著者
寺本 民生
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.3-13, 2013 (Released:2013-03-15)
参考文献数
78
被引用文献数
4 5

【目的】わが国は,戦後急速な経済復興と共に,生活習慣の欧米化が進み,それに伴い肥満,脂質異常症,糖尿病などの心血管疾患の危険因子が増加している。わが国では,血圧コントロールと共に,脳血管疾患による死亡率は減少し,最近はほぼ心血管疾患と肩を並べるところまで減少した。これは食塩摂取制限により,高血圧の頻度が減少し,それゆえに脳出血が劇的に減少したことによる。このような動脈硬化性疾患の危険因子として,高血圧に変わって問題になったのがコレステロールや肥満・糖尿病の問題である。わが国では,生活習慣の欧米化に伴い,コレステロールレベルは増加の一途をたどり,ほぼアメリカ並みになった。重要なことは,心血管イベントの発症には数十年を要するということであり,それゆえ,わが国のガイドラインは心血管イベントの増加を予防するためのガイドラインと位置付ける事ができる。心血管イベント予防のためには,血圧,糖尿病,喫煙などの包括的管理が重要であるが,脂質異常症は冠動脈疾患予防のためには最も重要なことである。わが国の食形態は,動脈硬化予防のためには適していると考え,わが国の疫学研究をもとに動脈硬化予防のための食事について検討した,その結果,動物性脂肪摂取を抑え,魚類などのn3系多価不飽和脂肪酸摂取を多くし,大豆,果物,野菜などを中心とした伝統的日本食が動脈硬化予防のためには適しており,推奨されるものと考えられた。
著者
齋藤 仁志
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-6, 2014

1 2013年5月から2014年7月に金沢八景駅から相武隧道のバス停間で設定した調査ルートを路線バスで移動し、バスの中から目視でカラスによるゴミ集積所の食い散らかしと、集積所に集まるカラスの個体数を記録した。<br>2 収集所を「ポリ袋」、「ネット」、「容器」の3タイプに分けて記録した。調査終了時にはポリ袋0か所(0%)、ネット30か所(53.6%)、容器26か所(46.4%)であり、この結果と2000年の東京都と川崎市の収集所のタイプと比較してみたところ、調査地の方がはるかにネットと容器の普及が進んでいた。<br>3 ゴミの食い散らかしとカラスの数の季節変動は、それぞれ同じような傾向があり、夏は少なく、秋に増加、春に急増した。これらは、繁殖個体によるなわばり防衛行動の強化や、非繁殖個体の行動圏の変化、カラスの採餌内容の変化、周辺住民によるゴミ排出状況の変化などが関係している可能性があると考えられた。<br>4 ゴミの食い散らかしとカラスの数の曜日変動についても季節変動同様に類似した傾向があり、可燃ごみの日の火、土曜日が特に多かった。また、水~土曜日にかけて徐々に増加する傾向が見られた。可燃ゴミ収集日の翌日の水曜日と日曜日のカラスによる食い散らかしの数を比較したところ、日曜日の方が有意に多かった。これらの結果から、周辺住民がゴミ出しの日時をしっかりと守らないことが考えられ、特に週末はそれが顕著にみられた。
著者
城野 靖朋 金井 秀作 後藤 拓也 原田 亮 藤高 祐太 谷出 康士 長谷川 正哉 大塚 彰
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.533-537, 2013-08-20

〔目的〕本研究の目的は,運動課題と認知課題の二重課題練習において,注意に関する指示の影響を明らかにすることである.〔対象〕健常成人60名を対象とした.〔方法〕二重課題練習で注意を運動課題に向ける条件,認知課題に向ける条件,注意の指示を与えず自由選択できる条件,練習を実施しない条件を設定し,練習前後の各課題パフォーマンスを評価した.〔結果〕dual-taskの運動課題パフォーマンスおよび高難易度運動課題パフォーマンスは,練習期の注意配分を自由に選択できる条件で向上した.〔結語〕健常成人を対象にした本研究では,注意の指示を与えない二重課題練習が,運動課題パフォーマンス向上に効果的である可能性が示唆された.<br>
著者
佐藤 恵美子 三木 英三 合谷 祥一 山野 善正
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.737-747, 1995-10-15
参考文献数
29
被引用文献数
5 6

「煮つめ法」,「滴下法」を用いて調製した胡麻豆腐の調製時における攪拌速度と加熱時間の影響について,テクスチャー測定,クリープ測定,走査型電子顕微鏡による構造観察を行って検討したところ,次のような結果が得られた.<BR>(1) 「煮つめ法」により調製した胡麻豆腐のクリープ曲線は四要素モデル(E<SUB>0</SUB>, E<SUB>1</SUB>, η<SUB>N</SUB>, η<SUB>1</SUB>)として解析可能であった.硬さおよび瞬間弾性率,フォークト体弾性率(E<SUB>0</SUB>, E<SUB>1</SUB>)は,どの攪拌速度においても加熱25分(谷の部分)で最も軟らかくなり,その後加熱時間の増加とともに硬くなった.また,その加熱25分の調製条件が構造的にも均一な蜂の巣状構造を形成した.<BR>「滴下法」によるテクスチャーと加熱時間における一次式の傾きは,加熱45分までの時間依存性を示すもので,攪拌速度が高くなる程,大きくなり,付着性には攪拌速度による依存性が認められた.ニュートン体粘性率,フォークト体粘性率(η<SUB>N</SUB>, η<SUB>1</SUB>)は加熱時間にともなう変化がテクスチャーの付着性と類似していた.<BR>(2) 走査型顕微鏡観察の結果,加熱15分では不均一な部分があり,加熱25分で均一な空胞が形成され蜂の巣状を示した.さらに加熱攪拌を続けると蜂の巣状構造は崩壊し始めた,250rpm 25minの試料が空胞の形成がよく,最も均一な蜂の巣状の空胞の集合体が観察された.<BR>(3) 胡麻豆腐は葛澱粉を主体とするゲルであり,胡麻の蛋白質と脂質が関与している相分離モデルであると推察される.
著者
佐藤 俊樹
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.41-54, 1990-06-30 (Released:2009-10-13)
参考文献数
23

「儒教とピューリタニズム」はマックス・ウェーバーの一連の比較社会学の論考のなかでも、最も重要な論考の一つである。だが、そこでの儒教理解、とりわけ儒教倫理を「外的」倫理だとする定式化には問題があり、またウェーバー自身の論理も混乱している。この論文ではまず、儒教のテキストや中国史・中国思想史の論考に基づいて、儒教倫理が実際には「内的」性格を強くもつ『心情倫理』であることを、実証的に明らかにする。なぜ、ウェーバーは儒教の心情倫理性を看過したのだろうか? プロテスタンティズムの倫理と儒教倫理は実は異なる「心の概念」を前提にしている。ウェーバーはその点に気付かずに、プロテスタンティズム固有の心の概念を無意識に自明視したまま儒教倫理を理解しようとした。そのために、儒教を「外的」倫理とする誤解へ導かれたのである。儒教倫理は儒教固有の心の概念を前提にすれば、きわめて整合的に理解可能な、体系的な心情倫理である。それでは、この二つの倫理が前提にしている相異なる「心の概念」とは何か? 論文の後半では、この心の概念なるものの実体が、伝統中国社会と近代西欧社会がそれぞれ固有にもっている人間に関する「一次理論」であることを示した上で、その内容を解明し、その差異に基づいて、二つの倫理とその下での人間類型を再定式化する。そして、それらが二つの社会の社会構造にどのような影響を与えたかを考察する。
著者
Kensuke ORITO Asako KAWARAI-SHIMAMURA Atsushi OGAWA Atsushi NAKAMURA
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.17-0463, (Released:2017-10-31)
被引用文献数
8

A prospective observational study was performed in canine clinical medicine to evaluate the emetic action and adverse effects of tranexamic acid. Veterinarians treated 137 dogs with a single dose of tranexamic acid (50 mg/kg, IV) after accidental ingestion of foreign substances. If needed, a second (median, 50 mg/kg; range, 20–50 mg/kg, IV) or third dose (median, 50 mg/kg; range, 25–50 mg/kg, IV) was administered. Tranexamic acid induced emesis in 116 of 137 (84.7%) dogs. Median time to onset of emesis was 116.5 sec (range, 26–370 sec), median duration of emesis was 151.5 sec (range, 30–780 sec), and median number of emesis episodes was 2 (range, 1–8). Second and third administrations of tranexamic acid induced emesis in 64.7% and 66.7% of dogs, respectively. In total, IV administration of tranexamic acid successfully induced emesis in 129 of 137 (94.2%) dogs. Adverse effects included a tonic-clonic convulsion and hemostatic disorder in two different dogs, both of which recovered after receiving medical care. Tranexamic acid induced emesis in most dogs following a single-dose. When a single dose was not sufficient, an additional dosage effectively induced emesis. Overall, adverse effects were considered low and self-limiting.
著者
浅川 智恵子
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.20, no.46, pp.39-44, 1996-09-13 (Released:2017-10-13)

GUI環境およびインターネットの普及は, WWWという新しい情報源をもたらした.WWWが扱う情報には画像データと共に視覚障害者にとって有効と思われる文字情報も多く含まれている.このWWWへの非視覚的アクセスが実現すれば, 視覚障害者にこれまでとは異なる新しい情報源を提供できると期待される.日本アイ・ビー・エム(株)では, 本年8月, 視覚障害者がGUI環境下にアクセスするためのコンピュータ・アクセス・システムであるスクリーン・リーダー/2を製品化した.このシステムを使用すれば, 視覚障害者もNetscape, WebExplorerのようなWWWプラウザーにアクセス可能となる.本稿では, 視覚障害者がスクリーン・リーダー/2およびNetscapeを使ってWebを利用するための手順を紹介し, 今後WWWを視覚障害者の新しい情報源にする為にはどのような課題があるかについて述べる.
著者
小山 由 水本 旭洋 今津 眞也 安本 慶一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.44, pp.171-177, 2012-05-14
参考文献数
10

本稿では,大規模災害により3G通信が利用不可能になったエリアでの情報の収集および発信を可能にするため,Twitterにつぶやかれた安否情報をメッセージデータとして保持し,DTN (Disruption-Tolerant Networking)によるユーザ同士のすれ違い通信によって3G通信が利用可能なエリア(以後,通信可能エリア)までメッセージの中継を行うことを可能にするシステムを提案する.到達したメッセージはTwitterシステムに送信して被災地外のユーザにメッセージを閲覧可能にすると共にGoogle Person Finder等のインターネット上の災害データベースとも連携し,投稿されたメッセージを基に情報の自動登録,及び検索を可能にする.このシステムを実現する上での課題は,(1)最短時間で安否情報を通信可能エリアへ配送することと,(2)通信不可能エリアのどこかに存在する特定のユーザに,Twitterの返信メッセージを的確に,かつ最短に配送することである.これらの課題を解決するため,提案システムでは各ユーザ端末に通過地点と3G通信状況の履歴に加え,他のユーザ端末との遭遇履歴を記録させ,3G通信可能エリアおよび特定ユーザに最短時間で到達する経路表を構築し,すれ違い時に経路表を他のユーザと交換することで,経路表を更新していく.また,提案手法の性能評価を適切に行うためのシミュレーション方法について述べる.
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.213, pp.80-81, 1998-08-14

98年4月26日の深夜,最後に残っていた東北本線を高架橋の上に切り回し,東京・JR赤羽駅周辺から6カ所の"開かずの踏切"が消えた。 赤羽駅には埼京線,京浜東北線,東北本線のほか,東北客貨線と新幹線が乗り入れている。新幹線と埼京線を除いては地上を走っているので,朝夕のラッシュ時は踏切が開く時間が短く,かなりの渋滞が発生していた。

2 0 0 0 OA 日米戦争

著者
ホーマー・リー 著
出版者
博文館
巻号頁・発行日
1911
著者
数原 良彦 片岡 良治
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.24, 2010

検索ランキング精度向上のため,TF-IDFなどの素性を入力とし,機械学習の枠組みでランキングの最適化を行うランキング学習において.クリックスルーログなど,全文書に対して付与されていない素性を用いると,適切にランキングを行うことができない問題が考えられる.本研究では,文書全てに付与されない素性について,素性推定器を用意することで上記問題を解決し,高精度なランキング学習の実現を目指す.
著者
稲垣 智 井村 誠孝 池田 聖 眞鍋 佳嗣 千原 國宏
雑誌
研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.2010-CG-138, no.14, pp.1-6, 2010-02-04

映画やゲームにおいては,炎を写実的かつリアルタイムにレンダリングする手法が求められている.炎の CG はエンタテインメントのみならず,防災のための火災シミュレータなどにおいても有用である.本論文では,炎を粒子ベース流体シミュレーションに基づき,写実的かつリアルタイムにレンダリングする手法を提案する.炎を写実的にレンダリングするには,三つの条件を満たすことが重要である.一つ目の条件は,炎が風のような力の影響を受けて変形することである.二つ目の条件は炎の明るさと色が正確であることである.三つ目の条件は,炎の周辺に陽炎が発生することである.提案手法はこれら三つの条件を満たすように粒子ベース流体シミュレーションすることで,炎を写実的かつリアルタイムにレンダリングする.提案手法を実験し,写実的かつリアルタイムにレンダリングできることを確認した.