホンジカによる生態系被害は特に草本植物で顕著なため,草本植物食甲虫は負の影響を受けている可能性が示唆された.
著者
後藤 隆基
出版者
日本演劇学会
雑誌
演劇学論集 日本演劇学会紀要 (ISSN:13482815)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.59-75, 2013 (Released:2017-01-06)

Shakespeare the Year Tenpô 12 by INOUE Hisashi (1934-2010) was first staged in 1974. The play attracted attention because of the novel idea of using all of Shakespeare's works in the script, but the evaluation of the premiere was low and the author himself declared the play a failure. However, in 2005, the drama was revised by INOUE himself and directed by NINAGAWA Yukio, and this performance gave Shakespeare the Year Tenpô 12 the opportunity of reappraisal.Usually, criticism on Shakespeare the Year Tenpô 12 is focused on the points of Shakespearean parody. However, though scholars point out the necessity for different interpretations of the play, no concrete thesis of evaluation has been published to date.In this paper, I aim at showing the possibility of a new reading and comprehension from the viewpoint of the sexuality in this drama. The transformation of the sex scenes in Shakespeare the Year Tenpô 12 corresponds with the life of the protagonist Sado no Miyoji and the state of affairs at the location where the plot enfolds, the postal station of Kiyotaki on the road towards Narita. Thus it can be considered that the sexuality forms the base of the theatrical world in this drama.First, I pay attention to the love scenes as sexual representation and consider their part in the plot. Further, I will analyze the murder scenes and finally conclude by clarifying the process where the sexuality moves from the realm of the living to the land of the dead by explaining the relationship between the love scenes and the murder scenes.
著者
小西 瑞恵 コニシ ミズエ Mizue KONISHI
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.177-188, 2009-01-31

ここで取り上げるのは、日本の16世紀から17世紀におけるキリスト教徒の女性たちで、彼女らがどのような社会状況におかれ、どのように人生を全うしたのかという歴史的事実を検討することが本稿の目的である。畿内とその周辺地域を中心に、都市のキリシタン女性の実像を検討した。一例は堺の日比屋了桂の娘モニカであり、もう一例は明智光秀の娘玉(細川ガラシャ)である。日比屋モニカは貿易商人・豪商で堺のキリシタンの中心人物である父了桂のもとで育った敬虔なキリシタンであったが、その婚約は彼女の意に染まぬものであったため、宣教師に相談して結婚を拒否しようとした。彼女の結婚と死は、都市堺で精一杯意志的に生きようとしたキリシタン女性の生涯の実例である。また、細川ガラシャは明智光秀の娘玉で、細川忠興夫人である。彼女が謀反人の娘として社会的に孤立するなかでキリスト教に帰依するまでのいきさつを、従来の説のように高山右近の影響から考えるだけではなく、侍女清原マリアとの強い結びつきから明らかにした。彼女が死ぬまでの劇的な生涯は、当時の日本社会で自立的に生きぬこうとした女性の典型的な例である。最近の研究により、ガラシャがヨーロッパにまで聞こえた有名な存在であったという事実についても述べた。

22 0 0 0 OA 病める薔薇

著者
佐藤春夫 著
出版者
天佑社
巻号頁・発行日
1918
著者
野口 裕二
出版者
The Japanese Association of Sociology of Law
雑誌
法社会学 (ISSN:04376161)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.60, pp.139-152,237, 2004-03-30 (Released:2010-04-15)
参考文献数
13

This paper considers how the sufferings in our age are socially constructed and how we can overcome them and create an alternative story based on the narrative approach. Sufferings have been gradually regarded as some psychological entities such as Traumatic Stress or PTSD. This process can be called "psychologizing of reality" or "internalizing of sufferings" These require us to consult with a psychological or psychiatric expert and then the sufferings are individualized, personalized, and pathologized without considering its social origins or backgrounds. Against these conditions, narrative approaches propose some new strategies: externalizing of the problem to invalidate or de-construct the dominant story of sufferings, providing a narrative community to encourage sufferers to tell the alternative story on their lived experience. Suffering and overcoming are not psychological entities but social products through our everyday discursive practices. Narrative approaches show us the new way to understand sufferings and to listen sufferers' narratives against the dominant discourse.
著者
原田 彰
出版者
不明
雑誌
日本教育社会学会大会発表要旨集録
巻号頁・発行日
no.31, pp.4-5, 1979

古典的アナキストのひとりであるプルードンへの関心は、最近とくに高まってきているように思われる。いわゆる「マルクス・プルードン問題」や「自主管理」に関連して、常識化しているプルードン像が見直されつつある。多産な思想家であり「逆説の人」(ウッドコック)とも呼ばれるプルードンの複雑きわまりない思想を小ぎれいに整理することは困難である。とりわけ彼の自由論については、それを主題にした論文がないだけに、いろんなテキストに分散している考察をつなぎ合わせていく作業が必要である。ここでは、ギュルヴィッテ、アンサール、バンカール、さらに京大人文研などの研究を手がかりにして、プルードンの自由論の現代的意義を探る試みをしたい。
著者
西野 春雄
出版者
法政大学
雑誌
能楽研究 (ISSN:03899616)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.59-88, 1993-03-30

22 0 0 0 IR 藤原清衡論(上)

著者
樋口 知志 HIGUCHI Tonoji
出版者
岩手大学人文社会科学部
雑誌
アルテスリベラレス (ISSN:03854183)
巻号頁・発行日
no.82, pp.93-115, 2008-06

藤原清衡(1056 − 1128)はいわずと知れた奥州藤原氏の初代であり,平泉の地に開府を果たして奥羽両国に覇権を樹立し,80余年続いた絢爛豪華ないわゆる平泉文化の礎を築いた人である. 清衡が出生した天喜四年(1056)という年は前九年合戦(1051 - 62)の最中であり,康平五年(1062)に同合戦が源氏・清原氏連合軍の勝利=安倍氏の「滅亡」というかたちで終結したとき,彼は実父の経清を失っている.その後,奥六郡主安倍頼時の娘である彼の母は清原武則の長子武貞の許に再嫁し︑清衡も母の連れ子としてともに清原氏の人となった.彼はその後清原氏の一員として少年・青年期を過ごすが,永保三年(1083)に勃発した後三年合戦(1083 - 87)では清原氏当主の座にあった異父異母兄の真衡や異父同母弟の家衡︑オジの武衡と戦い合い︑合戦終結後は清原氏嫡系男子としてたった一人生き残った.かくして奥羽の二大戦乱を生きぬいた清衡はその後も弛まぬ歩みを続け,十二世紀初頭頃にはついに平泉開府を果たしたのである. 本稿では,そのような数奇な生い立ちと前半生をもつ彼の人生の軌跡について,文献史料の精確な読み直し作業に立脚しつつ,あらためて根本から再考してみたい.というのは,彼の生涯についてはこれまで諸先学によって数多く論及されてきたものの,巷間に流布している通説的見解にもあるいは史的事実に反する誤謬が少なからず含まれているのではないかと愚考されるからである. 平泉の世界遺産登録のことが頻繁に話題とされ奥州藤原氏に関わる平安末期の文化遺産に熱い視線が注がれている昨今であるが,近年そうした動きとも連動するかたちで,前九年・後三年合戦期や奥州藤原氏の時代に関わる諸遺跡の発掘調査が進められて考古学的知見がいちじるしく増大し︑また歴史学(=文献史学)の側においても『陸奥話記』『奥州後三年記』や『吾妻鏡』といった関連する諸文献の史料批判や読み直しにもとづき基礎的研究の拡充が図られるなど,かなりの研究成果の蓄積がみられた.本稿ではそれら数々の新たな成果を踏まえながら,奥州藤原氏初代清衡の全生涯について,時代の趨勢やその変遷との関連をも重視しつつできるかぎり詳細に論じてみたい. もしも本稿における所論の中に,今後の奥羽の古代・中世史研究や平泉文化研究の発展にいささかなりとも寄与しうるところがあるとすれば,まさに望外の幸いという他ない.
著者
下沢 敦
出版者
共栄学園短期大学
雑誌
共栄学園短期大学研究紀要 (ISSN:1348060X)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.143-161, 2010-03-31

室町時代中期以後の室町幕府奉行人が幕府に訴えを持ち込まれる諸々の不法案件の問題解決を図るべく当該不法案件の根本の原因を成した不法行為の処置方針を示す目的で作成し、発した奉行人奉書を見ると、「向後」発生する懸念のある同様の不法行為の行為者を「罪科」に処する旨を宣言して予告している事例が相当数見受けられる。しかし、中世前期まで主に訴状の上に書き表されていた「向後傍輩」または「傍輩向後」を見懲らす趣旨の見懲らし文言を載せている奉行人奉書の残存例は、一つも見当たらない。室町幕府が常に当該不法案件に関する終局的な判断を公権的に表示していたと考えられる奉行人奉書の上に見懲らし文言が一度も書き表されることがなかったと言う顕著な特徴点を考慮すると、恐らく当該時期の室町幕府は、不法案件の処理を図る上で中世前期的な見懲らし型刑罰観や中世前期的一般予防観念ひいては一般予防思想に立脚して判断を行ったことが一度もなかったのではないかと考えられる。
著者
伊藤 邦彦
出版者
東京都立産業技術高等専門学校
雑誌
東京都立産業技術高等専門学校研究紀要
巻号頁・発行日
vol.1, pp.2-12, 2007-03

鎌倉全期を通じて、守護・守護人・守護所・守護職と様々に表記された名称のうち、必ずしも「正員」を表すとは限らないケースを中心に、その用例を個々に検討した。
著者
今西 孝至 岡村 美代子 川端 崇義 髙山 明 楠本 正明
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.92-99, 2018-09-20 (Released:2018-09-26)
参考文献数
9
被引用文献数
2

目的:在宅医療における薬剤師の役割について全国のケアマネジャー(CM)にアンケート調査を行った.方法:日本介護支援専門員協会47都道府県支部に依頼状を郵送し,本調査に同意が得られた会員のみを対象とした.解析はテキストマイニングを用いた.結果:回答が得られたCMは206人で,医療職出身者が25%,介護福祉職出身者が75%であった.「薬剤師は在宅医療に必要か」の質問に90%のCMが「必要」と回答した.また,「必要」と回答した理由についてテキストマイニングによる解析の結果,医療職出身CMでは“指導”や“内服”,介護福祉職出身CMでは“相談”というキーワードが有意に出現した.結論:在宅医療における薬剤師の役割として,医療職出身CMは「患者・家族や他職種への指導について専門性を発揮すること」,介護福祉職出身CMは「服用薬や副作用に関する情報について相談に乗ること」に期待していることが明らかになった.
著者
漆原 徹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.179-196, 1985-03

論文
著者
羽下 徳彦
出版者
東京女子大学
雑誌
史論 (ISSN:03864022)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-18, 1973