著者
鈴木 純一
出版者
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院
雑誌
メディア・コミュニケーション研究 (ISSN:18825303)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.1-19, 2023-03-29

In diesem Aufsatz wird das Verhältnis von Metapher und Ausnahmezustand untersucht. Carl Schmidt, ein deutscher Jurist des 20. Jahrhunderts, verwendete in seiner Forschung eine einzigartige Methodik. In seiner Arbeit behandelte er "Ausnahmezustand" als besonderen Begriff und verband ihn mit der Eigenschaft "souverän". Der zeitgenössische italienische Denker Giorgio Agamben sieht diesen "Ausnahmezustand" als "bare life" und charakterisiert ihn als Bereich vielfältiger Widersprüche. Inspiriert wurde diese Idee offenbar von Walter Benjamin. Insbesondere sein Artikel "Zur Kritik der Gewalt" spielt eine große Rolle in Bezug auf den Begriff der "reinen Sprache". "Reine Sprache" ist gewissermaßen eine Paraphrase des "bare life" und hat einen "mehrdeutigen" Charakter. Andererseits sind Metaphern auch ein ungewöhnlicher Wortgebrauch und haben mehrdeutige Eigenschaften. Dieser Aufsatz untersucht im Detail solche sprachlichen (metaphorischen) Widersprüche und Paradoxa, die durch Ausnahmen verursacht werden. Als Ergebnis stellen wir fest, dass diese Struktur und dieser Prozess mit Niklas Luhmanns Theorie sozialer Systeme übereinstimmen. Abschließend zeigt dieser Aufsatz, dass sich das Verhältnis von Metapher und Ausnahmezustand durch seine Konzepte von "Autopoiesis" und "Re-entry" erklären lässt.
著者
水野 由多加
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.87-111, 2017-10-31

In the latter half of 20th Century, Environmental Rights were studied in general terms. Until recently, there was little specific discussion about the Right to Informational Environment. The author approaches this topic from a variety of sociological and psychological viewpoints, including advertising web technology, environmental studies, and noise pollution studies.
著者
テーウェン マーク
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.115, pp.223-237, 2020-06-30

1970年代以来, 一時相当さびれていた都市祭礼は日本文化の宝物と見なされるようになった。この都市祭礼の再発見には, 京都の祇園祭がはたした役割が大きい。本稿は, 未公開の記録に基づいて山鉾巡行の戦時・占領期の歴史を山鉾連合会の視点から詳しく紹介し, その1941年から1948年までの劇的な変動を分析する。1943年の巡行中止をめぐる事情, そして1946年以降の復興方法についても, この記録が多くの新しい情報を提供するだけでなく, 山鉾巡行の意味づけの変遷も読み取れる。戦争中には武運長久を祈る「神事」として規定されていた巡行は, 戦後に神社から切り離され, 京都市観光連盟主催の観光行事に変身した。この動きのなかで, 京都市による祇園祭復興が一つの模範になり, のちに日本中の祭礼に転用されたと思われる。
著者
中里 理子 Michiko Nakazato
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.268-282, 2002-10

オノマトペの多義性についてその時徽を考え、一例を取り上げ実際に多義が派生しさらに解消されていく過程を考察した。まず、現代語の多義のオノマトペから意味相互の関連を考察し、(1)擬音と擬態の共通性、(2)様態の共通性、(3)感覚の共通性、(4)一般語彙との関連、(5)隣接オノマトペとの関連、(6)音の類似性、という六つⅥ特徴を見出した。次に近世・近代の「まじまじ」を取り上げ意味変化を見ながら、多義の派生とそれが解消される過程を検討した。「まじまじ」は、「目ぱちぱちさせる」という一動作とその動作を行う一般的状況を表したが、その状況が「眠れない」「平然と(見る)」「見ていて落ち着かない」に分化したとき矛盾する意味を含んでしまい、混乱を生じた末、一動作を表す意味「じっと見つめる」になり、本来のコ目をぱちぱち」という象徴性が失われた。「落ち着かない」意味は隣接オノマトペの「もじもじ」に、「眠れない」意味は語基が共通する「まんじり」にその意味が移行し、多義の縮小につながっている。形態による意味の分担も多義性の解消に関連すると思われる。
著者
河合 康 Yasushi Kawai
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.381-397, 2007-02

本稿では,イギリスにおけるインテグレーション及びインクルージョンに関する1970年代以降の施策の展開を検討した。その結果,1970年代以降,政府の諸文書や法令においてインテグレーションやインクルージョンの促進が明示されてきてはいるが,実際の統計データにおいてはインクルージョンが進展しているとはいえない状況にあること及びインクルージョンの実態についてはかなりの地域差がみられることが指摘された。さらに,イギリスでは特別学校の存在が否定されてはいるわけではなく,むしろ1970年代から特別学校がインクルージョンを進展させるために重要な機能を果たす存在として認識されていることが明らかにされた。さらに,1970年代から今日まで,インテグレーション及びインクルージョンを実施するための条件が明示されており,この条件の検討が今後の課題である点が指摘された。
著者
西館 有沙 徳田 克己 水野 智美
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.27-33, 2015-12

中学生を含む青年前期の子どもには,特に女児において,価値観や好みを共有できる少人数の仲間集団をつくる傾向が見られる(石田,2002)。石田・小島(2009)は,児童期から青年期にかけて多くの時間を共有し多くの活動をともにする仲間集団は,彼らにとって重要な意味を持っていると述べている。一方でこの時期には,グループの外にいる子どもたちを寄せつけないような強い排除が生まれやすいとされている(有倉,2011;有倉・乾,2007)。この発達段階にある中学生が,クラスメートである発達障害児の特性を理解し,良好な関係を保っていくために,教員はどのような指導を行うべきであろうか。本稿では,発達障害児に関するクラスメートの理解を促すための指導を,障害理解指導と呼ぶ。発達障害児の学級適応を図るにあたり,教員が発達障害児に対して,その特性に応じた支援を行う必要があることは言うまでもない。しかし,発達障害児への指導のみでクラス内の子どもたちの関係を良好に保つことはむずかしいのであり,クラスメートへの障害理解指導のあり方についても検討を進めていく必要がある。
著者
桜田 真理絵
出版者
駿台史学会
雑誌
駿台史學 (ISSN:05625955)
巻号頁・発行日
vol.156, pp.51-76, 2016-02-29
著者
亀谷 学 大塚 修 松本 隆志
出版者
弘前大学人文社会科学部
雑誌
人文社会科学論叢 (ISSN:24323519)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.123-154, 2020-02-28

本稿は西暦9 世紀(ヒジュラ暦3 世紀)の後半に著作活動を行ったイブン・ワーディフ・ヤアクービーの著書『歴史al-Ta’rīkh』の日本語訳注である。連載の第一回となる今回については、解題にて著者および彼の著した『歴史』についての解説、そして、その第一部にあたる古代史部分のうち、アダムからノアとその子孫に至る人々の記述の訳注となる。なお、解題については亀谷が、第一回の日本語訳注部分については大塚が、それぞれ元となる原稿の作成を担当し、それをメンバー三人によって修正を加えたものである。
著者
岡村 心平
出版者
関西大学大学院心理学研究科心理臨床学専攻
雑誌
Psychologist : 関西大学臨床心理専門職大学院紀要
巻号頁・発行日
vol.7, pp.29-38, 2017-03-18

本論文では、対人的な相互作用における交差に関連する「共に感じること(co-feeling)」という概念をめぐって、理論的な検討を行った。まずGendlin(1995)の記述する対人的な相互作用における交差の特徴と、その説明の中で引用されるGilligan and Wiggins(1987)の「共に感じること」という概念を取り上げ、この概念が従来の心理学的な「共感」概念と対比的に用いられており、そこに同一化が含まれるか否かの相違があることを示した。また、この「共に感じること」という概念がクンデラの小説『存在の耐えられない軽さ』から援用されたもので、「同情」という語のパラフレーズとして使用されていることを概観した。次節では、心理療法における共感概念、特にロジャーズの「共感的理解」とフロイトによる「共感」に関する記述を参照し、「共に感じること」との比較検討を行った。フロイトは共感を「同一化」と関連づけ論じており、一方でロジャーズの共感的理解と「共に感じること」は、同一化に基づかない点で共通していることを提示した。また、共感的理解の特徴である“as if” という性質は、「AをあたかもBであるかのように」理解するというメタファーにおける交差の機能やその仮想性にも見られ、この点においても、ロジャーズの共感的理解と、ジェンドリンの交差概念や「共に感じること」という概念との間に共通点が見出された。
著者
金沢 吉展 岩壁 茂
出版者
明治学院大学心理学会
雑誌
明治学院大学心理学紀要 = Meiji Gakuin University bulletin of psychology (ISSN:18802494)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.137-147, 2013-03-30

日本の心理臨床家が臨床家を志した当初の動機および現在臨床業務に取り組む動機について,日本語版「心理臨床家の成長に関する調査票」(DPCCQ-J)の自由記述回答を基に検討した。「臨床家になる元来の動機や理由とその動機をもった時期」に対する116名の回答と「現在心理臨床業務を行う動機」に対する115名の回答を,グラウンデッド・セオリー法と合議的質的研究法に基づく質的分析法により分析した。当初の動機としては,他者貢献への意欲が最も多く,次いで,心理学,心理療法,あるいは心の働きに対する知的・職業的好奇心が挙げられた。現在の動機にも他者を援助することへの意欲が最も多く挙げられたが,32.1%の回答は回答者自身にとっての臨床業務の意義について述べたものであった。業務上あるいは経済的な必要性も当初の動機・現在の動機ともに少なからずみられた。臨床家の教育訓練にどのような課題が示唆されるかについて論じた。
著者
和田 麻友美 山崎 裕 村井 知佳 中村 裕介 佐藤 淳 秦 浩信 北川 善政
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.106-113, 2014-03

非定型歯痛(Atypical Odontalgia: AO)は,明確な原因がないにもかかわらず歯やその周囲に疼痛を訴える疾患であり,歯科医師は診断や治療に苦慮することが多い.当科で診断したAO症例の臨床経過および治療効果を明らかにする目的で後ろ向き研究を行った. 対象は2010年1月から2012年5月の期間に,当科で最終的にAOと診断した22例(男性:5例,女性:17例,平均年齢:54歳)であった.主訴は歯痛9例・抜歯後疼痛6例・歯肉痛5例・インプラント術後疼痛1例・上下顎の顎骨疼痛1例であった.病悩期間は半年未満9例(41 %)・半年~1年3例(14 %)・1年以上10例(45 %)であった.全例が当科受診前に他の歯科医療機関を受診していた.前医で行われた治療は,歯内療法・歯周療法・レーザー照射・スプリント療法・補綴療法・薬物療法など多岐にわたっていた. AOの臨床診断のもと,13例に対して当科で薬物療法を行った.使用した薬物は,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor, SSRI:10例),ベンゾジアゼピン系抗不安薬(benzodiazepine derivative, BZD:9例)の順に多く,これらのうち7例が両者の併用例であった.治療効果は13例中7例(54 %)で疼痛の改善が認められた.改善した7例のうち,6例はSSRIとBZDとの併用療法であった. SSRIとBZDの併用による薬物療法はAO症例に有効である可能性が示された