著者
中村 慎一
出版者
金沢大学地域連携推進センター
雑誌
金沢大学サテライト・プラザミニ講演
巻号頁・発行日
2008-12-13

中国浙江省余姚市にある田螺山遺跡は約7000年前の初期稲作文化の集落跡である。地下水位下に埋もれていた遺跡には,人骨・動物骨,木材,植物種実などの有機質遺物がきわめて良好な状態で保存されていた。「中国のポンペイ」ともいえるこの遺跡で,われわれは中国の研究機関と共同で自然遺物を中心とする調査・研究を展開している。世界最古の「茶畑」の発見など,これまでにいくつもの重要な成果が挙がっている。その一端を数多くの写真を交えながら紹介する。
著者
中村 哲也 丸山 敦史 矢野 佑樹 Tetsuya Nakamura Maruyama Atsushi Yano Yuki
巻号頁・発行日
vol.10, pp.63-79, 2012-03-15

本稿では、葉取らず、無袋、有袋といった3 つの栽培リンゴについて、色、糖度、価格を消費者に評価してもらい、総合的に比較検討した。その結果、葉取らずの糖度、有袋の色づきの評価は非常に高かった。色づき・甘さとも評価された無袋秋星・北斗・シナノスイート等の中生種は甘さと価格の相関が、有袋ふじ・むつ等は色づきと甘さの相関が確認された。そして一般的に色づきや糖度を評価するのは高齢者や高所得者であった。さらに、品種の価格差が30 円程度ならば若干高くとも高く評価したリンゴを購入するが、100 円以上の価格差がついた場合は購入せず、有袋ふじや無袋秋星を購入する者は著しく減る結果となった。ただし、有袋ふじ・むつ、無袋秋星は、高齢者や高所得者に販売が期待でき、葉取らず・有袋といった栽培方法を上手く使い分けることで、よりよい販売環境の構築が可能になると思われる。
著者
堀内 茂木 上村 彩 中村 洋光 山本 俊六 呉 長江
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.399-406, 2007 (Released:2010-06-25)
参考文献数
20

緊急地震速報は,大きな揺れが到着する前に,震源とマグニチュードを配信し,地震災害の軽減を目指すものである。我々は,緊急地震速報を実用化させることを目的として,防災科学技術研究所のHi-net他約800点のリアルタイム地震観測データを利用して,P波が観測されてから数秒間で信頼性の高い震源を決定するシステムの開発を行った。このシステムは,P波到着時刻の他に,P波が到着してないという情報を不等式で表すことにより震源決定を行っている。この手法の利点は,到着時刻データの中にノイズや別の地震のデータが混入した場合,残差の小さい解が存在しなくなり,ノイズ等の混入を自動的に検出できる点である。本研究では,ノイズ等のデータが混入した場合,それを自動的に除去するアルゴリズムを開発した。また,2個の地震が同時に発生する場合の解析手法を開発した。その結果,99%の地震について,ほぼ正確な情報が即時的に決定できるようになった。このシステムは,気象庁にインストールされ,緊急地震速報配信の一部に利用されている。現在の緊急地震速報には,約30km以内の直下型地震に対応できない,震度推定の精度が低いという課題があるが,地震計を組み込んだ緊急地震速報受信装置(ホームサイスモメータ)が普及すると,これらの課題が一挙に解決されると思われる。
著者
中村 真 河野 和明
出版者
日本感情心理学会
雑誌
エモーション・スタディーズ (ISSN:21897425)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.61-72, 2021-12-30 (Released:2022-01-13)
参考文献数
33
被引用文献数
3

The purpose of this study was to contribute to the planning of solutions and preventive measures against exclusionary behaviors targeting specific minority groups. Focusing on disgust and related emotions, which have rarely been addressed in previous research, the authors developed a hypothetical comprehensive model that explains the psychological processes behind social exclusion, starting from information input, attention bias, cognitive evaluation, emotions, exclusionary attitude, and such behavior. In order to validate the model, we conducted a survey on impressions of Northeast Asian countries with 1068 participants, based on previous studies (Kawano & Nakamura, 2021). As a result of the analysis of covariance for the structural equation model reflecting the hypothetical model, it was confirmed that the model shows the sufficient fit to the date as a comprehensive psychological process model, and we were able to provide guidelines for contributing to the planning of solutions to problems and preventive measures based on the psychological processes behind social exclusion.
著者
石井 靖子 川端 晶子 中村 道徳
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
応用糖質科学 (ISSN:13403494)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.107-115, 1998-06-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
30

熱帯産澱粉4種すなわち食用カンナ,アロールート,キャッサバ,サゴの澱粉と対照として馬鈴薯とトウモロコシの澱粉を選び,2,3,4%の澱粉糊液につき,ずり速度流動化流動,チキソトロピー,降伏値,流動の見かけの活性化エネルギーを測定した. 各澱粉糊液は非ニュートン流動を示した.流動曲線につき,10s-1から300s-1の範囲で直線が得られたのでベキ則を適応し,流動方程式τ=Kγnを求め,粘性定数(K)および流動性指数(n)を求めた. キャッサバとサゴの各濃度の澱粉糊液および4%アロールート澱粉糊液の流動性指数(n)は,20~60℃に比べて10℃ の値が極端に小さく馬鈴薯澱粉糊液に近い性質を示し,食用カンナと2,3%アロールート澱粉糊液は,温度依存性が小さく,トウモロコシ澱粉糊液に近い性質を示した.流動性指数(n)と分子特性の関係は,10℃ で値が小さく20~60℃ で大きくなる馬鈴薯に代表されるタイプのnはアミロースとアミロペクチンの分子量が両方とも大きい傾向であり,10~60℃ まで変化が少ないトウモロコシに代表されるnを示すものは,アミロースとアミロペクチンの分子量が両方とも小さい傾向がみられた.サゴはこの傾向に一致しなかった. チキソトロピー性はキャッサバ,食用カンナ,サゴ,4%アロールート糊液に10~60℃ まで認められ,キャッサバ,サゴが大きく,食用カンナは中位,アロールートは最小であった.10℃ でチキソトロピー性が大きい馬鈴薯とキャッサバはアミロースとアミロペクチンの分子量が両方とも大きい傾向で,食用カンナ,アロールート,トウモロコシは,チキソトロピー性は中位から最小であるが,これらはアミロースとアミロペクチンの分子量は両方とも中位から最小の傾向が認められた.サゴはこの傾向と一致しなかった. 降伏応力は4%アロールート澱粉糊液の10,20℃と3,4%トウモロコシ澱粉糊液の10~60℃ に認められた. 流動の見かけの活性化エネルギーは,6種の澱粉の2,3,4%糊液について,約8.5~17kJmol-1の範囲であった.
著者
中村 和代
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1_141-1_148, 2013-04-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
22

目的:新人看護師の精神的支援策として臨床心理士がグループカウンセリング(以下,G.C.)を行い効果や影響について検討した。 方法:2006年5月と9月にG.C.を行い,調査に同意した5月63人,9月64人を解析対象とした。気分・感情状態は日本語版POMS短縮版で調査し,G.C.後に主観的評価12項目,9月は5月G.C.以降の同僚との支援状況4項目を調査した。対象者を健全群,要注意群,受診考慮群に分類し,3群間で比較した。 結果:5月・9月ともに,G.C.後は健全群が有意に増加していた。主観的評価では「自己の振り返りができた」他3項目,同僚との支援状況では「2.悩みや苦痛などへは自分なりに対処できている」「3.悩みや苦痛などが共有できがんばれている」で,それぞれ健全群が有意に高値であった。 結論:G.C.は,新人看護師の精神的支援策として効果的であることが示唆されたが,受診考慮群ではさらに個別支援が望まれる。
著者
中村 隆之
出版者
日本フランス語フランス文学会
雑誌
フランス語フランス文学研究 (ISSN:04254929)
巻号頁・発行日
vol.89, pp.171-183, 2006-07-31 (Released:2017-08-11)

Bien qu'Edouard Glissant soit aujourd'hui celebre pour sa pensee du ≪Tout-Monde≫, sa demarche litteraire reste peu connue du public, si l'on excepte un certain nombre d'ecrivains et les chercheurs. Cette etude se donne pour but de mettre en relief le theme de la reappropriation du passe qui impregne toute son oeuvre, a partir de la lecture de son deuxieme roman, Le Quatrieme Siecle (1964). Le Quatrieme Siecle, recit en quete de la memoire confisquee par la colonisation, met en scene deux protagonistes: Mathieu Beluse et papa Longoue. A la recherche de la memoire brisee, le premier oppose souvent sa conception du passe a celle du dernier. Pour le jeune historien qu'est Mathieu, le passe peut et doit etre reconstitue comme des faits etablis par la methode scientifique. Papa Longoue, sorcier, encourage Mathieu a ≪voir≫ le passe a la facon du voyant. Au bout de ces deux visions antagoniques, on decouvrira chez papa Longoue l'idee d'une ≪vision prophetique du passe≫, destinee a produire une imagination de ce qui s'est passe, a partir des traces laissees par le passe, grace a l'inspiration poetique. C'est ainsi que papa Longoue initie Mathieu a la connaissance du voyant. Mais la synthese des deux visions opposees provoque chez Mathieu une crise spirituelle qui le conduit a renoncer a l'ecriture de l'histoire. Le Quatrieme Siecle temoigne des difficultes rencontrees dans le proces de reappropriation de la memoire dans les pays colonises. Ce roman offrirait aussi l'occasion de repenser la notion d'histoire, a cette epoque ou les pouvoirs tentent a nouveau d'effacer de l'histoire officielle la memoire de l'autre.
著者
田崎 裕太郎 牧野 謙二 大塚 哲洋 中村 太祐 北村 慶 宮﨑 敦史 藤本 俊史 杉尾 小百合 今村 祥子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.141-145, 2022 (Released:2022-10-12)
参考文献数
17

症例は67歳男性.切除不能進行胃がんへの化学療法が奏功せず,外来にて症状緩和を行っていた.自宅で過ごされていたが,体動困難となり,救急外来を受診.Hb値3.4 g/dlと高度貧血を認め,進行胃がんからの出血と診断.入院のうえ緩和的放射線治療を開始したが,連日輸血を行うもHb値は改善せず,入院4日目の内視鏡検査にて漏出性出血(oozing bleeding)を認めた.入院11日目のHb値2.8 g/dlであり,照射継続での止血は困難と判断し,同日に血管塞栓術(TAE)を施行した.TAE後は輸血にてHb値8.0 g/dlまで改善.その後,輸血は不要となり,入院28日目に転院となった.出血性進行胃がんに対する緩和的放射線治療の高い有効性が報告されているが,奏功しなかった場合の救済治療に苦慮することがある.緩和的放射線治療が奏功しない出血性進行胃がんに対し,TAEが有効な救済治療となった1例を報告する.
著者
成橋 和正 藏所 志穂 中村 憲夫 NARUHASHI Kazumasa KURASHO Shiho NAKAMURA Norio
出版者
京都
雑誌
総合文化研究所紀要 = Bulletin of Institute for Interdisciplinary Studies of Culture Doshisha Women’s College of Liberal Arts (ISSN:09100105)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.135-141, 2021-07-29

Drug therapy with steroids and moisturizers is highly effective for the treatment of atopic dermatitis, but the use of steroids is dependent on the stage of the patient’s disease. Shiunkou is a Kampo topical ointment with a purple tinge called shicon. It has been reported to be used clinically in combination with a moisturizer; however its stability has not been described. In this study, we investigated the stability of Shiunkou and Hirudoid Soft Ointment when mixed. The simplest method for measuring stability is to observe changes in appearance. The mixed ointment did not change during refrigerated storage for up to 7 months. When stored at room temperature, oil separation occurred after the first month, and became more remarkable with time, such as at 3 months and 7 months. It has been shown that the ointment mixture should be stored refrigerated rather than stored at room temperature. When the stability of shicon, which is an active ingredient of Shiunkou, was examined in an aqueous solution, it decomposed very quickly regardless of the pH. Hirudoid Soft Ointment is a w/o preparation and contains water. When the ointment is mixed, and shicon, a the component of Shiunkou, comes into contact with the water contained in the Hirudoid Soft Ointment, there is a concern that the content of shicon in the ointment mixture may decrease, even if by a small amount or for a short time.
著者
中村 清香 佐藤 浩昭
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.483-493, 2022-09-05 (Released:2022-10-05)
参考文献数
27

質量分析法はポリマーキャラクタリゼーションにおいて有力な手法であり,測定装置の高分解能化とともにますますその利用範囲が拡大している.その一方で,マススペクトルが複雑になるため解析が困難になるという課題があった.その課題に対し,著者らはマススペクトルを二次元プロットへと展開することで視覚的に成分分布を表現する「ケンドリックマスディフェクト(KMD)解析」を,実用的なポリマー分析へと初めて適用した.さらにKMD解析を工業製品として用いられる複雑な組成を持つポリマー材料の組成分析へと適用するために,KMDプロットの高分解能化を行った.あわせて,KMD解析に適用できる高強度のマススペクトルを,マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOFMS)で観測するための,簡便な試料前処理法を開発した.さらにKMD解析の適用範囲をMALDIのみならず,他のイオン化法を用いたデータへも拡大した.このような成果により高分解能質量分析法を用いたポリマーキャラクタリゼーションが加速されると期待される.
著者
中村 剛
出版者
関西福祉大学社会福祉学部研究会
雑誌
関西福祉大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:1883566X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.37-44, 2012-03

社会福祉は本来,ケアの1 つであるにもかからず,法制度化された社会福祉の思想においては,ケアの倫理ではなく自立,権利(生存権),正義(公正)といった正義の倫理が語られる.しかし,ケアの倫理は正義の倫理の言葉では語られていない福祉思想を補い,福祉思想の明確化と体系化に寄与することができると考える.このような問題意識のもと本稿の目的は,ケアの倫理は正義の倫理の言葉では語られていない福祉思想の重要な側面を言い表していることを示すことである.考察の結果,ケアの倫理は,①自立イデオロギーからの覚醒,②正義の外部の者への眼差し,③〈選びえない〉現実への眼差しといった,正義の倫理に対する批判的機能を有すること,および,ケアの倫理には正義の倫理にはない「傷つき易い人間存在を気づかい,その人の呼びかけ(ニーズ)に応える」といった内容を有していることを明らかにしている.
著者
中村 剛
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教育学部 = Journal of Saitama University. Faculty of Education (ISSN:18815146)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.245-259, 2007

Das Bewegungslernen beginnt daraus, dass der Lernende die Bewegungsaufgabe kennt. Deshalb muss zunachst der Lehrer ihm sie mitteilen. Aber das ist ein grosses Problem, dass man daruber denkt, das Mitteilen der Bewegungsaufgabe mit dem Versuchen der Bewegung direkt zu verbinden. Trotzdem haben bis heute die meiste Lehrer keine Interesse am Lernprozess vor dem Versuchen der Bewegung. KANEKO hat die Tatigkeit des Lernenden im Horizont passiver Synthesis als Voraussetzung fur bewusstes Bewegungslernen in seiner Betrachtung uber die Phasen der Bewegungsbildung aufgeklart. Der Zweck dieser Betrachtung besteht darin, dass die Merkmale des Lernprozesses vor dem Versuchen der Bewegungsaufgabe aufgrund Phasen theorie KANEKOs ins klare gebracht werden sollen. Dann soll es angedeutet werden, dass die Tatigkeit des Lernenden im Horizont passiver Synthesis die Voraussetzung di ses Prozesses des Bewegungslernens ist. Danach soll es auch ins klare gebracht werden, dass der Lernende uber diese Tatigkeit stolpert, der die Bewegungsaufgabe nicht versuchen kann, trotzdem sie vom Lehrer mitgeteilt wird. In der letzten Unterrichtsmethode des Schulsports wird die mittelbare Leitung einen grossen Wert gelegt, so konzentriert sich die Interesse der Lehrer auf das Management des Unterrichts. Daher ist die obengenannte Storung des Lernenden vor dem Versuchen ubersehen worden. Der Lernende, der die Bewegungsaufgabe nicht versuchen kann, ubt nur eine andere leichte Bewegungsaufgabe oder versucht nur diese Bewegungsaufgabe aus Zwang. In dieser Situation wird der Sportunterricht in der Schule mit dem sogenannten "Tanoshii-Tajj/w" nicht verbunden. Um den Sportunterricht mit Spass zu realisieren, ist es notwendig, dass der Lehrer sich direkt in die Tatigkeit des Lernenden im Horizont passiver Synthesis als Voraussetzung fur bewusstes Bewegungslernen einmischen muss.