著者
三好 恵子 長田 早苗 竹中 眞紀子 三宅 紀子 小野 裕嗣
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.92, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】アクリルアミド(AA)は、食品を120℃以上で加熱したときにメイラード反応によって非意図的に生成する有害化学物質である。日本人では、高温加熱された野菜調理品(炒め・揚げ)からの摂取量が多いと推定されており、前報で野菜の炒め調理において各調理条件がAA生成に及ぼす影響を明らかにしている。一方、煮る調理ではAAは殆ど生成しないとされているが、120℃以上となる加圧を含め、加圧調理がAA生成に与える影響は明らかではない。そこで本研究では、野菜を加圧調理した時のAA生成についての知見及び低減対策の必要性の判断に資する知見を得ることを目的とした。【方法】前報炒め調理でAA生成量の高かった、ごぼう、れんこん、じゃがいもの水煮又は蒸し調理について検討を行った。また、カレー(ルウを加える前)の煮込みについても検討した。加圧調理に用いた圧力鍋は、A(146、80 kPaG)、B(140 kPaG)、C(95、70、45 kPaG)の3種であり、常圧条件として通常のステンレス鍋を用いた(n=4)。なお、146 kPaGの加圧条件では、5、2、0分間の加圧調理も実施した。調理終了後、調理品全体を混和してAA濃度を測定した(検出限界 2 μg/kg、定量下限 5 μg/kg)。【結果】各品目について、ほとんどの加圧条件でAA濃度は定量下限未満だった。なお、ごぼうとれんこんでは、146 kPaG、5分間以上の調理条件で、カレーでは146 kPaG 、10分間の調理条件で定量下限以上のAAが生成した(ごぼう:5~13 μg/kg、れんこん:7~30 μg/kg、カレー:6~8 μg/kg)。炒め調理時に比べAA濃度が極めて低いこと、野菜の加圧調理で推奨される標準時間は最高圧に達して2分程度であることを考慮すると、野菜の加圧調理について低減対策を検討する優先度は低いと考えられた。※農林水産省の委託研究事業を活用して本研究を実施した。
著者
鈴木 仁 佐藤 淳
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

私たちはハツカネズミ(Mus musculus)の進化史理解のため、第8染色体上の毛色関連遺伝子Mc1rを含む近隣7遺伝子のハプロタイプ構造の解析を行った。その結果、3亜種グループの中東・インドにおける自然分布域を特定するとともに、インド亜大陸内の亜種castaneusが空間的に2系統存在することを明らかにした。また、歴史的放散前に亜種内、亜種間の遺伝的交流が存在したことも判明した。さらに。この遺伝子領域のうち、Mc1rにおいて塩基多様性のレベルの著しい低下があり、選択的スイープ現象の存在が示唆され、Mc1r遺伝子への自然淘汰の関与があったと考えられた。
著者
彭 永成
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
no.66, pp.275-288, 2020

本論文は雑誌『ゼクシィ』の歴史変遷を中心に、結婚情報のメディア史について検討するものである。『ゼクシィ』の創刊以前、各種のメディアに散見されていた結婚情報は一冊の雑誌によって簡単に取得できるようなものではなかった。1993年に登場した『ゼクシィ』はそのような状況を大きく変わった。三種類の結婚情報を網羅的に掲載し、画期的な結婚情報メディアとなったのである。1990年代において、『ゼクシィ』の情報発信は花嫁向けの結婚生活の礼義マナー情報に重点が置かれていて、誌上に構築された結婚式の意味合いは「新生活への通過点」にすぎなかった。2000年代に入ると、インターネットの普及によるメディア環境の激変や、社会の結婚文化の変化に対応して、花婿、両親を含めて結婚式の関係者全員に向けのブライダル情報が大量に発信されるようになった。そのため、誌面から読み取れる結婚式の意味合いは「独身脱出のゴール」とのイメージが強調されるようになっている。
著者
宇野 裕之 横山 真弓 坂田 宏志 日本哺乳類学会シカ保護管理検討作業部会
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.25-38, 2007 (Released:2007-08-21)
参考文献数
65
被引用文献数
19

ニホンジカ特定鳥獣保護管理計画 (2002-2006年度の期間) の現状と課題を明らかにするため, 29都道府県及び大台ケ原地域を対象に2006年6月から9月までの期間, 聞き取り調査を行った. 管理目標は主に 1)個体群の存続と絶滅回避, 2)農林業被害など軋轢の軽減, 3)個体数削減, 及び4)生態系保全に区分できた. 個体数や密度のモニタリング手法には, 1)捕獲報告に基づく捕獲効率や目撃効率, 2)航空機調査, 3)ライトセンサス, 4)区画法, 及び5)糞塊法や糞粒法が用いられていた. 航空機調査, 区画法及び糞粒法を用いた個体数推定では, 多くの事例 (30地域中の11地域) で密度を過小に評価していたことが明らかとなった. 個体数の過小評価や想定外の分布域の拡大によって, 個体数管理の目標が十分達成できていないと考えられる地域も多くみられた. フィードバック管理を進めていく上で, モニタリング結果を科学的に評価し, その結果を施策に反映させるシステムの構築が必要である. そのためには, 研究者と行政担当者の連携が重要である. また, 県境をまたがる個体群の広域的管理と, そのための連携体制を築いていくことが大きな課題だと考えられる.
著者
Toshiyuki Yasui Yuki Ideno Hiromitsu Shinozaki Yoshikazu Kitahara Kazue Nagai Kunihiko Hayashi
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
pp.JE20200207, (Released:2020-10-31)
参考文献数
29
被引用文献数
10

Background: There have been few community-based epidemiological studies in which the prevalence of exogenous hormone use, including the use of oral contraceptives (OCs) and hormone replacement therapy (HRT), has been accurately assessed in Japan.Methods: We have been conducting repeated surveys of participants in the Japan Nurses’ Health Study (JNHS), as a nationwide prospective cohort study, since 2001. We determined the prevalence of exogenous hormone use at baseline and during a 10-year follow-up period. A total of 15,019 female nurses participated in the JNHS follow-up cohort. We determined the prevalence of OC use in 14,839 women <60 years of age at baseline and the prevalence of HRT use in 7,915 women, excluding premenopausal women, at the last time they answered a questionnaire. The duration of HRT use was estimated using the Kaplan-Meier method.Results: Six percent of the participants used OCs. The proportion of HRT users who stopped HRT before the baseline survey, the proportion of women using HRT during the follow-up period, and the proportion of all of the participants who had used HRT were 3.2%, 10.6%, and 13.8%, respectively. The median duration of HRT use was 2 years.Conclusions: The lifetime prevalences of exogenous hormone use during this prospective study conducted in Japanese nurses were 6.0% for OCs and 13.8% for HRT. The information obtained in this study will be useful for clarification of the association between exogenous estrogen exposure and estrogen-related diseases as future research.

2 0 0 0 OA 東京市史稿

著者
東京都 編
出版者
東京都
巻号頁・発行日
vol.市街編48, 1959
著者
伊野 連
出版者
東洋大学大学院
雑誌
大学院紀要 = Bulletin of the Graduate School, Toyo University (ISSN:02890445)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.117-132, 2017

本稿は脳死と心臓移植に関する輿論とマス・メディア、特に大新聞における科学ジャーナリズムとの相互影響関係について検証する。クリスチャン・バーナードの二度目の心臓移植、いわゆる「ブレイバーグ・移植」は成功であった。フィリップ・ブレイバーグは当時としては最長の594日間生存した。同時期の新聞はブレイバーグこそ深刻な心臓病に苦しむ患者たちの希望であり、将来の医療の星だと報じた。1982年9月、日本移植学会は脳死ドナーからの二つの腎臓移植が同年一月と四月におこなわれていたことを公表した。この声明は脳死移植への既成事実となった。本稿はこの二つの出来事をきわめて重要であるとみなしている。前者は心臓移植の停滞と再考のきっかけとなり、後者は脳死ドナー承認のきっかけとなったわけである。
著者
日本画像学会 編集委員会
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.305-313, 2012

日本独自の写真電送技術である丹羽保次郎氏 (日本電気) の特許に着目した.本特許は,送信画像信号形成方式の基本技術であり,その方式が搭載された装置は,我が国初の写真電送装置として,1928年の昭和天皇即位式ニュース写真の電送に用いられた.
著者
稲垣 泰一
出版者
説話研究会
雑誌
説話 (ISSN:03867757)
巻号頁・発行日
no.7, pp.p55-70, 1983-08
著者
谷本 啓 坂井 智哉 竹之内 高志 鹿島 久嗣
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回全国大会(2021)
巻号頁・発行日
pp.3G2GS2h03, 2021 (Released:2021-06-14)

どの介入行動がより良い結果につながるかを予測することは、意思決定支援システムの中心的な課題である。実環境での予測モデルを構築するためには、ランダム化比較試験(RCT)データがないため、サンプリングバイアスのある観測データからの学習に頼らざるを得ない。これに対するための近年の因果推論及び反事実機械学習では、薬を投与するかどうかなど二値の行動空間上の潜在アウトカムとその差、すなわち条件付き期待因果効果を推定することに注力している。しかし、本発表で示すように、大きな行動空間(個々の患者に対し適切な薬の組み合わせを選択するなど)になると、潜在アウトカムの回帰精度だけでは実用的にはもはや十分な意思決定性能を得ることができなくなる。提案する損失関数は、予測精度と同時に、個々の状況(患者)に対して過去の平均的な意思決定者(医者)の行動よりも相対的に良い行動であるかどうかの判別誤差を最小化することで、学習されたモデルに基づく意思決定性能を向上させる。半合成データセットで実験により、広い行動空間に対する提案法の優位性を実証する。