著者
奥中 康人 オクナカ ヤスト Yasuto OKUNAKA
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.23, pp.11-28, 2023-03-31

日本における西洋楽器製造の歴史は、オルガンやピアノ、ヴァイオリンの製造史に偏りがちで、金管楽器製造については、あまり調査されてこなかった。少し有名な江川仙太郎でさえ不正確な情報が多い。そこで、本稿は、明治期に金管楽器を製造していた職工について、雑誌記事や博覧会の記録に基づき、整理することを目的としている。 草創期における代表的な製造業者は、大阪では江名常三郎と上野為吉、東京では宮本勝三郎、江川仙太郎、田邊鐘太郎である。かれらの多くは、楽器の修理と信号ラッパの製造からスタートし、やがてコルネットやバリトンのような金管楽器を製造することになった。
著者
鈴木 静男 田中 康平 大沼 巧 玉置 慎吾 大庭 勝久 酒井 基至 竹口 昌之 白井 秀範 芳野 恭士
出版者
公益社団法人 日本工学教育協会
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.4_80-4_85, 2021 (Released:2021-08-01)
参考文献数
11

In the experiments performed in the advanced course of the National Institute of Technology, Numazu College, data science education was conducted remotely by using asynchronous and synchronous interactive methods. The Tellus platform with satellite and terrestrial data was used to analyze data in a cloud environment. We adopted the development of data engineering, data analysis, and value creation skills as basic educational guidelines. From the answers to the questionnaire, we conclude that 1) the asynchronous interactive method made us aware of many benefits, 2) the synchronous interactive methods gave us some issues to be solved, and 3) the three guidelines were successfully achieved.
著者
出口 幸一 西川 和宏 岩瀬 和裕 川田 純司 吉田 洋 野村 昌哉 玉川 浩司 松田 宙 出口 貴司 田中 康博
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.1186-1190, 2013 (Released:2014-12-25)
参考文献数
18

症例は85歳,男性.2006年に胃癌に対し幽門側胃切除術を施行された.術後補助療法としてUFTを1年間施行した.2009年7月に左副腎転移,傍大動脈リンパ節転移が判明し,化学療法を開始し一旦は腫瘍縮小を認めた.しかし徐々に腫瘍が進行し2011年7月には右副腎転移が出現した.2012年1月に誤嚥性肺炎を発症し入院した.入院後倦怠感悪化,食欲不振,難治性低Na血症,高K血症,好酸球増多症を認めた.当初癌性悪液質による症状を疑ったが,副腎不全も疑われたため,迅速ACTH負荷試験を施行し,Addison病と診断した.hydrocortisonの投与を開始したところ,症状の著明な改善を認めた.癌末期に副腎不全が発症した場合,症状が癌性悪液質によるものと酷似するため鑑別が困難である.両側副腎転移を有する担癌症例では,副腎不全を念頭におき,積極的に内分泌的検索を行うことが重要である.
著者
前田 奎 鈴木 楓太 束原 文郎 成相 美紀 吉中 康子 松木 優也 池川 哲史
出版者
公益社団法人 全国大学体育連合
雑誌
大学体育スポーツ学研究 (ISSN:24347957)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.62-72, 2022 (Released:2022-09-28)
参考文献数
21

<目的>本研究の目的は,コロナ禍における遠隔による大学スポーツ授業を通じて,受講者の「社会人基礎力」(経済産業省(METI)が提唱)がどのように変化するのかを記述し,その変化の背景を検討することである.本研究で対象としたSLS(スポーツ・ライフスキル)という大学スポーツ授業は,「社会人基礎力」の育成を目指したものである.<方法>新型コロナウイルスの影響を受け,第5回目(Pre:実技授業開始時点)および第15回目(Post:実技授業終了時点)において,受講生を対象に「社会人基礎力」の12の能力要素に関して,自己評価による調査を実施した.1598名の大学スポーツ授業の受講者のうち,PreおよびPostの両方の調査に回答した188名(学年:1年生123名,2年生65名,性別:男子120名,女子65名,回答しない3名)が本研究の分析対象であった.各項目の値のPreとPostの比較には,Wilcoxon符号付順位和検定を用いた.<結果および考察>本研究の主な結果は次の通りである:12の構成要素のうち,「働きかけ力」(z = -2.26,p < 0.05),「課題発見力」(z = -2.48,p < 0.05),「計画力」(z = -2.62,p < 0.01),「創造力」(z = -3.99,p < 0.01),「発信力」(z = -3.95,p < 0.01)および「傾聴力」(z = -2.49,p < 0.05)について,授業後が授業前よりも有意に高値を示した.また,「社会人基礎力」を構成する3つの力をみると,「考え抜く力(シンキング)」(z = -3.85,p < 0.01)および「チームで働く力(チームワーク)」(z = -2.25,p < 0.05)について,授業後が授業前よりも有意に高値を示した.これらのことから,「働きかけ力」,「課題発見力」,「計画力」,「創造力」,「発信力」および「傾聴力」は遠隔による大学スポーツ授業でも育成可能であることが示唆された.本研究の結果は,コロナ禍あるいはアフターコロナにおける効果的な遠隔による大学スポーツ授業の一助となる.一方,対面授業を実施することによって育成できる能力要素が多く存在する可能性もある.したがって,今後はそれらの能力を育成するための授業についても研究を進める必要がある.
著者
田中 康雄
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-12, 2021 (Released:2021-06-30)
参考文献数
67

本研究は,従来型・ユニット型の介護老人福祉施設で実施している勤続1年未満・以上における正規介護職員向けの教育・研修内容と体制を把握した上で,それらと正規介護職員の離職率がどのように関連しているかを明らかにし,今後の職場定着促進に必要な方策を施設形態毎に検討することを目的する。全国の介護老人福祉施設のうち無作為抽出した1,180か所を対象に郵送法による質問紙調査を実施した。離職率と研修内容の関連を重回帰分析した結果,従来型では勤続1年未満向けの内容のうちリーダー養成,勤続1年以上向けの内容の記録の書き方と報告の方法が離職率を高め,ユニット型では勤続1年未満向けの内容の介護技術・知識,体制の教育・研修の責任者の設置が離職率を抑え,勤続1年以上向けの内容の機能訓練に関する知識が離職率を高め,腰痛予防対策が離職率を抑える関連がみられた。今後,介護老人福祉施設においては,一律ではなく,施設形態別,勤続年数別に各施設状況に応じた教育・研修内容や体制について本研究結果内容を重点的に取り組み,内容や研修回数を見直し,経験や慣習ではなく,根拠に基づいた教育・研修実施による職場定着促進策の推進が重要になると考えられる。
著者
渡邊 裕也 山田 陽介 吉田 司 横山 慶一 三宅 基子 山縣 恵美 山田 実 吉中 康子 木村 みさか Kyoto-Kameokaスタディグループ
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
pp.2014, (Released:2020-12-08)

背景:長寿社会において,最も深刻な社会問題の1つにサルコペニアおよびフレイルがある。高齢者の自立と生活の質を維持するためには,これらを予防することが重要である。本研究では,地域在住高齢者を対象に,自己管理式の包括的介護予防プログラム(Comprehensive geriatric intervention program:CGIP)が身体機能および骨格筋量に及ぼす効果を調査した。我々は,CGIPを自宅で実施する群(自宅型)と自宅での実施に加えて週に一度の集団指導を行う群(教室型)の介入効果を比較した 。 方法:526名の参加者を,居住地区に基づいて2群(教室型 251名,自宅型275名)のいずれかに無作為に割り付けた。低負荷レジスタンストレーニング,身体活動量の増加,口腔機能の改善,栄養ガイドで構成されるCGIPを12週間実施した。参加者全員に,プログラムの説明を含む90分の講義を2回受講するよう促した。参加者にはトレーニングツール(3軸加速度内蔵活動量計,アンクルウエイト,ゴムバンド)と日誌が提供された。教室型介入群は毎週90分のセッションに参加し,その他の日には自身でプログラムを実施した。一方,自宅型介入群はプログラム実施方法の説明のみを受けた。12週間の介入前後に,膝伸展筋力,通常および最大歩行速度,Timed up and go(TUG)テスト,大腿前部筋組織厚などの身体機能を測定し,Intention-to-treat法を用いて分析した。 結果:526名の高齢者のうち,517名(教室型243名 74.0±5.4歳 女性57.2%,自宅型274名 74.0±5.6 女性58.8%)が研究対象として組み入れられた。9名(教室型 8名,自宅型 1名)は介入前の測定に参加していなかったため,解析から除外された。いずれの介入も膝伸展筋力(教室型18.5%,自宅型10.6%),正常歩行速度(教室型3.7%,自宅型2.8%),大腿前部筋組織厚(教室型3.2%,自宅型3.5%)を有意に改善した。なお,膝伸展筋力は教室型でより大きな改善が認められた(P=0.003)。最大歩行速度(教室型 4.7%,自宅型1.8%,P=0.001)およびTUGテスト(教室型 -4.7%,自宅型 -0.2%,P<0.001)は教室型介入群のみで有意に改善した。 結論:本介入プログラムはサルコペニア,フレイルの予防に有効であった。両介入後,ほとんどの身体機能と大腿前部筋組織厚は改善した。自宅型介入は費用対効果が高く,大規模高齢者集団におけるサルコペニア,フレイルの予防に貢献できるかもしれない。
著者
湯川 夏子 田中 康代 中村 道彦 木村 晶朗
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.105, 2011

【目的】私たちが食事をしておいしいと感じる要因には、食べ物そのものの味やにおい、見た目だけでなく、食事をするときの周囲の環境(食事環境)が挙げられる。本研究では、食事環境として音環境を取り上げ、BGMが食欲に与える影響について検討した。<BR>【方法】2010年11月~12月の10時~12時に、大学生20名を対象に、食欲とBGMの関係性を調べる実験を行った。被験者に食堂の食器一式と料理の画像を見て食事をイメージしてもらいながら、5つの音環境(騒がしい洋楽・穏やかな洋楽・クラシック・学生食堂の録音・BGMを使用しない)において、食欲の増減、音環境の印象について質問紙調査を行った。同時に脳波測定(I-rlx, デジタルメディック社)を行った。統計処理にはSPSS15.0を、脳波解析にはData Make とExcel2010を用いた。<BR>【結果・考察】5つの音環境中、「騒がしい洋楽」で有意に食欲の減退がみられた。音環境の印象調査で、25形容詞対を主成分分析したところ、「優和性」「高尚性」「快活性」「評価性」の4つの因子が抽出された。因子得点より、クラシックで「優和性」「高尚性」が高い、「騒がしい洋楽」で「優和性」が低いという特徴がみられた。各因子と食欲の関係をみると、「優和性」と食欲の間に有意に高い相関がみられた。脳波測定の結果より「脳安静度」を算出したところ、学生食堂の録音やクラシックで安静度が高く、「騒がしい洋楽」では安静度が低かった。「脳安静度」と食欲は -0.63と逆相関がみられ、安静度が高い時、食欲も増すということが明らかになった。以上のことより、食事環境におけるBGMが人の食欲に様々な影響を及ぼしていることが明らかになった。
著者
佐藤 尚登 宮崎 保光 竹中 康雄 西 隆昭 田口 一夫
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.83, pp.49-56, 1990-09-20 (Released:2017-01-15)
被引用文献数
3 2

In the summer of 1989, a series of measurement of the 9970 Loran-C chain and the Kita-Kyushu Decca chain was made, using two ρ-ρ Loran-C receivers and a MS-2A Decca receiver aboard the training ship Hiroshima-maru. We made a series of passage under the Bisan-Seto-Oohashi which is located in the Inland Sea of Seto, observing the time-difference, amplitude and phase-difference on the receivers. When the ship was located in the vicinity of the bridge, large positioning errors were observed as the result of the field distortion. This paper presents the results of these measurement, and says that the disturbance of the electric field can be explained by assuming the bridge to be a one-wave-long-loop antenna.
著者
山口 智浩 野村 勇治 田中 康祐 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能 (ISSN:21882266)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.870-880, 1997-11-01 (Released:2020-09-29)

The advantage of emergence is that various solutions are emerged. However, it takes large computation cost to emerge them since it requires the numbers of iterations of simulation. So we try to reduces the computation cost without losing variety of solutions by introducing the abstraction technique in Artificial Intelligence. This paper presents Isomorphism Based Reinforcement Learning by Isomorphism of Actions that reduces the learning cost without losing variety of solutions. Isomorphism is one of the concepts in Enumerative Combinatorics of mathematics. First we explain Isomorphism of Actions, then explain Isomorphism of Behaviors. Isomorphic behaviors those perform the same task can be obtained by transforming the learning result of the task by "the appropriate permutation". However, a priori knowledge that represents "the appropriate permutation" is not always given, so this paper uses the generate & test method that first generates the isomorphic learning results by transforming the learning result of reinforcement learning for a task by the combinatorial permutations, then tests to select two kinds of the behaviors performing the following tasks ; (1) isomorphic behaviors those perform the same task ; (2) discovery of the behaviors those are converged to the new task state. Since the acquired learning results are isomorphic each other, the merits of our method are those the time cost for generating various learning results is small and also the space cost is small too because it needs only the original learning result and the set of permutations for it. For these reasons, this method is significant for realizing the learning various behaviors for the dynamic environment or multiagent.
著者
尾原 裕康 野中 康臣 宮嶋 雅一 新井 一
出版者
日本脊髄外科学会
雑誌
脊髄外科 (ISSN:09146024)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.217-222, 2010 (Released:2017-05-11)
参考文献数
24

The Currarino triad was first described by Currarino et al as a combination of presacral mass, bony sacral defect, and anorectal malformation. Neuroanatomic malformations associated with this hereditary syndrome are anterior sacral meningocele, teratoma, tethered cord syndrome and Chiari malformation. In this paper the authors report four surgically treated cases of Currarino triad. The patients' age at first admission was between 1 month and 8 months, 3 patients were female and one was male. Initial symptoms were meningitis, periproctal abscess, constipation and abdominal mass. The indication for surgery was different in each case. The combination of the pathological findings of the presacral mass and the tethered cord in our cases were different in all patients. All patients showed tethered cord in our cases, although tethered cord was reported in only approximately 18% of the patients with the Currarino triad reported in the literature. The Currarino triad is categorized as a of hereditary abnormality but each case shows various combination of anomaly. It is therefore necessary to understand the condition of each individual case and to determine the proper strategy for treatment accordingly.
著者
馬水 信弥 田中 康太郎 安永 卓生
出版者
公益社団法人 日本顕微鏡学会
雑誌
顕微鏡 (ISSN:13490958)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.104-108, 2020-12-30 (Released:2021-01-13)
参考文献数
17

クライオ電子顕微鏡による単粒子解析では,試料中に含まれる複数のタンパク質構造を分類しながら解くことが出来る.ただし分類された構造間のダイナミクスの情報は類推するしかない.この問題について2020年に発表された三次元再構成およびクラス分類を行うための深層学習アプローチであるcryoDRGNは,離散的なデータ分割による構造分類を脱却し,連続的な構造分類を実現した.そこでは,オートエンコーダーをベースとし,入力粒子画像から投影パラメーターに依存する情報を分離して潜在空間を構築している.本稿では従来の構造分類と,cryoDRGNおよびその背景となる深層学習のトピックについて解説を行ったのち,構造分類のベンチマークとして6種類の複合体を有するGroEL/ESの実データについて三次元再構成とその分類を試みた.
著者
田中 康仁 小谷 通泰 寺山 一輝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.659-665, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究は、神戸市の都心商業地域において、自動車による来街者を対象に実施された駐車場の利用実態調査の結果を用いて、駐車場の選択行動に影響を及ぼす要因を分析することを目的としている。この結果、まず、提携駐車場の利用者は非利用者に比べて、滞在時間、移動距離、訪問先など、都心での活動が制約されていることがわかった。非利用者については、駐車場所と駐車時間の選択行動を離散-連続選択モデルであるTobit Model(TypeⅡ)により記述し、両者の選択行動の相互依存関係とともに駐車料金、目的地への歩行距離などの選択要因を明らかにした。また、駐車時間別に駐車場所の選択行動モデルを多項ロジットモデルにより推定し、駐車時間が長くなるほど、目的地までの距離よりも駐車料金に対するウェイトが高まることを示した。
著者
何 夢夢 高松 一哉 岸 邦宏 山中 康裕
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.631-636, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
17

日本は少子高齢化社会を迎えており、中山間地域の公共交通機関空白地域において、運転せざるを得ない高齢者人数がだんだん増えていく。3年毎に全国の自治体は、介護保険事業計画を策定する際に、65歳以上の高齢者を対象とした「介護予防・日常生活圏域ニーズ調査」を実施している。本研究は、このニーズ調査が高齢者の運転状況に関する情報を提供する可能性を示した。ひとつは、ロジスティック回帰分析をもちいて、機能的健康状態等から運転しないと推定される運転している高齢者(注視運転者と呼ぶ)をスクリーングとして見出せることである。もう一つは、注視運転者の多くが「運転も同乗もする」ことに注目して、機能的健康状態の低下ともなう、(1)自ら運転するが同乗しない、(2)自ら運転もするが同乗もする、(3)運転しないが同乗する、(4)運転も同乗もしないという順序(移動者弱者指標と呼ぶ)を確認した。
著者
山本 和央 小島 博己 田中 康広 常喜 達裕 池内 聡
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.294-299, 2009 (Released:2010-10-15)
参考文献数
10
被引用文献数
1

中耳真珠腫術後に発生し経乳突法と経中頭蓋窩法を併用した術式により部分切除, 摘出, 骨欠損部を整復し得た側頭骨内髄膜脳瘤の1例を経験した。症例は40歳の男性。弛緩部型中耳真珠腫の診断で, canal wall up tympanoplastyにてstaged operation (段階手術) を施行した。初回手術所見にて中頭蓋窩硬膜の広範囲な露出を認め, 真珠腫上皮と硬膜との癒着が著明であった。段階手術2回目の手術の際に硬膜を一部損傷したため, 筋膜で補修した。骨欠損部に対しては皮質骨で乳突腔側より補強し乳突腔は骨パテで充填した。1年後に外耳道後壁に拍動を伴う腫脹とdebrisを認めるようになり, CT, MRI所見より髄膜脳瘤及び真珠腫再発と診断した。まず経中頭蓋窩法により頭蓋底骨欠損部から逸脱した脳髄膜瘤を一部正常硬膜を含め切断した。硬膜の欠損部は筋膜にて形成し, 骨欠損部を骨片にて再建した。次に経乳突法により髄膜脳瘤と癒着した真珠腫上皮を摘出した。耳介軟骨にて外耳道後壁を再建し, 乳突腔側からも中頭蓋窩の骨欠損部を骨片で再建し, 乳突腔は骨パテで充填した。現在術後12ヵ月経過しているが, 再発を認めていない。本疾患は髄膜炎や脳膿瘍などの重大な合併症を引き起こすことがあり, 的確な診断と治療が必要である。
著者
田中 康介
出版者
京都大学ヒマラヤ研究会; 京都大学ブータン友好プログラム; 京都大学霊長類学・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院
雑誌
ヒマラヤ学誌 (ISSN:09148620)
巻号頁・発行日
no.16, pp.33-41, 2015-03-28

2014年8月30日~9 月14日にかけて京都大学学生11名、職員3名の計14名が、ブータン東部を訪問した。タシガン県に立地するブータン王立大学シェラブツェ校(カレッジ)でブータンの歴史、ディグラム・ナムザ(ブータンの礼)、踊りの授業を受けた後、4 名のシェラブツェ・カレッジ学生と共に畑作地帯カリン及び水田地帯ラディにおいて、臨地研修、体験学習を行った。役場、農業・畜産・森林普及センター、保健所、寺院などを訪問した他、現地の家々を訪ね、村人から話を聞いた。標高約900 ~ 3800 m までの範囲を移動する中で、気候・植生・生業形態のダイナミックな変化に直に触れ、農村で進行する過疎、医療の現状、現地に伝わる女神アマジョモ、男神ダンリン、僧侶ギャルセ・ガナパティなどの話に耳を傾けた。復路にはシェラブツェ校を再訪し、京都大学学生が朝の学生集会で臨地研修の成果について発表し、スタディー・ツアーである臨地研修・体験学習に参加した京都大学とシェラブツェ・カレッジ学生とのワークショップを行った。両大学の学生の相互理解を深めるために発表とワークショップは英語で実施された。特に、臨地研修・体験学習による共同生活を通じて両大学の学生は交流を深めた。本報告は、このスタディー・ツアーで各個人が出会ったもっとも印象に残った事実とその理由をもとに参加した感想を綴ってもらった記録集である。スタディー・ツアーは実践型地域研究が目指している相互啓発による参加型地域研究の一つの試みでもある。また、研究者とは異なる京都大学の学生という「当事者的視点」からのシェラブッチェ校の教育、学生との数日の生活から垣間見ることができた文化や宗教などの地域の伝統文化に対するブータンの若者の考え方や接し方などに関する日本との比較論としても読むことができるユニークな相互啓発実践型地域研究の報告書となっている。報告書の各編は以下のとおりである。はじめに:国際交流科目「ブータンの農村に学ぶ発展のあり方」の背景と目的及び本報告の意義(安藤和雄)、世界一幸福な国であり続けるために(木下広大)、ブータンにおける二週間のフィールドワークで感じたこと(高島菜芭)、今までの、そしてこれからのブータン(高浜拓也)、ブータンと日本を比べて(福田 睦)、私とブータンの旅(宮本明徳)、ブータンの自然と宗教(諏訪雄一)、秘境を訪れて(長澤勇貴)、ブータンの離農・離村問題について(森田椋也)、自分と向き合う16日間(栁原志穂)、ブータンへの初渡航(酒井 肇)、ブータンの農村における過疎と景観への影響(谷悠一郎)、おわりに:自然の教材に触れて、生活を共にする(石本恭子)、ブータンを体感する科目を(坂本龍太)