著者
菅野 武
出版者
日経BP社
雑誌
日経トップリーダー
巻号頁・発行日
no.372, pp.52-55, 2015-09

この7月、国内8地域・23カ所の産業革命遺産が世界遺産に登録された。それぞれに、国の存亡を懸けて戦った偉人たちの〝想い〟が詰まっている。彼らの生きざまを通じ、現代にも役立つ人づくりの理念を学ぶ。
著者
青木 恵理子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

2015年7月5日に「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産として登録された。この遺産には、三井三池炭鉱、三菱端島炭鉱、三菱高島炭鉱など多くの炭鉱遺構が含まれている。本発表は、立て坑や繰り込み所など巨大施設に焦点をあてた世界遺産版のヘゲモニックな物語に、石炭人形など小さなモノたちに熱い望郷の念を託した「私たち」の物語が仕掛ける闘いとせめぎ合いを、集合的記憶という観点から考察する。
著者
中川 遊理
出版者
崇城大学芸術学部
雑誌
崇城大学芸術学部研究紀要 (ISSN:18839568)
巻号頁・発行日
no.9, pp.3-29,図巻頭1枚, 2015

Gunkanjima Island was recognized as a Word Cultural Heritage Site in July 2015, along with other sites of Japan's Meiji industrial revolution. This recognition was limited to some portions of the island (harbor cities and initial production facilities). However, in my opinion, the value and attraction of Gunkanjima Island is not limited to these sections of the island only. This paper presents an architetural perspective for buildings from the Taisho Era onward, particularly buildings 16-20, which are recognized as presaging the architectural "metabolism movement" (1959-1960s). Therefore, it is apperent that Gunkanjima not only has an industrial historical value from the Meiji Era, but it also has a universal value from the greater perapective of architectural history. Section 1 of this study chronicles the histoty of Gunkanjima Island as it is divided into seven periods, with an overview of each period. Section 2 confirms the definitions of modernization period monuments, industrial heritage, and heritage of industrial modernization followed by an update of the current state of the heritage of industrial modernization in Japan, as well as the position of Gunkanjima within the heritage of industrial modernization. In Section 3, site plans are used to understand, analyze, and indicate the distribution and characteristics of various structures on the island. By presenting a number of commonalities between the Gunkanjima Island structures (particularly buildings 16-20, which were mining company housing) and the municipal Motomachi high-rise apartments, which were influenced by the metabolism movement, I clarify how the structures on the small island known as Hashima (and more commonly known as Gunkanjima), presage the metabolism movement a half-century prior to the actual birth of the movement's principles, and observe how Gunkanjima has a universal architectural historical value beyond the Meiji-era industrial history,thus explaining the need for its re-evaluation.
著者
中川裕太 河野恭之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.8, pp.1-6, 2013-05-10

通常の自撮り写真ではカメラのレンズと撮影者自身との距離が最長でも腕の長さに制限されるため背景を広く写しこむことが難しい.自撮り写真の背景を広く映し込むことは写真の情報量を多くするだけではなく,1 枚の写真で撮影者自身の様子と周囲の状況を見栄え良く伝えられるため,SNS への投稿など体験の記録や共有に効果的である本研究では自撮り動画像から人物領域を抽出し,背景のみを繋ぎ合わせた背景パノラマ画像と人物のみの画像を生成して重ね合わせることで従来では撮影しづらかった背景が広く写った自撮り写真を生成する手法を提案する.自撮り動画像はカメラを持った腕を前方に伸ばして撮影者が写り込むようにし,カメラは撮影者自身に向けたまま身体が中心軸になるように腰を回転させて撮影するものとする.この撮影方法で得られた動画像中の背景領域は横軸方向へ変動するのに対し人物領域はほぼ変動しない.この変動の差異を動画像中の特徴点移動量と分割ブロックごとの輝度の時間軸変動から検出して人物領域を推定し,残りの背景領域を背景の移動量に合わせて重ね合わせた背景パノラマ画像に貼り合わせることで自撮りパノラマ写真を生成する.
著者
今村 友則
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

1. はじめに 多雪山地の自然斜面には,積雪グライドや雪崩などの雪食作用で植生が剥ぎ取られた裸地が存在する。本稿では,これらの裸地を雪食裸地と呼ぶ。雪食裸地は,多雪山地の景観を特徴づけるだけでなく,斜面侵食の影響評価を行う上でも重要である。雪食裸地の侵食プロセスについては,土砂災害防止や森林保全を目的に研究が行われてきた。侵食量を定量化する方法として,雪崩堆積物や流出水に含まれる土砂量を測定するのが一般的であるが,侵食量の直接的な算出は困難であった。本研究では,三国山脈平標山の雪食裸地について,SfMを用いて作成したDSMの標高変化値を調査し,雪食裸地に働く夏季の侵食プロセスを考察する。 2. 調査地域と研究方法 調査地域は,上越県境に位置する三国山脈平標山 (1983.3 m) の南西斜面である。対象とした雪食裸地は,地表面の粒度組成や傾斜が異なる4つの裸地 (A1, A2, B1, B2) であり,2016年の夏季に2~4回の調査を行った。 調査には,多数のステレオペア写真から被写体の3次元構造を復元するSfM (Structure from Motion) という方法を用いた。自撮り棒を用いて裸地を多方向から撮影し,高解像度DSM (Digital Surface Model) を作成した。この方法での,実際の地形とDSMの標高誤差は1 cm未満である。異なる撮影日から得たDSM同士の差分をとり,裸地の標高変化値とした。解析結果を,裸地に設置した定点カメラデータや,付近の気象データ等と比較し,雪食裸地の夏季における侵食量と,その要因について考察した。 3. 裸地A1の標高変化 裸地A1 (7月, 8月, 9月, 10月に撮影) は,全体が茶褐色の風化土層に覆われ,3~10 cmほどの亜角礫が散在する。裸地上部の傾斜は20 °以上,下部は10 °未満で,明瞭な傾斜変化がある。差分解析の結果,7~8月にかけて,裸地上部で2~3 cmの侵食,下部で2.5~3.5 cmの堆積が生じていた。侵食域と堆積域は,傾 斜20°の線で区分される。一方,8~9月,9~10月の差分値は1 cm未満であった。山麓の新潟県湯沢町 (340 m) では,7月28日に日最大1時間降水量42.5 mmが記録されていた。定点カメラには,7月28日前後で,礫に被さっていた土壌が削り取られる様子が確認された。また,Google Earthによる2010年と2015年の空中写真を比較すると,裸地面積が2倍以上に拡大していた。 4. 裸地A2, B1, B2の標高変化 裸地A2 (6月, 10月) は,風化土層の上を3~15 cmの亜角礫が覆い,傾斜25 °以上の直線型斜面を呈す。差分解析の結果,1 cm以上の侵食・堆積は見られず,礫移動による3~10 cmの断片的な標高変化が多数確認された。また,Google Earthの2010年と2015年の空中写真を比較すると,裸地面積が縮小していた。 B1 (7月, 8月, 10月) ,B2 (6月,10月) は,全体が5~20 cmの亜角礫で密に覆われる。B1は傾斜30 °以上の直線型斜面である。B2は裸地上部の傾斜が25 °以上,下部が5 °未満であり,明瞭な遷緩線が見られる。差分解析の結果,B1, B2とも1 cm以上の侵食・堆積は見られず,礫移動による断片的な標高変化も数地点で確認されるに過ぎなかった。 5. 考察 以上の結果より,雪食裸地は夏季において,主に短時間豪雨による雨水ウォッシュで侵食されるが,その量は,地表面の粒度組成と傾斜に規定されると考えられる。裸地A1のように,雨水で削られやすい風化土層に覆われている場合,急斜面での土壌侵食と緩斜面での土砂堆積が行われ,裸地面積は拡大傾向にある。一方,裸地B1, B2のように,地表面が礫で密に覆われる場合,雨水で削られにくいため,わずかに生じる礫移動以外では,ほとんど地形変化が起きない。裸地A2では,風化土層に覆われているものの,雨水ウォッシュによる侵食は見られず,裸地面積は縮小傾向である。この要因については,礫の被覆割合や,裸地発生後の経過時間が関係すると考えられるが,現時点では不明である。
著者
安藤 哲生 川島 光弘
出版者
立命館大学
雑誌
社会システム研究 (ISSN:13451901)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-22, 1999-03-31

本稿は立命館大学BKC社系研究機構が,福岡県国際技術取引推進協議会からの研究委託に基づき,日中間技術取引促進の前提となる諸条件を解明しようとしたものである.中国の科学技術,技術移転を取り巻く動向を見ると,自主開発については公的R&D機構中心のR&D体制から企業中心へと改革中であり,一定の変化が認められる.技術導入については年々拡大する傾向にあるものの,プラント・設備偏重導入,重複導入,弱い自主開発との結合などの問題点を抱えている.技術導入に関わる法令は,いくつかの論争点が含まれており,技術導入の認可プロセスは複雑で注意が必要である.技術導入の意思決定,交渉,技術使用の各局面で主体が異なるという従来の問題はほぼ解消され,企業が各局面で主体性を有していると言える.技術取引市場一般について見ると,技術取引は一般商取引とは異なる特徴を有し,技術情報が取引対象になるには,導入側は対象技術の技術的・経済的有用性などを,供与側は対価獲得の有利性などを認識し,双方によって取引の必要性が認識されなければならない.このような技術取引を規定する諸条件のもと,96年より新たな技術取引形態として日中テクノマート(技術商談会)が試みられている.'98日中テクノマートで双方の参加企業にアンケート・ヒヤリング調査が行われた.その分析の結果からは,事前情報交換の促進,商談・説明に対する考え方の相互理解,多数の「合作」希望への対応など幾つかの課題が見いだされた.とりわけ中国の場合,資本不足から技術取引に限定した形態が難しいという点は,今後の日中技術移転促進にとって最大の課題であると言えよう.
著者
宮崎 睦子 田口 昭彦 櫻木 志津 篠原 健次 井上 康 Mutsuko MIYAZAKI Akihiko TAGUCHI Shizu SAKURAGI Kenji SHINOHARA Yasushi INOUE 山口県立中央病院内科 山口県立中央病院内科 山口県立中央病院内科 山口県立中央病院内科 山口県立中央病院内科 Department of Medicine Yamaguchi Prefecture Central Hospial Department of Medicine Yamaguchi Prefecture Central Hospial Department of Medicine Yamaguchi Prefecture Central Hospial Department of Medicine Yamaguchi Prefecture Central Hospial Department of Medicine Yamaguchi Prefecture Central Hospial
雑誌
山口医学 = Yamaguchi medical journal (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.183-187, 2003-10-31
参考文献数
12

A 66-year-old male complained of thickening of the skin at the face, posterior neck and back after a febrile episode. The patient had obesity, elevated levels of HbA1C and urinary C-peptide. The seological tests for collagen diseases were negative. The serum level of vascular endothelial growth factor (VEGF) was elevated. The biopsied skin specimen revealed the thickening of the dermis by the increased proliferation of collagen fibers, thickening of collagen bundles with fenestrations and infiltration of lymphocytes. Scleredema caused by diabestes mellitus and obesity was diagnosed, accompanied with insulin resistance. The patient was initially treated with administration of prednisolone, followed with diet therapy. Scleredema ameliorated partially, however elevated level of VEGF persisted after 6 months of discharge. It is unclear whether elevated level of VEGF may be related to the pathogenesis of the disease or may be an aggravating factor.
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.600, 2014-09-22

三重県発注工事の施工ミスで6カ月間の指名停止になった地元建設会社が8月28日、「担当者個人のミスで、組織的な隠蔽はない」などとして、県に指名停止の取り消しを求める異例の申し入れをした。 施工ミスがあったのは、村田組(三重県尾鷲市)が2012年度に約7…
著者
内村 浩二 勝田 雅人 三浦 伸之
出版者
日本茶業技術協会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.103, pp.51-60, 2007

(1) 茶葉中無機元素含量は,一心三葉の分析ではMg,BaおよびCu含量に,荒茶の分析ではBaに品種間差が認められた。<BR>(2)荒茶中の12元素(K,Ca,Mg,Al,B,Ba,Cu,Fe,Mn,Ni,Sr,Zn)を用いた主成分分析結果から,第1主成分で因子負荷量が高い値を示したBa,Ca,Srはシラスとそれ以外の土壌を,第2主成分で因子負荷量が高い値を示したAlとMnは火山灰と安山岩あるいは花崗岩を概ね分類する傾向にあった。<BR>(3) 判別分析の結果,土壌の母材ごとの4群の産地判別には,Ba,Mn,K,B,Sr,Znの6元素が有効であった。得られた判別式の信頼性をモデルに用いなかった26点の荒茶試料で検定した結果,73%の判別適中率であった。<BR>(4) 火山灰とその他の土壌の2群の産地判別には,Mn,Ba,K,Ni,Znの5元素が有効で,その判別適中率は80%であった。
著者
内尾 優 長谷川 三希子 猪飼 哲夫 楠田 聡 内山 温 藤本 泰成 新田 收
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>新生児期~乳児期初期にみられるまだ意思を持たない運動は自発運動と呼ばれ,その運動を通した経験により感覚運動発達は進む。早産児として出生した超低出生体重児は神経学的異常がみられなくとも,正期産児に比べ自発運動は劣り,感覚運動発達全般が遅延する。しかし,その自発運動を客観的に評価したものや介入による改善を報告したものは少ない。超低出生体重児の頭部は大きく,縦長扁平で,非対称な姿勢を呈しやすい特徴を持つ。そこで今回,超低出生体重児の自発運動の特徴,及び新生児用枕の有無による自発運動への即時的影響を明らかにすることを目的とした。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は神経学的異常のない超低出生体重児8名(男5/女3,平均在胎週数24週6日±2週0日,平均出生体重729.4±144.8g),正期産新生児8名(男4/女4,平均在胎週数38週1日±0週6日,平均出生体重3152.6±390.2g)とした。評価機器は乳児自発運動評価を目的にプログラミングされたKinect for Windows v2を用い,両手首に異なる2色のマーカーを貼布した。評価は修正月齢約1か月に,超低出生体重児は新生児集中治療室内,正期産新生児は対象児の自宅内で外的刺激の少ない環境下にて行った。肌着1枚を着せた状態で,背臥位での自発運動を各群とも新生児用枕有無の2条件で約3分間ずつ記録した。枕の有無は対象毎に無作為に順番を入れ替えて行った。解析対象は児の機嫌が良いstate 4の状態で,かつ自発運動が連続して確認できたはじめの30秒間とし,評価機器より得られた両手首の3次元座標データ(34 Hz)から各指標 ①平均速度,②非対称性(左右上肢平均速度のLaterality Index),③突発性(加速度の尖度),④滑らかさ(躍度Jerk Index)を算出し,両群を枕の有無で比較した。統計解析は各指標に対し,対象(超低出生体重児,正期産新生児)と枕(有,無)を要因とする二元配置分散分析を行った。さらに対象の違いと枕の有無を含めた全ての4条件をBonferroni法による単純主効果の検定にて検討した。有意水準は5%とし,統計ソフトにはSPSS ver.23を用いた。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>二元配置分散分析の結果,各指標①~④に対し,枕による主効果,交互作用は認めなかった。単純主効果の検定の結果,枕無し条件での②非対称性(左右上肢平均速度のLaterality Index)は,超低出生体重児のほうが正期産新生児に比べ,有意に大きかった(p<0.01)。枕有り条件では有意差はみられなかった。指標①,②,④では有意差はみられなかった。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>神経学的異常のない超低出生体重児の上肢自発運動は,正期産児と同様の速度,突発性,滑らかさを有していたが,左右の非対称性があることが示された。また,新生児用枕の使用により非対称性を軽減する可能性が考えられた。</p>
著者
大澤 博隆 栢野 航 遠藤 航 三浦 友博 丹波 正登 守谷 友里 結城 明 長野 正
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1128-1136, 2016-04-15

技術の発達によって機器の機能が増加している.増加した機能をユーザに分かりやすく伝える手法として,擬人化エージェントを用いた機能説明が提案されてきた.本研究では擬人化エージェントを実世界に拡張させる演出を用いて,複合機(Multi-Function Printer,MFP)の操作説明を行い,人間のインタラクションがどのように変化するか検証した.検証結果として,スクリーン上のエージェントの説明を実世界に拡張することにより,その後のユーザの操作時間が有意に短くなることを確認した.また,ユーザの発話量が有意に増加すること,説明後に学習への興味が向上することが評価結果から示唆された.Technological advancements have enabled both home and office appliances to have more functions, and these increasing features makes the appliance more difficult to learn. Explanation from an anthropomorphic agent have been proposed for explaining such complex features. We propose to extend an agent that instructs users about the features of MFPs by extending representations with real-world actuators. The agent hides its real eyes and arms in onscreen mode, and extends them in real-world mode. We created the movable devices and evaluated how this transitional expression supports users' understanding of how to manipulate the MFP and enhances users' motivation to use it. The result suggests that transitional explainer decreased manipulation time of users compared with non-transitional condition. We also surveyed increasing users' verbal behaviors and increased impressions scores that suggest user increased interest for repairing MFP.
著者
奥村 三雄
出版者
中央図書出版社
雑誌
国語国文 (ISSN:09107509)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, 1956-09
著者
鈴木 憲太郎 園部 宝積
出版者
JAPAN WOOD PRESERVING ASSOCIATION
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.154-160, 1993
被引用文献数
4

CCA廃材の埋設処分の可能性を調べるため,用途廃止はされたが腐朽の認められないCCA処理電柱廃材を土中に埋設し,近傍の土壌中のCCA構成成分である,クロム,ヒ素,銅の含有量を埋設後それぞれ6ケ月,6年経過後に測定した。埋設前のCCA処理丸太廃材の流脱性については,砒素の流脱量は4本のうち2本の丸太で他より高い値を示していた。しかし,これらの値は総理府令で定める溶出量の埋立基準の1.5mg/lよりも低い値であった。6価クロムについては丸太間の差は認められず,全て総理府令で定める溶出量の埋立基準の1.5mg/lより低い値でまた,埋設後においても,6ケ月経過,6年経過のいずれも,CCA処理丸太及びチップ周辺の土壌中の6価クロム量は,検出限界である0.05mg/lを下回った。丸太と接触させた土壌試料の場合,クロム含有量については,木口横の分析値は丸太下5-10cmの値よりもやや高い値を示したが,対照土壌の値を大きく上回らなかった。砒素含有量については,木口横の分析値は,特にNn.2とNo.4の丸太で,丸太下5-10cmの値よりも2,3倍高い値を示したが,丸太下5-10cmの値は対照土壌試料の値と同等と見なせた。銅含有量については,木口横の分析値は丸太下5-10cmの値よりもやや高い値を示したが,対照土壌試料の値を大きく上回ることはなかった。6年間の野外土壌接触試験結果では,丸太及びチップ直下の土壌中の銅,クロム,砒素の含有量は,対照土壌と考えられる同じエリア内にある非接触土壌の分析値を越える値にはないことが認められた。以上から,少なくも今回の試験規模である,CCA処理廃材を1m2の土壌にCCA処理丸太を0.15m3,同チップを0.085m3程度埋設した場合を大幅に越えない範囲でCCA廃材を土壌中に埋設した場合,土壌埋設を長期間続けたとしても,CCA廃材に起因する環境中の金属量の増加は無視し得る程度と考えられ,構成金属の流脱による土壌汚染のおそれは少ないと考えられた。