著者
石井 昌彦 原田 雅史 月ヶ瀬 あずさ 中村 浩
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.29-34, 2007 (Released:2007-09-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

単分散微粒子が三次元的に規則配列したオパール型コロイド結晶を作製するための単分散微粒子として,シリカ微粒子と並んでポリスチレン微粒子がよく用いられる.しかし,ポリスチレン微粒子を用いた場合にはクラックの発生が多いとの指摘もある.本報では,数 cm2 オーダーの面積にわたって面内での結晶方位が揃ったオパール型コロイド結晶の作製が可能な流体セルを用いて,ポリスチレン微粒子を用いた場合のコロイド結晶形成過程と作製されたコロイド結晶の構造を,シリカ微粒子の場合との比較において調べた.角度分解反射スペクトル測定などの分光的手法により,異なる光学特性を示す三段階の乾燥過程を経てコロイド結晶が形成されること,シリカ微粒子の場合と異なりポリスチレン微粒子の場合には,最後の乾燥段階において約 3%の粒子径収縮が生じることが明らかになった.この粒子径収縮のため,ポリスチレン微粒子からなるコロイド結晶では,シリカ微粒子からなるものに比べて,クラックの発生が多くなるものと考察した.
著者
桑原 大輔 梅原 拓也 中村 早也香 木藤 伸宏
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-9, 2022-09-30 (Released:2022-10-01)

[目的] 本研究の目的は、健常者の片脚立位における姿勢制御機能の良好と不良で、等尺性股関節外転筋力および股関節周囲筋の筋厚と筋輝度に違いがあるか明らかにすることとした。[方法] 男性健常者13名26肢とし、片脚立位における姿勢制御機能を良好と不良の2群に分けた。アウトカムは、等尺性股関節外転筋力、筋厚と筋輝度とした。得られたデータを用いて、2群の差の比較と実質的効果量を算出した。[結果] 等尺性股関節外転筋力および股関節周囲筋の筋厚や筋輝度は、2群間で有意差も中等度以上の実質的効果量も認めなかった(P<0.05)。 [結論] 本研究で扱った対象者および片脚立位の姿勢制御機能評価指標では、等尺性股関節外転筋力や筋厚・筋輝度は、大きく関与しない可能性が示された。
著者
笠井 富貴夫 中村 光男 石井 正孝 寺田 明功 工藤 研二 対馬 史博 広田 則彦 武部 和夫
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.219-226, 1991-03-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
25

胃排出機能とインスリン皮下吸収の食後早期血糖変動への影響を検討する目的で, 胃排出遅延を認めるインスリン依存型糖尿病 (IDDM) 11例にGastrokineticsを投与し, 明らかな胃排出改善の得られた6例 (I群), 改善のなかった5例 (II群) について食前および食後120分までの血糖 (PG) と血中遊離インスリン (Free-IRI) をPEG抽出法で測定した.胃排出機能はアセトアミノフェンとアイソトープ併用の液食一固形食同時測定法で検討した.I群;ΔFree-IRIには全検査時間を通じ, 胃排出改善前後で有意差なく, ΔPGは食後60分以降, 有意な上昇を認めた.すなわちΣΔFree-IRIには有意な変化はなく (2310±1266→2707±6889μU/ml・min), Σ ΔPGには有意な上昇 (1853±3442→4799±2983mg/dl・min, p<0.02) を認めた.II群;ΔFree-IRI, ΔPGともに胃排出改善前後で有意な変化を認めなかった.IDDMではインスリン皮下吸収に有意な変化を認めない場合, 胃排出機能が食後早期血糖を制御する重要な因子であることが示された.
著者
中村 尚司 津田 守 広岡 博之 河村 能夫 鶴見 良行
出版者
龍谷大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

政治的な独立を達成した後に野心的な工業化が進めたアジア諸国では、急激な社会生活の変化と環境破壊を引き起した。南北間の経済格差とともに、南側諸国内における社会階層間や地域間の格差拡大も深刻である。永続可能な発展を目標にして、環境問題に配慮した新しい南北問題の社会経済指標を検討する必要がある。すでに、世界銀行や国連諸機関では、経済成長率以外の要因を加えた各種の社会経済指標を発表している。本研究は、社会経済発展に関する既存の諸指標を批判的に検討する一方、適切な代案を模索する。本年度は、4回にわたる研究会を開催し、調査研究の方法に関する考察を中心に、「厚生の指標について」、「社会経済指標の研究方法」、「循環、多様、関係という視点からみた発展指標」、「アジアにおける経済格差研究の問題点」、「農村における貧困研究の国際比較」という報告と討論を行ない、個別的な地域の課題として、「フィリッピンにおける経済発展の特質」、「仏教復興運動と農村開発」、「農村金融とエンパワーメント」などのテーマを取り上げ、実証的な報告とその批判的な検討を行なった。その一方で、東南アジアと南アジアの諸地域におけるフィールド7-7によって得られたデータに基づき、それぞれの地域社会の具体的な特殊性を考察して、国際機関による南北格差の指標の現実性を検討し、問題点の指摘を試みた。南側の対象地域としては、フィリピン、タイ、マレーシア、バングラデシュおよびスリランカを取り上げた。南北の比較に必要な北側の代表的な地域として、日本とアメリカ合衆国の対照的な指標を取り上げて吟味した。
著者
中村 雅子
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.179-198, 2020-12-15 (Released:2020-12-23)
参考文献数
20

クラウドファンディングはすでに新しい資金調達手段として多様な実践者および研究者の注目を集めている.本研究ではオンライン調査によってクラウドファンディング利用者の多様性について実証的に検討した.日本の調査会社のオンラインモニターを用いて,支援者または提案者として購入型または寄付型のクラウドファンディングを使ったことがある者を対象に2018年5月に回答を依頼した.本論文の目的は以下の二点である.第一に日本のクラウドファンディング支援者の実態を明らかにした.また支援者の多様性を明らかにすることを第二の目的とした.25項目の変数を用いてクラスター分析を行い,五つの類型を抽出した.これらの類型間では支援理由や今後の利用意向などにも違いが見られた.
著者
三原 悠 門 浩志 黒瀬 亮 辻中 瑛里香 中村 匡志 足立 大也 山内 明日香 深井 邦剛 八田 告
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.265-269, 2022 (Released:2022-04-28)
参考文献数
23

症例は94歳,女性.入院1年4か月前に腎硬化症を原疾患とした末期腎不全に対し,長期型バスキュラーカテーテルを左内頸静脈に留置し血液透析を開始していた.入院2日前に転倒し,右肩を打撲した.右肩の疼痛増悪,血液透析時の血圧低下をきたしたため入院となった.入院10日目に脱血不良のためカテーテル抜去を試みたが,皮下のカフを剥離した状態にもかかわらず強い抵抗を認めた.入院11日目に透視下造影検査でカテーテルにガイドワイヤーを挿入し,血管壁の付着を剥離しカテーテルを抜去した.日本において,長期型バスキュラーカテーテルは血液透析患者の高齢化とともに使用が増加してきており,抜去困難となるケースにおいては慎重に対応する必要がある.
著者
中村 徳仁
出版者
日本シェリング協会
雑誌
シェリング年報 (ISSN:09194622)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.86, 2022 (Released:2022-06-29)

Das Ziel der vorliegenden Arbeit ist es, die Interpretationsgeschichte von Schellings politischem Denken in der zweiten Hälfte des zwanzigsten Jahrhunderts zu rekonstruieren - mit besonderem Schwerpunkt auf den deutschsprachigen Forschungen. Diese Geschichte besteht hauptsächlich aus drei Perioden. Die erste Periode war die 1950er und frühen 1960er, als Schelling oft als „unpolitisch“ oder „reaktionär“ angesehen wurde. Die zweite liegt zwischen den späten 1960er und späten 1980er Jahren, als Schelling im Rahmen der materialistischen und marxistischen Studien erneut bewertet wurde. Die dritte war in den 1990er Jahren, als die Entstehungsgeschichte von Schellings Denken (vor allem im Zusammenhang mit dem Tübinger Stift und der 48er- Revolution) endlich ins Auge gefasst wurde. Durch diese Rekonstruktion werden die für die künftige Forschung erforderlichen Perspektiven aufgezeigt.
著者
中村 悦広 中東 雅樹
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.302-319, 2013 (Released:2021-10-26)
参考文献数
17

本稿では,近年削減の方向で進められてきた社会資本整備が,三大都市圏において地域経済や地域住民の経済厚生にいかなる影響を及ぼしてきたかを分析する。具体的には,首都圏,名古屋圏,関西圏を対象に,市町村別・分野別の社会資本ストックデータを構築したうえで,Roback(1982)の理論モデルに基づいて,1995年度と2005年度の2時点の市町村クロスセクション・データによる社会資本の経済効果をふまえた都市圏の公共投資のあり方を検討した。本稿の分析から得られた主な結論として,道路や都市公園といった生活基盤型社会資本は,すべての圏域で生産力効果と厚生効果があることが示された。他方で,名古屋圏と関西圏で,経済効率的に配置されていない社会資本が存在し,とくに関西圏は,そうした社会資本が多く存在することが明らかになった。
著者
中村 健史
出版者
ロシア・東欧学会
雑誌
ロシア・東欧研究 (ISSN:13486497)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.37, pp.69-81, 2008 (Released:2010-05-31)

In June 2008, Bosnia and Herzegovina (hereafter Bosnia) signed the Stabilisation and Association Agreement with the EU. The signing of SAA, however, does not mean reconciliation among nationalist parties who had started the war came to an end successfully. Instead these parties are still dominant in political sphere of Bosnia. On the other hand, as Bosnia comes closer to the EU, Bosnia will inevitably need to express ownership, that is, to have will and capability to tackle reform agenda necessary to join the EU. Although the term‘ownership’ can be used in the context of politics, civil society and business, ownership in this article limits its scope to political one. The main agenda of ownership is, thus, capability to cooperate, discuss and come to an agreement among politicians of Bosnia.Dayton Peace Agreement (DPA) installed in Bosnia the Office of the High Representative (OHR) as a representative of international community. OHR is responsible of supervising civilian aspects of peace implementation with extremely huge authority. In addition, DPA provided Bosnia with consociational democracy. As is shown in this article, Bosnia lacks cooperation among political elites, in other words, ownership. Recently OHR has been moving from regulation with coercive power to that of EU integration requirements. Therefore, this article tries to figure out current situation and future prospect of ethnic division in Bosnia, taking police reform as a case. At first, Bosnian state structure set by DPA is analyzed from consociational democracy perspective. Secondly, it clarifies international community's approach towards Bosnian ethnic division. Thirdly, the extent to which Bosnia politicians showed the sense of ownership and international community's influence on it are examined.