著者
鈴木 明哲
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.21-33, 2014-03-30 (Released:2016-07-02)
参考文献数
16
被引用文献数
5

本稿の目的は、日本スポーツ界における暴力的指導に関して、体育・スポーツ史研究及び教員養成の観点からいくつかの問題提起をすることである。 本稿による提言は以下のようにまとめられる。 1)注意すべき最も重要な点は、スポーツにおける暴力的指導に対して我々が「自己反省」の意識をもつ必要があり、これらの問題に関する全ての発端が体育やスポーツの内部に由来しているという認識をもつ必要があるということ。 2)日本のスポーツ界における暴力的指導が軍隊のシステムに由来しているという説明がなされている。が、しかし、この説明は歴史的史料に基づいておらず、実際にいつ、どのようにして学校の体育やスポーツに入ってきたのか、その過程についてはほとんどわかっていない。それゆえ我々は、史料に基づいた歴史的事実の提示をしなければならない。 3)スポーツにおける暴力的指導に関する歴史的研究が進展してこなかった理由は、問題史研究という手法に注目してこなかったからであり、我々はこの研究手法に注目する必要がある。 4)体育やスポーツのあらゆる分野で暴力のない新しい、創造的な指導法を構築するために、我々は体育やスポーツについて全く知らない多くの人々と意見を交換しなければならない。 5)教員養成系大学における学生たちの受講態度に留意することは、カリキュラム改革よりも重要である。 最後に重要な点として、本稿では以下の点を強調しておきたい。日本のスポーツ界から暴力的指導を排除することはおそらく困難であろうと思われるが、我々は、そのためには、相当に長い時間を要することを覚悟しなければならないということである。

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著者
鵜崎鷺城 著
出版者
磯部甲陽堂
巻号頁・発行日
1915
著者
鹿瀬 颯枝
出版者
聖学院大学
雑誌
聖学院大学論叢 (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.173-190, 1990-12-20

フランス・ロマン派全盛時代、地理的にはイタリア、スペインへ、歴史的にはルネッサンスの世紀へと、「異国逃避」の傾向がみられた。こうした状況の中で、ミュッセは、幼年期から既にラテン語、イタリア語を解し、未だ訪ねたことのないイタリアに、理想郷を求めて、ダンテ、ペトラルカ、ボッカチオ、バンデロとイタリア文学に没頭、まもなくミュッセ劇の舞台は、ルネッサンス期のイタリアが中心となる。1833年末、初めてこの理想郷を旅するミュッセであるが、既にイタリアを舞台とした作品は『ヴェニスの夜』(1830年)『アンドレ・デル・サルト』(1833年)、『マリアンヌの気まぐれ』(1833年)と発表されていた。又、これまで長い間、イタリア滞在中に作品化されたといわれてきた『ロレンザッチョ』も、実は、イタリア出発前に大半が書き上がっていた。現実のイタリアを知りつくした後も、ミュッセは祖国愛に似た思いで、彼独自のユートピアのイタリアを描き続けた。その背景にあるものは一体何か。主要な作品がイタリア訪問前に書かれている点に注目してその意味を追求した。
著者
渥美 公秀 杉万 俊夫 森 永壽 八ツ塚 一郎
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.218-231, 1995-11-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
3
被引用文献数
2 1

本研究は, 1995年1月17日午前5時46分に発生した阪神大震災の被災地・被災者を救援するために組織された2つのボランティア組織-西宮ボランティアネットワークと阪神大震災地元NGO救援連絡会議-について参与観察法を用いて検討したものである。まず, 各組織の成立過程, および, 活動内容の概略を紹介した。次に, ボランティアに関する一般的な考察を行った上で, 両組織を災害救援における広域トライアングルモデルを用いて比較考察した。両組織には, 地元行政との関係, および, 将来への展望において明確な違いが見られた。
著者
大江 秋津 三橋 平
出版者
東京理科大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

江戸時代の藩校の200年以上の長期データを用いて、知識普及のメカニズムを実証する。国学や算学など、様々な学問を教える藩校では、教員の出身学派の非公式な信頼関係から新たな知識がもたらされる。藩校は知識の集積所といえ、学派ごとに形成された複数の非公式な外部知識ネットワークを持つ。さらに、ネットワーク内の新たな知識の普及には、地理的に近い他の藩校からの影響もあると考える。以上から本研究は、(1) 実践共同体で形成される複数のネットワークで多次元的に知識が普及するネットワーク構造特性の実証と、(2) 組織間信頼による知識の組み替えが起こるメカニズム、(3)組織間の地理的近接性が与える影響を実証する。
著者
藤井 文夫 Kuo Mo HSIAO 小林 卓哉 井上 吉弘 新田 高洋
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.82, no.836, pp.15-00623, 2016 (Released:2016-04-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1

The popular sports entertainment, billiards, is rich in mechanical issues such as 3D finite rotation, collision, contact and friction, evoking a research interest in rigid-body dynamics, nonlinear CAE and computational mechanics. However, the 3D nonlinear behavior of a rigid ball has so far hardly received the attention of scholars to exercise the mechanical modeling skill. The represent study focuses, therefore, on 3D nonlinear billiard dynamics and attempts to precisely predict the ball behavior in finite rotational motion with collision, contact and slip friction. In dependence upon ball situations, 4 different models are proposed. They are namely, rotation model, strike model, collision model and reflection mode. The rotation model is an elementary model and describes the 3D ball motion after a cue strike and subject to table friction only. The strike model is useful to study the effects of cue striking. For simplicity, the strike points are limited to the ball center, 12, 3, 6 and 9 o'clock' in the ball projection. The collision model ignores the ball-to-ball friction and the law of conservation of momentum holds to predict the velocities of two balls after collision. The reflection model simulates the ball-to-cushion contact in bank shots. Incidence angle, translational and rotational velocities, cushion elasticity and frictional properties may be variable in a parameter study. In all these 4 models, the ball is assumed to be in contact to the table surface. Masse or jump shots are excluded in modeling. The equations of ball motion are time-integrated by forward Euler method. The models are verified and validated in numerical examples including optimization and parameter studies. All computed results well agree with the hustler’s experiences in game practice. The present research work will contribute to develop a skill-up program of professional hustlers.
著者
小松原 宏子
出版者
多摩大学グローバルスタディーズ学部
雑誌
紀要 = Bulletin (ISSN:18838480)
巻号頁・発行日
no.12, pp.9-24, 2020-03-31

2014 年と2015 年、学研の「10 歳までに読みたい世界名作」『若草物語』『あしながおじさん』の編訳をする機会に恵まれた。それに際し完訳版および原書を読むなかで気づいたこと、この2作品を初めて読んだ子ども時代から心に留めていた、あるいは疑問に思っていたことをここで整理してみたい。今回は脇役ながら物語中で重要な役割を果たしている脇役たち---『若草物語』のハンナ、『あしながおじさん』の視察委員プリチャード---に関しての考察をまとめる。
著者
山本 美穂子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

1918~45年における帝国大学大学院への女性の進学実態を調べて、東北帝国大学(理学、法文学分野)、東京帝国大学(法学、農学分野)、大阪帝国大学(理学分野)、北海道帝国大学(農学分野)における女性の大学院進学者を明らかにした。そして、化学・法学分野を専攻した女性進学者について、進学動機・背景・進学後のキャリアパス等を明らかにし、戦前戦後期の女性の大学院進学の歴史的展開を考察した。さらに、1950~60年代に新設された新制女子大学大学院の文系研究科(修士課程)12校を対象に、大学院の専任教員予定者から女性研究者の経歴を分析し、女性のキャリアパスにおける旧制大学院進学の位置づけを考察した。
著者
宮尾 知幸 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.1A06, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
7

三次元リガンド情報に基づきヴァーチャルスクリーニング(VS)を行う際、標的マクロ分子との結合状態におけるリガンド分子の立体配座が重要な役割を果たすと考えられる。また、類似性検索に基づくVSでは、活性化合物の類似構造のアンサンブルを検索クエリとして利用する手法が提案されている。本発表では、リガンドベースVSにおいて、活性化合物のコンフォメーションが重要なのか否かを判断するためのベンチマーク計算、並びに、三次元リガンド構造に基づくVSにおけるアンサンブル効果を検証した結果を報告する。コンフォメーションはそれほど重要ではなく、アンサンブル効果は三次元リガンド構造に基づくスクリーニングであっても有効であるとの結果となった。
著者
永井 晋
出版者
宗教哲学会
雑誌
宗教哲学研究 (ISSN:02897105)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.19-36, 2013-03-31 (Released:2019-08-08)

«Tournant théologique de la phénoménologie» est un événement qui apporte la transformation radicale à la phénoménologie ainsi qu’à la théologie par rapport à celles «classiques». Dans l’article qui suit, nous essayons d’interpréter les trois modalités de l’expérience de Dieu dans les trois monothéismes : Incarnation dans le christianisme, Herméneutique du Texte-Saint dans la mystique juive et Image-archétype dans la mystique irano-islamique comme le processus de la radicalisation graduelle de la réduction phénoménologique qui nous amène au profondeur de Dieu «en tant que tel». Pour mener à bien cet essai, nous nous référons aux quatre phénoménologues qui ont effectivement pratiqué le «tournant théologique» : Michel Henry, Jean-Luc Marion, Emmanuel Lévinas et Henry Corbin.
著者
齋藤茂吉著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1973
著者
森川 和則 片岡 咲
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第8回大会
巻号頁・発行日
pp.36, 2010 (Released:2010-09-01)

制御幻想とは、偶然によって決まり制御できない事象をある程度自分の意思や行動でコントロールできると思いこむ認知錯覚であり、一般にギャンブルの状況で現れるとされる。ギャンブルを用いた先行研究のほとんどではまだ起こっていない一回限りの賭けで賭け金の大きさを従属変数としてきた。また、まだ起こっていない事象に対する予期的な制御幻想と、すでに起こった事象に対する回顧的制御幻想とは別々のパラダイムで研究されてきた。これに対し、本研究では、より現実的な反復ギャンブル状況(ルーレット)を用い、ギャンブルから得られる満足感と予期的制御幻想および回顧的制御幻想を同じパラダイムで研究した。実験ではコンピュータ上でルーレットゲームを作成し、回転するボールが減速し始めるタイミングを参加者が手動で決定できる条件とコンピュータが自動的に決定する条件とで満足感と制御幻想を測定した。手動条件で強力な制御幻想が生じた。