著者
松原 聡 Satoshi MATSUBARA
出版者
京都府立大学学術報告委員会
雑誌
京都府立大学学術報告 理学・生活科学 (ISSN:0075739X)
巻号頁・発行日
no.37, pp.p91-99, 1986-11

サイトカイニン活性をもつ多くのプリン誘導体は, 人間の細胞培養において抗腫瘍作用など重要な生理作用を持っていることが知られている。一方, このような物質は種々の食品材料植物に, サイトカイニンあるいはtRNAの微量塩基として含まれていることが報告されている。本研究では, たけのこの煮汁に含まれているサイトカイニンについて, n-ブタノール分画, イオン交換樹脂カラム, セファデクスカラムを用いて分画し, 植物培養細胞の増殖を生物検定として調べた。その結果, たけのこの煮汁には数種のサイトカイニンが含まれていることがわかった。そのうちの水溶性サイトカイニンを, さらにペーパークロマトグラフィー, バリウム沈殿, 酵素分解などによって調べた結果, たけのこの煮汁に含まれている水溶性サイトカイニンはゼアチンのリボチドであると考えられる。煮汁には約20μMのゼアチンリボチドに匹敵する活性が含まれていることがわかった。
著者
愛之事業社編纂部 編
出版者
愛之事業社
巻号頁・発行日
1939
著者
阿部 未幸
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.161-180, 2014-03

東日本大震災からの地域コミュニティの再建に欠かせないもののひとつとして、郷土芸能の重要性はしばしば指摘されてきた。本稿では、岩手県岩泉町小本地区において伝承される中野七頭舞に着目し、1976年に小本地区で「中野七頭舞保存会」が結成されてから、東日本大震災に直面するまでの過程を明らかにする。中野七頭舞保存会は、自らの伝承・公演活動に加え、小本小学校の「民舞クラブ」設立をきっかけに同校で中野七頭舞の指導を始め、地区出身者の舞い手を育成している。現在の保存会メンバーの多くは、小本小学校で中野七頭舞を学んだ卒業生であり、彼らは進学や就職で小本地区を離れても、公演や講習会のために郷土へ戻ってくる。保存会は、県外の民族舞踊愛好者や教員たちに積極的に講習を行い、現在では、数多くの学校やサークルなどで中野七頭舞が取り組まれている。中野七頭舞は多様な担い手によって構成されており、こうした地域内外のネットワークが、地域コミュニティの維持や東日本大震災発生からの復興支援に機能したことを明らかにした。
著者
小林 貞一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.38, no.459, pp.629-640, 1931-12-20 (Released:2008-04-11)
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

Lately Mr., C., Kato, teacher of Kishiwada Middle School, informed me with a findeing of new fosseillocalities in the Izumi sandstone series to the south of City Osaka; so I made with him a short trip to those localities., What follow are the chief points ascertained by this trip., 1) Nothing has been known before of the base of the Izumi sandstone series in the Izumi sandstone belt., According to the previous work, it is said that the series is intruded by granite in its western portion and cut by a fault in its eastern portion., But I found at Akiyama a good exposure of the base of the Izumi sandstone series., There the series overlies, uncon formably upon a granitic rock mass., The basal congolmerate bed dipping about 30 degrees to the south, consists mainly of granitic pibbles and arkose cement, both of which must have been derived from the basement rock., Dr., S., Yehara's assumption of the fault-contact between the Izumi sandstone series and the granite mass is not correct, so far as my observation goes., (See the unconformity at Akiyama on Plate IX., ) 2) The Izumi sandstone sereis can be divided into the following (in the ascending order):- 1., Kasaya conglomerate., 2., Asenotani shale., 3., Kinyuji sandstone and conglomerate., 4., Warazuhata shale and sandstone., 5., Tsuzurahata sandstone and conglomerate., The series forms a syncline, running parallel to the Median Dislocation Line, which separates the series from the crystalline schist group in the Outer Zone of Southwestern Japan., 3) The fossile have been never found from this type-locality of the Izumi sandstone series, in contrast to their abandant occurrence at Anaga on the Awaji Island., I found however that the Asenotani shale contain many fossils and serves as a key-bed in the series., The fossils collected form the shale are shown in the table in the Japanese text, of which more important are Gaudryceras tenuiliratum Yabe (Plate X) and Parapachydiscus aff., Egertoni Forbes (Plate XI), the former being known from the Upper., Ammonite Bed of Hokkaido and Sachalin while the latter from the Upper Senonian of India and Europe., As summarized by Professor H., Yabe, the Urakawa, or Japanese Senonian, series overlies unconformably on the Palaeozoic rocks in the Abukuma mountainland and gneiss and crystalline schist in Kyushu., In connection with these facts, the unconformity relation between granite mass and the Izumi sandstone series treated in the present paper may be of significance for the consideration of the Senonian transgression in Japan.,
著者
辰己 丈夫 兼宗進 久野 靖
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.123(2005-CE-082), pp.77-84, 2005-12-10

筆者の一人である辰己は2001年のCE研究会で「情報教育の音楽化」という題名で発表を行ない、情報教育の中で楽譜処理を利用できることを指摘した。一方、兼宗・久野は、タートルグラフィクスを土台にオブジェクト指向を取り入れた教育用プログラミング言語「ドリトル」を開発していた。ドリトルには以前より音楽演奏機能が追加されていたが、本格的な教育への応用は行っていなかった。これを利用したプログラミング教育を実践してみたいという辰己とドリトルを開発している兼宗・久野の3名が、ドリトルの演奏機能に大幅な演奏機能の拡充を行なった。本発表では、「情報教育の音楽化」の概要、ドリトルにどのような拡充が行なわれたのかなどについて説明をするとともに、教材例・授業例の提示などを行なう。
著者
谷口 武士
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.311-318, 2011-11-30
被引用文献数
3

森林生態系における植物の種多様性の維持には、非生物的要因(光環境や土壌環境)が大きく影響しており、この点を中心にそのメカニズムが説明されてきた。しかしながら、近年、植物の病原菌や共生菌がこの森林の植物群集に関与することが示されてきている。菌根菌は、植物と相利共生する菌の一つであり、菌根共生によって宿主植物の養水分吸収や耐病性、各ストレス(乾燥、塩類、重金属など)耐性が向上する。このような菌根菌の効果は宿主植物種によって異なるため、菌根菌が宿主植物の種間競争の結果を変え、植物群集に影響を与えうる。また、野外では同一クローンの菌根菌と複数種の植物が菌根を形成し、菌根菌の菌糸によって植物根が連結された菌糸ネットワークが存在する。菌糸ネットワークは、実生の定着に影響し、森林における植物群集に影響を与えている可能性がある。これらの影響を通して、菌根菌が植物種間の競争を緩和する場合には多種共存が促進され、菌根菌が優位種の競争力を高める場合には種多様性が減少すると考えられる。しかし、菌根菌が森林の種多様性に与える影響に関する研究は実生を対象としたものが大部分であり、草本と比べて寿命が長い森林生態系では、実生更新時の菌根菌の影響が成木の植生にどの程度寄与するのかについては不明である。従って、ミクロコズム実験と野外調査の結果を組み合わせて考察するなどして、今後、この点を明らかにしていく必要がある。
著者
仁野平 智明
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学教育学部紀要 (ISSN:21881871)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.7-15, 2016-12-19

本稿は、改訂前の平成16年検定済から、改訂後の平成22年、現行の平成26年検定済教科書までの俳句教材の変遷を調査・分析し、「伝統的な言語文化に関する事項」の新設と教材の指定が、小学校国語教科書教材に与えた影響について考察することを目的とする。
著者
大塚武松, 藤井甚太郎 編
出版者
日本史籍協会
巻号頁・発行日
vol.第5, 1935
著者
ラジャブザーデ ハーシェム
出版者
大阪外国語大学
雑誌
大阪外国語大学論集 (ISSN:09166637)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.119-150, 2001-03-30

ペルシア語の諺は、ペルシア文学の宝庫であり、その訪問者は、悠久の歴史を持つイラン人の文化と思想に触れることになる。古代イランの思想とイスラーム文明という、イラン文化の二つの源泉から湧き出た諺を知ることなしに、今日のイラン人の思考法やイランの社会、言語、思想のより深い理解は得られないはずである。諺は、人に意図を伝える手段として非常に有用である。そのため、古来、文筆家や詩人は、作品中に多くの諺をちりばめている。私たちが現在、サアディーやモウラヴィーのような大詩人たちの作品中に見る諺の中には、当時既に広く知られていた諺をそのまま用いた場合もあった。だが、その一方で、彼らが編み出した機知に溢れた表現や、物語の終わりに加えられた結論・教訓を示す一文が、以後新たに諺として伝えられるということも少なくなかった。このようにして、時を経るに従い、ペルシア語には、想定可能なあらゆるテーマにぴたりと当てはまる諺が見出せるようになっていった。本稿では、そのようなテーマの一つとして、「女性」を取り上げた。女性の言動を様々な角度から捉えた諺には、他者、とくに男性の視点が反映されている場合も多<、これを考察することによって、イランという男性中心主義社会の中の女性の地位と、今も残存する伝統的な女性観を明らかにする一助となり得ると考えるからである。