著者
佐藤 文子 山口 浩 現代行動科学会誌編集委員会
出版者
現代行動科学会
雑誌
現代行動科学会誌 (ISSN:13418599)
巻号頁・発行日
no.24, pp.12-26, 2008

PIL(Purpose-In-Life Test)はロゴセラピーの理論に基づき実存的欲求不満を測定する心理検査である。日本版PILではPart Aの質問紙法に加えてB(文章完成法)、C(自由記述)も数量化し標準化した。原案者のクランバウら1,3)はPIL得点は年齢要因とかかわりないと述べ、すべての年齢に共通する判定基準を示している。しかし日本版ではPIL得点に年齢要因が関与することが示唆され、'93のマニュアル12)、'98の改訂版13)いずれも年齢段階別の判定基準を設定してきた。しかしこれまでは高齢者のデータが少なく、年齢に若干偏りがあったこともあり、65歳以上はT値換算ができずにいた。'08の改訂15)では高齢者群データを補充し、年齢を今まで以上に厳密に統制して妥当性を再検討した。その結果、総得点では成人群と高齢者群の間に有意差は見られなかった。他方判定基準の設定に際しては主として総得点分布から35歳未満と36歳以上の2群に分けることになった。今回はA,BC共通に2群に分けたので、テストとしてはわかりやすくなったが、妥当性検討は総得点についての統計的分析に基づくもので、年齢要因の意味的側面についてはマニュアル、ハンドブックでは十分には論じられていない。 PILデータと年齢要因との関連について検討の必要な課題を整理してみると、 ①年齢を統制しての妥当性の検討に際して、10歳刻みでそれぞれの年齢段階の総得点の有意差を検討し、いくつかの年齢群に分けて妥当性を検討したが、年齢段階と得点差の関連については、'08のマニュアルおよびハンドブックでは充分に考察されなかった。 ②判定基準の設定に際しては総得点の分布の統計的な検討に加えて臨床的経験的解釈も加味して35歳以下と36歳以上の2つの年齢群に分けたが、この区分のロゴセラピー的意味については充分に論じられていない。 ③PILの解釈はA,BCの総得点の差のみでなく、BCの下位評価項目得点プロフィールや記述内容なども考慮してなされるが、これらの側面についての年齢要因の検討はマニュアル、ハンドブックではほとんどふれられていない。 本論文では総得点に加えてPIL得点を構成している諸側面に年齢要因がどのように影響しているかを検討し、それはロゴセラピー理論の観点からどのように解釈されるかを考察する。そのためにⅡでロゴセラピー理論において年齢要因が意味・目的経験にどのようにかかわると考えられているのかをフランクルならびにロゴセラピー関連の文献から検討する。次いでⅢでこれまでのPILデータを年齢要因あるいはライフサイクル論を考慮した群間で検討し直す。具体的には、(1)'08改訂のデータの年齢段階別の結果を再検討し問題点を整理する。(2)標準化データから年齢およびライフサイクル論を考慮していくつかの群を抽出し、①PILの標準的分析、②BC・人生態度局面の類型化の比較、③一般的人生態度と過去の受容・意味づけとの関連の群による特徴をPIL-B-2およびB-4項目の内容分析から検討する。
著者
八巻 一成 広田 純一 小野 理 土屋 俊幸 山口 和男
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.219-226, 2000-08-16
被引用文献数
7

森林レクリエーション計画においては, 利用ニーズに合った多様なレクリエーション体験の提供が重要な課題である。本研究では, このような視点からレクリエーション空間の計画, 管理のあり方を示したROS(Recreation Opportunity Spectrum)を取り上げ, わが国の森林レクリエーション計画における有効性を探った。まず, わが国における森林レクリエーション空間の実態とレクリエーション計画システムの現状を考察し, 課題を明らかにした。つぎに, ROSの成立過程, 基本概念, 計画作成プロセス, 適用事例について解説し, ROSとは何かを明らかにした。最後に, わが国の森林レクリエーション計画における意義および役割を検討した。その結果, ROSの特色であるレクリエーション体験の多様性という視点が非常に有効であると考えられた。
著者
阿賀 倶子
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.433-444, 1976

先に陳・槌本が報告したBMRと血清PBIに関する研究と併行して,同じ日本の気候に曝露される日本人10名と,白人10名の被検者について,血清遊離脂肪酸(FFA)濃度を1972年6月から毎月1回1年間にわたりItaya-Ui変法を用いて測定した。<br>(1) 血清FFA値の年間平均値には日本人と白人の間に差がなかった。これは教室の山口の米軍人と日本自衛隊員と比べて前者が有意に高かったという報告とは異なる結果である。そして白人のFFA値は1, 2月の厳冬期に日本人に比べて低く,かつこの季に大きく低下する動きを示し,その年間変動率(49.6%)は日本人(25.2%)よりも有意に大きかった。この点も山口の結果とは逆であった。また白人でも日本に移住して間もない者の寒期の低下は著しかった。<br>(2) FFA値とBMR値とは,日本人では有意の正相関を呈したのに対し,白人では負の相関傾向を示した。両計測値を各個人の平均に対する各月の変動率でみると白人の負の相関係数は有意であった。また季節別にみると,夏期のFFA値とBMR値との関係は日本人,白人とも正相関の傾向にとどまるが,冬期には日本人は正相関傾向を示すのに反して白人では有意の負の相関を示した。<br>山口は冬の居住気温が日本人で10°Cも低かった事が主因となって,日本人の方がより強く寒冷に順応されたものと解しているが,(1), (2)の結果を綜合すると,本研究では逆に白人被験者の方が強く寒冷に順応したものと解される。したがってFFA値の水準や季節変動には人種的な差はなく,その寒冷期の居住環境が大きく関与すると推論された。血清PBI値とFFA値とは両群とも負の相関傾向を呈した。血清FFA値と基礎代謝の呼吸商(RQ)の間に年間を通じて有意ではないが負の相関傾向がみられた。
著者
岡本 良知
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.539-598, 1936-03

日本とフィリッピン群島との交通及び貿易を便宜上二期に分つて觀察しやう。前期は一五六五年エスパニヤ人の群島占據の始めより一五九〇年に至る二十五年間であり、後期はそれ以後の三十年間である。この二期の第一特徴は、前期に於ては全くその航海と通商を日本人が狗占し、後期に於ては彼我兩方面より船が往來し貿易に從つたことであり、第二には、前期に於ては外交上宗教上直接の関係が殆んど生やす、後期に於てはこれに反して事變續出して兩國の交渉が複雑錯綜したことである。本稿の目的とするところはこの前期に於ける兩國の交渉と通商とである。我等は先づ彼我兩國船の交通を研究し、然る後貿易上の現象を論じやう。
著者
宇佐見 義之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EID, 電子ディスプレイ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.291, pp.41-46, 2008-11-06

恐竜は速くは走れなかったとされる学説に反論し、走れる可能性を提示する。人間の動きを参考に、ティラノサウルス・レックスの走行姿勢を求めた。力学は剛体モデル、動きはフーリエ級数で表し、係数をランダムアルゴリズムで求めた。その結果、Hutchinsonの学説より走れる可能性が増すことがわかった。
著者
柄木田 康之
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.86-101, 1997-06-30

あらゆる文化・伝統は多文化的状況下の虚構であるのに, 人類学は操作的に構成された現実を他者のカテゴリーに押し込めてきてしまってきた。このような主張は, 近年多くの支持者を集めている。ところがこのような本質主義批判が, また調査地側からの激しい批判を招き, 他者表象をめぐる植民地主義が再生産される, というジレンマが存在する。ミクロネシア連邦ヤップ州オレアイ環礁では1986年, 1993年にWoleai Conferenceとして環礁全体の伝統文化を確認する会議を開催している。二つの会議は, いずれも, 伝統を議題とし, 伝統文化を再確認し実践することで, 近年の社会変化にともなう混乱に対抗しようとする試みであった。しかし二つの会議のトーンには大きな違いがあった。93年会議では再確認された規則の侵犯に対する貨幣による罰金が制度化され, また環礁を構成する島間の海面権に関する不一致・対立が噴出した。この結果, 会議を主導した町にすむオレアイ出身のエリートが会議を高く評価するのに対し, オレアイ居住者は概して批判的である。オレアイにおける伝統文化の再生産は一枚板では捉えられない。「表象する権利は誰にあるのか」という問題は, 研究者と調査地の間だけではなく, 調査地において競われる問題でもある。
著者
秋田 美代 齋藤 昇
出版者
全国数学教育学会
雑誌
数学教育学研究 : 全国数学教育学会誌 (ISSN:13412620)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.55-63, 2011

In this paper, we clarify the inhibitory factor of flexible idea in present mathematics instruction. And we propose the problems of making a student's flexible idea. We analyzed the inhibitory factor using an achievement test and a creativity test about the area of the figure. As a result, we found that the learners have functional fixedness in the mathematics problem solving. We call it "Temporary plateau of thinking in problem solving". We made two kinds of problems of breaking out of the "Temporary plateau of thinking in problem solving", problem which put restrictions on the solution and problem which required that many methods should be considered. We compared the usual problem with the problems of breaking out of the "Temporary plateau of thinking in problem solving". The results are as follows. - When compared with the usual problem, the problems of breaking out of the "Temporary plateau of thinking in problem solving" made many flexible ideas. - When compared with the usual problem, the problem which put restrictions on the solution was still difficult for students. - If the teacher gives appropriate teaching, the students can break out the "Temporary plateau of thinking in problem solving".
著者
細井 健太郎 坂元 紫穂子 中村 克彦
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.173-174, 1997-03-12

われわれは, 超融合法 (hyper resolution)に基づく前向き推論による論理プログラミングの計算方式の研究を進めてきた. Prologに代表される多くの論理プログラムはSLD融合または後向き計算に基づくゴール駆動型計算モデルを採用しているが, 前向き推論に基づくアプローチは一般的な論理プログラミングとしてはあまり発展していない. しかし, Prologでは, 多くの言語のもつ配列や連想記憶の使用などのデータ構造がないため, 大量のデータの集合の処理を効率よく行ないにくい. また, ゴール駆動型の並列計算モデルは,共通の変数の代入による同期に多く依存しているため論理的な意味を多く失っているなどの問題点がある. われわれは, 前向き推論に基づく論理プログラミング言語Monologと処理システムを作成して, 広範囲の分野への応用をはかっている. 今回は, 効率の高い計算のために, 部分的マッチングの結果を2進探索木に格納する方法について述べる.
著者
河村 直幸
出版者
新潟大学大学院現代社会文化研究科
雑誌
現代社会文化研究 (ISSN:13458485)
巻号頁・発行日
no.27, pp.107-124, 2003-07

This research paper is empirical research of the interest group's ability to gather votes. This research is attempted through the use of newspaper articles and empirical documents. In recent years, many media instantiate that the ability to gather votes of the many interest groups have been breaking the momentum. Compared to the old days, all kinds of case example in national and local election show that ability to gather votes of interest group have been waning. The powers of interest group's organization have been waning alike. But then, there is some case that cannot say with certainty "the ending of the ability to gather votes".
著者
家本 秀太郎
出版者
神戸大学
雑誌
國民經濟雜誌 (ISSN:03873129)
巻号頁・発行日
vol.104, no.6, pp.85-91, 1961-12
著者
斎藤 正博 玉城 勝彦 西脇 健太郎 長坂 善禎
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械學會誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.312-317, 2012-07-01
被引用文献数
1

自脱コンバインをベースとし,RTK-GPS,方位センサによる位置,方位情報に基づいて収穫作業を行う無人自脱コンバインを開発した。センシングデバイスや制御アクチュエータ等をモジュール化し,デバイス間の通信規格として CAN バスを採用した。100 m × 30 mの圃場での小麦収穫の作業精度は,長辺方向で RMS0.04 m,短辺方向で RMS0.08 mであり,刈り残しや踏み倒し無く収穫作業が可能であった。無人自脱コンバインの収穫作業全体の作業能率は,手動で行った最外周の周り刈りと排出作業を含めて 18.7 a/hであった。