著者
野間 俊一
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.45-51, 1999-01-01
参考文献数
15

ドイツにおける心身医学の現状を概観した。ドイツではすべての大学医学部に, 心身医学科あるいは精神療法科が設置され, 心身医学や医学的心理学の研究・教育に従事している。1992年に精神療法医学の専門医制度が導入された。バード・ノイシュタット心身症病院では, 集団療法や独自の身体療法によって, 狭義の心身症, 神経症, 人格障害, 嗜癖の治療に当たっている。また, ドイツの心身医学者としてGroddeck, Weizsacker, Uexkullの理論を素描し, さらに近年ドイツで話題になっている, 健康保持のメカニズムに焦点を当てたサルトジェネシスという医療観を紹介した。
著者
白井 千晶
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.55-75, 2014-03-05

妊娠・出産した女性が養育困難である場合、子どもを養子とする(養子に出す)ことによって親権を終了する特別養子縁組という選択がある。本稿では、当事者が養子縁組を決めるまでの経緯を語った語りをもとに、どのような背景と意思決定があって特別養子縁組で子どもの養育を託すことに決めたのかを分析する。データは筆者がおこなった15人の女性へのインタビューである。養子に出す意思決定に影響する要素は、①フォーマルな福祉へのアクセス、②インフォーマルな福祉へのアクセス、③自分が養育しないことを最善とみなす、④人工妊娠中絶の非選択、⑤養子縁組以外の選択肢の非選択、⑥若年、である。公的福祉制度があってもそれへのアクセスを拒否すること、アクセス不能である場合があること、養子に出す意思決定は複合的で、当事者性、プロセス性があることを提起した。
著者
赤崎 正一 戸田 ツトム 寺門 孝之 橋本 英治 久本 直子 Shoichi AKAZAKI Tztom TODA Takayuki TERAKADO Eiji HASHIMOTO Naoko HISAMOTO
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2012
巻号頁・発行日
2012-11-30

出版メディアにおける「絵本」というカテゴリーは、現代のビジュアルデザインの世界に内在する「アナログ」と「デジタル」の製作技法上の乖離・矛盾について検証するのに、両者のバランスが非常によくとれた作業課程を包含している。また同時にデザイン成果物としての「絵本」は、単に「読まれる」ことで完結してしまうのではなく、周辺に「読み聞かせ」や「ライブペインティング」などのパフォーマンス的な実践をともなってダイナミックな共同性(=協働性)の環境を発展させる可能性をふくむ媒体である。本研究においてはビジュアルデザイン学科でこれまで開催された特別講義のうち、飯野和好(絵本作家)・森ゆり子(読み聞かせ活動)・荒井良二(絵本作家)の3 氏による3 回分を講義記録・パフォーマンス実践事例として書籍化・公刊する。またその際に、出版にいたる作業課程そのものが、学内スタッフを中心とした「エディトリアルデザイン」の制作実現の事例となるよう目的化して作業をすすめていく。11 年度年度末には学内版として一旦完成して納本したものを、さらに細部にわたってバージョンアップしたものが左右社を版元として、12 年秋を予定して刊行の予定であり、本報告はその内容にしたがって、構成されたものである。Picture books, as a category of publication media, is produced through a process which involves technical conflicts and contradictions between "analog" and "digital" inherent in today's visual design. At the same time, picture books as products, unlike ordinary books which are "completed" by simply being read, are a medium assumed to entail dynamic collaboration through reading and live painting sessions.The purpose of this course was to compile and publish a book based on three special lectures presented by Department of Visual Design. The speakers of the lectures were Kazuyoshi Iino (a picture book author), Yuriko Mori (a specialist of picture book reading) and Ryoji Arai (a picture book author). The production of this book itself was designed to be a practice case of editorial design by staff.The book was completed and delivered at the end of fiscal 2011 as an in-house publication. The upgrade and expanded version of the book is scheduled to be published by Sayusha in the autumn of 2012. This report is based on this book.
著者
笠 耐 小林 順一 竹原 博
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.204-207, 1985
被引用文献数
1

磁場によるβ線の偏向角からβ粒子のエネルギーを測定する実験装置を製作し,^<90>Sr,^<90>Yからのβ粒子の平均的エネルギーと最大エネルギーとを求めた.教育実験用として空気中で行うので散乱の影響が大きいが,電磁石の使用により,β粒子の運動量分布の形もより明確になった.物理教育研究室の卒業研究として学生が手作りした装置であるが,大学初年級の相対論力学の導入の授業に使用できる.

3 0 0 0 OA 難波鑑

著者
一無軒道冶
巻号頁・発行日
vol.[1], 1680
出版者
消防庁
巻号頁・発行日
vol.本文, 2013-03
著者
岸本 泰士郎 リョウ コクケイ 工藤 弘毅 吉村 道孝 田澤 雄基 吉田 和生
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.574-582, 2017-11-01 (Released:2017-11-01)
参考文献数
24

すべての医学領域において,疾患の重症度の評価は重要である。しかし,精神科領域では疾患の重症度を反映するようなバイオマーカーが不足しており,診断,治療,さらに新薬の開発などで問題が生じている。近年,情報通信技術(ICT)の発展が目覚ましく,こういった問題の解決にICTを活用する試みが行われている。その一つにテレビ電話を用いた中央評価があり,評価者によるバイアスを取り除くには有効な手段である。しかし,評価尺度そのものにも妥当性,信頼性などの問題が含まれている。一歩先のアプローチとして,ウエアラブルデバイス等を用いた診断支援技術の開発が複数報告されている。PROMPT(Project for Objective Measures Using Computational Psychiatry Technology)は日本医療研究開発機構(AMED)の委託研究として始まった。慶應義塾大学を中心に7社が参画し,それぞれの会社の技術を持ち寄り,複数のデバイスから得られる情報を基に精神症状を定量することを目指している。また,UNDERPIN(Understanding Psychiatric Illness through Natural Language Processing)では科学技術振興機構(JST)CRESTの援助の下,静岡大学とのコラボレーションによって自然言語処理を利用した言葉(話し言葉や書き言葉)に現れる精神症状の特徴量の抽出を行い,精神疾患の予防・早期介入が可能になるような技術開発を目指している。
著者
川畑 幸夫 藤戸 誠
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.37-44, 1951

本報文は,單に實用的見地から,台風接近の際に起る海面の上昇量と,最高水位の時刻を手輕に豫報せんとするもので,第5圖に示す如く,上昇量は大體其の季節の標準氣壓と台風の経路中の最低氣壓の差に比例し,同時に又台風が最も接近した時刻の距岸距離に逆比例する.それらを推定することにより豫報は量的に可成り正確に出來る.最高水位の時刻は本文中の表に示す如く,其の港で最低氣壓が起るときと殆んど同時と考えてよい.尤も距岸距離が著しく近く,&gamma;&rarr;0の場合には,單に圖からは上昇量が無限大となることになるが,丁度うまい場合の資料がまだないのでよくわからない.最高水位の時刻は外洋に面した港では上述の如くなるが,大阪灣,東京灣等の如く灣口の狭い灣の奥では最低氣壓の起時より10數時間早いこともあり,おそいこともある.<br>災害の面から見ると,暴風に伴う風浪が亦極めて大切なものであるが,このような短周期の波を自記せしめる測器は現在まだないので,やむを得ず檢潮儀り記録を資料とした.このため上の結果には風浪が一切除外されている.換言すれば風津浪の高さの最低限を與えてあることになり,實際には,いつでも第5圖の高さ以上の波が押寄せるわけである.<br>台風又は低氣壓に伴う海面の上昇量は,台風が洋上遙が遠方にある場合,或はそれらの中心示度が弱い場合には主として靜水力學的吸上げの影響として量的に殆んど完全に説明せられ,風の影響は全く認められない.ビユ〓フォ〓ト階級4以下の風が何日間吹き續いても影響は殆んどない.台風が接近し風力がビユーフォート階級5以上になると風による吹寄せは急速に増大し,遂に吸上げの効果を遙かに上廻るようになる.最高水位の場合の風向は第4圖に示した.<br>然しながら長週期の海面の昇降に關しては,之等の台風の場合と違ひ,風の影響は決して無視出來ないものゝようであり,これについては別途に報告したい.
著者
内山 雄介 多田 拓晃
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_211-I_216, 2015

海面気圧による吸い上げ効果およびバルク法熱収支スキームを組み込んだJCOPE2-ROMSダウンスケーリング領域海洋モデルを構築し,我が国に上陸し甚大な土砂災害等をもたらした2014年台風18号,19号を対象とした広域高解像度再解析を行った.海上風,海面気圧,海面フラックスには,台風を含む詳細な気象場を高精度で表現可能な気象庁GPV-MSM再解析値を与えた.観測水位との比較を通じて本モデルが高潮偏差をより正確に再現できることを確認したのち,周防灘および沖縄本島における高潮偏差発生機構の差異について検討した.さらに,台風接近・通過に伴う広域海洋応答について調査し,瀬戸内海の海水流動構造が短期的に大きく変化することを示すとともに,外洋における鉛直混合の強化とそれに伴う水温低下の発生,台風経路との相対的な位置と慣性共鳴との関係などについて評価した.