著者
小菅 亨 岡田 隆 増田 敦子 石井 孝法 山田 利彦 金丸 雄介 菅波 盛雄
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.9, pp.183-191, 2015

柔道の競技力強化の現場で行われている「ロープトレーニング」とは上肢と体幹を主に用いて局所筋持久力と全身持久力の向上を目的に行われるものである.この方法が柔道競技において普及しているのは柔道には上肢と体幹を多く用いるという競技特性があるためである.本研究ではロープトレーニングの生理学的反応を明らかにし,ロープトレーニングのトレーニング効果に関する知見を得ることを目的とした.大学男子柔道部員10名を対象とし,ロープトレーニングをTabata protocolに模倣したロープトレーニングで行わせた.測定項目は酸素摂取量,血中乳酸濃度,心拍数とした.また,自転車ペダリング運動によって測定される仮定最大値(VO2max ,Lamax, HRmax)との相対値を算出した.結果はVO2max に対してロープトレーニング中のpeakVO2は有意に低く,Lamax に対し,ロープトレーニング中のpeakLaは有意に高かった.peakHRはロープトレーニング中ほぼHRmaxに近い値で推移し,有意差はなかった.上記によりロープトレーニングは解糖系に最大の負荷をかけるが,酸化機構には最大の半分程度の負荷しかけることができないということになる.これは,上肢などの局所筋における解糖系に大きな負荷がかかることで酸化機構への負荷が十分に高まる前にオールアウトしたことが原因であると考えられる.今後は,ロープトレーニングで負荷をかけることができなかった酸化機構に最大負荷をかけることができるプロトコルを探索していくことが課題の1つである.
著者
宮川 重義
雑誌
京都学園大学経済経営学部論集
巻号頁・発行日
no.5, pp.31-52, 2017-11-30

本稿では知的巨人と称されるミルトン・フリードマンについて論じるが、彼のこれまでの著作を紹介したり、それを系統的に分析することではない。そのような仕事はジョン・バートンがいみじくも述べたように「(フリードマンの業績を評価することは)ナイアガラの滝の水量を小さな計量カップではかるに似たり」ということになり、到底本稿の及ぶ範囲ではない。フリードマン理論がどのようにアメリカの金融政策、経済の発展に関わってきたかを今日的観点より論じた。
著者
大東 敬明
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.193-208, 2008-03-31

本稿は、東大寺二月堂修二会(以下、東大寺修二会)「中臣祓(なかとみのはらえ)」の典拠や構造を、その詞章から、分析しようとするものである。東大寺修二会に参籠する僧は練行衆(れんぎょうしゅう)と呼ばれ、法会を支障なく執行する為に、穢れを取り去って心身を清浄に保つ事が求められる。そのため、現在では三月一日から十五日未明にかけて行われる「本行(ほんぎょう)」に先立って「別火(べっか)」行が行われ、その最終日にあたる二月末日に「咒師(しゅし)」によって「大中臣祓(おおなかとみのはらえ)」が行われる。また、「別火」行・「本行」期間中、様々な場面で「中臣祓」が行なわれる。祓は、罪や穢を除去することを目的とする儀礼である。この「中臣祓」は、「別火」行に入る際、「別火」行中の朝夕の勤行の際、洗面・入浴・便所の後、「本行」において、日々、二月堂に上堂する前等に行われる。「中臣祓」で用いられる御幣には、本稿で分析対象とする詞章が書かれた紙が巻きつけられている。練行衆は、それぞれ持っている守本尊に向かい、拍掌の後に、詞章を黙誦し、この御幣で身を祓うなどの所作を行なう。本稿において「中臣祓」の詞章は、① 東大寺八幡宮(手向山八幡宮)への法楽。② 真言神道や修験道で用いられた「拍手祓大事(かしわではらえのだいじ)」「伊勢拍手秡(いせかしわではらえ)」と共通する作法。③ 陰陽道流の祓で用いられた自力祓形式の略祓。④ 吉田神道の影響を受けた略祓で、息災延命祈願に用いられた祓。の四つの部分より構成される、と考察した。それぞれの具体的な典拠について、②以外は見出すことは出来なかったが、「中臣祓」の詞章が複数の系統の祓に関わる作法を集めて、独自の形式を作り上げている事は言える。すなわち、「中臣祓」は東大寺八幡宮へ法楽を捧げた後に、真言神道、陰陽道、吉田神道など、典拠を変えながら三重に祓を行う構造(②③④)を持つ。東大寺修二会が、諸儀礼の要素を取り込んで独自の形式としてゆくことは、法会の様々な部分から見出すことが出来る。「中臣祓」は東大寺修二会全体から見れば小さな作法であるが、同様の性格を見出すことが出来た。
著者
中出 佳操
出版者
北翔大学
雑誌
人間福祉研究 = Human welfare studies (ISSN:13440039)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.121-131, 2007

Obesity is a growing health problem in the United States. One fifth of the American suffer from it, and one third are overweight. As this is becoming a socio-economic problem resulting in a remarkable increase in health expenditure, Congress started to take measures to cope with the issue. In Japan obesity is also on the rise, though not as much as in the United States. In addition to that other problems such as unbalanced diet, extinction of traditional food culture and unsafe food products have been observed, which led to the enforcement of the Diet Education Law in 2005. In this paper, we discuss the reality of diet education for high school students in Japan, also paying attention to the diet problems of the United States.
著者
小川 剛生
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = The Bulletin of The National Institute of Japanese Literature (ISSN:03873447)
巻号頁・発行日
no.30, pp.53-94, 2004-02-28

艶書文例集とは、さまざまな恋の状況における懸想文を掲げ筆法を解説した書札礼の故実書であるが、その包摂する範囲は広きに及んで、艶書文学というべきジャンルを形成している。たとえば『堀河院艶書合』も艶書や艶書歌の手引きとして読まれたし、室町物語や仮名草子には登場人物の艶書のやりとりによって筋が展開するものがある。東山御文庫に蔵される『思露』は中世に成立した艶書文例集である。やはり艶書の「書様」と「文例」からなり、艶書をしるし相手に贈る際の、さまざまな知識を解説した書物であるが、その成立・作者については、これまではっきりしたことは知られていなかった。本稿において、本書は南北朝末期、二条良基が著したもので、公武の間で広く読まれていたことを述べた。さらにその内容は文学的にも見るべきものがあり、当時の『源氏物語』をはじめ王朝物語への理解を示し、また仮名文をいかに書くべきかを初めて具体的に説いた書物として注目に値することを指摘した。続いて、代表的な艶書文例集として知られる『詞花懸露集』はこの『思露』を後人が改編した本であること、また『堀河院艶書合』の伝本の一部にも『思露』を吸収したものがあることなどを述べ、中世の艶書文学作品に『思露』が与えた影響が甚だ大きいことを明らかにした。附録として東山御文庫蔵本の全文を翻刻した。 A collection of love letter examples is an ancient customs book that was printed love letters written under various situations of love and it was commented on style of writing Kojitusyo (the protocol or events in the imperial court and Bu-ke) of Shosatsurei. It was widely subsumed and formed a genre called the love letter literature. For example,”Horikawain-ensho-awase”(堀河院艶書合)was also read as a guide book of Enshouta in Muromachi-monogatari(室町物語) or in Kana-zoshi(仮名草子), the plot was developed by exchanging love letters of the characters. “Shiro”(思露) which belongs to the Higashiyama Library is a collection of love letter examples formed in the middle ages. Though this is also a book composed with the way of writing and examples about various knowledge for people who wrote love letters to their lovers. Regarding to the time of establishment or about the author have been uncertain so far. In this paper, it is mentioned that this book was written by Nijo Yoshimoto and read by the imperial court and the shogunate. In addition, the content contains the specific character in literary terms showing to appreciate Japanese imperial tales including “Genji-monogatari”(源氏物語) in those days. It also pointed out that it is worthy of notice as the book explained specifically how should the kana texts were written for the first time. Then “Shika Kenro Shu”(詞花懸露集) known as a representative of a collection of love letter examples is a book which was revised by later hands, there is also something which absorbed “Shiro” in the part of handed-down manuscript of Horikawain-ensho-awase were mentioned. It was shown that “Shiro” greatly influenced the medieval love letter literary works. The whole text in Higashiyama Library reprinted as an appendix.
著者
西田 耀 木村 啓二
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB) (ISSN:2188868X)
巻号頁・発行日
vol.2020-EMB-53, no.14, pp.1-6, 2020-02-20

アプリケーションの耐障害性を向上させる手法の一つにチェックポインティングがある.これまでに,アプリケーションを変更することなく透過的にチェックポイントを行う手法がいくつか発表されている.また,Non-volatile DIMM (NVDIMM) を状態の保存先として利用することで,主記憶に比べて 100 倍以上遅い外部記憶へのアクセスに依存することなくチェックポイントを行う手法が提案されている.しかし,DRAM で構成された主記憶から不揮発性の記憶装置に状態をコピーするという操作は依然存在しており,これがチェックポイントのオーバーヘッドの大部分を占めている.本研究では,アプリケーションを NVDIMM 上に直接マッピングして実行することで状態のコピーを最小限に抑え,さらにページテーブルも含めたプロセスのメモリ空間を二重化して一貫性を確保しつつチェックポインティングを行う,NDCKPT という手法を提案する.Linux Kernel に NDCKPT を実装し,Optane DC Persistent Memory を用いて評価を行った結果,メモリ消費量が 1MB 程度のアプリケーションでは,100ms 程度の高頻度でチェックポイントを行っても実行時間の増加を 1% 以下に抑えられることがわかった.また,数百 MB のメモリを消費するアプリケーションにおいては,NVDIMM 上で実行を行うオーバーヘッドが支配的で実行時間比で 2 倍から 3 倍以上となる一方,チェックポイントによって加わるオーバーヘッドは 20-30 秒間隔で 10% 前後となることがわかった.
著者
為井 智也 柴田 智広 石井 信
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.82(2005-MUS-061), pp.47-52, 2005-08-05

ピアノ演奏で重要と言われる「脱力した」奏法と「力んだ」奏法の比較を、示指の3関節を用いた打鍵動作を対象に行う。本目的のため、示指の関節角度、筋電位、鍵盤の変位を同時に記録することの出来る計測システムを開発した。予備的な実験の結果、脱力した場合と力んだ場合では筋電のパターンに違いが認められ、その結果として鍵盤の挙動にも違いが現れることを示す。特に指が離鍵する際の仲筋の活性度と離鍵速度に強い相関が見られた。得られた結果から、今回開発した計測システムを用いることによって演奏者の熟達度を評価する手法となり得ることが期待される。
著者
足立 健太郎 土方 嘉徳 Joseph Konstan
雑誌
第8回Webとデータベースに関するフォーラム論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.205-212, 2015-11-17

Pinterest は人々をつなぐソーシャルネットワーキングの機能と既存のコンテンツをまとめて新たなコンテンツを作成するキュレーションの機能を併せ持つサービスである.Pinterest には 2015 年 3 月末の時点で 500 億の画像が存在し,ユーザが自らの意図に合う画像を適切に見つけるためには画像推薦の機能が必要である.現在の主要な推薦アルゴリズムには,コンテンツベースフィルタリング,協調フィルタリング,社会ネットワークに基づく推薦,人気度に基づく推薦があるが,それぞれ異なる種類の情報を用いている.Pinterest は,上記のアルゴリズムで用いられる情報を全て有しているため,任意のアルゴリズムを適用できる.さらに,Pinterest のユーザは自分のためだけでなく,他人に見せるために特定のテーマに沿ったコレクションを作成することもあり,従来の推薦システムの想定とは異なるモチベーションを持っていると言える.上記のように新しいタイプのサービスである Pinterest を対象に,どの推薦アルゴリズムが有効に働くのかを知るため,主要な推薦アルゴリズムを正確性と利便性の観点から評価を行なった.
著者
鈴木 栄幸 加藤 浩 佐々木 真理
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.93(1996-CE-041), pp.33-40, 1996-09-20

本報告では、プログラミング協同学習ソフトウェア「あるごありーな」を利用した実験授業のインタラクション分析結果について述べる。「あるごありーな」は、プログラミングを含むソフトウェア作成技術育成を目的とした対戦型相撲シミュレータである。学習者は、力士の動きをプログラム言語を使ってプログラムし、他人の力士と対戦させる。対戦を活動の中心におくことは、強い力士を作ることを共通に志向する実践共同体の形成を支援する。この共同体の中で生徒らは自分の位置、すなわちアイデンティティを確立するともに、ソフトウェア作成技術を身につけていくのである。ビデオ分析結果により、「あるごありーな」が生徒らによるプログラミングの実践共同体の形成・維持を支援すること、学習はその共同体内でのアイデンティティの変容過程として捉えられることが示された。