- 著者
-
越中 康治
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.4, pp.479-490, 2005-12-30 (Released:2013-02-19)
- 参考文献数
- 31
- 被引用文献数
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本研究では, 挑発的攻撃, 報復的攻撃, 制裁としての攻撃の各タイプの攻撃行動に関する幼児の認知を比較検討した。4, 5歳の幼児を対象として, 主人公が他児に対して各攻撃行動を示す場面を紙芝居で提示し,(1) 主人公が示した攻撃行動の善悪判断,(2) 攻撃行動を示した主人公を受容できるかの判断,(3) 幼児が日常, 主人公と同様の攻撃行動をするかの報告を求めた。結果として,(1) 幼児は挑発的攻撃は明らかに悪いことであると判断するものの, 報復的攻撃及び制裁としての攻撃に関しては善悪判断が分かれており, 全体として良いとも悪いともいえないという判断を示した。また,(2) 幼児は挑発的攻撃を示す主人公を明らかに拒否していたが, 報復的攻撃及び制裁としての攻撃を示した主人公とは一緒に遊んでもよいと判断した。さらに,(3) 挑発的攻撃及び報復的攻撃に関して, ほとんどの幼児は日常示すことはないと回答したものの, 制裁としての攻撃に関しては示すと回答した者も少なからずいた。本研究から, 報復的公正に関する理解は4, 5歳児にも認められることが明らかとなった。幼児が報復や制裁のための攻撃を正当化する可能性が示唆された。