著者
中川 光
出版者
京都大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

1) シカの個体数増加による森林生態系への悪影響が日本全国において問題となっている。2) 集水域森林においてシカ害が生じた河川生態系において、なにを、どのように調べれば適切な影響評価が行えるのかという手法は確立されていない。3) 様々な要因が同時に影響しうる河川生態系において、シカ害の影響を検証するため、本研究では多地点比較によるアプローチを行う。4) 生態系モニタリングを多地点で効率よく行うため、環境DNAメタバーコーディングによる生物観測を導入する。5) 本研究により、シカ害の影響について多地点における迅速な河川生態系への環境影響評価の実施が可能となる。
著者
森嶋 直人 中川 光仁 杢野 謙次
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.B0865, 2005

【はじめに】球脊髄性筋萎縮症(spinal and bulbar muscular atrophy ; SBMA)は、伴性劣性遺伝形式をとり、通常30~50歳頃に男性にのみに発病し、緩徐に進行する遺伝性の下位運動ニューロン疾患である。性腺機能異常、顔面筋・舌筋・四肢近位筋優位の萎縮と筋力低下、筋攣縮を特徴とする。今回、我々は遺伝子診断によってSBMAと診断された2症例を経験した。長期にわたり筋力測定を行い、筋力低下の特徴と自覚症状の訴えが多い季節変動について考察したので報告する。<BR>【症例】症例1、43歳・男性。 29歳頃より下肢の脱力に気づき徐々に進行、34歳時当院神経内科受診、四肢特に下肢近位優位の脱力・顔面筋の脱力・舌の線維束攣縮を指摘されSBMAと診断。35歳時より理学療法開始、以後外来通院中である。<BR> 症例2、53歳・男性。43歳頃より右上肢の筋力低下が出現、44歳時当院神経内科受診、四肢近位筋の脱力・顔面筋の脱力を指摘されSBMAと診断。同年より理学療法開始。本症例は筋無力症候群を合併し、発症から5年経過した48歳時には、急性呼吸不全により入院。気管切開・人工呼吸器管理となったが、徐々に回復。約3か月の入院管理で人工呼吸器離脱、嚥下困難も回復し、以後外来通院中である。<BR>【評価方法】症例1は平成8年6月から平成16年11月までの約8年間、症例2は平成7年11月から平成16年11月までの約9年間、運動療法を指導し、1から2か月に1度の外来受診時に筋力測定を行った。筋力測定には、HOGGAN社製microFETを用い、運動方向を両側肩外転・肘屈曲・肘伸展・股屈曲・膝伸展・足背屈として筋力測定を行い、同時に握力測定も行った。測定方法はBohannonらの方法に準じ、等尺性筋力を測定した。<BR> 解析方法として、各筋力の経年変化をみるために、各筋別の年平均値を算出し理学療法開始年と比較した(年別減少率)。季節変動として各評価の年平均値からの変動を算出した。<BR>【結果と考察】年別減少率は、症例1で5年後まで大きく、特に左右肘屈曲・肘伸展、右股屈曲、右足背屈では5年間で50%以下に減少した。対して握力は右71%、左79%であり、8年経過しても右78%、左79%と減少率は低かった。症例2では急性呼吸不全で入院した年度を経て、特に左右肘屈曲・伸展、右股屈曲、左右足背屈では5年間で50%以下に減少した。握力は右65%、左58%であり、9年経過して右59%、左50%と症例1に比べ減少率は高かった。2症例とも季節変動の訴えが多かったが、変動はするものの、特に同時期に有意な変化を認めなかった。<BR> 今回の結果よりSBMAの筋力低下の特徴として、経年変化の早い段階で筋力低下を起す筋が明らかになり、遠位筋である前脛骨筋にも及ぶ可能性があることが示唆された。今後、運動指導には近位筋以外のトレーニングにも注意の必要性があると考えられた。
著者
西村 裕一 宮地 直道 吉田 真理夫 村田 泰輔 中川 光弘
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.451-460, 2000-10-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
31
被引用文献数
11 10

北海道東部の霧多布湿原において,湿原堆積物の掘削調査から泥炭層中に連続する層厚3cm以下の砂層を発見した.この砂層は,海側から内陸側に向かって層厚や粒径を減じ,比較的層厚の大きな地点では級化構造を呈する.また,乾燥化や塩分濃度の低下に伴って発生する珪藻化石を産出することから,この砂層を津波堆積物と認定した.砂層の下位には泥炭層を挾み,1739年の樽前a火山灰(Ta-a)と1694年の駒ヶ岳C2火山灰(Ko-c2)の2層の火山灰層が確認された.これらの火山灰層の年代をもとに泥炭の堆積速度を求めたところ,この砂層の年代はおよそ1810~50年代と推定された.1843年に,北海道東部の厚岸を中心に46名の犠牲者を出した北海道南東岸沖地震津波の歴史記録があり,この津波の前後に規模の大きな津波が霧多布湿原一帯に押し寄せた記録はないことから,本砂層は1843年の津波によりもたらされた堆積物と考えられる.
著者
寺田 暁彦 中川 光弘 大島 弘光 青山 裕 神山 裕幸
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1-2, pp.17-26, 2004

In this paper, the authors describe remarkable thermo-activities especially at the fumaroles B on the southwestern cliff of the summit dome on Tarumae volcano, which unusually occurred soon after the Tokachi-oki erathquake that took place on Sep. 26 2003 (MJMA 8.0). The unusual thermoactivities include (1) increase in gas flux, (2) weak glow witnessed by the high-sensitive camera in the nighttime with positions moving night by night, and (3) ash ejection of about 24m^3. Since the high-sensitive cameras can detect thermal radiation, the observed glow would be evidence for high-temperature of rock surface. It is considered that the Tokachi-oki earthquake would affect the volcano to eject a large amount of high-temperature gas, which resulted in the weak but unusual glow and ash deposits of the order of 10m^3 in volume.
著者
井村 匠 大場 司 中川 光弘
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.3, pp.203-218, 2019-03-15 (Released:2019-06-07)
参考文献数
42
被引用文献数
4

十勝岳火山噴出物の変質火山灰粒子について岩石学的観察を行った.4.7ka噴火,3.3ka噴火,1926年噴火噴出物を対象とした.これらの火山灰粒子は様々な程度に変質し,鉱物組み合わせからシリカタイプ(シリカ鉱物のみ),ミョウバン石タイプ(シリカ鉱物+ミョウバン石±カオリン鉱物),カオリンタイプ(シリカ鉱物+カオリン鉱物)に分類される.いずれの鉱物組み合わせも酸性熱水変質を示している.全試料において,酸性変質部と未変質部からなる弱変質した火山灰粒子が卓越する.このような岩石組織は,熱水流通系における酸性熱水-岩石反応により形成したものである.これには多量の熱水が岩石と反応しながら排出されるような反応過程が考えられ,反応時間はごく短期間であった.これらの特徴は,マグマ貫入時に一時的に形成した高温酸性熱水系による非定常プロセスに由来している.以上の点はマグマ貫入頻度が高い十勝岳の火山熱水系の特徴であると考えられる.
著者
長谷川 健 中川 光弘
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.269-274, 2014-12-31 (Released:2017-03-20)

This paper introduces a practical use of outcrop data in determining the correlation, stratigraphy and distribution of large-scale pyroclastic flow deposits (PFL). The studied area is the Akan and Kutcharo volcanic zone in Eastern Hokkaido, Japan, which have had a long and complex history of more than 20 caldera-forming eruptions during the Quaternary. A database of the stratigraphy and glass chemistry for the more than 20 PFL can be established by studying a sufficient number of representative outcrops. We found representative outcrops where stratigraphic relationships between several PFL can be observed at the same time. We analyzed glass chemistry of juvenile pumices (>10 clasts) of the PFL. The database enables to identify all exposed PFL in this area, thus allowing us to draw detailed maps of the distribution for each PFL. The database can be also used for correlation and chrono-stratigraphic determination of reworked volcanic deposits, such as terrigenous marine deposits in Kushiro region, located on the plains at the foot of Akan and Kutcharo volcanoes.
著者
松本 亜希子 宮坂 瑞穂 中川 光弘
出版者
北海道大学大学院理学研究院
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
no.78, pp.1-9, 2015-03

We examined the analysis method of the compositions of volcanic glass using WDS-EPMA, focusing on Na migration caused by electron-beam bombardment. As a result of the comparison among the beam current in 10 μm square area, it is concluded that Na migration occurs in any cases at 15 kV. During the first 30 seconds, Na decay is not observed, and therefore, the detection of Na must be finished within the first 30 seconds. Considering the variations of other elements, the 15 kV accelerating voltage and 7 nA beam current with raster scanning of 10 μm square area is the best condition for the determination of volcanic glass compositions. This can prevent "grow-in" of Si and Al, as well as can make smaller the deviations of the minor elements. Using this condition, we can discuss the variations of volcanic glass compositions (except for Na) without any corrections.
著者
松尾 良子 中川 光弘
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

ニセコ火山群は,南西北海道火山地域の北端に位置する東西25km,南北15kmにおよび,10以上の成層火山や溶岩ドームからなる第四紀火山群である.これまでのニセコ火山群の地質学的研究は,広川・村山(1955)による図幅調査に始まり,大場(1960)や NEDO(1986,1987)により行われている.これらの結果からその噴火活動は約160万年前には開始し,西から東へと新しい火山体を形成しながら現在まで活動が継続していることが明らかになった.地形や噴気活動の有無から,イワオヌプリ火山は,ニセコ火山群の中でも最も新しい火山体とされる.奥野(2003)によって,イワオヌプリ起源と考えられるテフラが見出され,その年代として約6000年前の14C年代値が報告された.しかしながら,奥野(2003)では測定された14C年代値についての信頼度は低いことを指摘しており,またその噴火の様式や給源火口については明らかにされていない.そこで我々は,ニセコ火山の特に完新世の噴火活動履歴と様式を明らかにすることを目的として,地質学的研究を進めている. これまではイワオヌプリとニトヌプリの両方が,ニセコ火山群では最も新しい山体として捉えられることが多かった.イワオヌプリ火山及びニトヌプリ火山を構成する岩石は,斑晶として斜長石,単斜輝石,斜方輝石および磁鉄鉱を含む安山岩である.これに加えてイワオヌプリ火山の岩石は斑晶として角閃石を含まないが,ニトヌプリ火山の多くの岩石は角閃石斑晶を含む.また,全岩化学組成では,両火山はハーカー図上で多くの元素でそれぞれ別の組成変化を示していることで区別できる.両者の噴出中心の位置的違い,被覆関係および岩石学的性質から,両者は独立した火山として考えるべきである.よって本研究では,ニトヌプリ火山活動後に活動したイワオヌプリ火山のみを,ニセコ火山の最新の活動期として取り扱う. イワオヌプリ火山(標高1,116m)は,ニセコ火山群東部に位置し,ニトヌプリ火山活動後,その東側に形成された比高約350m,基底直径約2kmで,火砕丘や複数の溶岩ドームおよび溶岩から構成される火山である.火山体の西側には,直径約800mのイワオヌプリ大火口火砕丘があり,その頂部には直径約1kmのイワオヌプリ大火口が開口している.その火口内部には小イワオヌプリと呼ばれる小型の溶岩ドームが形成されており,それを覆って,大イワオヌプリと呼ばれる山体が形成されている.下部の溶岩ドームと山頂部から東側にかけての複数枚の溶岩から形成されている.さらに,五色温泉火口などの複数の小火口が火山体全域に認められる.イワオヌプリ火山については,被覆関係と噴火様式,噴出中心の違いから,①イワオヌプリ大火口火砕岩類②小イワオヌプリ溶岩ドーム③大イワオヌプリ下部溶岩ドーム④大イワオヌプリ上部溶岩類⑤イワオヌプリ水蒸気噴火火砕岩類の5つのユニットに区分できる. 最初の活動である,イワオヌプリ大火口火砕岩類を形成した活動は,まず水蒸気噴火から始まり,その後はマグマ噴火に移行し爆発的噴火により噴煙柱を形成し,その過程で断続的に火砕流が発生した.この噴火に伴うテフラが奥野(2003)で見出したNsIw-1テフラである.このテフラは東方から西方に向かって層厚および構成物の粒径が増大し,イワオヌプリ大火口火砕丘に対比できる.今回新たに試料を採取し,火砕流中の炭化木片からは9480 cal. yBP,テフラ直下の土壌からは10910 cal.yBPの14C年代が得られた.よってイワオヌプリ火山の活動開始は約9500年前であることが明らかになった.その後は,溶岩ドームの形成や溶岩流出を繰り返し山体が成長した.これらの山体には多くの爆裂火口が形成されており,水蒸気噴火やマグマ水蒸気噴火なども並行して頻発したと考えられる.確認された最後のマグマ噴火は,山頂部から大イワオヌプリ上部溶岩類の流出であるが,水蒸気噴火はその後も発生している可能性が高い.実際に五色温泉近くでの爆発角礫岩層の年代としてmodernという炭素年代測定結果が得られた.今回の調査では最初期の活動年代は明らかにできたが,その後の噴火史についてまだ十分な議論はできない.しかし,9500年前の噴火後の山体の成長と,多数の新しい爆裂火口の存在を考えると,イワオヌプリ火山は完新世を通じて活動した,活動度の高い火山の可能性が高い.
著者
石毛 康介 中川 光弘
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.2, pp.73-91, 2017-02-15 (Released:2017-05-15)
参考文献数
23
被引用文献数
4

旭岳(標高2291m)は御鉢平カルデラの南西に位置する成層火山で,現在でも活発な噴気活動がおこっている.旭岳山頂部から東には熊ヶ岳(2210m)の火砕丘と後旭岳(2216m)の溶岩円頂丘があり,いずれも旭岳の噴出物に覆われている.旭岳サブグループの活動は,山体の違いによって熊ヶ岳火山体,後旭岳火山体,旭岳火山体の3つに大別される.旭岳火山体については主にマグマ噴火を行った前期と主に水蒸気噴火を行った後期に区分され,さらに前期噴出物は噴出量とマグマタイプの違いを基にE-1サブステージとE-2サブステージに細分される.旭岳サブグループの噴出物は,特に苦鉄質側岩石の組成で山体および活動期間で区別できる.旭岳の活動では,従来の研究で指摘されているようにマグマ混合が支配的プロセスであるが,今回の検討によって山体(火口)および山体での活動期毎に,特に苦鉄質端成分が変化していることが明らかになった.
著者
谷口 宏充 栗谷 豪 宮本 毅 長瀬 敏郎 菅野 均志 後藤 章夫 中川 光弘 伴 雅雄 成澤 勝 中川 光弘 奥野 充 伴 雅雄 前野 深 嶋野 岳人 板谷 徹丸 安田 喜憲 植木 貞人 古畑 徹 小嶋 芳孝
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

頭山およびそれを包括する蓋馬溶岩台地に関して、現地調査、衛星データー解析、採集した資料の化学分析・年代分析、国内の関連地層の調査・年代分析などの手法を用いて、白頭山10世紀巨大噴火の概要、白頭山及び蓋馬溶岩台地の火山学的な実態を明らかにしようとした。開始してから1年後に北朝鮮のミサイル問題・核開発問題などの諸問題が発生し、現地での調査や研究者との交流などの実施が徐々に困難になっていった。そのため、すでに収集していた試料の分析、衛星データーの解析及び国内での調査に研究の主力を移し、可能な限りの成果を得ようとした。その結果、近年発生している白頭山における地震多発とマグマ活動との関係、存在は知られているが分布や内容が全く未知である蓋馬溶岩台地の概要が明らかになり、更に、地下におけるマグマの成因についても一定の結論を得た。混乱状態にある白頭山10世紀噴火の年代問題をふくめ、また、北朝鮮からの論文を含め、研究成果は12編の論文として論文集にまとめられつつある。
著者
宮地 直道 中川 光弘 吉田 真理夫
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.75-85, 2000-05-10
被引用文献数
8

Recent eruptive episodes since the last 2200 years of Rausudake volcano, east Hokkaido, are revealed by tephrochronology, geological survey of volcanic edifice and petrology of eruptive products. Eruptive ages of these episodes are estimated by ^<14>C age dating, presence of wide spread tephras, Ma-b from Mashu volcano (about 1 ka) and Ta-a from Tarumai volcano (AD 1739), and thickness of soil between tephra. We identify three major eruption episodes occurring in ca. 2200, ca. 1400 and 500-700 y. B. P. In each episode, plinian eruption associated with generation of pyroclastic flows and possibly with effusion of lava flows and domes had occurred from the summit area. Volcanic explosive index (VEI) of each eruption is 2-4. Tephra identified as the deposits of ca. 1400 y. B. P, eruption had spread widely and has been found in Kunashiri Island which locates about 60 km east of Rausudake volcano. In Shiretoko Peninsula, east Hokkaido, Mt. Shiretoko-Iouzan has been recognized to be an active volcano. We should note that Mt. Rausudake is also active volcano that repeated its magmatic eruptions at intervals of ca. 800 years.
著者
笠原 稔 宮町 宏樹 日置 幸介 中川 光弘 勝俣 啓 高橋 浩晃 中尾 茂 木股 文昭 加藤 照之
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

ユーラシアプレートと北米プレートの衝突帯には、2つの巨大プレートとは独自の変動をするオホーツクプレートとアムールプレートの存在が提案されてきた。そこで、実際の観測の手薄な場所でもあったこの地域での境界域テクトニクスを検討するために、想定アムールプレート内のGPS観測により確認することと、この地域での地震観測の充実を意図して、この研究計画は進められた。1995年以来進めてきた日口科学技術協力の一環として、この地域での共同研究の推進に関するロシア科学アカデミーと日本側大学連合との合意を元に、2002年から2004年の計画で、GPSの可能な限りの多点化と連続観測を主として極東ロシアでの観測を進めてきた。また、地震観測は、サハリン島の衝突境界としての特徴を明らかにするために、南サハリン地域での高感度高密度観測を推進してきた。結果として、アムールプレートの動きは想定していたほど単純なものではなく、計画の3年間では結論付けられなかったが、その後の日口での観測継続の結果、サハリンでの短縮はかなり明瞭ながら、その原因をアムールプレートの東進とするには、まだ難しいということになっている。今後、ロシア側の観測網の充実が図られつつあり、その解決も時間の問題であろう。一方、サハリンを含む、日本海東縁部に相当する、2つのプレートの衝突帯と想定される場所での地震活動は高く、2000年8月のウグレゴルスク南方地震の後も、中越地震、留萌支庁南部地震、能登半島沖地震、そしてネベリスク地震、と引き続き、これらの地震発生帯が、2つのプレートの衝突境界域であることを示していると思われる。また、南サハリンでは、高感度高密度地震観測が続けられ、明瞭な南北延長の地震活動帯が認識できるようになってきた。これらは、北海道の地震活動帯の延長と考えられ、今後より一層、衝突帯のテクトニクスを考える上でのデータを提供できたものと評価できる。
著者
寺田 暁彦 中川 光弘 大島 弘光 青山 裕 神山 裕幸
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1/2, pp.17-26, 2004

In this paper, the authors describe remarkable thermo-activities especially at the fumaroles B on the southwestern cliff of the summit dome on Tarumae volcano, which unusually occurred soon after the Tokachi-oki erathquake that took place on Sep. 26 2003 (MJMA 8.0). The unusual thermoactivities include (1) increase in gas flux, (2) weak glow witnessed by the high-sensitive camera in the nighttime with positions moving night by night, and (3) ash ejection of about 24m^3. Since the high-sensitive cameras can detect thermal radiation, the observed glow would be evidence for high-temperature of rock surface. It is considered that the Tokachi-oki earthquake would affect the volcano to eject a large amount of high-temperature gas, which resulted in the weak but unusual glow and ash deposits of the order of 10m^3 in volume.
著者
長谷川 健 中川 光弘
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.2, pp.53-72, 2007-02-15
被引用文献数
3 12

北海道東部,阿寒カルデラ周縁の火砕堆積物を調査し,その層序・年代を明らかにした.対比にあたっては本質物の岩石学的特徴も活用した.阿寒カルデラ起源の火砕堆積物は,古土壌などの介在によって,少なくとも40の噴火ユニットに区分できる.さらにこれらは,層序が連続し,かつ岩石学的特徴が類似する17の噴火グループにまとめられる(上位からAk1〜17).Ak1〜17の間には,阿寒火山以外に給源を持つ複数の火砕物が挟在する.Ak2とAk3の間には東燐の屈斜路カルデラから噴出した古梅溶結凝灰岩(0.34 Ma)が,Ak14の中には北海道中央部起源である十勝火砕流(1.3-1.46 Ma)の遠方相が堆積する.このことから,阿寒カルデラは前期更新世から活動を開始し100万年以上にわたって火砕噴火を頻発していたことが分かった.この期間,阿寒火山では,噴火グループごとに異なるマグマ系が活動していた.
著者
坪井 伸広 茂野 隆一 首藤 久人 中川 光弘 安藤 義光 小田切 徳美 立川 雅司 後藤 淳子 澤田 守
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は農村地域活性化の方策を提示することを目的に平成12年度に開始した。本年度は、研究の最終年度で、4年間の研究を総括することを課題とした。この4年間の研究実績はつぎのとおりである(カッコ内は平成15年度実績)。カナダ春ワークショップ参加(2名)、秋研究大会参加、カナダ・フィールド共同調査(日本から4名参加)、日本・フィールド共同調査(随時実施。内カナダから1名参加)、東京ワークショップ開催・カナダ研究者招聘、日本・カナダの農村リーダーの交流(カナダから8名招聘)、4年間の研究成果のまとめRevitalizing Rural Hinterlands : Comparative studies in Japan and Canadaを執筆(13章構成の内11章の草稿を科学研究費の報告書としまとめ、印刷公表した)をした。日本側フィールド調査地は、栃木県上都賀郡粟野町、福島県相馬郡飯舘村で、カナダ側のはオンタリオ州Tweed、ケベック州St. Damaseである。この2地区の調査地を比較対象として選定し、共通の調査項日からなる家族調査を実施したことを特徴とする(報告書第4章、第6章)。農村地域の活性化について得られた知見はつぎのとおりである。日本側の農村に開発が短期間に進められたことのひずみが現れていること、両国の農村ガバナンスの構造再編が進行中であること、両国農村にボランティア組織による活性化への期待が大きいこと、日本では地域資源の活用を柱とする内発的発展を敷指向する課題に取り組まれていること、カナダでは資源依存への脱皮を課題としていること。
著者
吉本 充宏 宮坂 瑞穂 高橋 良 中川 光弘 吉田 邦夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.7, pp.336-347, 2008-07-15 (Released:2009-03-25)
参考文献数
20
被引用文献数
6 13

北海道駒ヶ岳火山北西~北東山麓部に露出する噴出物の層序,14C年代,岩石学的特徴を検討した.これまで40~6 cal kaの間には4層の噴火堆積物が識別されていたが,今回新たに7層の噴火堆積物(P7~P1)を識別した.それらの噴火年代は,約19 cal ka(P7),約17.7 cal ka(P6),約17.4 cal ka(P5),約14.8 cal ka(P4),約12.8 cal ka(P3),約6.5~6.3 cal ka(P2,P1)である.北海道駒ヶ岳火山の活動は,6,000年以上の長い休止期によって少なくとも4つの活動期(39 cal ka 以前, 20~12.8 cal ka, 6.8~6.3 cal ka, 1640 AD以降)に区分される.これら4つの活動期は本質物質の全岩化学組成も異なっている.最近3回の活動期は,4~6回のマグマ噴火からなり,規模の大きな噴火で始まり,その後より規模の小さい噴火を繰り返していたことが明らかになった.