著者
伊藤 直之 村岡 登 金井 一享 中尾 るり子 堀 泰智 星 史雄 樋口 誠一
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.19-23, 2008-03-20 (Released:2009-04-03)
参考文献数
29

一般家庭で飼育されている犬190頭および猫89頭から糞便を採取し,市販のELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)キットを用いてクリプトスポリジウム抗原を検出した。クリプトスポリジウム抗原は,犬では6.3%(12/190),猫では10.1%(9/89)の糞便から検出された。犬ではクリプトスポリジウム抗原の検出率は,糞便性状や年齢,性別,由来,生活環境のようなプロフィールと関連が認められなかった。同様に,猫においてもクリプトスポリジウム抗原検出とプロフィールとの間には,関連性が認められなかった。これらの成績から,一般家庭で飼育されている犬および猫において,クリプトスポリジウムの感染は,低率ではあるものの広く蔓延している可能性が示唆された。
著者
軽部 義久 井元 清隆 鈴木 伸一 内田 敬二 伊達 康一郎 郷田 素彦 初音 俊樹 南 智行 橋山 直樹 坂本 哲
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.645-651, 2007-08-25 (Released:2007-08-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

感染性大動脈瘤はきわめて重篤な疾患であり, 診断, 治療等問題点が多い. われわれの経験例について検討した. 対象は2000年 1 月から2005年12月に当院で経験した 7 例の感染性大動脈瘤. 年齢は59~76歳, 男性 5 例, 女性 2 例. 病変大動脈は胸部(TAA)3 例, 胸腹部(TAAA)2 例, 腹部(AAA)2 例で, 仮性瘤形成を含む破裂例は 4 例であった. 細菌培養では術前血液から 1 例にKlebsiella pneumoniaを, 術前心嚢水から 1 例にStaphylococcus aureusを, 術中検体からStaphylococcus aureus, Staphylococcus capitisを 1 例ずつ, 術後血液から 1 例にSalmonellaを検出した. 前述の術後診断 1 例を除き術前より抗生剤投与を開始した. 手術は入院11.7 ± 8.2(0~21)日で施行した. TAA 2 例に自己動脈パッチによる大動脈形成術, 1 例に瘤切除・人工血管置換 + 大網充填術, TAAA 2 例に対して瘤切除・大伏在静脈グラフトによる腹部分枝再建・腋窩-大腿動脈間バイパス術, AAAには 1 例に瘤切除・人工血管置換, 腹部大動脈閉塞をきたした 1 例に腋窩-大腿動脈間バイパス術を施行した. 術後に白血球数やCRPが正常化した後も抗生剤を長期投与した. 合併症はTAAA症例 1 例に肺炎, 下行結腸穿孔を認めた. 在院死亡はTAAA症例で術後脊髄麻痺, 肝膿瘍, 敗血症を合併した 1 例のみであった. 自己組織による大動脈再建, 大網充填法等部位や形態に応じた術式選択と術前後の十分な抗生剤投与という基本戦略で感染性大動脈瘤治療を行い, 7 例中 6 例を救命した.
著者
浅野 昌司 宮本 和久
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.13-21, 2004 (Released:2004-05-25)
参考文献数
55
被引用文献数
2 2

Bacillus thuringiensis has been utilized worldwide as an environmentally benign biopesticide. The quality control of formulations from B. thuringiensis are usually performed based on bioassays with insects, although the test methods and the species of test insects differ among countries. In Japan, a bioassay method with silkworm, Bombyx mori, was proposed by the Japan Plant Protection Association in 1973, which illustrated a protocol of procedure and a reference sample to calculate the relative potency of the test sample by Bombyx Unit. This bioassay method has been used without modification since that time for the quality control of all B. thuringiensis formulations commercially produced in this country. However, in order to simplify and speed up the bioassay method some modifications are called for. The authors review some problems with the current method and discuss possible modifications to resolve these issues and improve the assay.
著者
渡士 幸一 下遠野 邦忠
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.105-110, 2005 (Released:2005-11-22)
参考文献数
35
被引用文献数
4 4

現在C型肝炎ウイルスに対する治療としては主にインターフェロン(IFN)の単独投与あるいはIFNとリバビリンの併用療法が適用されている.しかしこれらによる著効率は平均して3-6割というのが実状であり,これらに代わる抗HCV療法の開発が求められている.近年HCVが培養細胞内で自律的に複製増殖するHCVサブゲノムレプリコンシステムが確立され,培養細胞で抗HCV剤候補をスクリーニングすることが可能となった.我々はこの系を用いてさまざまな化合物のHCVゲノム複製への影響を調べることにより,免疫抑制剤シクロスポリン(CsA)が少なくとも培養細胞の系においてHCV複製を抑制することを見い出した.このCsAの抗HCV効果には免疫抑制作用は必要ないことがわかった.さらにCsAの抗HCV作用のメカニズムを解析することによって,CsAの細胞性標的因子の一つであるシクロフィリン(CyP)BがHCVのゲノム複製に重要な役割を果たすことが示唆された.このように抗HCV剤候補の探索は未知のHCV複製機構を解明する手がかりとなるかもしれない.
著者
中島 秀之 橋田 浩一 松尾 豊
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.31-38, 2007 (Released:2008-12-15)
参考文献数
14

Information technology (IT) is now mature enough to be applied to our societal systems. Altough IT has potential to change our life in a drastic manner, it is not recognized by many. Researchers on IT on the other hand have little interest in designing new societal systems. Even when they do, they lack knowledge of the real world and human. Collaboration with cognitive science as well as social science is called for.
著者
松田 七美男
出版者
社団法人 プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.144-154, 2002 (Released:2005-12-08)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

This article introduces how to process and visualize scientific data with using ”Gnuplot” which is freely available plotting utility from the Internet. Not only a simple example of drawing a single plot on a page but also advanced feature of handling data stream and communication to the external application is explained.
著者
宮川 繁:著 高木 和子:訳
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.797-803, 2004 (Released:2004-03-01)
被引用文献数
1 1

マサチューセッツ工科大学は2001年にそのすべての授業資料をWeb上のオープンコースウエアに無料で公開すると発表し,2003年にはそこで提供されるコース数が500を超えるまでになった。MITがオンライン教育をどのように作り出し,提供できるか,財政面での実行可能性,持続可能性,プログラムの目標をもとに検討し,次にe-ラーニングの展望,市場調査とビジネスモデルの作成,などを研究するなど,オープンコースウエア(OCW)の実現までの過程を述べた。そしてOCWの資金調達,それへの教員の参加,オンライン授業教材の知的所有権の問題,OCWの利用者,OCWのコースについて紹介する。
著者
佐藤 裕 四戸 豊 佐藤 健一 坂本 望 今井 康雄 城 茂治
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.25-30, 2007-02-01 (Released:2008-05-23)
参考文献数
15

68歳女性の顔面神経麻痺患者に星状神経節ブロック、薬物治療、経皮的神経刺激通電療法による治療を開始した。初診から1カ月後、十分な改善を認めず難治例とも思われたが、その後鍼治療を取り入れたところ症状は徐々に改善し、初診から10カ月後、麻痺症状は消失した。49歳女性の三叉神経麻痺患者に星状神経節ブロック、薬物治療、経皮的神経刺激通電療法などにより治療を行っていたが、症状は改善せず、麻痺に神経痛様疼痛を伴うようにもなり治療に苦慮していた。鍼治療を取り入れたところ症状の軽減を認め治療を継続している。これら神経麻痺2症例に対し、鍼治療が有効な治療手段であった。神経ブロック、薬物治療に鍼治療を併用することは極めて有用と考えられる。
著者
藤本 英樹 片山 憲史 林 知也 木村 啓作 矢野 忠
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.203-212, 2008 (Released:2008-09-02)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1 1

(目的)酸化ストレスの評価は、スポーツ選手のコンディショニングに重要である。そこで、運動誘発性の酸化ストレスに対する鍼通電刺激の影響について検討した。(方法)対象は健常成人男性10名で、鍼通電(EA)群と無刺激対照(CONT)群を設け、低周波鍼通電を両内側広筋へ行った。漸増運動負荷はエルゴメーターを用い、負荷中の呼吸代謝を記録した。酸化ストレスの評価はFRAS4により行った。(結果)CONT群に比し、EA群ではRCポイントの有意な延長を認めた。CONT群で酸化ストレス度は負荷前と比し運動により有意に上昇したが、抗酸化力ではその上昇は認められなかった。EA群で酸化ストレス度は運動により有意な上昇を認めず、抗酸化力では有意に上昇した。(結論)鍼通電刺激は呼吸代謝に影響を与え、酸化ストレス度を抑制し、抗酸化力を高める可能性が示唆され、鍼通電刺激はスポーツ選手のコンディショニングに有用であると考えた。
著者
岩田 宗彦 小島 大輔
出版者
日本比較内分泌学会
雑誌
比較内分泌学 (ISSN:18826636)
巻号頁・発行日
vol.34, no.129, pp.82-85, 2008 (Released:2008-06-03)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1
著者
堀内 美穂 中村 徹 永井 賢吉
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.32-42, 2009 (Released:2009-04-01)
参考文献数
2

科学技術振興機構(JST)が作成,提供しているJSTPlusファイルおよびJMEDPlusファイルを用いて索引に関する調査を実施した。検索時に利用される検索フィールドといった検索動向の分析や検索テーマ(52テーマ)ごとの検索フィールドによる再現率・適合率への寄与の調査分析を行い,利用者は索引を意識して検索することは多くないが,気付かぬうちに索引およびシソーラスのメリットを受けていること,索引を検索対象とすることで検索精度が向上し,書誌のみではたどり着けない文献も検索できていることを確認した。また,論文の標題・抄録・全文中における索引語の出現割合の調査により,索引語の4割は,その同義語も含めて論文中には存在しないものであり,索引者が本文から判断して付与していることを明らかにした。これは人手による索引の有効性を意味する。
著者
樺島 祥介
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.95-103, 2007-06-05 (Released:2008-11-21)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2
著者
坂本 大介 小野 哲雄
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.2_101-2_107, 2006 (Released:2006-06-30)

本稿では環境に埋め込まれた対話可能な絵画を生成するソフトウェアについて述べる.本ソフトウェアが生成する絵は環境センサの情報をもとに常に変化する.また,絵に直接触ることで絵に対して変化を与えることができる.これらの絵はモチーフというプラグインで管理され,ユーザの意思で変更することが可能である.本ソフトウェアが出力する絵はコンピュータ上のディスプレイではなく,コンピュータという存在を消したディスプレイから出力することを想定している.これにより我々が生活している空間に含まれる情報を,生活の一部として絵画を飾ることと同じように「情報を飾る」という概念を提案する.また,本稿では空間を一枚の絵画が支配し表現する,環境に埋め込まれたソフトウェアの可能性について考察する.
著者
山田 浩之 河口 洋一 江戸 謙顕 小宮山 英重
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.29-40, 2008 (Released:2008-09-10)
参考文献数
58
被引用文献数
2 2

本研究は,北海道北部の山地河川において,細粒土砂の堆積がイトウの産卵床環境や卵の生残に及ぼす影響について検討した.その結果,溶存酸素濃度の低下により,発眼卵の生残率が低下する傾向が得られた.さらに,細粒土砂の堆積量の増加に伴い産卵床の透水係数や産室への物質の浸透性および熱の伝導性が低下することが示された.本研究の調査対象河川では細粒土砂の堆積量が低いレベルにあったため,卵の生残率に対する細粒土砂堆積の直接的な影響については明らかにすることはできなかった.よって,今後は細粒土砂の堆積が多い河川での調査や室内実験による検証作業によりどの程度の堆積量がイトウの卵の生残や発育に許容されるかについて検討すると同時に,細粒土砂の堆積を介した産卵床内部の温度環境の変化の影響についても明らかにする必要がある.
著者
北 英紀 日向 秀樹 近藤 直樹
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
雑誌
Synthesiology (ISSN:18826229)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.212-221, 2008 (Released:2009-01-16)
参考文献数
12
被引用文献数
1 3 1

製造効率を高め、環境負荷を少なくするには、1つの過程を起点として全体に広がる資源やエネルギーの消費と排出の過程を知ることが必要である。本稿では、まず、アルミニウム溶湯中で使用されるヒーターチューブを鉄とセラミックスで作製した場合のエクセルギー解析とその比較を行い、次にアルミニウム鋳造の全工程についてのエクセルギー解析を行った。これらの結果から資源とエネルギーを有効に利用するための鋳造プロセスにおける合理化指針を得た。