著者
上野 素直 藤本 学 Sunao Ueno
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 = Kurume University psychological research (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.7-15, 2015-03-31

恥は大きく3つに大別することができる。本研究はその中で,理想自己と現実自己の乗離によって 生じる感情である“私恥”に注目する。研究1では,はじめに,人がどのような点に目を向けて自己評価しているのかを,自由記述アンケートによって同定した。つぎに,得られた結果を元に,自己評価傾向を4つの側面から測定する尺度を開発した。この尺度は各側面のポジティブとネガティブの両極を測定することから,両価的自己評価尺度(ASES)と命名された。さいごに,ASESの内的整合性と基準関連妥当性を確認した。続いて私恥を感じている人の特性および状態を明らかにするために, 研究2でははじめ,ASESを用いて自己評価の4側面について理想と現実を調査し,それらの差を求めた。つぎに,これらの高低の組み合わせから,調査参加者を4群に分類した。群間比較の結果, 私恥が高い者は自尊感情,自己効力感,自己愛が低い一方で,自己嫌悪感が高いことが明らかになった。
著者
中村 牧子 上野 博志 中垣内 昌樹 堀 正和 田中 修平 城宝 秀司 絹川 弘一郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.611-618, 2019-06-15 (Released:2020-08-17)
参考文献数
12

症例は58歳男性,主訴は心窩部痛・心肺停止.2018年某月初旬,心窩部痛・嘔吐にて救急要請した.救急車内で心室細動(VF)となりAEDによる除細動が3回施行されるもVF停止せず,心肺蘇生が継続され当院ERへ救急搬送された.気管挿管,アドレナリン,アミオダロン投与後も自己心拍再開が得られず,VA-ECMOを挿入し冠動脈造影(CAG)を施行.左前下行枝#6 100%,右冠動脈#1-2 90%を認め,引き続き#6にPCI施行,その後の除細動で洞調律へ復帰した.#1-2にもPCIを施行しTIMI 3となったが左室拡張末期圧20 mmHgと高値のため左室ベント目的にIMEPLLA 2.5を挿入した.CCU入室時脈拍触知せず,胸部X線で肺うっ血あり,心エコーで大動脈弁の開放を認めず,高度のびまん性左室壁運動低下(EF 10%)を認めた.低用量の静注強心薬も併用開始し第2病日ECMOを離脱した.CPKは最高17737 IU/L,CK-MB 702 ng/mLまで上昇したが,左室壁運動の改善を認め,第5病日IMPELLAを抜去,第6病日人工呼吸器と静注強心薬を離脱した.第14病日の心エコーではEF 47%に改善を認め,神経学的後遺症なく第31病日に独歩退院し,退院1カ月後に就労復帰した.本例はECMOによる全身循環の維持,PCIによる冠血行再建とIMPELLAによる左室減負荷により心機能が回復し救命し得たと考えられた.
著者
山極 哲也 酒井 和加子 吉岡 亮 上野 博司 山代 亜紀子 川上 明 荻野 行正 土屋 宣之 大谷 哲之 大里 真之輔 信谷 健太郎 竹浦 嘉子 上林 孝豊 清水 正樹 大西 佳子 上田 和茂
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.123-128, 2023 (Released:2023-04-24)
参考文献数
11

地域全体の緩和ケアの質の向上を図るためには,各施設が緊密につながることが必要であると考え,2017年9月に「京都ホスピス・緩和ケア病棟(PCU)連絡会」を発足させた.個々のPCU施設が抱える問題を気軽に話し合い,共に悩み考え,成長,発展させる場,新規立ち上げ施設を支援する場とした.連絡会では,その時々の話題(緊急入院,輸血,喫煙,遺族会など)をテーマに議論を行った.2020年,COVID-19流行のため連絡会は休会となったが,メール連絡網を用い,感染対策,PCU運営などの意見を交わし,WEB会議システムを用い連絡会を再開させた.日頃より顔の見える関係があることで,COVID-19流行という有事においてもPCU間の連携を維持し,がん治療病院との連携にも発展させることができた.京都府のPCUが一つのチームとなることで,患者,家族がどのような場所においても安心して生活できることを目指している.
著者
上野 敦弘
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.581-585, 1980-01-10 (Released:2010-02-25)
参考文献数
5

Sound transmission of the femur was recorded by holding a microphone on the pubic symphysis and tapping the patella with a autohammer.The sound transmissions in fractures and pseudarthroses of the femur were low in pitch and long in duration, and they returned to the normal one, delaying a few week after X-ray findings of facture healing.
著者
根岸 洋・上野 祐衣・熊谷 嘉隆
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.111-120, 2020 (Released:2020-11-13)

江戸時代の「ねぶり流し行事」を原型とする「秋田の竿灯」は、1980年に国の重要無形民俗文化財に指定された文化遺産である。1931年に発足した秋田市竿灯会は妙技会を初めて開催し、その後「竿燈」の用語が広く用いられるようになった。実行委員会が主催する「竿燈まつり」となったのは1965年以降である。現在行事の後継者不足は顕在化していないものの、今後の少子高齢化が予想されることから、若年層確保のための取り組みが幾つか行われている。また本行事に外国人参加についてのガイドラインは設置されておらず、国際教養大学およびその前身であるミネソタ州立大学秋田校の竿燈会という組織単位で、外国人留学生が継続的に参加している。他方、各町内会の竿燈会のメンバーになるためには町内に一定期間住むことが求められるため、滞在期間が限られる留学生にとってはハードルが高いのが現状である。
著者
上野 明 松崎 悦子 百木 克夫 斉藤 伍作 酒井 純雄
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.109-114, 1965-06-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

11-jodo-10-undecynoic acid (K-4172) was synthesised in our laboratory from 10-undecynoic acid reacting with iodine in presence of alkaline hydroxide. Fungistatic and bacteriostatic activities of K-4172 were examined. It showed significant antifungal activities, especially against Trichophytons and Crytococcus neoformans, but it had weak antibacterial activities.In in vivo test by experimental trichophytosis on guineapigs, it showed also significant therapeutic activities at the concentration of 0.5% in alcohol solution. It is very interest that in the in vivo test 0.5% tincture of K-4172 was more effective when it was applied in combination with 10% of 2, 4, 6-tribromophenyl caproate.Interperitoneal and oral LD50 of K-4172 dissolved in olive oil were 132 and 225mg/Kg respectively and intraperitoneal LD50 of its sodium salt was 134mg/Kg. Chronic toxicity test of K-4172 on mice and rat showed both almost no side effect when it was admidistrated intraperitoneally and orally. The authers persume from these data that K-4172 is safely available for treatment of human trichophytosis.
著者
松崎 慎一郎 佐竹 潔 田中 敦 上野 隆平 中川 惠 野原 精一
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.25-34, 2014-09-04 (Released:2016-01-31)
参考文献数
28
被引用文献数
1 2

福島第一原子力発電所事故後に,霞ヶ浦(西浦)の沿岸帯に2定点を設けて,湖水の採水ならびに底生動物である巻貝(ヒメタニシ,Sinotaia quadrata histrica)と付着性二枚貝(カワヒバリガイ,Limnoperna fortunei)の採集を経時的に行い,それらの放射性セシウム137(137Cs)濃度(単位質量あたりの放射能;Bq kg-1)を測定した。これらのモニタリングデータから(2011年7月~2014年3月),貝類における137Csの濃度推移,濃縮係数ならびに生態学的半減期を明らかにした。湖水および貝類の137Cs濃度は定点間で差は認められず,経過日数とともに減少していった。両地点でも,カワヒバリガイよりも,ヒメタニシの137Cs濃度のほうが有意に高かった。濃縮係数を算出したところ,ヒメタニシのほうが2倍近く高かった。巻貝と二枚貝は,摂餌方法や餌資源が異なるため,137Csの移行・蓄積の程度が異なる可能性が示唆された。また生態学的半減期は,ヒメタニシで365~578日,カワヒバリガイで267~365日と推定され,過去の実験的研究で報告されている生物学的半減期よりもはるかに長かった。このことから,餌を通じた貝類への137Csの移行が続いていると考えられた。
著者
西口 遼平 進藤 吉明 石塚 純平 上野 知尭 横山 直弘 齋藤 由理 田中 雄一
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.7, pp.1389-1393, 2014-11-30 (Released:2015-02-27)
参考文献数
29

症例は76歳,男性。2010年4月に上行結腸癌,腸回転異常症の診断で右半結腸切除術を施行した。2013年10月,慢性腎不全で血液透析導入中に腹痛,腹部膨満感を訴え当科を受診した。発熱,下腹部の圧痛,反跳痛を認めたものの筋性防御は認めなかった。血液検査所見ではアシドーシスや凝固障害は認めなかった。腹部CT検査で小腸の拡張および液体貯留を認め,癒着性イレウスと診断した。保存的加療で経過観察していたが,症状が増悪したため緊急手術を施行。下行〜横行〜上行結腸間膜,小腸間膜,後腹膜に連続する袋状の膜様構造物が形成され,その中に小腸が嵌頓しており,abdominal cocoonによる内ヘルニアと診断した。膜様構造物を切除し小腸を解放したが小腸壊死を認めなかったため小腸は温存可能であった。abdominal cocoonによる内ヘルニアの1例を経験したので報告する。
著者
林田 健男 上野 武
出版者
一般社団法人 日本生体医工学会
雑誌
医用電子と生体工学 (ISSN:00213292)
巻号頁・発行日
vol.6, no.6, pp.441-448, 1968-12-15 (Released:2011-07-05)
参考文献数
51

The progress in the field of organ transplantation and artificial organ has been remarkable in the recent years. The number of clinical cases is increasing daily, and the clinical renal transplantation will soon be performed in more than 2000 occasions. One human life has been supported by artificial kidneys for over eight years. Many hearts and livers have been transplanted, and artificial auxiliary left ventricles have been functioning in human bodies. The ancient dream of replacement of organs has almost been realized.In reviewing the history of development of organ substitutes, the current status in reference to various organs has been described as precisely as possible, along with the expected development and problems in the future.
著者
上野 真奈 光成 滋生 小林 鉄太郎 村上 啓造
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2021論文集
巻号頁・発行日
pp.223-230, 2021-10-19

本研究はウェブ会議などのオンラインコミュニケーションツールにおけるスケーラビリティと E2EE の両立を目的として,楕円 Lifted ElGamal 暗号を用いた暗号化済み音声データ重ね合わせを実装する.楕円 Lifted ElGamal 暗号を用いることで従来の E2EE オンラインコミュニケーションではできなかった,サービス提供サーバにおける演算処理が可能となり,スケーラビリティの大幅な改善を見込むことができる.一方で,演算コストの大幅な増加が問題となる.そこで,本研究では暗号化済み音声データ重ね合わせを実装し,各演算処理の速度を測定,リアルタイム通信が可能な処理速度であるかを検証する.測定は複数の楕円曲線に対して行い,最適な楕円曲線の検討も行った.この評価実験の結果,256 ビットの楕円曲線を用い,かつ移動端末の上り通信速度で音声通話のみの実施を仮定した場合,最大 1024 人まで同時接続した状態で,暗号化または復号の処理をリアルタイムで実施できることが明らかになった.
著者
解良 聡 上野 信雄
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.1260-1267, 2003-10-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
43
被引用文献数
2

有機デバイスの特性を理解していくうえで,分子個々の性質と集合体としての薄膜の性質に加え,有機デバイス中に必ず存在する有機/無機界面について詳細に知ることがデバイス開発側から要求されつつある重要な課題である.しかし,その複雑さのために微視的な立場から体系的に捉えることは容易でなく,これが有機デバイスが爆発的な注目を集めるまで基礎的立場からの研究参入を拒んできた理由の一つである.光電子分光法はきわめて一般的な手法の一つで,今や有機デバイス界面の研究に不可欠となっている.有機/無機界面では得られる光電子スペクトル構造(線幅・形状・位置)についての正しい解釈がこの系を理解するうえでの重要な第一歩といえる.価電子帯最上部のバンドは,薄膜中や界面におけるキャリアの動的挙動,分子間相互作用などの物性基盤を理解するうえできわめて重要な情報を含んでいる.本稿では有機薄膜界面研究の現状,問題点と今後の課題について紹介する.
著者
上野千鶴子著
出版者
文藝春秋
巻号頁・発行日
2013
著者
上野 禎一 田浦 靖子 原田 圭輔 中矢 徹 谷川 太一 原 光平 長澤 五十六
出版者
福岡教育大学
雑誌
福岡教育大学紀要. 第三分冊, 数学・理科・技術科編 = Bulletin of University of Teacher Education Fukuoka. Part III, Mathematics, natural sciences and technology (ISSN:0532811X)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.45-56, 2016-02-10

Syntheses of ruby and sapphire were performed by flux-method. As for the synthesis of ruby, the using flux is PbO-PbF2, and the coloring reagent is Cr2O3. In almost all runs, hexagonal thin platy transparent crystals were obtained. The total color is light pink, and the center part of crystal shows red color. As by-products, light brown platy-hexagonal form of PbAl12O19 crystal and light pink octahedron form of PbAl2O4 crystal (spinel type) were also obtained, which were synthesized by the reaction between Al2O3 and flux component (Pb). As for the synthesis of sapphire, the using fluxes are MoO3, MoO3-Li2O and PbO-PbF2, and the coloring reagent is Fe2O3. In the case of the only MoO3 flux, light blue, and in the case of the MoO3-Li2O flux, dark blue platy-hexagonal sapphire crystals were obtained. In the case of the PbO-PbF2 flux, from transparent to light blue platy-hexagonal sapphire crystals were gained, and light brown platy-hexagonal form of PbAl12O19 crystal was also obtained as like as the case of the synthesis of ruby.
著者
上野 博史
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では分子機械の改造・創成を実現する新規進化分子工学的スクリーニング技術の開発を行う。そのため1DNA隔離、タンパク質発現・精製、機能評価、DNA回収という進化分子工学的スクリーニングプロセスの全てをマイクロチャンバーデバイス内で実現する技術を開発する。これまでの研究から精製以外のプロセスのデバイス実装は完了している。そこで本研究では微小ドロップレット内でのタンパク質精製プロセスを組み込んだスクリーニング技術を確立する。さらに確立したスクリーニング技術を分子機械であるF1-ATPaseのスクリーニングへと拡張させ、分子機械の改造や新規機能の創成への適応を目指す。