著者
和仁 良二
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.43-59, 2017-03-31 (Released:2019-04-03)

This paper reviews the Cretaceous ammonoid paleontology mainly in the North Pacific region, especially for recent publications. The species diversity changes through Cretaceous and its relevant articles are first reviewed. The review is continued from the points of view of the morphological analyses of shell shape, the relationship between ammonoid fauna and lithofacies, the isotopic analyses of ammonoid shells, the relationship with other organisms, and taphonomy, etc., for normally coiled and heteromorphic ammonoids, respectively. Finally, the characteristic of ammonoid diversity change in North Pacific region and the ammonoid extinction around the Cretaceous/Paleogene boundary are reviewed.
著者
中川 まり
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.201-212, 2010-10-30 (Released:2011-10-30)
参考文献数
28
被引用文献数
4 3

本研究の目的は育児・家事に対する妻の家庭責任意識が夫の育児・家事参加に影響しているか,そして妻の家庭責任意識が就業の有無や相対的資源から規定されているのかを明らかにすることである。対象は12歳以下の末子をもつ有配偶の妻682名である。二次データを用いた分析の結果,妻の家庭責任意識の強さが,夫の育児・家事参加を直接少なくするが,妻が責任意識によって行う育児・家事の多さが,相対的資源差による他の要因よりも強く育児・家事参加を制約することが明らかになった。また妻の家庭責任意識は,高い学歴を得て就業することで弱くなるが,相対的資源が少ないほど責任意識が強まることが明らかになった。この結果より,社会的に構築された妻の家庭責任意識が直接的に,さらに妻の育児・家事遂行を通して間接的にも,夫の育児・家事を強く規定しており,夫の育児・家事参加の促進のためには,夫だけでなく妻の要因も重要であることが示唆された。
著者
柴田 洋孝 伊藤 裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.805-810, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
13
被引用文献数
3

偽性アルドステロン症は,甘草(グリチルリチン酸)の慢性摂取により,高血圧,低カリウム血症,低レニン血症,低アルドステロン血症を呈する疾患である.腎臓の皮質集合管細胞にあるミネラルコルチコイド受容体(MR)に,アルドステロンとコルチゾールは等しい親和性で結合するが,通常,11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 2によるコルチゾールからコルチゾンへの不活化により,アルドステロンが選択的にMRに結合する.グリチルリチン酸は,この酵素活性を可逆的に阻害することにより,腎臓内で上昇した内因性コルチゾールにより,MRを活性化して,Na再吸収およびK排泄が亢進するのが病態である.治療としては,原因薬物や食物の減量または中止であるが,一部の症例ではミネラルコルチコイド過剰症状が遷延することがあり,減塩,K補充,MR拮抗薬のスピロノラクトン投与などが有効である.
著者
濱田 哲 松原 雄 遠藤 修一郎 山田 幸子 家原 典之 中山 晋哉 伊丹 淳 渡辺 剛 坂井 義治 深津 敦司
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.541-545, 2009-06-28 (Released:2009-09-15)
参考文献数
6
被引用文献数
1

症例は,69歳女性で,食道癌手術目的で入院,初回血液透析終了後から発熱を生じるようになった.種々の原因検索の結果,先発医薬品(以後先発品),後発医薬品(以後後発品)両者の含めたメシル酸ナファモスタットが原因であることが分かった.詳細に臨床症状を検討した結果,両者では副作用発現様式に明らかな相違が認められた.後発品の場合,使用回数とともに発熱までの時間が短縮し,血圧低下も合併するようになった.一方,先発品に変更後は後発品と同様に発熱は認められたが,透析終了後一定時間を経過して生じるようになり,アナフィラキシー症状は認められなかった.この相違に対して可能な限りの血清学的検索を行った.DLSTでは後発品使用後116日目に陽性,先発品は128日目に陰性,以後は両者とも陰性であった.先発品でメシル酸ナファモスタットに対するIgE抗体は陰性,IgG抗体は陽性であった.後発品では抗体検索システムが確立されておらず測定不可能であった.以上の結果を総じて,透析関連性の発熱の原因としてメシル酸ナファモスタットが原因であること,先発品・後発品で明らかに発症状況に差があり,発症機序が異なっていることが示唆された.先発品ではIgGによる免疫反応が発熱の原因であると推測された.しかし後発品のアレルギー症状と免疫反応との関連が発症機序の理解に重要であると考えられたが,原因検索システムが整備されておらず解明できなかった.本症例のように,先発品,後発品両者の間で,アレルギー症状発現様式に相違があることを,詳細に分析した症例報告は検索した範囲内では認められなかった.後発品においても先発品同様副作用の原因検索システム構築が重要であることを指摘する上でも貴重な症例であると考えられた.
著者
今井 由美子
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.138, no.4, pp.141-145, 2011 (Released:2011-10-11)
参考文献数
40

近年,SARS,H5N1鳥インフルエンザ,そして2009年の新型インフルエンザ(H1N1)と,新興ウイルス感染症が社会的問題となっている.これらの新興ウイルス感染症はヒトに急性呼吸窮迫症候群(ARDS),全身性炎症反応症候群(SIRS),多臓器不全(MOF)をはじめとした非常に重篤な疾患を引き起こし,集中治療室(ICU)において救命治療が必要となる.2009年にパンデミックを引き起こした新型インフルエンザ(2009/H1N1)は弱毒型であったが,一部では重症化してARDS,心筋炎,脳炎などを引き起こした.その中には少数ではあるが,体外式膜型人工肺(ECMO)を必要とするような劇症型のものも含まれていた.一方,東南アジア,中国などを中心に拡がりをみせている強毒型のH5N1鳥インフルエンザが,次の新型インフルエンザのパンデミックを引き起こすリスクは依然として続いている.しかしながら新興ウイルス感染症が重症化して,ARDS,SIRS,MOFを引き起すメカニズムは十分解明されておらず,重症化すると決め手となる有力な治療法がない.本章では新興ウイルス感染症による呼吸不全の病態に関して,インフルエンザによるARDSの発症機構に焦点を当てて,RNAiスクリーニング,マウスモデル,ヒト検体などを用いた研究を中心に述べる.次いで,抗ウイルス薬,新しい治療薬の可能性に触れ,最後に,救命に不可欠である人工呼吸に関して,肺保護戦略の重要性に言及したい.
著者
Md. Sha Alam Nobuko Tuno
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.25-30, 2020-03-25 (Released:2020-03-25)
参考文献数
27
被引用文献数
5

Aedes albopictus has originated in Asia and expanded its range worldwide in the last 30 years. In Japan, this species occurs from the Ryukyu islands to Tohoku district, whereas its sibling species Ae. flavopictus is distributed throughout Japan including Hokkaido. On the other hand, the former mainly inhabits residential area, while the latter does natural environments such as bamboo groves and forests. To understand how they differ in habitat use, their performance was compared under various temperature regimes, i.e., constant temperatures of 22, 25 and 28°C and a fluctuating temperature regime of 20–30°C (mean: 25°C). Mortality from the first instar stage to adult emergence was significantly higher in Ae. flavopictus than in Ae. albopictus at constant temperatures of 25 and 28°C. Development time was significantly longer in Ae. flavopictus than in Ae. albopictus at 28°C. The proportion of females that did not oviposit was significantly higher in Ae. flavopictus at a constant temperatures of 28°C and a fluctuating temperature regime. Thus, Ae. albopictus is at least more adapted to higher or fluctuating temperatures than Ae. flavopictus. Such difference in their temperature adaptation may be one of factors that cause their different geographic distribution and habitat use.
著者
青井 典明
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-6, 2013 (Released:2013-05-15)
参考文献数
21
被引用文献数
4

扁桃周囲膿瘍は, 日常診療でしばしば経験される疾患であり, 抗菌薬の投与とともに穿刺あるいは切開排膿, 膿瘍扁摘等を行えば比較的容易に治癒する予後良好な疾患である. 一方で適切な治療を行わなければ, 気道狭窄をきたす恐れもあり, また深頸部膿瘍, 更には降下性壊死性縦隔炎や縦隔膿瘍に進展し, 命に影響を及ぼす疾患であり, 迅速かつ的確な診断と治療を必要とする. 扁桃周囲膿瘍の治療については膿瘍扁摘と比較し, 比較的安全に行うことができる手技として穿刺排膿と切開排膿がある. しかしながら穿刺排膿あるいは穿刺排膿ができなくとも, 抗菌薬およびステロイド等による保存的加療のみで改善する症例もあれば, 増悪して深頸部膿瘍に至る症例もある. 本稿では扁桃周囲膿瘍に対する穿刺排膿あるいは切開排膿のそれぞれの特徴, その限界について文献的考察を含め検討したい.
著者
北条 伸克 井島 勇祐 杉山 弘晃 宮崎 昇 川西 隆仁 柏野 邦夫
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.A-J81_1-17, 2020-03-01 (Released:2020-03-01)
参考文献数
46

This paper aims at improving naturalness of synthesized speech generated by a text-to-speech (TTS) systemwithin a spoken dialogue system with respect to “how natural the system’s intention is perceived via the synthesizedspeech”. We call this measure “illocutionary act naturalness” in this paper. To achieve this aim, we propose toutilize dialogue-act (DA) information as an auxiliary feature for a deep neural network (DNN)-based speech synthesissystem. First, we construct a speech database with DA tags. Second, we build the proposed DNN-based speechsynthesis system based on the database. Then, we evaluate the proposed method by comparing its performance withtwo conventional hidden Markov model (HMM)-based speech synthesis systems, namely, the style-mixed modelingmethod and the style adaptation method. The objective evaluation results show that the proposed method overwhelmsthe style-mixed modeling method in the accuracy of reproduction of global prosodic characteristics of dialogue-acts.They also reveal that the proposed method overwhelms the style adaptation method in the accuracy of reproduction of sentence final tone characteristics of dialogue-acts. The subjective evaluation results also show that the proposed method improves the illocutionary act naturalness compared with the two conventional methods.
出版者
京田辺
雑誌
同志社看護 = Doshisha kango (ISSN:24240184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.29-37, 2016-03-31

目的:本報告は,認知症の人と家族の円滑な意思決定を支援する方法を探求するために,認知症の人の意思決定における介護支援専門員(以下,専門員)の支援状況と課題を文献から検討した。 方法:文献選定には医学中央雑誌Web版およびCiNii Artclesを用い,キーワードを「介護支援専門員」「認知症」「意思(意志)決定」「居宅介護支援」とした。該当した文献から会議録,総説・解説,重複したものを除き,その中から専門員が行う認知症の人の意思決定支援に関する文献8 件を選定し,ハンドサーチした3 件と合わせ,合計11 件を分析対象とした。 結果:11 件の文献を類似性に従って分類すると,認知症の人に対する説明・同意とその影響を検討した文献,認知症の人への支援から意思決定に言及した文献,高齢者の意思決定支援に関する文献,困難事例の検討から意思決定について言及した文献の4 つに分類された。これらの文献から,認知症の人の意思決定における専門員の支援状況として,意思決定の前提である情報の適切な提供が,認知症の人に対して充分行われているとは言えず,意思決定には家族の意向が優先されやすい現状にあることが明らかになった。また,専門員が行う居宅介護支援を困難にする要因として,家族間での意向の不一致や本人のサービス拒否に関する記述が多く,支援が困難になる状況には意思決定に関する問題が複雑に絡んでいることが示唆された。 考察:認知症の人に対する意思決定支援に焦点を絞った調査は少なく,居宅介護支援の中での困難事例を検討している文献が多くみられた。意向の不一致や,その調整の困難などの意思決定に関する問題には,認知能力・判断力の低下の問題が潜んでいるが,そこに限局した調査がほとんどみられない。今後は認知症の人とその家族の意思決定に関して,専門員がどのように調整を行い介入しているかの詳細な検討を行っていく必要がある。資料
著者
古關 裕而[作曲]
出版者
ニッチク
巻号頁・発行日
0000
著者
児玉 謙太郎 牧野 遼作 清水 大地
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J102-A, no.2, pp.26-34, 2019-02-01

本研究では,じゃんけんというマルチモーダルなコミュニケーションにおいて,音声による聴覚情報が参与者間の身体の協調・同期に及ぼす影響を実験的に検討した.その際,力学系アプローチという視点からコミュニケーションを自己組織化現象と捉えた.そして,コミュニケーション過程を参与者間の知覚情報を介したリアルタイムな行為の調整過程とみなし,身体協調を非線形時系列解析により評価した.実験により「最初はグーじゃんけんぽん」という掛け声を発する通常条件と掛け声を発しない声なし条件を比較した結果,じゃんけんの最終段階での参与者2名の手の振り降ろしの時間差には,条件間で有意な差はみられなかった.一方,行為の開始から終了に至る過程の参与者の手の協調における安定性と予測可能性に有意な差がみられ,通常条件のほうが,参与者間の手の協調が安定し,予測可能性が高い動きをしていたことが明らかとなった.これらの結果から,ヒトは数秒という短い時間に行われるコミュニケーションであっても,1)聴覚情報が利用できない条件では参与者らはリアルタイムに視覚情報を利用し,結果的に同期を達成できるよう柔軟に振る舞うこと,ただし,2)その行為の調整過程での身体の協調には聴覚情報が影響すること,が示唆された.
著者
大林 隆司
出版者
首都大学東京
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.53-57, 2008-03

小笠原諸島は2007年1月に世界自然遺産の「暫定一覧表」に記載されることが決定した。そのため、各種の外来生物への早急な対策がますます求められており、ニューギニアヤリガタリクウズムシについても同様である。筆者は2006年に小笠原諸島における本種の状況について述べたが、それ以降の小笠原諸島における本種の知見(対策も含む)を述べた。
著者
高見 美保 中筋 美子 野村 陽子
出版者
兵庫県立大学臨床看護研究支援センター
雑誌
Phenomena in Nursing (ISSN:24324914)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.R1-R14, 2018-08-08

【目的】本研究の目的は,「3つの認知症ステージ(軽度~中等度~重度)」に該当する認知症者とその家族および,その者への診療に関わっている医師に対して,認知症ケアに携わる専門職(看護師,介護福祉士)が留意している関わりの特徴を明らかにすることである。【方法】データ収集は医療機関,介護老人保健施設,特別養護老人ホーム・認知症対応型グループホームで行い,看護師13名,介護福祉士9名から,研究目的に沿った聞き取り調査を面談方式で実施した。得られたデータは,内容分析法(content analysis)で分析した。【結果・考察】分析の結果,「認知症のステージが発症~軽度の時期」では,認知症者と家族に起きている状態を丁寧に聴取し,介入すべき時を待つという基本ケアは定着しているが,認知症者の有意義な治療効果を得るための介入は,ケア専門職に留意され難いことが明らかとなった。また,「認知症のステージが中等度の時期」では,行動・心理状況(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)に対するアセスメントとして,認知症者が示す言動から情報収集と検討を繰り返し,症状に隠された「その人」を掘り起していく,という関わりがなされていることが明らかとなった。そして,認知症者への療養環境づくりでは,ケア専門職が,認知症者に家族や医師からの関与を途切れさせない,という人的環境づくりを核に据えたケア環境の調整を実施していることが新たに分かった。さらに「認知症のステージが中等度~重度の時期」では,認知症者の意思をくみ取る努力が続けられ,医師と連携して,認知症者と家族にとって穏やかな最期の時が迎えられるように留意していることが明らかとなった。しかし,療養生活への具体的な意思決定支援や,認知症者の"合併症を予防する"ケアについては,明確に現れなかった。これらのことから,多職種に働きかけて認知症者と家族にとって必要なケアを押し進めていく実行力とマネジメント力を持つことや,認知症者の全般的なフィジカルアセスメントを積極的に行い,認知症者のQOLを低下させない介入を実施することが,今後の認知症ケアの発展に求められることが示唆された。