著者
油井 邦雄 小柴 満美子 中村 俊 濱川 浩
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 = Japanese journal of biological psychiatry (ISSN:09157328)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.29-34, 2011-03-25
参考文献数
47
被引用文献数
1

不飽和脂肪酸のアラキドン酸は神経発達に重要な役割を果すので,ミラー入 0 ロン系を中心とした情報伝達・処理や志向性に関わる脳機能の発達不全とされる自閉症スペクトラム障(Autism Spectrum Disorders : ASD)の対人的相互性障害を改善し得ると期待される。アラキドン酸 240mg/日(12 歳以下は1/2)の臨床効果を 16 週間の double-blind placebo-controlled trial で検索した。アラキドン酸投与群はプラセボー投与群にくらべて,社会的ひきこもりとコミュニケーションが有意に改善した。神経細胞の signal transduction に関わっている transferrin が投与前にくらべてアラキドン酸投与群で有意な変動を示し,superoxide dismutase も投与前にくらべてアラキドン酸投与群有意傾向で変動した。社会的相互性障害の改善は signal transduction の upregulation によると推察された。
著者
菊池 瑛理佳 三輪 美樹 中村 克樹
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第28回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.37, 2012 (Released:2013-11-01)

ヒトの子どもには、おもちゃの選好性に性差があることが報告されている。例えば、男の子はミニカーなどの動くおもちゃを好み、女の子はぬいぐるみや人形などを好む。これらの選好性が親の教育方針などによって左右されるという見解も多くあったが、こうした選好性は、出生前のホルモン暴露の影響を強く受けていることなど生物学的要素が影響しているという考えが支持されている。さらにヒト以外の霊長類でも、ベルベットモンキー(Alexander and Hines, 2002)やアカゲザル(Hassett, Siebert, & Wallen, 2008)でもヒト用おもちゃに対する選好性の性差が報告されている。ヒト以外の霊長類がおもちゃの意味を理解しているとは考えにくいが、こうした物体の何らかの要素に対する選好性の性差が存在することを示唆する。本研究は、小型新世界ザルであるコモンマーモセットが物体の選好性に関する性差を示すか否かを、ヒト用おもちゃを刺激として調べることを目的とした。実験には1歳半以上のコモンマーモセットのオス9頭、メス9頭を対象に実験した。刺激として、ぬいぐるみ(ヒトの女児用おもちゃ)とミニカー(ヒトの男児用おもちゃ)を用いた。実験は飼育ケージで行なった。実験1では、ぬいぐるみとミニカーを同時に30分間個体に提示し、実験2では、ぬいぐるみ2つとミニカー2つを用意し、一つずつ5分間個体に提示した。おもちゃの提示期間中、コモンマーモセットの行動をビデオ撮影した。結果、実験1において有意差は見られず、実験2においてメスがぬいぐるみに接触する時間がオスよりも有意に長かった(Mann-Whitney’s U test, P
著者
金澤 慈 進藤 隆彦 陳 明晨 中西 泰彦 中村 浩崇
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.11, pp.308-314, 2022-11-01

近年の急激な高速化の流れに対応すべく,1波長あたりの速度が100 Gbit/sを越える動作が可能な光送信器が求められてきた.100 Gbit/sを越える動作を実現するためには従来のワイヤ実装ではワイヤのもつ寄生インダクタンスによる帯域劣化が課題であった.そこで,ワイヤ不要となるフリップチップ接続技術と光デバイスと実装部材を一体で設計する技術を組み合わせた実装技術(Hi-FIT)を開発し,本技術を電界吸収型光変調器集積DFBレーザ(EADFBレーザ)モジュールに適用することで,214 Gbit/s動作を実現した.また,高速化に伴って10km超級伝送を実現するためには光出力パワーの向上も併せて求められてきたが,高速動作が可能な光アクティブデバイスとして従来用いられてきたEADFBレーザでは光出力の不足が課題であった.そこで我々は半導体光増幅器(SOA)をEADFBレーザチップに集積したデバイス(AXEL)を開発し,受信器としてアバランシェフォトダイオード(APD)を用いることで,106 Gbit/s信号の60km伝送を実現した.Hi-FITとAXELは100 Gbit/s超級動作高出力光送信器のキー技術として期待される.
著者
菊池 隼仁 久原 隆博 中村 和行 森下 直樹 鳥居 航 徳永 翔 大槻 真嗣 橋本 樹明
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
航空宇宙技術 (ISSN:18840477)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.59-68, 2021 (Released:2021-06-23)
参考文献数
10

OMOTENASHI is a CubeSat that will be launched by NASA SLS rocket. Its mission is to demonstrate that a CubeSat can make a semi-hard landing on the Moon. The 6U-size spacecraft, which weighs 12.6kg, and consists of an orbiting module (OM), a rocket motor (RM) for deceleration on approach to the moon, and a surface probe (SP) as the landing module. Under tight resource constraints, a unique structure and separation mechanism is designed for a small space and a low mass. A validity of these designs has been verified through a vibration test. The margin of safety under the launch vibration is calculated by the structure analysis. In addition, to increase the impact resistance, all components of SP are filled with an epoxy resin. This performance had been evaluated by the drop impact test. As the result, this test model endured more than 16,158G with no function failure. In this paper, the design overview and test results are described.
著者
粕本 博臣 山本 貴敏 櫨木 聡 金光 秀史 西田 賀計 織田 善子 亀井 裕知 宮地 智弘 玉置 尚康 安井 智彦 下村 幸平 平野 奈穂子 山本 泰嵩 中村 明日美 成山 真一 中西 健
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.737-742, 2014 (Released:2014-12-22)
参考文献数
14
被引用文献数
4 4

症例は90歳, 女性. 2002年7月から週3回の血液透析中, 高K血症のコントロール不能であったため, ポリスチレンスルホン酸カルシウム (CPS) を服薬中であった. 2012年12月中旬, 腹痛を主訴に救急外来を受診, 腹部CTにて腹腔内遊離ガス像・結腸内に硬便を認めた. 消化管穿孔・汎発性腹膜炎と診断し, 緊急手術となった. 下行結腸に穿孔, 同部に便塊を認め, 横行結腸+下行結腸部分切除術, 人工肛門造設術を施行した. 病理組織標本で穿孔部に一致してcrystalline materialを認め, CPSが結腸穿孔に関与した可能性が示唆された. 術後, 播種性血管内凝固・敗血症に陥り, エンドトキシン吸着等の集学的治療を行うも救命することができず, 第4病日に死亡した. CPSは陽イオン交換樹脂であり, 高K血症の治療に使用されるが, 副作用として便秘が多い. 腸管穿孔の報告も散見され添付文書でも注意勧告がなされている.
著者
中村 智 山田 大樹 新谷 美菜 Supasit Srivaranun 秋山 充良
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.3, no.J2, pp.117-127, 2022 (Released:2022-11-12)
参考文献数
24

塩害環境にある鉄筋コンクリート(RC)構造物は,塩化物イオンの作用により鉄筋腐食が発生し,コンクリート表面には腐食ひび割れが観察される.腐食ひび割れは,RC部材内部の鉄筋腐食の状況を知る貴重な観測情報であるが,かぶりや配筋などの構造細目の影響を受けるため,両者は複雑な非線形の関係にある.本研究では,構造細目の異なるRC部材を用いた電食実験により,部材軸方向と軸直角方向に相関性を有する鉄筋腐食分布を得た.その2次元確率場パラメータを実験結果に基づき同定し,3次元有限要素解析を実施することで,解析的に機械学習用(pix2pix)のデータベース(鉄筋腐食と腐食ひび割れ幅の関係)を構築した.これにより,劣化RC部材表面の腐食ひび割れ幅の分布と構造細目が与えられることで曲げ耐荷力の推定が可能となった.
著者
三宅 定明 茂木 美砂子 大沢 尚 中澤 清明 出雲 義朗 中村 文雄
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.419-426, 1997-07-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

既報, 137Csをとりこませたメダカ, Oryzias latipes, の肉と混入した肉 (対照) の, 各放射性餌料投与によるキンギョ, Carassius auratus auratus, の137Cs濃縮機構を解明するため, メダカにとりこまれた137Csの生化学的存在形態について調べた。メダカにとりこまれた137Csは, 事実上非蛋白態窒素化合物 (NPNC) 区に存在し (92%以上) , 対照である無機の137Csを混入したメダカの肉との違いはほとんどみられなかった。また, NPNC区にっきゲルろ過分離を行ったところ, 137Csをとりこんだメダカの肉では, 対照および137CsCl水溶液と同様一つの放射能ピークのみが検出され, しかも各ピークの位置はそれぞれ一致した。一方, 蛋白質の各ピークの位置は, 放射能ピークの位置と異なり, とりこまれた137Csの大部分は, 蛋白質と結合していないことがわかった。さらに, シリカゲルを用いた薄層クロマトグラフィや, 陽イオン交換樹脂による分離, リンモリブデン酸アンモニウムとの反応においても, 137Csをとりこんだメダカの肉は, 対照である無機の137Csを混入したメダカの肉と違いはほとんどみられなかった。
著者
徳川 貴大 中村 雅俊 市橋 則明
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cb0487, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 ストレッチングは関節可動域(Range of Motion:以後ROM)の改善のために広く用いられている.ストレッチングの中で,スタティックストレッチング(Static Stretching:以後SS) はROMを改善するが,即時的な筋力低下を引き起こすという報告が多数ある.SSのほかのストレッチング法として,ホールドリラックスストレッチング(Hold Relax Stretching:以後HRS)がよく用いられている.HRSはSS中に伸張した肢位で対象筋の最大等尺性収縮を行うストレッチング法である.HRSについて,SS同様ROM改善に効果があるという報告があるが,最大筋力発揮に対する即時的な影響に関する報告はほとんどなく,SSとHRSの最大筋力発揮に対する即時的な影響の比較は検討されていない.本研究の目的はSSとHRSが最大等尺性筋力発揮に及ぼす即時的な影響を明らかにすることである【方法】 対象は下肢に整形外科的疾患を有さない健常男性20名(年齢22.0±1.2歳,身長171.6±4.6cm,体重62.6±10.4kg)の利き脚(ボールを蹴る側)とした. 腹臥位・膝関節完全伸展位で足関節を等速性筋力測定装置のフットプレートに固定した.上記の装置を用い,足関節底背屈0°位で3秒間の足関節底背屈等尺性筋力を測定し,最大発揮筋力は各々の最大値とした.筋力測定時,表面筋電図を用いて,腓腹筋外側頭,腓腹筋内側頭,ヒラメ筋,前脛骨筋(以後LG,MG,Sol,TA)の4筋の筋活動を記録した.サンプリング周波数は1500Hzとした.筋電図処理は全生波形を全波整流化し,50msの二乗平均平方根を求めた.SSとHRSの即時的な影響を検討するため,ストレッチングの介入前後に測定した.HRSは上記の測定と同様の装置を用い,腹臥位・膝関節完全伸展位で対象者が伸張感を訴え,痛みが生じる直前の足関節背屈角度で15秒間SSを行った直後に5秒間底屈方向に最大等尺性収縮を行い,その後10秒間同じ角度でSSを行った後,底屈30°まで戻すというHRSを4セット,計2分間施行した.SSはHRSと同様に,対象者が伸張感を訴え,痛みが生じる直前の足関節背屈角度で30秒間SSを行った後,底屈30°まで戻すSSをHRSと同様に4セット,計2分間施行した.また,HRSとSSは 1週間以上2週間以内の間隔をあけて測定を行った.統計学的処理はWilcoxon検定で,HRS前後とSS前後の底背屈トルクと各筋の筋活動量の比較を行った.Mann-Whitney検定で,HRS前後とSS前後の底背屈トルクの変化率と各筋活動量の変化率の比較を行った.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には研究の内容を説明し,書面にて研究参加の同意を得た.なお,本研究は本学倫理委員会の承認を得た.【結果】 底屈トルクはHRS前後で197.6±41.2Nmが187.4±43.3Nmとなり,有意に低値を示した.SS前後で195.4±39.7Nmが170.7±36.5Nmとなり,有意に低値を示した.背屈トルクはHRS前で51.7±11.6Nmが55.4±11.0Nmとなり,有意に高値を示したが,SS前後では有意な変化を示さなかった.底屈時の筋活動量では全ての筋において有意な変化を示さなかった.背屈時の筋活動量はHRS前後でLGは31.3±13.2μVが29.1±12.2μV ,MGは29.7±8.7μVが 27.9±7.8μVとなりHRS後はHRS前と比較し有意に低値を示し,SolとTAは有意な変化を示さなかった.SS前後でLGは32.7±11.1μVが28.9±10.8μV,MGは30.2±8.4μVが27.3±8.9μV ,TAは384.7±111.2μVが344.9±102.4μVとなりSS後はSS前と比較し有意に低値を示し,Solは有意な変化を示さなかった.底屈トルクの変化率はHRS前後が-5.9±11.2%で,SS前後が-12.7±5.0%となり,SS前後はHRS前後と比較し有意に大きく筋力が低下した.底屈時のSolの筋活動量の変化率はSS前後が-5.8±14.3%で,HRS前後が2.5±16.0%となり,SS前後はHRS前後と比較し有意に筋活動量が減少した.一方LGとMGとTAの変化率は有意な変化は示さなかった.背屈トルクと全ての筋の背屈時の筋活動量の変化率は有意な差を示さなかった.【考察】 本研究結果より,2分間のHRSとSS後ではともに即時的に底屈筋力は減少し,SS後の方が大きく減少することが明らかになった.これはSolの底屈時の筋活動量がSSの方が大きく低下していることによると考えられる.そしてHRS後では即時的に背屈筋力が増加することが明らかになった.HRS後では背屈時の拮抗筋であるLGとMGの筋活動量が減少したことが関与していると考えられる.またSS後ではHRSと同様に背屈時にLGとMGの筋活動量は減少しているが,主動作筋であるTAの筋活動量も減少しているため背屈筋力に差が生じなかったと考えられる.【理学療法学研究としての意義】 本研究により,2分間のHRSとSSはともに即時的にストレッチングを行った筋の筋力を低下させるが,SSの方がより即時的に低下させることが明らかになった.本研究結果は場面に適したストレッチング方法を選択する際の重要な判断材料の一つになると考えられる.
著者
中村 康香 廣田 光紀 和田 彩 長坂 桂子 武石 陽子 川尻 舞衣子 吉沢 豊予子
出版者
一般社団法人 日本母性看護学会
雑誌
日本母性看護学会誌 (ISSN:1345773X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.19-26, 2021-03-26 (Released:2021-03-26)
参考文献数
27

女性が妊娠期においても労働力を最大限に発揮できるような支援へとつなげるため、妊婦の労働生産性やワークエンゲイジメントの特徴を、非妊娠女性および妊娠時期、雇用形態により比較検討した。就労女性904名を対象に、Webによる調査を2019年4-5月に行った。調査項目は東大1項目版プレゼンティーズム、労働遂行能力の低下率を示すWork Limitations Questionnaire (WLQ)、過去4週間の欠勤日数、Utrecht Work Engagement Scale短縮版(UWES)及び就労状況と属性である。結果、WLQ「時間管理」「集中力・対人関係」「生産性損失割合」において妊娠初期が、妊娠中期よりも有意に高かった。UWESは妊娠末期で「熱意」得点が妊娠中期より有意に高かった。正規雇用妊婦がWLQ「仕事の結果」に関する得点が、非正規雇用妊婦のほうがUWES「活力」得点が有意に高かった。妊娠時期や雇用形態による特徴に応じたマネジメントが必要である。
著者
中村 祥吾 村井 源
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.1P1GS1005, 2022 (Released:2022-07-11)

物語の自動生成では計量的な構造分析に基づく手法などが試みられてきた.しかし従来の対象は短い物語パターンのみであり,複数の起承転結のパターンを複合した複合的構造の分析とその応用は,ロールプレイングゲーム(RPG)のジャンルを除きほとんど行われておらず,また複合的構造の多様性や時系列的変化は明らかになっていない. 本研究では,高評価のRPGシリーズを対象として,物語構造分析と並行して物語中の複数の起承転結のパターンの連続・入れ子・並列関係のデータ化を行った.シリーズ間を比較した結果,ドラゴンクエストは、人物変化、世界設定開示など冒険型の展開が多く,ポケットモンスターは能力向上、障害撤去、戦いなど戦闘型の展開が多かった。一方でファイナルファンタジーは能力低下、逃亡、災難などネガティブイベントが多く対象年齢の高さがうかがわれた。 複合的構造の時系列的変化はシリーズ共通で序盤・中盤・終盤に3構造に分かれ,中盤では多段の入れ子や並列構造によって複雑かつ自由度の高い物語を提示する特徴が明らかになった.本研究の成果はユーザー層に合わせた長編作品の自動生成などの基盤として活用可能と考えられる.
著者
坂井 友実 津谷 喜一郎 津嘉山 洋 中村 辰三 池内 隆治 川本 正純 粕谷 大智
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.175-184, 2001-05-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

【背景】本邦での鍼に関するランダム化比較試験の試みは数少なく、対照群に鍼治療以外の治療法をおいた研究はほとんどない。本邦において、医療制度の中に鍼灸が位置付いてゆくためには、質の高い臨床研究の結果が求められている。今回の臨床試験はこのような状況を踏まえ鍼を受療することの多い「腰痛症」を対象として行われた。【目的】「腰痛症」に対する低周波鍼通電療法の有効性および安全性を経皮的電気刺激法を対照としたランダム化比較試験により検討する。本試験は1995年9月から1996年6月にかけて瀬踏み的になされた第1期の研究を引き継ぐ第2期に相当する探索的なもので, 第3期の確認的な試験へ向けてのデータ収集の意味を持つ。【対象および方法】下肢症状がなく、発症から2週間以上経過した腰痛患者を対象に低周波鍼通電療法 (A群) と経皮的電気刺激法 (T群) の多施設ランダム化比較試験とした。観察期間は2週間、治療回数は5回とした。通電は各群とも1 Hzで15分間行った。【結果】目標症例数の80例に対して71例の応募者があり、68例が封筒法によりA群とT群に割付けられ、最終的にはA群の31例とT群の33例が解析の対象となった。背景因子として、年齢、罹病期間などには両群間に有意差はみられなかったが、性別、鍼治療経験の有無、経皮的電気刺激法の経験の有無には有意差がみられた。疼痛スケール (以下「VAS」とする) は最終時でA群は5.3±3.0に、T群は5.9±3.4に軽減した。また、主要評価項目であるVASをもとにした痛み改善度の効果判定では、A群は13/31例 (41.9%) に改善がみられ、T群では10/33例 (30.3%) に改善がみられた。さらに、副次的評価項目である日本整形外科学会腰痛治療成績判定基準 (以下「JOAスコア」とする) は初診時14.5±3.0点、T群は15.0±2.8点であったが、最終時では15.9±2.0点と15.8±2.6点であった。しかし、A群とT群の両群問では、VAS及びVASをもとにした痛み改善度JOAスコアにおいて統計学的な有意差はみられなかった。【考察】プロトコールに沿ってデータの収集が行われたことは中央委員会の設立によるところが大きいと考える。目標症例数に達しなかったことは、臨床試験に対する患者の理解が低いことや参加施設のおかれている立地条件が考えられるが、患者募集の仕方にも工夫をしてみる必要があると思われる。また、鍼の効果を立証していくためには介入の方法や評価項目などについて検討していく必要があると思われた。【結論】腰痛症に対するA群とT群との間には有効性の差はみられなかった。第3期へ向けての基礎的データが収集された。

1 0 0 0 OA 音楽と音量

著者
中村 俊一
出版者
The Institutew of Noise Control Engineering of Japan
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.261-266, 1981-10-01 (Released:2009-10-06)
参考文献数
15
著者
早坂 信哉 中村 好一 梶井 英治
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1070-1075, 2002 (Released:2015-12-07)
参考文献数
31
被引用文献数
2

目的 市区町村社会福祉協議会が提供する高齢者入浴サービスである訪問入浴,施設内入浴について関連する事故の発生頻度をそれぞれ明らかにする。方法 対象:高齢者入浴サービスを実施している全国の市区町村社会福祉協議会(以下社協)444か所が対象であり,そのうち入浴に関連する事故の経験がある社協102か所を調査した。 調査,解析方法:2001年10月に郵送自記式調査を実施した。訪問入浴サービス,施設内入浴サービスの各々について,入浴サービス開始年月,2000年度の入浴延べ件数,および過去 5 年間のうちの入浴サービス実施期間の入浴に関連する事故件数を調査した。これらの項目につき過去 5 年間の入浴延べ件数を推定し,事故経験のある社協における入浴 1 万件あたりの事故件数を計算した。加えて入浴サービスを実施している社協全体における入浴 1 万件あたりの事故件数を計算し,日本全体における年間事故件数を推定した。結果 調査票の回収率は93%(回答数95)だった。5 年間の 1 社協あたりの延べ入浴件数(平均±標準偏差)は訪問入浴が4,245.0±4,637.7件,施設内入浴が22,235.3±37,259.4件で施設内入浴が多かった。事故経験のある社協における 5 年間の事故件数は訪問入浴が0.57±2.95件,施設内入浴が0.63±1.73件でほぼ同じだった。しかし入浴 1 万件あたりの事故件数は,訪問入浴が1.33件,施設内入浴が0.28件で訪問入浴が多かった。入浴サービスを実施している社協全体における入浴 1 万件あたりの事故件数は,訪問入浴が0.204件,施設内入浴が0.067件で訪問入浴が多かった。日本全体における年間事故件数を推定すると訪問入浴が63.1件,施設内入浴が149.1件であった。結論 入浴 1 万件あたりの事故発生率は,訪問入浴が施設内入浴より高く,福祉担当者や家族は注意を喚起する必要がある。
著者
吉岡 利貢 中垣 浩平 中村 和照 向井 直樹 鍋倉 賢治
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.237-248, 2012 (Released:2012-06-02)
参考文献数
29
被引用文献数
4 2

The purpose of this study was to compare the physiological and morphological characteristics of J. Ndambiri, a Kenyan world-class long-distance runner (10,000 m personal best: 27:04.79), with runners belonging to the national corporate team (29:32.18±0:30.35). Oxygen uptake (VO2), heart rate, blood lactate concentration and stride frequency were measured during submaximal exercise on a treadmill (270, 290, 310, 330, 350 and 370 m/min velocities with 1% inclination). Peak oxygen uptake (VO2peak) was determined during the maximal exercise test. In addition, morphological parameters (length of thigh and shank, maximum circumference of thigh and shank, and cross-sectional area of the trunk, thigh and shank muscles) were determined using a tape measure and magnetic resonance imaging (MRI). Ndambiri was superior to Japanese runners in terms of not only running economy (65.0 vs 69.8±1.9 ml/kg/min at 330 m/min), but also blood lactate concentration (1.50 vs 2.59±0.74 mmol/l at 330 m/min), heart rate (159.8 vs 170.8±4.0 bpm at 330 m/min) during the submaximal running test and VO2peak (80.8 vs 76.3±2.4 ml/kg/min). In addition, the morphological characteristics of Ndambiri were also quite different from those of Japanese runners. In particular, Ndambiri's maximum shank circumference was much smaller than that of Japanese runners (32.0 vs 35.8±1.8 cm). Furthermore, the cross-sectional area of the gastrocnemius muscle, which composes the shank, was significantly correlated with the oxygen cost of running at 330 m/min (r=0.700). These findings indicate that the superior performance of Ndambiri is attributable to various factors such as a higher VO2peak, lower blood lactate concentration and heart rate, as well as running economy. In the future, it will be necessary to clarify the factors supporting these relationships between physiological variables and morphological characteristics.
著者
中村 泰久 / 穴水 幸子 / 山中 武彦 / 石井 文康 / 三村 將
出版者
日本福祉大学健康科学部, 日本福祉大学健康科学研究所
雑誌
日本福祉大学健康科学論集 = The Journal of Health Sciences
巻号頁・発行日
vol.21, pp.25-35, 2018-03-30

Based on the test outcomes of divergent and convergent thinking tasks, we examined the characteristics of patients with schizophrenia through an intergroup comparison with a control group, as well as through an intragroup comparison. The study involved the schizophrenia group and healthy control group. Both groups were administered the divergent thinking tasks, and convergent thinking tasks. Psychological symptoms were assessed of the schizophrenia patient. The outcome of the intergroup comparison showed that patients with schizophrenia show a decline in multiple The Tinkertoy Test (TTT) revised version subitems and Idea Fluency Task (IFT) Task-modified response number in the divergent thinking tasks. Furthermore, the result of a logistic regression analysis concerning the items that showed a decline indicated intergroup discrimination for TTT revised version name and IFT Task-modified response number. Subsequently, in the intragroup comparison of patients with schizophrenia, there was a positive correlation between positive symptoms and Design Fluency Test (DFT) Score. From these outcomes, we suggest that patients with schizophrenia tend to score lower on divergent thinking tasks, and that among the divergent thinking tasks, the TTT revised version and IFT are capable of measuring independent cognitive functions that are less susceptible to the influence of psychological symptoms.
著者
中村 泰久 朝倉 起己 新宮 尚人 Yasuhisa Nakamura Tatsumi Asakura Naoto Shingu
雑誌
日本福祉大学健康科学論集 = Journal of health sciences, Nihon Fukushi University
巻号頁・発行日
vol.16, pp.29-34, 2013-03-30

In the study, we examined the factors which affect the skills which are required or partially required for working with 38 schizophrenic patients. We collected background information on the subjects such as age, sex, medical history, age at the initial visit and education, and then evaluated the subjects' cognitive function by the Global Assessment of Functioning (GAF), Brief Assessment for Cognition in Schizophrenia Japanese version (BACS-J) and Life Assessment Scale for the Mentally Ill (LASMI). Working memory, motor function, and attention and information-processing rate were evaluated by using digit sequencing test, Token Motor Task and symbol coding test, respectively. Correlation analyses revealed that skills required for working had significant correlations with education, verbal memory and learning, working memory, motor function, and composite score. As of skills partially required for working, correlations were observed with motor function, attention and information-processing rate, and composite score. In addition, multiple regression analyses suggested that required skills were influenced by verbal memory and learning, while partially required skills were influenced by attention and information-processing rate.