著者
伊吾田 宏正 松浦 友紀子 八代田 千鶴 東谷 宗光 アンソニー デニコラ 鈴木 正嗣
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.103-109, 2017 (Released:2017-07-11)
参考文献数
13
被引用文献数
2

2014年の鳥獣保護管理法の改正により,条件付きでニホンジカ(Cervus nippon)の夜間銃猟が可能となったが,実施にあたっては,入念な計画,戦略,戦術が不可欠であり,無計画,無秩序な夜間銃猟はシカの警戒心を増大させ,むしろ捕獲を困難にする可能性が懸念される.そこで,効果的な夜間銃猟実施のための基礎情報を収集することを目的に,夜間のシカ狙撃に多数の実績を持つホワイトバッファロー社において,夜間を含む狙撃の実射訓練に参加した.2016年8月5日から7日まで,3日間でのべ約10.0時間の射撃場における射撃訓練及び試験,のべ約4.5時間の移動狙撃訓練コースにおける射撃訓練,のべ約4.5時間のシカ実験区におけるシカ狙撃実習,のべ約2.5時間の主に装備に関する室内講義,のべ約1.5時間以上の質疑応答を含む,合計約23時間以上の訓練を受けた.サウンドサプレッサー,光学スコープを装着したヘヴィーバレルの5.56 mm口径のライフルを用いて,100 m以下の様々な距離の標的およびシカを狙撃した.夜間狙撃はシカ管理の最終手段であり,射手はシカ個体群の警戒心を増大させないように,群れを全滅させることが求められる.そのためには,群れの全てのシカの脳を迅速に狙撃すべきであるが,それには徹底的な訓練が必要である.今後,我が国で夜間銃猟を安全かつ効果的に推進していく上で,捕獲従事者に高度な射撃技能ならびに野生動物管理に関する総合的な知識・技術を修得させるためのプログラムの構築が不可欠である.
著者
北原 曜
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-4, 2014-04-25 (Released:2017-08-10)

Interspecific hybridization between Thymelicus sylvaticus and T. leoninus was carried out by placing in cages. Nine F1 hybrid adults between T. leoninus ♀ and T. sylvaticus ♂ were obtained.
著者
坪川 孝志
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-8, 1992-03-31 (Released:2014-06-19)
著者
寺田 祐子
出版者
静岡県立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

メントール受容体TRPM8に対する新規のアンタゴニストとして、Voacanga africanaのvoacangineを見い出し、論文として発表した。Voacangineは初めての化学アゴニスト選択的TRPM8アンタゴニストであり、副作用のないTRPM8遮断薬のシード化合物になることが期待される。さらに構造-活性相関研究を行い、化学アゴニスト選択的TRPM8阻害に決定的に重要な構造を明らかにし、論文として発表した。本ワサビ・西洋ワサビ・カラシ類に含まれるisothiocyanete化合物20種を用いた構造-活性相関研究を行い、構造とTRPA1・TRPV1活性の関係について調べた。本研究により、本ワサビの緑の香り・カブ様の香り成分(ω-alkenyl isothiocyanetes・ω-methylthioalkyl isothiocyanetes)は、低辛味でありながら、allyl isothiocyaneteと同等のTRPA1・TRPV1活性を持つことが明らかとなった。TRPA1・TRPV1活性を持つ食品成分は、エネルギー代謝を高めるため、抗肥満効果がある。これまで報告されてきたTRPA1・TRPV1アゴニストは強辛味のものが多いが、低辛味のアゴニストは強辛味のものに比べて摂取し易いと考えられる。本研究結果は、低辛味のTRPA1・TRPV1アゴニストの開発に貢献することが期待される。本結果を論文にまとめて提出し、現在査読を受けている。また研究予定にはなかった、婦人科がん(卵巣・乳・子宮がん)患者の生存期間とTRPチャネルの発現量に関する解析及び、カプサイシン受容体TRPV1の発現量・TRPV1アゴニストが卵巣がんの増殖に与える影響の解析を、米国ミシガン州立大学にて行った。予定にはなかった米国での研究も実施でき、期待以上に研究を進展させることができた。
著者
藤井 雅文
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、電磁気学および電子物理化学を基礎とする新しい原理による短期地震予測法を確立することを目標としている。地震の直前には地殻の岩盤に圧力が加わることにより、応力誘起された大量の電荷が岩石内部から放出される。そしてこれらが地表面に出現し滞留することで上空の電波によって励起されプラズマ振動する。これがさらに上空の電波伝搬に影響を与え、通常の状況では生じ得ない遠方への超長距離伝搬が引き起こされることが明らかになっている。特に地殻活動に伴う電磁気現象を理論と実験観測の両面から考察し、地震の前に地殻に作用する応力の変動を精密な電波観測により広範囲に検知し、その観測精度を向上することにより地震の短期予測を実現することを目指している。高感度低雑音の観測装置を用いて電磁波の観測を実施している。これまでに規模の大きな地震の数日前から前日にかけて、異常な電波伝搬現象を観測している。特に2022年3月16日の福島沖M7.4の地震の直前に非常に明瞭な電磁波異常を観測した。この観測結果により、これまでの異常現象が地殻活動に由来するものであることを示すことが可能となり、地震前兆時に異常信号が観測可能かどうかの論争に終止符を打てる可能性が高まっている。また、我々は地震予測の適中率と地震発生の予測率を評価しており、近年はそれぞれ90%近い値を得ている。さらに、観測データを深層学習により解析し異常信号から地震の発生を予測する研究を実施しており、高い精度で予測できる結果を得ている。これらの結果をすでにまとめて科学技術誌に投稿し、現在審査結果を待っている。
著者
郭 庚熙 青木 宏展 植田 憲
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1_11-1_20, 2023-07-31 (Released:2023-08-03)
参考文献数
16

今日、急速な経済発展の傍らで、地域に根ざして形成されてきた地域固有の文化の衰退が危惧されている。その対策として、当該地域の文化や資源を活かした地域活性化が求められている。本稿は、千葉において誕生・発展した漁師の晴れ着「万祝」を対象としたものである。万祝の型紙のデジタル化に基づき、万祝の認知度向上や共有化に資する資源の活用方法を、実践を通して提示することを目的とした。具体的には、万祝の型紙の図柄のデジタルデータの取得・保存を行うとともに、それらを活用した生活用品の提案、展示・ワークショップの実施、職人との連携などを試みた。以上の取り組みの結果、万祝のデジタル化・活用による地域活性化への可能性について以下を抽出した。(1)地域住民とのコミュニケーションによる万祝の顕在化、(2)自律的な地域活性化への可能性、(3)地域社会での共有のためのプロセスの提示、(4)職人との協力による伝統的工芸の継続。
著者
田賀 仁 渡辺 正人 江野 幸子 米永 一理 松尾 朗 髙戸 毅
出版者
特定非営利活動法人 日本睡眠歯科学会
雑誌
睡眠口腔医学 (ISSN:21886695)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.88-93, 2021 (Released:2021-01-25)
参考文献数
8

Objective: Adverse events due to long-term use of night guards have not been sufficiently elucidated. We herein report a case of occlusal changes in a patient who underwent continuous regular observations for at least 14 years since starting to use a night guard and discuss the precautions in the management of night guard use. Case: A 50-year-old female, with the chief complaints of clenching, tongue ache, abrupt awakening, etc. Results: A night guard for the upper jaw was fabricated, and shrinkage of the interdental space in the maxillary anterior region and occlusal changes (open bite) were observed after 12 years and 6 months of its continuous intermittent use. A new night guard for the lower jaw was also fabricated because the patient wanted to continue using it even after the observation. The patient has been using these night guards without any major worsening. Conclusion: Night guards intended to prevent tooth abrasion, root fracture, or tongue pain from sleep-related bruxism may lead to adverse events. As with oral appliances, the fabrication process requires adequate consideration as well as regular and quantitative management.
著者
浜田 恵 伊藤 大幸 村山 恭朗 髙柳 伸哉 明翫 光宜 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.366-377, 2022 (Released:2023-07-04)
参考文献数
31

子どもの性別違和感への対応の難しさの一つは,医療的な対応を必要とする安定的な性別違和感と発達途上における一時的な性別違和感の揺らぎが混在していることにある。本研究では性別違和感の時間的安定性について,3つのコホートから得られた6年間の縦断調査によって絶対的安定性(平均値の変化)と相対的安定性(時点間の相関)および学年の上昇に伴う性別違和感の変化のパターンの検討を目的とした。小学4年生から中学3年生2,031名(男子999名,女子1032名)のデータを用いて検討を行った。絶対的安定性として学年による平均値の推移を検証した結果,男子では小4と比べて小5~中3は得点が低下したが,女子ではほとんど変化は見られなかった。性別違和感の変化のパターンを検討するため潜在プロフィール分析を行った結果,性別違和感をほとんど感じない群(74.5%),3~5年に渡り高い性別違和感を示す2群(2.8%),1~2年以内の性別違和感の高まりを示す8群(22.6%)が見出された。相対的安定性として各学年間の相関係数を算出した結果,学年が上がるごとに相関係数が高くなること,学年によらず男子よりも女子において相関係数が高いことが示された。性別違和感の安定性やその性差に影響を与えうる要因の検証の必要性について考察した。
著者
青山 昌文 Masafumi Aoyama
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of the Open University of Japan (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.109-115, 2010-03-23

ブリヤ=サヴァランの『味覚の生理学』は、その実証主義的なタイトルにも拘わらず、実在論的で古典的な深い哲学的立場に立った美味学の書物である。 我々の研究において論じられるのは、以下の主題である。 1 宇宙と生命 2 食とエスプリ 3 食と国民 4 社会階層と人の本質 5 食欲と快楽 6 グルマンディーズと判断力 7 食卓の快楽 8 食卓と退屈 9 創造としての発見 彼は、近代主観主義的な人間中心主義を超えており、料理芸術における創造の問題についても、古典的立場に立ったミーメーシス美学を展開しているのである。
著者
田井 康雄
出版者
九州産業大学 人間科学会
雑誌
人間科学 (ISSN:24344753)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.60-67, 2019 (Released:2019-03-29)
参考文献数
7

少子高齢化社会において,「子育て支援」の重要性が問題にされている。しかしながら,「子育て」そのものの意義について深く考察することなしに「子育て支援」が問題にされるために,「子育て支援」そのものの重要性,さらには,「子育て支援」に必要な専門性についてはほとんど評価されていない現状にある。このような現状を鑑み,現代日本社会における少子化の根本的原因とともに少子化による「子育て」の変質と重要性,さらには,「子育て支援」の新たな側面がもつ諸側面等について根本的考察を行っていくことによって,今後の「子育て支援」のあり方をより改善する契機を作っていきたい。
著者
神谷 純広 清水 智治 園田 寛道 目片 英治 遠藤 善裕 三宅 亨 山口 剛 森 毅 仲 成幸 谷 徹
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.826-831, 2012 (Released:2013-08-25)
参考文献数
14

(症例)42歳女性,既往歴:23年前からうつ病,20年前にも針を誤飲.自殺企図にて3日前に5cmほどの縫針5本をプリンと一緒に飲んだという.排便時に肛門痛を自覚し当院を救急受診した.初診時,肛門部皮膚には異常は認めなかった.胸腹部X線写真にて上腹部に1本,下腹部に2本の陰影を認めた.腹部CTにて胃・上部および下部直腸内に陰影を確認でき,下部直腸では管腔外に脱出している可能性が示唆された.初診12時間後に肛門部右前方皮下に異物を触知し局所麻酔下に針を摘出した.胃内の針は内視鏡下に摘出した.上部直腸内に残存する針は2日後には自然排出を確認した.誤飲した針が肛門括約筋外から排泄された症例は極めて稀である.針のような臓器損傷の可能性が高い異物は,アプローチしやすい部位に存在する場合は積極的に摘出処置を行い,それ以外の部位では誤飲から日が浅ければ経過観察することも可能であると考えられた.