出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.655, pp.36-37, 2017-01-09

2016年11月に博多駅前で発生した陥没事故を受け、専門家でつくる第三者委員会が立ち上がり、原因究明に向けた調査が進んでいる(写真1)。トンネルを掘削していた岩盤層の上にあるとみられる風化層の状態などが、原因究明のカギになりそうだ。委員会では17年3…
著者
並木 浩一
出版者
国際基督教大学キリスト教と文化研究所
雑誌
人文科学研究 (キリスト教と文化) = Humanities: Christianity and Culture (ISSN:00733938)
巻号頁・発行日
no.42, pp.1-52, 2011-03-31

筆者はかつて、ヨブ記がヤハウィストを相互テクストとして用いていることを『「ヨブ記」論集成』に収録の論文「ヨブ記における相互テクスト性」において論じた。本論はヨブ記とヤハウィストが主題と関心を共有することを探求する。従来、ヨブ記とヤハウィストとは成立時代も関心も大きく違うとの先入観が働いて、両者が民族史的な課題を共有するとはまったく考えられていなかった。しかし私見によれば、両者はペルシア時代の成立であり、時代的な課題を共有する。そればかりでなく、両者はユダヤ教の基本である律法の整備とそれに伴うユダヤ民族中心主義への傾斜に抵抗するという共通の陣営に身を置いている。両者は人類とヤハウェとの関わりを重視する普遍主義を重んじて、申命記主義者が展開したヤハウェとイスラエル民族の特殊主義的な契約観、およびエルサレム中心の見方に対して批判的であり、ユダヤ教の外の世界に注目した。 ヤハウィストによれば、アブラハムは未知の世界に出て行った。そもそも人類の始祖は「エデンの東」に人間的な活動の場を見出した。人類にはその最初から境界侵犯を禁ずる「戒め」(園の中央の樹の実を取って食べることの禁止)が与えられていた。それはシナイもしくはホレブで与えられたというユダヤ教の律法とは関係がない。境界侵犯は人間が神の領域を侵すことの禁止ばかりでなく、人間の間にも適用される。弟を殺した兄は追放されなければならない。境界侵犯の禁止は客人法の遵守がヤハウェの基本的な関心事であることを認識させる。客人法を破った異教の人びとの町ソドムはヤハウェによって処罰される。 ヨブ記の主人公ヨブは「東の人」、すなわち律法が知られない異邦人であるが、ヤハウェの眼には比類のない義人である。ヨブの正しさは客人法の遵守、貧者の保護によって証しされる。ヨブが神との関わりで重視するのは、律法が規定の対象としない内心の世界である。「契約」(神とイスラエルとの特殊な結合)は個人的で私的な領域に移される。行動の基準は彼の「良心」である。 ヨブ記とヤハウィストのこの姿勢を支えるのは、人間の自律性と自由の重視である。しかし人間の自由で知的な活動が神の意志を知ることにはならない。むしろ誤解を導く。ヤハウィストにおける人間は想像力を働かせて神に背き、神と人への応答を拒む。境界侵犯を禁ずる神の掟は無条件に課せられる。しかし神は人間の自発性を尊重し、掟への服従を強制しない。ヨブにおいても、苦難の原因は説明されない。ヨブが「理由なく」神に従うか否かについて神とサタンは対立する。ヨブは理由なく神に服従したが、その後、理由の開示を求めて神に猛烈に抗議した。神の弁論は神について思い巡らす彼の知の限界を示した。ヨブはそれを自発的に認めた。ヨブ記とヤハウィストは普遍主義を支える神と人間のあり方を提示した。
著者
中林 敏郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.450-453, 1984

コーヒー褐色色素が,焙煎中にクロロゲン酸とショ糖の熱反応で形成されることから,ヒマワリ種子脱脂粕からの分離蛋白の品質向上もかねて,脱脂粕よりクロロゲン酸を抽出,これを利用してコーヒー様褐色色素の製造を試みた。<BR>(1) 6種のヒマワリ種子胚乳部の成分を分析し,脂肪ついで蛋白が多く,クロロゲン酸は平均1.25%含まれることを確かめた。<BR>(2) 脱脂粕の80%メタノール抽出物にショ糖を加えてモデル焙煎した結果,ミディアムローストコーヒーのそれに類似し,実用にたえるコーヒー様褐色色素を製造することができた。<BR>(3) メタノール処理した脱脂粕から得た分離蛋白は殆んど白色で,メタノール処理によるクロロゲン酸の除去が分離蛋白の品質向上に有効であることを確かめた。
著者
中林 敏郎 政野 光秋
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.33, no.10, pp.725-728, 1986
被引用文献数
2

先に考案したトリゴネリン(T)とカフェイン(C)の簡易同時定量法を用いて,コーヒー豆焙煎中の両者の含量の変化,および各種の生豆や焙煎豆,ならびにコーヒー製品の両者の含量比(T/C)を検討した.<BR>(1) 室温から240℃まで21分間の焙煎中,カフェイン含量は豆の重量減に応じて相対的にわずか増加するが,トリゴネリン含量はメディアムロースト以後急激に分解減少した.<BR>(2) コーヒー生豆や焙煎度の異なる豆を分析した結果,そのT/Cの平均値は生豆で0.86,メディアムローストで0.73,フレンチローストで0.55,イタリアンローストで0.15となり,T/C値から豆の焙煎度を推定できることが示唆された.<BR>(3) インスタントコーヒーのT/C値にはかなりの幅があるが,それらの平均値は0.43で,原料豆の平均的な焙煎度はフレンチローストよりやや強いと推定さた.<BR>(4) 缶詰コーヒー飲料のT/Cの平均値は0.42であるが,個々の値にはかなりの幅がある.しかし大部分のものの原料豆の焙煎度はフレンチロースト付近と推定された.
著者
Sasaki Yutaka Shibusawa Sakae Negishi Hanako
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.228-235, 2013

Because Japanese farmers are aging, the need for cooperative working type agricultural robots that can perform tasks together with human beings is becoming particularly acute. Such robots need the ability to integrate their activities seamlessly with human beings and should possess functions that can be controlled intuitively, even by new agricultural workers and elderly people. These functions are generally considered under the heading of <i>Kansei</i> communication. Robots that incorporate such abilities include the <i>Kansei</i> Agri-robot and the <i>Chinou</i> robot, which can extract tacit knowledge and retain it for future use, and which have been the subject of intense study and development work. In this paper, we report on the fabrication and evaluation of an intuitive control component that utilizes human motions, which is one of the core technologies for issuing instructions, that is based on the Kinect sensor. The Kinect sensor, which can trace and replicate motion information based on a human skeleton movements, is a gaming device for the Xbox 360 released by Microsoft Corporation in 2010. It consists of three-dimensional depth sensors comprising an infrared (IR) emitter and an IR depth sensor, an RGB camera, and a multi-array microphone. The motion control technique targeted in this study is the finger pointing that will be used to instruct the robot on how to move and position itself correctly in a working area or other location. As the development environment, we used Microsoft Windows 7 as the operating system, OpenNI as the library, and NITE as the middleware. Visual Studio 2010 and the C++ language were used for software development. The following results were obtained. First, we found that the skeleton motion information of a farmer could be extracted at various angles using the Kinect sensor. Next, an algorithm for calculating finger-pointing points from the joint coordinate information relating to the shoulders, hands, and feet of the farmer was formulated. Based on the results of our verification experiments, we found that the algorithm accuracy was high when considered in terms of the assumed robot size and working area, and that control of a robot by finger pointing was possible. Estimation errors were found to vary depending on the sensing angle of the robot in relation to the farmer, and sensing errors from behind the farmer were greater than those occurring from other angles. It was also found that the Kinect sensor could be used in field conditions during early morning and late afternoon hours when light intensities had decreased, as well as under artificial lighting conditions.
著者
古賀 明俊 城戸 英希 藤堂 省 川上 克彦 中山 文夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.285-294, 1980

15例の膵のインスリン産生腫瘍を報告した.12例はインスリノーマでこのうち1例は異所性で, すべて単発性で, 良性であった.2例は過形成, 1例は組織学的に異常所見はなかった.全例にWhippleの三主徴があり, 血中高インスリン値, 種々の誘発試験を組合わせることにより診断が確実になる.選択的血管造影は72.7%に陽性であった.逆行性膵管造影も間接的診断法になる.手術は膵尾部切除2例, 膵体尾部切除2例, 膵頭十二指腸切除1例, 異所性腫瘍摘出1例, 腫瘍核出術9例である.術中血糖値の測定は腫瘍摘出成功の判定に有効で, 30分以上の持続的上昇を確認する必要がある.手術成績は14例が治癒し, 1例は術後肝不全で死亡した.
著者
村山 聡
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.53-75,iv, 2001

近世ヨーロッパに関して、各人の年齢が記載されている歴史資料を見つけることは非常に難しい。ヨーロッパでは、洗礼、堅信礼、婚姻、埋葬などの各イベントにおいて、教会は記録を残している。しかし、ヨーロッパの歴史人口学で使用されてきた洗礼、婚姻、埋葬の記録である教区簿冊においても、年齢記載がなされているものは多くない。それに対して、日本の近世江戸期の史料では、五〇年以上、場合によっては一〇〇年、二〇〇年という単位で毎年各人の年齢が記載されている「宗門人別改帳」などの史料が残されている。このような史料が残っていることはまれであるものの、多くの地域で年齢記載のある史料が残されていること自体が近世日本の特徴であると考えられる。毎年何十年にもわたって同一のフォーマットで記録され続けていたということはどのように理解すればいいのだろうか。近世ヨーロッパでは一部の地域を除くと、そのような記録は残されていない。この違いをどのように考えればよいのだろうか。また、近世日本における人口関係資料のもう一つの特徴は、多くの地域で実際の世帯と考えられる生活単位そのものが一つの単位として取り扱われ、それについての記録が毎年なされていることである。近世ヨーロッパの史料においても、世帯構造を分析できる史料がある。しかし毎年継続的かつ定期的にそのようなセンサスタイプの史料が残されているケースは、ヨーロッパではオーストリア、イタリアとスウェーデンぐらいであるとされている。それゆえ、なぜ詳しい年齢記載がなされているのか、という疑問に加えてもう一つの疑問点は、なぜ、毎年、世帯の単位で記載がされる必要があったのかということである。あるいは、なぜそのような記載の形式が持続されえたのか、ということである。年齢記載を含めて、記録された世帯の分析についてはすでに多くの蓄積がなされてきた。しかし、記録され続けたことの意味については、それほど多くの注意が払われてきたわけではない。記録された世帯について、残された史料データに基づいて現在でも多くの分析が可能であるということは、記録されたその時代においても、現在とは基準が異なるにせよ、何らかの分析可能性があったことを示唆する。この意味で、このような種類の史料が存在する社会というのは、少なくとも、家族関係については、情報編集性の非常に高い社会であったのではないであろうか。特に家族の選択的行動には実に様々な利用可能性があったと考える。これを誰がいかに利用していたかは、それぞれの時代や地域において、大きな差があったと考えるが、単に権力者側の意図が反映して作成されていたのではないことは確かであろう。その意味で、各地域の住民や地方役人は、規則としてだけでなくかなり主体的に年齢記載などを行ったのではないかと推察する。
著者
小原 和宏 鎌田 則夫 森山 智明
出版者
公益社団法人日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学年次論文報告集 (ISSN:13404741)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.1219-1222, 1995-06-01

鉄道の2線2柱7径間ラーメン高架橋(L・70m)を地中梁のない1柱1杭高架橋とした場合、地震時による大きな荷重が作用した時の破壊モードや耐力について弾塑性解析による検討牽行った。地中梁有り構造は水平震度0.375の曲げ降伏耐力で設計しているが、地中梁無し構造の場合は0.50まで曲げ降伏耐力を上げることにより、水平震度1.0程度の耐震性能を確保できる。
著者
中川 良隆
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.359-368, 2004

本研究はオーレスンリンク、東京湾横断道路、首都高多摩川・川崎航路沈埋トンネル等の大型海洋横断連絡路プロジェクトの建設マネジメントを比較して、我が国のこれからの建設事業の効率的な遂行の方策を検討することを目的としたものである.調査の結果、発注方式、発注ロット規模・数、発注者組織、発注者・コンサルタント・建設請負会社の関係、品質管理方法、設計変更方法、受注者への支払査定方法、インセンティブ等に大きな差異があることがわかった.これらの要因により工事期間が長くなる等の非効率が発生している.検討結果を踏まえ、今後の我が国の大型建設事業の遂行に当たっての効率的な建設マネジメントを提言した.
著者
児玉 元一
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
機械學會誌
巻号頁・発行日
vol.36, no.192, pp.261-264, 1933-04

本研究は材料内の温度から起る熱内力の成因と諸性質とを考究し材料特に軟鋼の破壊過程に及ぼす影響を究めるを目的とし、實驗結果を解柝する爲數式を取扱つたものである。周知の如く熱傳導基礎式は變數を分離して解ける。從つて初めの條件周邊の條件等は三角函數、円〓函數或は球函數の諸性質を利用して各別に滿足させ得る。即ち所謂ストークス法により條件式を滿足し得る基礎式積分の方法を示し軟鋼によつて二三歪模様を添えて第一報としたものである。緒論に就く前に一言御斷りし度い。曩に著者は軟鋼の歪の分類を次の如く試みた。1.結晶各個の歪.......第一次の辷り。2.結晶群としての歪.........第二次の辷り。イ、彈性歪.........(第二次)第一種第一類の辷り、ロ、粘性歪.........(第二次)第一種第二類の辷り、ハ、局部歪.........(第二次)第二種の辷り。如上の各項の前者は前報告に於て試みた分類に使用した言葉であるが之等は從來慣用されておる言葉を同語異義に使つておるので甚だ紛しい事と内容を言葉の上に表し度い考へで中原先生の御注意に從ひ此の報告から前者の代りに後者を用ひる事とする。
著者
武田 明子
出版者
奈良大学史学会
雑誌
奈良史学 (ISSN:02894874)
巻号頁・発行日
no.17, pp.41-62, 1999

江戸時代末期の庶民の生活を描いた『守貞漫稿』によると、京都の髪結の記述に「毎坊、會所ト号ケテ、市民會合ノ家一戸ヲ置ク」とあり、近世の京都の町には木戸や番所と同じく、一般的に町有の施設として町会所が置かれていた。町会所は、恒常的な自治運営の場であり、町と共同体の性格を見る上で非常に重要な共有施設であるが、その実態や成立については十分に明らかにされていないのが実情である。京都の町会所についての研究は、川上貢氏と谷直樹氏による『祇園祭山鉾町会所建築の調査報告本文編』が主なものである。山鉾町の町会所を中心に述べられており、町会所は町衆自治の伝統を継承し、育んできた町の核であったとしている。そこで本論では、京都市中の町会所を対象にして、近世の京都における町会所の役割について述べたいと思う。京都の町会所は、原則的に各町に設けられたが、行政の末端組織として取り込まれていたとされている。しかし、権力者側のみの要求で存在したものではなく、町の共同体側からの必要性にも支えられて恒常的な施設として存在していたのではないだろうか。従って、町会所が町の人々にとってどのような存在であり、役割を担っていたのかを述べることによって、町共同体からの必要性を考察したい。また、会所の役割を分析することにより、京都がどのような性格をもった都市であったのかについても考察したいと思う。内容構成においては、はじめに町会所の初見や成立要因を探り、会所の成立意義について考察する。ついで会所の設立や構造、利用方法について具体的な事例を検討し、会所の実態に迫りたい。さらに、町会所の様々な機能についても事例を集め、町共同体にとって会所がどのような役割を果たしていたのか、また、その背景について述べることにする。