著者
安倉 良二
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.146-162, 2004-09-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
32
被引用文献数
2 1

本研究は, 京都府南部地域を事例として, 大規模小売店舗法 (大店法) の運用が強化された1980年代と, 運用が緩和された1990年代の2つの時期に注目し, 大型店の出店過程を比較考察した。1983年に大型店が出店した八幡市では, 急速な人口増加を背景に, 1974年頃から大型店出店の動きがみられた。しかし, スーパーを核店舗とする大型店の出店には, 地元小売業者からの反対が根強かった。彼らはテナントへの優先的な入居や核店舗との出店協定を結ぶ形で出店調整に介入し, 大型店の出店過程で強い影響力をもった。他方, 久御山町では, 1990年代以降の道路交通網の整備を背景に, 広域集客を前提とする複数の大型店が立地した。当該店舗のテナント入居に際しては, 周辺に古くからの商業集積がないために, 大手小売業者の自由度が高い。しかし, 店舗規模から既存大型店も含む周辺市町の小売活動に与える影響も大きく, 大型店の開店までには出店調整が不可欠であった。1980年代と1990年代における大店法の運用の相違は, 大型店のテナント入居を含む出店調整の段階で地元小売業関係者がもつ影響力の強弱によって示された。このことは, 大型店の出店動向の違いと関わりをもちながら八幡市と久御山町で異なる商業集積の形成をもたらした。
著者
藤本 学
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.156-167, 2013-11-30 (Released:2013-12-04)
参考文献数
17
被引用文献数
11 6

コミュニケーション・スキルの諸因子を階層構造に統合したENDCOREモデルを発表してから6年が経つ。その間に,このモデルを構成する6スキルを測定する尺度である“ENDCOREs”は,コミュニケーションやスキル・トレーニングに関する諸研究で用いられるようになってきた。今後,幅広い領域における研究や活動に活用されるためには,ENDCOREモデルおよびENDCOREsに対する再現性を確認し,ENDCOREsの因子と項目の性質を明らかにしなければならない。さらに,コミュニケーション・スキルの定義についても,明確にしておく必要がある。そこで,本研究はこれまで蓄積してきた2,184人のデータを用い,ENDCOREモデルの構造およびENDCOREsについて再検証を行った。その結果,おおむね藤本・大坊 (2007)と同様の分析結果が得られた。しかしながら,従来のモデルでは十分な適合性が得られなかった。そこで,概念的に妥当かつ十分な適合性を持つモデルに最適化した。これらの知見を受けて,コミュニケーション・スキルの概念的定義とENDCOREモデルの実践的活用について議論した。
著者
相馬 清吾
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.507-511, 2023-08-01 (Released:2023-08-01)
参考文献数
22

物質中の電子構造を研究する強力な実験手法である光電子分光について,基礎的な原理と特徴を解説し,最近の重要な展開として手法の顕微化を取り上げる.10ミクロンの空間分解能を達成した最新装置について概説し,今までは見えてこなかったミクロの世界の電子構造について具体例を示しながら議論する.この顕微化によって光電子分光が測定可能な物質の種類は劇的に増える.新たに高度な電子状態分析を用いた研究展開を図る際に,本稿が手引きの1つとして役立てば幸いである.
著者
岩田 泰介 高橋 里沙子 伊藤 舞 今井 有紀 岸 竹美 戸村 慎太郎 山本 杏菜 藤田 淳
出版者
Japanese Society of Veterinary Anesthesia and Surgery
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.17-23, 2022 (Released:2022-12-21)
参考文献数
15

術中出血リスクが高い待機手術を受ける犬猫42頭に対して、術前希釈式自己血採血・輸血を実施した。日本自己血輸血学会のガイドラインを基に、プロトコルを作製した。希釈式自己血採血・輸血の関連する重度な有害事象は認められず、安全に実施できた。また、同種血輸血を回避できた症例がいたことから、希釈式自己血輸血は有用性が高いと考えられた。
著者
金 相美
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.74-88, 2009 (Released:2017-03-08)
参考文献数
53
被引用文献数
1

本論文の目的は政治過程におけるインターネットの効果を日本と韓国で比較・検討することである。この研究は,日本と韓国の有権者を対象に行ったネット調査の結果を元に(日本n=930,韓国n=1013)投票参加における掲示板・ブログ・SNS 等の参加型ネットツールの利用の有効性及び政治的傾向の偏向性について分析を行った。日本における投票参加を最もよく予測できる変数は,年齢,収入,政治関心,新聞購読時間であり,参加型ネットツールの有効性は見当たらなかった。韓国の場合,年齢,政治関心,インターネット利用時間,参加型ネットツールの閲覧頻度が有効な変数として示された。一方,日韓いずれにおいても参加型ネットツールのポスト行動は選挙行動を規定する変数として認められなかった。日本の場合,保守的傾向の人が匿名掲示板の閲覧・ポスト頻度が高い傾向が見られる一方,韓国では逆に革新的傾向の人が掲示板・ブログ・SNS のすべてのツールのポストにおいて頻度が高い傾向が示された。
著者
海藤 夏稀 鈴木 克彦 金子 絵梨花
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.22-27, 2020 (Released:2020-12-16)
参考文献数
11

〔目的〕腹部引き込み運動(Draw-in)の継続によって,腹横筋の筋厚および筋硬度がどのように変化するのか,また脊柱に及ぼす効果について検討する。〔方法〕健常成人女性11名を対象に,Draw-inを自主トレーニングとして4週間行った。実施前後に超音波診断装置,Real-time Tissue Elastographyを用いて側腹筋群の筋厚および筋硬度を測定し,スパイナルマウスを用いて脊柱アライメントを測定した。〔結果〕トレーニング前後で,安静呼気時の筋厚は背臥位における外腹斜筋の筋厚のみ有意に減少した。 安静呼気時の筋硬度は,背臥位では外腹斜筋および腹横筋で増加し,立位では側腹筋群すべてで有意に増加した。脊柱アライメントは,トレーニング後に仙骨傾斜角の有意な減少を認めた。〔結語〕Draw-inの継続により,立位での腹横筋の硬さが増加したことから腹腔内圧の上昇に作用したと考えられる。仙骨傾斜角の減少が認められ,腹横筋の収縮により仙腸関節を圧迫させ効果的に安定化できる報告を裏付ける結果であった。
著者
Yasuyuki MATSUNAGA
出版者
The Society for Near Eastern Studies in Japan
雑誌
Orient (ISSN:04733851)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.77-90, 2009-03-31 (Released:2014-04-02)
参考文献数
29

Much has been written about Ayatollah Ruhollah Musavi-Khomeini’s (1902-1989) doctrine of wilāyat al-faqīh, or the mandate of the jurisprudent. In this article, I will focus on the following two questions: how consistent was he in espousing the doctrine, and what was his major addition to the doctrine? After reviewing his educational and scholarly background, I will first reconstruct constituent components of the doctrine and revisit his relevant writings and statements to determine how consistent his views were over his long academic and political career. Drawing on the existing studies on the divergent doctrines of wilāyat al-faqīh, I will also identify one possible innovation Ayatollah Khomeini likely added to the doctrine. My examination of his 1944 tract, Kashf al-asrār, shows that Khomeini as a young seminary teacher had already believed in wilāyat al-faqīh al-siyāsīyah, or the divine mandate of the juiisprudent to rule. This suggests that his views on wilāyat al-faqīh most likely had solidified much earlier than the existing Western studies surmised and that they remained rather consistent throughout his scholarly and political career. The results will help better discuss various implications of the doctrine as political theory and also in the context of actual political developments in Iran over the last fifty some years.
著者
土肥 紳一 今野 紀子
雑誌
第84回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, no.1, pp.535-536, 2022-02-17

2020年9月にC言語の電子書籍を出版し,2020年の後期の授業から活用するようになった.当初は電子書籍のみを活用していたが,紙の書籍を希望する声が聞かれ,2021年度は電子書籍と紙の書籍を選んで購入できるようにした.授業毎に理解度調査を目的としたアンケート調査を実施しており,回答に協力を得られた39名の内,21名(53.8%)が電子書籍を,16名(41.0%)が紙の書籍を購入していた.なお,未回答は2名(5.1%)であった.SIEMを使って,受講者のモチベーションをモニタし,授業改善策をフィードバックすることを継続的に実践している.電子書籍を購入した人と,紙の書籍を購入した人でモチベーションに差があるのかを分析した.