著者
鷲尾 方一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.385-393, 2017-10-15 (Released:2017-10-15)
参考文献数
14
被引用文献数
1

放射線化学反応は,反応に影響を及ぼす物理定数やパラメータが多数にわたり,さらに放射線の種類によっても反応の初期の活性種の分布等が異なるため,その完全な理解のためには非常に複雑でかつ高度な知識が必要となる。そのため,この分野の研究者以外からみると,汚い科学という汚名を着せられたりもしてきた。しかし,放射線を使った産業,医療等への応用技術が大きく広がっている現在では,放射線化学の全知識を動員した反応への理解が極めて重要な状況を迎えている。放射線化学研究に求められる要請はますます深まるものと考えられる。本稿ではできる範囲で、この複雑な放射線化学の体系を概観した。
著者
高橋 和雄 藤井 真
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.567, pp.53-67, 1997-06-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
10

地震, 風水害などの一過性の災害と異なって, 火山災害は長期化する特性をもつ. 火砕流に対して人命を守るために, 市街地で初めて警戒区域が設定された. わが国の災害対策は主として一過性の災害応急対策および被災者対策を対象としているために雲仙普賢岳の火山災害では被災者対策, 住宅対策, 生活再建計画などに多くの教訓と課題が生じた. 行政は, 現行法の拡大解釈および弾力的運用による21分野100項目の自立支援対策, (財) 雲仙岳災害対策基金および市町の義援金基金等によるきめ細かい被災者対策を行った. しかし, 災害対策システムの見直しなどの根本的な課題の解決はまだこれからである, 本報告では, 雲仙普賢岳の火山災害における被災者対策をまとめている.
著者
鹿毛 敏夫
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.112, no.2, pp.153-190, 2003-02-20 (Released:2017-12-01)

The Otomo family (大友氏), which dominated a large part of northern Kyushu (九州) had a firm intention to trade in Southeast Asia. The Muromachi shogunate (室町幕府) ordered them to remit sulfur for export. Then Otomo Ujitoki managed two sulfur mines in the mountain district of Bungo (豊後). Otomo Chikayo expanded the mining business geographically, and built a big ship called the "Kasuga-maru (春日丸)". The Otomos dispatched trade ships to Korea, China, the Ryukyus (琉球), and several countries of Southeast Asia. In particular, Otomo Yoshishige and Ouchi Yoshinaga, who were brothers, dispatched a fleet to China for trade, but they were considered as smugglers by the government. They went to the coastal areas of the South China Sea, and traded with the merchants who passed through there.
著者
藤澤 明
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ジョージアを含む南コーカサス地方での銅合金利用の歴史は古く、初期青銅器時代からの多くの資料が発掘されている。それらを収蔵しているのがジョージア国立博物館である。そこで、2014年より国立博物館と共同で、初期青銅器時代から鉄器時代までの銅合金製資料の調査を行った。その結果、検出された銅合金の種類は、砒素銅、青銅、銅-錫-砒素合金、真鍮であり、初期青銅器時代から初期鉄器時代にかけて砒素銅合金が検出されている。これまで当該地域においては、中期から後期青銅器時代の間に使用される銅合金が砒素銅から青銅に切り替わるとされてきた。しかし、砒素銅は初期鉄器時代に至るまで使用され続けたことが明らかとなった。
著者
扇野 綾子 中村 由美子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.1-9, 2014 (Released:2016-12-09)
参考文献数
19
被引用文献数
3

本研究の目的は、慢性疾患患児を育てる母親の心理的適応の構造の特徴について明らかにすることである。 病児の母親247名と健康児の母親332名を対象に、自記式質問紙調査を行った。心理的適応に関連する要因として精神的健康度、コーピング、レジリエンスを測定し、分析は記述統計と平均値の差の検定の後、共分散構造分析を用い母親の心理的適応モデルを作成した。 各尺度の得点を比較した結果、病児の母親は健康児の母親に比べて精神的健康度が低く、レジリエンスの 「I AM」 「I WILL/DO」、コーピングの 「肯定的解釈」 が有意に低かった。共分散構造モデルについて、子どもの疾患の有無による多母集団の同時分析を行った結果、病児の母親の心理的適応を構成する要因では 「自信」 の影響が大きく、『柔軟な力』を構成する 「楽観視」 と 「こころのゆとり」 のパス係数が高かった。 これらの結果より、病児の母親に対しては育児を承認し、長期的な視点をもち関わるなど支援の方向性の示唆が得られた。
著者
小林 明日香 渋川 周平 高野 晋 室 伊三男
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.74, no.10, pp.1180-1185, 2018 (Released:2018-10-20)
参考文献数
12

We have found that the number of packages influences contrast for brain tissue signals on fluid-attenuated inversion recovery (FLAIR). The purpose of this study was to evaluate the contrast of white and gray matters by changing the number of packages. In a volunteer study (n=8), FLAIR images were obtained with the various number of packages (number of package=2, 3, 4, 5). We investigated the same imaging condition at both 1.5 and 3.0T. The signal intensity of white and gray matters in all volunteers was increased as increasing the number of packages. Moreover, the contrast ratio between white and gray matters was slightly decreased. In our conclusion, the contrast between the gray and white matters on FLAIR was influenced by the number of packages.
著者
来間 千晶 小川 茜 関矢 寛史
出版者
日本スポーツ心理学会
雑誌
スポーツ心理学研究 (ISSN:03887014)
巻号頁・発行日
pp.2019-1814, (Released:2019-04-27)
参考文献数
35
被引用文献数
2

The purpose of our study was (1) to clarify the elements and mechanisms of loss of spirit (LOS), and the ways to prevent LOS during competition, and (2) to identify the factors that prevent LOS. We interviewed 18 athletes and analyzed their interview transcripts by creating tags and categories. We divided the text of each transcript into text segments (tags) containing information about LOS or ways to prevent LOS. We then gathered tags with similar meanings and labeled the cluster of tags (categories) to briefly indicate the topic (Côté et al., 1993). Results revealed that the phenomenon of LOS had the following three phases: (1) cause of LOS (e.g., game situations, negative emotions), (2) condition of LOS (e.g., poor concentration, losing the will to fight, negative game situations), and (3) response after the game (e.g., undesirable result). The phenomenon of preventing LOS had the following five phases: (1) cause of nearly experiencing LOS (e.g., game situations, negative emotions), (2) condition of nearly experiencing LOS (e.g., decrease of concentration, losing the will to fight), (3) opportunity to prevent LOS (e.g., positive words and actions of others, heightening the fight), (4) condition after preventing LOS (e.g., improvement of performance, emergence of positive emotions), and (5) response after the game (e.g., evaluation of the game). Furthermore, a comparison of these phenomena revealed that LOS may be prevented by high levels of motivation before the game, positive words and actions of others, keeping the fight, reframing one’s thoughts, improving the game situations, and preserving stamina.
著者
村﨑 夕緋 諸岡 晴美 渡邊 敬子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.248-254, 2019-03-25 (Released:2019-03-25)
参考文献数
8

本研究では,三次元計測装置を用い,審美性に影響を及ぼす背部体表面の凹凸を定量化することを目的とし,30 歳代および60 歳代の被験者を用い,数種のデザインの異なる補整ブラを試料として実験を行った. はじめに,正中矢状面と肩峰点を通る前頭面との交線から放射状に背部の垂直断面を算出し,体表面の凹凸が最も明瞭に表れる部位が後ろ正中線から70°~75°の範囲であることを捉えた.後腋点を通る垂直断面で中心から体表面までの水平距離をL とし,ヌード時からの差をへこみ量(δ)と定義し,ブラの上辺および下辺テープ部分の衣服圧とδとの関係を検討し,δが衣服圧に依存していることを確認した.また,重回帰分析により,δが衣服圧および体表面の圧縮変形量と有意な関係をもつことが立証された.以上の結果から,δはブラ着用時の背部シルエットの凹凸による審美性の低下を最小にするブラの圧設計のための指標として有用であろうと結論付けられた.
出版者
BOC出版部

指紋押なつを考える指紋押なつと私たち 田口美香朝鮮人としてありのままを生きる 李幸宏李さんの話を聞いて考える金明植さんがあぶない女は男の従属物か 矢野百合子福岡高裁での意見陳述 崔善愛なぜ指紋押なつが必要なの?会った!話した! 九州・山口交流会児童手当支給期間大幅短縮あごら読書室女の講座・女のつどい
著者
佐藤 正之
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.227-236, 2012-06-30 (Released:2013-07-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

前頭葉の機能解剖と前頭葉機能障害の自験例を呈示し, 前頭葉機能の測定に用いられる神経心理検査について frontal assessment battery (FAB) を中心に述べた。前頭葉は穹窿部, 眼窩面, 内側面に分けられ, それぞれの部位の障害により特徴的な症状を示す。いわゆる前頭葉機能検査には, Stroop test, 語想起, Trail Making Test, Wisconsin Card Sorting Test (WCST) , FAB などがあり, 脳賦活化実験により各々の検査の施行時に活性化する脳部位が調べられている。FAB は近年臨床場面で頻用されているが, FAB 低得点=前頭葉機能障害では必ずしもないことに注意しなければならない。

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1941年02月15日, 1941-02-15
著者
北條 彰 田角 勝 阿部 祥英 花岡 健太朗 小林 梢 板橋 家頭夫
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.598-606, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
20

特異的読字障害は学習障害の一つであり,知的障害がないにもかかわらず,読字を苦手とする.近年の研究では,文字の音声化や単語や語句をひとまとまりとして認識することの障害と考えられている.今回,特異的読字障害の児童が読字をする際の視線を分析し,読み方の特徴を評価した.対象は,読字障害群(17人),ADHD(注意欠陥多動障害)群(10人),コントロール群(12人)の児童である.対象の児童に音読検査課題を実施し,読み飛ばしと読み誤りの回数を測定した.同時に音読検査課題中の視線の動きをTobii社製の眼球運動計測・視線追跡装置(アイトラッカー)を用いて,注視点の数(視線を動かした数)や注視点の大きさ(視線が停滞した時間)を比較し検討した.1.読み飛ばし,読み誤りともに読字障害,ADHD,コントロールの順に回数が多い傾向があった.2.4種類の音読検査課題において,読字障害群の注視点数がコントロール群の注視点数よりも有意に多かった(p<0.01).読字障害の児童の視線の動きをアイトラッカーで可視化することは,読字障害の児童がどのように読字に困難を伴っているかを理解するために有用である.
著者
谷内 涼馬 山本 浩基 田代 桂一 道広 博之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0906, 2015 (Released:2015-04-30)

【目的】聴覚器の悪性腫瘍は頭頸部悪性腫瘍の1%前後とまれな疾患である。中耳悪性腫瘍に対する腫瘍摘出術後の理学療法に関する報告は見受けられず,その経過は不明である。そこで今回,中耳悪性腫瘍に対する腫瘍摘出術後に前庭機能障害を呈した症例の理学療法経過を報告する。【症例提示】70歳代後半,女性。ADLは自立。手術を目的に当院へ入院され,左側頭開頭腫瘍摘出術施行。悪性所見を伴った骨浸潤を認めたため,三半規管は摘出された。術後より悪心・嘔吐,頭位変換に伴う回転性のめまいを認め,歩行時のふらつきが強く自立歩行困難であった。術後3日より,バランス機能改善目的で理学療法開始となる。【経過と考察】理学療法は平行棒内歩行より開始し,術後1週のFunctional Balance Scale(FBS)は15点であった。術後3週までは悪心・めまいが強く,現症を助長する急激な頭位変換に留意した。十分な上肢支持の下,side stepやtandem gaitなどを中心に実施。徐々に悪心・めまいが治まり,術後4週より手放しでの練習に移行。バランス機能も改善を認め,cross stepや振り向き動作を含むback gaitも実施。歩行については病棟内自立となった。術後6週よりダイナミックなバランス練習を開始。術後9週のFBSは51点となり,術後14週で自宅退院となった。一側前庭器官が不可逆な損傷を受けると,中枢前庭系には神経機能の左右差を是正する回復機構(前庭代償)が働く。しかし,健側前庭覚への入力停滞・遅延は前庭眼反射や前庭脊髄反射の低下を惹起し,前庭代償が十分に働かない。本症例では術後早期からバランス練習を実施し,健側前庭覚への入力を継続した。また,現症とバランス機能に応じて練習難易度を高め,前庭代償の停滞を防いだことも機能改善に寄与した可能性が考えられた。急性期の前庭機能障害に対する理学療法では,現症の回復時期に応じて練習難易度を変化させ,前庭代償を促進することが肝要であると思われた。