著者
山田 研太郎 村尾 茂雄 吉田 秀雄 中島 敏夫 吉井 町子 木村 正治 吉岡 寛康
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.1007-1011, 1981
被引用文献数
3 10

非寄生虫性脾嚢腫は希な疾患であるが,今回我々は副脾から発生したepidermoid cystの1例を経験した.症例は51才,男性.下腹部痛のため来院し腹部単純撮影で左下腹部に環状の石灰化像を認めた.疼痛は速やかに軽快したが精査のため入院.下腹部に軽度の圧痛を認めるも腫瘤は触知せず.臨床一般検査ではγ-GTPの軽度上昇以外著変なし.経静脈性腎盂造影法(IVP)で腎孟腎杯の変形なし.上部消化管透視では腫瘤は胃体部の後方に位置した. CT-scan,超音波断層で膵尾部に嚢腫を認め,血管造影で伸展した大膵動脈分枝が見られた.膵嚢腫の診断で開腹.膵尾部から突出した直径約6cmの嚢腫を認め,膵尾部・脾臓とともに切除.内容は乳白色の液体で,寄生虫,毛髪,細菌を認めず.アミラーゼ・リパーゼは低値であつた.病理所見では嚢腫壁内に脾組織の薄い層が存在し内腔を重層扁平上皮様細胞がおおつており副脾のepidermoid cystと診断した.脾epidermoid cystの成因は明らかでないが,本例では重大な外傷の既往はなく迷入組織から発生したと考えられる.脾epidermoid cystは若年者に多く石灰化は希とされている.本例の石灰化は比較的高年令であることによるものであろう.副脾は10%以上の人に存在するが検索しえた範囲では嚢腫発生の記載はなく,本例が第1例と考える.
著者
加藤 千枝
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.109-121, 2012

本研究では青少年女子のメールボックス利用実態を明らかにすることを目的として,女予中高生9名に対し,半構造化面接を実施した。その結果,青少年女子は主に「同集団他者」や「他集団他者」との関係形成の為にメールボックスを利用していることが明らかとなった。また,「他集団他者」の「異性の者」からメールボックスを介して連絡を受ける者も複数おり,「異性の者」と実際に会った結果,「サイバーストーカー」等の被害に遭った青少年女子もいた。一方で,メールボックスを介して知り合った「異性の者」と交際した経験を持つ者もおり,メールボックスは携帯電話のメールとは異なる使い方をされているメディアであることが明らかとなった。
著者
阿川 慶子 原 祥子 小野 光美 沖中 由美
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.46-54, 2012-11-30

本研究は,高齢慢性心不全患者が日常生活において心不全に伴う身体変化をどのように自覚しているのかを明らかにすることを目的とした.対象は,慢性心不全と診断され入院または外来通院している高齢者11人として半構成的面接を行いデータ収集し,質的記述的に分析した.高齢患者は,【変化速度の緩急】【体の制御感の喪失】【自己調整できる苦しさ】【自分のありたい姿との調和】【忘れられない極限の体験からの予見】【独特な身体感覚】【客観視された情報による気づき】によって自己の身体変化を自覚していた.患者は,自分の身体を知ろうと模索し感じとった身体変化を特有な表現で他者に伝えることや,自己調整できる苦しさであるという自覚によって対処が遅れる可能性を抱えていた.患者の感じている身体変化を看護師が理解するためには,患者が感じたままに表現できる場を設け,患者の身体に対する期待や理想,日常生活のなかで感じる不都合さ,忘れられない極限の体験を手がかりとして思いを聞くことが有効である.
著者
宮永 孝
出版者
法政大学
雑誌
社會勞働研究 (ISSN:02874210)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.165-189, 1996-02

Nawadays Macau (澳門), a Portuguese colony, attracts many visitors from all over the world.This city was once called "the City of Death" in the last century, but it is going to be recreated a new, modern city, sprouting dozens of new buildings here and there.I visited Macau once and enjoyed staying there.What attracted my attention and impressed me deeply was the old remains of the façade of St.Paul's church located almost in the middle of the city, where quite a few Japanese Christians were buried; reportedly they helped to build it many centuries ago.The façade maintains the solemnity and beauty as well.During my brief stay in Macau, I was happy to make the acquaintance of Fr.Manuel Teixeira, an eminent orientalist and priest, who not only showed me round the historic spots but enlightened me greatly as to the history of the city.I well remember I was lost in admiration of two oil-paingtings, one of which shows the crucification of the Japanese Christians at Nagasaki and other of St.Michael, the Archangel in Seminário S.José (聖若瑟修院).As regards the latter, the name of the painter remains unknown.However, according to Fr.M.Teixeira, one of the four Japanese Christians, all of whom were the disciples of Giovanni Nicolo (1560~1626), a famous Italian priest and master in the art of sacred paingtings, painted it. Supposedly the painters are: (1) Mancio Taichiku (?~1615), born in Udo (宇土), in the province of Higo (肥後国), died in Macau.(2) Peter Chikuam alias Pedro Joãn (?~1622), died in Macau.(3) Todeu (?~1638), died in Macau.(4) Yacob Niva (丹羽?) alias Yacobo Niva (?~1638), died in Macau.It is said Yacob Niva towered above others as a painter.This article deals with the Japanese Christians in Macau and with the painting of the Archangel.The identity of the artist, however, still remains unknown.In conclusion, I'd like to express my deep indebtedness to Fr.M.Texiera and some of the university libraries in Tokyo for providing assistance during my research.
著者
武長 孝 橋本 政雄 津賀 幸之介 梶山 道雄 橋本 佳文
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.169-177, 1978

この研究は諸外国でも開発が進められている農薬の微量, 少量散布機について, 昭和41年から始まり昭和52年の乗用トラクタマウント少量散布機の実用化, および低毒性の少量散布用農薬の登録受付けに至る間の基礎および開発研究を記述したものである。研究の内容は放射化分析を利用した農薬付着と漂流飛散の追跡, 有気噴頭の性能研究, 粒径の表現方法, 少量散布用落下調査指標の設定, 並びに8機種の微量, 少量散布機の開発研究からなっている。
著者
山下 雄也 石井 義郎
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.9, no.87, pp.205-210, 1952

塩化ビニール樹脂の可塑剤を得る目的でDOPとは逆の分子構造を有するエステル即ち芳香族二価アルコールと脂肪族一塩基酸とのエステルを合成しその可塑剤としての性質を検討した。このためにベンゼントルエン, キシレンをホルマリンと塩酸によりジクロロメチレン化し, これを加水分解してグリコールにしてカルボン酸とエステル化させるか, あるいはジクロロメチレン化物のままでカルボン酸ナトリウム塩と反応させてエステルを得る条件につき報告した。用いたカルボン酸は酪酸, カプロン酸, カプリル酸, カプリン酸及びレビユリン酸である。得られたエステルは一般に無色透明の液体でカプリル酸以上の高級酸エステルの場合を除き比重は1以上である。沸点は同一分子量のフタル酸エステルに比較して幾分低い。これらのエステルの可塑剤としての性能は第2報において報告する。
著者
野田 正幸 山本 晴敬
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.327-334, 1994
被引用文献数
2 10

滅菌処理植物脂肪クリームを用いて,クリームの物性変化におよぼす温度履歴の影響について検討し,以下の知見を得た.<BR>(1) 冷蔵開始温度より温度処理がクリームの粘度に大きく影響した.クリーム構成油脂の固体脂含量が温度処理後の粘度に影響し,固体脂含量が20%以下になると粘度が増加して最大値を示し,油脂が融解する温度以上では粘度の変化はなかった.<BR>(2) 温度処理後のクリームのホイップ特性は粘度の変化とほぼ対応し,処理温度が高くなるとともにホイップ時間とオーバーランの減少,硬さの増加,気泡径の減少がみられ,油脂が融解する温度以上では無処理と同等となった.温度処理によるホイップ特性の変化は,ホイップ時に増加した遊離脂肪が構造に寄与するためと推定した.<BR>(3) クリームの粘度とホイップ特性は温度処理における冷却速度にも依存し徐冷の方が影響が大であった.<BR>(4) 温度処理したクリームは,脂肪が融解する温度に再度温度処理することによって再生できた.
著者
三浦 加代子 今西 あみ 西川 有香 坂内 綾乃 藤井 千紗 守山 由佳理 杉原 正治
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】手動の泡だて器や電動ハンドミキサーで撹拌した場合、ホイップクリームの含気率(オーバーラン)には限界がある。しかし、撹拌器「キスワン」は、圧力を調節しながら撹拌ができ、通常よりも大きなオーバーランが得られ、通常の器械ではいくら撹拌しても泡立たないものでも泡立てることができるという特徴をもっている。この器械を用いて新規食品開発を行うための基礎的なデータを得ることを目的として研究に着手した。今回は、生クリームを試料として圧力をかけて撹拌し、どのような特性をもったホイップクリームができるのかを検討した。また、ホイップクリームの保存性についても調べた。【方法】ステンレス製ボールに生クリームを一定量入れ、圧力を加えて5℃で撹拌した。撹拌回数は70回転/minとし、圧力は0.2MPa, 0.4MPaで行った。同様に常圧で撹拌したものを対照とした。生クリームの種類を変え、撹拌時間とオーバーランの変化を調べた。また、調製したホイップクリームの保存性をオーバーランおよび色調の変化等で検討した。【結果】生クリームの種類により、撹拌時間ごとのオーバーラン値は大きく異なった。例えば、乳脂肪分47%(種類別名称:乳等を主要原料とする食品)では、最高オーバーラン値が、常圧では撹拌時間6分で146%となったが、0.2MPaにすると105秒で約330%、0.4MPaでは105~120秒で約400%となった。即ち、1/3の時間で2倍以上の最大オーバーラン値が得られることがわかった。また、乳脂肪分35%(種類別:クリーム)の生クリームを圧力(0.2MPa)を加えて撹拌し、250%のオーバーランになったホイップクリームを調製し、その泡の安定性を経時的に調べた結果、保存温度が重要であることがわかった。
著者
小平 将太
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】ホイップクリームは、調製に時間と手間がかかり、水と油の分離が起こりやすい事が作製上の注意点である。レモン果汁はpH変化やクエン酸のキレート作用により多様な調理機能を発揮することが知られている。そこで本研究では、レモン果汁を生クリームへ添加することで、調製時間や、物性の変化におよぼす影響について報告する。【方法】ホイップクリームは、生クリームに適宜レモン果汁を加え、ハンドミキサーを用いて調製した。ホイップは最大オーバーランを終点とした。ホイップクリームの物性は、離漿量、気泡径、テクスチャーアナライザーの変形応力およびレオメーターの貯蔵粘弾性、損失粘弾性で評価した。また、レモン果汁を添加した際の理化学変化としてエマルジョンのζ-電位、粒子径、pHを測定した。さらに、評点法で官能評価を行った。【結果】レモンの添加量に比例して、調製時間が短縮されると共に、エマルジョンの粒子径が大きくなりやすい傾向を示した。これはpHの低下によるζ-電位の絶対値の減少で、粒子が凝集しやすい荷電状態となったためと推察された。また、レモン添加量に比例して離漿量と、経時による気泡径の拡大が低減した。さらに、レモンを1%添加した際に、経時による変形応力の低下が減少したことから、保型性が向上していることが示唆された。貯蔵粘弾性、損失粘弾性に有意差は認められなかったが、最大オーバーランは、1%レモン添加で最大化した。さらに官能評価でも食感の軽いホイップクリームになる傾向を示した。以上の結果から、ホイップクリーム調製時にレモンを添加することで、短時間で保型性や食感の良いクリームが調製できることが分かった。
著者
谷村 雅子 宮村 紀久子 武田 直和
出版者
The Genetics Society of Japan
雑誌
遺伝学雑誌 (ISSN:0021504X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.137-150, 1985
被引用文献数
17

With the aim of elucidating the origin and the route of transmission of enterovirus 70 (EV70), we constructed a phylogenetic tree using the base sequence variation deduced from the oligonucleotide map of the virus genomes of 16 strains isolated between 1971 and 1981 in different parts of the world. For this purpose, we estimated the evolutionary rate of EV70, taking advantage of the fact that the dates of isolation of the strains are precisely known. Furthermore, the divergence times between viruses were estimated using base sequence variation, the evolutionary rate and the sampling times of the strains. The phylogenetic tree and the divergence times between the branches were estimated simultaneously by UPGMA. The phylogenetic tree constructed is in good agreement with epidemiological evidences of EV70, indicating the valid estimation of the tree. It is also shown that the evolutionary rate of EV70 is extremely rapid and constant.
著者
大谷 卓史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SITE, 技術と社会・倫理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.442, pp.121-126, 2014-02-20

本発表は、子どもにどのようにSNS(Social Networking Services)を使わせるべきか考察する。子どものSNS利用は、SNS利用にともなうネットいじめや評判のリスク、SNSへの依存の可能性から慎重に許可すべきである。ただし、子どもが行為選択能力を育て、ネット上の人間関係構築能力を育てられるよう、子どものネット利用の問答無用の禁止や監視は避けなければならない。
著者
片岡 杏子
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学 : 美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
no.35, pp.243-254, 2014-03-20

本論では,子どもの体験における「空間」に着目し,印象的な風景との出会いや造形場面における空間の感じられ方が,主体意識としての<わたし>を支える可能性について検討した。論中では,まず人が肯定的に捉えた体験が自己構造と一致するというC.ロジャーズの理論をふまえて,体験の記憶に伴われる空間のパースペクティブ性が,体験を肯定的に捉えていくうえで重要であると仮定する。そして壮大な風景の中で驚きを感じる体験や,絵の具遊びを行う子どもの体験を取り上げながら,人が印象的な空間体験を通して自分の物語を表現し,生きようとする存在であることを説明する。これをふまえて,子どもが冒険や失敗をする過程において,風景の包容性と作業空間の共同性が体験を肯定するための支えとして機能し,その記憶がさらなる課題の局面において<わたし>を支える根拠となるであろうと考察する。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ものづくり (ISSN:13492772)
巻号頁・発行日
no.669, pp.32-36, 2010-06

ンダの「CR-Z」とインドTata Motors社の「Nano」を見比べてみよう。すると、「鋼が設計を変える」ことの意味が浮かび上がってくる。 CR-Zは、最先端の技術を可能な限り安価に適用するという、日本のものづくりの王道の設計思想で開発されたもの。高張力鋼板(ハイテン)を多用して軽量化を図り、成形性に優れた日本製の薄鋼板で複雑な3次元形状を造り込んでいる(図1)。
著者
春名 苗 寺本 珠眞美
出版者
花園大学社会福祉学部
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
no.24, pp.19-25, 2016-03

高齢者虐待のケースには、市区町村が責任を持ち、地域包括支援センターと連携して対応することになっている。だが、実際には、市区町村がイニシアティブをとって高齢者虐待対応を積極的に行うところと、対応を地域包括支援センターにほぼ任せているところに分かれている。各11 市区町村に1 カ所の地域包括支援センターに聞き取り調査を行い、実態を明らかにした。その結果、虐待の対応の会議の開催については、随時行うところと、定例で行うところに分かれた。また、見守り支援については、計画を立ててフォローアップするところと、地域包括支援センターに見守りを任せているところにわかれた。会議開催と見守り支援等の特徴で類型化し、高齢者虐待の会議開催を随時行い、見守り支援の計画を立てる「随時・戦略型」が進むべき方向であると明らかにした。