著者
丸谷 美紀 里中 利恵 中村 元子 佐久間 勇人
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.549-556, 2021-12-28 (Released:2022-02-09)
参考文献数
23

本稿の目的は,東日本大震災以降の自然災害における難病患者と家族の被災経験や災害への備えを,患者・家族の声明として示し,今後の我が国の災害対策の一助とすることである.まず,全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会会長からは,2011年の東日本大震災以降,2019年の台風まで続く地震・豪雨等の災害においても,難病患者への避難支援や避難所の配慮が欠如し,法や制度と乖離している実態が報告された.日本ALS協会鹿児島県支部事務局長からは,熊本地震で在宅人工呼吸器装着患者への渾身の支援が報告され,患者・家族会の情報伝達システムの確立,及び災害への備えの重要性が言及された.一方,脊髄小脳変性症患者からは災害に備えたくとも障壁があることが述べられた.東日本大震災以降,法制度は整備されてきたが,その後も想定を上回る災害が続き,難病患者の避難支援,被災後の疾患・健康管理や生活の支援,災害への備えに関し,課題が山積していることが伺える.特に避難所での食事・睡眠・排泄環境等の不備が,患者の健康状態に影響した.2011年に比較すると2018年には,人工呼吸器装着患者の電源確保や原疾患の治療薬の備蓄は充実してきていた.しかし,難病患者が災害時も安心して過すためには,薬や人工呼吸器等の狭義の医療への備えに加え,食事・睡眠・排泄等の基本的ニーズを満たす生活環境の整備へ重点をシフトすることが必要となる.そのためには,難病患者の支援者も無事であることが求められ,換言すれば,難病患者の災害支援とは,全ての人の災害支援につながる.
著者
八木 遥 山本 義貴 臼窪 一平 中村 友香 下山 あさ子 東 修司 田畑 裕和 稲垣 育宏 小寺 隆二 柴波 明男
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.490-495, 2019 (Released:2019-12-28)
参考文献数
9
被引用文献数
1

入院患者は睡眠障害を生じる事が多く,睡眠薬の服用が必要となる事例は少なくない。現在わが国で用いられている睡眠薬はベンゾジアゼピン受容体作動薬が多いが,筋弛緩作用や持ち越し効果などから転倒に至る危険性がある。従来の睡眠薬と異なる作用機序を持つオレキシン受容体拮抗薬(ORB)は筋弛緩作用を持たないとされており,安全面に優れていると考えられている。そこで,入院中に内服した睡眠薬の作用機序毎の転倒率を調査した。2017年4月1日~2017年12月31日で当院において転倒・転落があり,ORB,ベンゾジアゼピン系薬(BZD)及び非BZDを服用していた入院患者を対象とした。また,転倒発生前に各薬剤を服用していた患者を群分けし,転倒率を算出し比較した。対象患者のうち調査期間内の睡眠薬全処方人数は1,682人であり,全転倒件数は45件であった。睡眠薬の分類における転倒率は3群のうちORB群による転倒率が1.45%と最も低く,BZD群と比較して有意に低かった事から,ORBは転倒へ与える影響が小さい可能性が示唆された。また,非BZD群の転倒率においてBZD群と比較して有意に低かった事から,転倒予防についても考慮しBZDよりも非BZDを使用する事が望ましいと考えられた。また,転倒事例の患者に高齢者が多かった事から,転倒の危険因子を多数保有している患者が多かったと考えられ,睡眠薬を使用した事で転倒の危険性が増大した可能性がある。
著者
川村 康 七野 敏光 中村 正人 Kawamura Yasushi Shichino Toshimitsu Nakamura Masato
雑誌
令和3(2021)年度 科学研究費補助金 基盤研究(C) 研究成果報告書 = 2021 Fiscal Year Final Research Report, Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
巻号頁・発行日
vol.2018-04-01 – 2022-03-31, pp.420p., 2022-03-15

令和2年度は、当初は2回の研究会を開催する予定であったが、新型コロナウィルス感染症流行の影響により、対面形式での研究会の開催を断念せざるを得なくなった。これに代えて、研究協力者(中村正人氏、七野敏光氏)の助力を得て、電子メールを交換する形式で、1回の研究会を遠隔開催した。この研究会では、研究代表者が電子メールに報告の書面を添付して研究協力者両名に送付し、これに対する研究協力者からの電子メールによってそれぞれの専門領域の視点と知見にもとづく質問と意見を得、さらに電子メールによって質疑応答や意見交換を行うことによって、本研究課題の解決についての視野を広げることができた。この成果にもとづいて、『岩波講座 世界歴史 第7巻』(岩波書店、令和4年刊行予定)に収録予定の論文「法構造の新展開」(仮題)を執筆し、唐から元に至る法典編纂の歴史における宋勅の存在意義を確認することができた。また、唐律と慶元勅の対応検証による宋勅の構造の解明をめざして令和元年度に執筆した、本研究課題の中間報告にあたる論文「宋代以勅補律考:宋律勅合編序説」を『法と政治』71巻1号(関西学院大学法政学会、令和2年5月)に公表することができた。さらに、この論文で扱わなかった宋勅の篇目についても『慶元条法事類』からの勅条の抽出と復原の作業を進めることができた。令和2年度に開催した研究会の具体的な日程と主な内容は以下のとおりである。第8回研究会(令和3年2月2日~20日・電子メールの交換による遠隔開催):書面報告「唐明間における法構造の新展開」ならびにこれに対する質疑と意見
著者
伊藤 憲佐 中山 恵美子 梶川 奈津子 清水 翔志 野田 剛 中村 隼人 村中 清春 林 真也 伊藤 太一 中井 智子 田中 研三 大橋 正樹 不動寺 純明 葛西 猛
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.419-426, 2011-10-20 (Released:2020-09-11)
参考文献数
36

鈍的胸部外傷による肋骨骨折患者の入院日数と, 初診時に得られる臨床情報について重回帰分析を行い, 入院日数の推定式を構築することを目的とした後ろ向き研究である. 肋骨骨折にて入院した患者92例を対象とし入院日数と, 性別, 年齢, HR, SBP, 血気胸の有無, 胸腔ドレーン挿入の有無, 硬膜外麻酔・神経根ブロックの有無, 肋骨骨折の本数を調査した. これらの項目に対し入院日数を目的変数として, 探索的に重回帰分析を行った. 最終的に推定入院日数=4.9+肋骨骨折の本数×0.9日に, 年齢が60歳以上の場合, +3.3日, 胸腔ドレーン挿入が施行された場合, +3.6日が加算される, 単回帰推定式が得られ, 95%信頼限界は±15.6日であった. この推定式により鈍的胸部外傷による肋骨骨折患者の入院日数が, 初診時に得られる情報から推定可能と思われる. また入院期間を短縮するためには肺炎の予防が重要である事が暗示された.
著者
小川 宗一郎 濱川 俊朗 成尾 浩明 辛島 謙 中村 禎志
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】破傷風の治療は,原疾患の治療に加え痙攣のコントロールや鎮静などの全身管理が重要である.鎮静においてベンゾジアゼピン系薬物や塩酸モルヒネの大量投与で,良好な全身管理が出来たとの報告がある.また,筋弛緩薬は廃用性萎縮や症状評価が難しいという理由で使用しづらい点がある.今回破傷風患者に,筋弛緩薬を使用せず,大量のミダゾラム(MDZ)と塩酸モルヒネ(MOR)を併用し,良好な鎮静管理ができたので報告する.【臨床経過】60歳代の男性.嚥下困難感と後頸部の違和感を主訴に当院を受診した.受診1か月前に右中指の外傷歴があり,受診2日前より上記症状が出現した.受診時開口障害と後頸部硬直を認め,外傷歴と症状から破傷風と診断した.予防接種歴もなかったため破傷風トキソイド,抗破傷風人免疫グロブリン製剤,メトロニダゾールを投与した.ICUに収容し気管挿管後に人工呼吸器管理を開始した.また創部をデブリードマンし,開放創とした.入室後にMDZ:2500mg/日による鎮静を行っていたが,次第に刺激による頻回の後弓反張が出現した.そのため5日目よりMOR150mg/日+MDZ720mg/日で鎮静を行った.また,全身管理期間も長期になることが予想され,入室6日目に気管切開を行った.その後は硬直や痙攣症状なく,呼吸状態も安定していた. 8日目よりMDZを500mg/日,12日目にはMORを100mg/日に減量した.13日目に人工呼吸器からウィーニングを開始し,MDZを240mg/日に減量した.15日目にMORを90mg/日へ減量した.21日目に両下肢の痙攣が出現し,併用でデクスメデトミジン 5.1ml/時を開始したが,徐脈が出現したため翌日に中止した. 24日目に人工呼吸器離脱し, 25日目にMDZを終了した.その後,離脱症候の観点からMORは徐々に漸減し, 29日目に終了し,33日目でICU退室となった.退室後は嚥下機能訓練を行い,入院後約3か月で退院となった.【結果】今回の症例ではアルコール多飲歴によるベンゾジアゼピン系薬物への抵抗性が形成されており,MDZの鎮静効果が低かったと考えた.筋弛緩薬は筋の廃用性萎縮や症状評価の観点から使用しなかった.またデクスメデトミジンは徐脈が出現したため使用しなかった.鎮静薬の量はジアゼパム3400mg/日,モルヒネ 235mg/日と大量投与で良好な治療効果が得られたとの報告がある.筋弛緩薬を使用せず,大量のMORの併用とMDZにより鎮静を行い良好な鎮静管理とスムーズなウィーニングが可能であった.
著者
中村 謙吾 肴倉 宏史 川辺 能成 駒井 武
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.39-48, 2015 (Released:2015-02-20)
参考文献数
24

製鋼スラグの利用用途で,腐植物質との混合による磯焼け回復技術が注目されているが,製鋼スラグから溶出する重金属等の環境影響を検討する必要がある.本研究では純水による検討に加えて,海域利用を想定し,実海水を用いて振とう試験および浸漬式のシリアルバッチ試験を実施した.さらに,海域利用において要求される環境安全品質の考え方に基づき,海域利用への適合性について考察を行った.試験結果より,Cd,Pb,Cr,Bは,試験条件を変えた場合に,溶出濃度が港湾用途溶出量基準を超過することは確認されず,製鋼スラグ及び腐植物質の相互作用により,重金属類の溶出濃度は減少傾向を示した.また,本研究で想定した海域利用の環境安全品質を設定し,本試験結果を適用した結果,重金属類による海域汚染の原因となる可能性は低いことが示唆された.
著者
伊藤 不二夫 伊藤 全哉 中村 周 柴山 元英 倉石 慶太 河合 将紀 山田 実 星 尚人 吉松 弘喜 三浦 恭志
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1.2, pp.22-31, 2021-01-20 (Released:2021-01-20)
参考文献数
10

はじめに:脊椎後方除圧術として観血法,顕微鏡下除圧術,内視鏡下除圧術,経皮的内視鏡下除圧術等を行ってきたが,今回導入した片側進入双穴内視鏡Unilateral Biportal Endoscopy(UBE)の臨床経験を報告する.対象と方法:脊柱管狭窄症56例,椎間孔狭窄症3例,ヘルニア5例の計64例を手術した.傍棘突起部で椎間板レベルの1 cm頭側に4 mm径の内視鏡ポータルを作成する.それより2 cm尾側の8 mm径作業用ポータルから,ラジオ波,4 mmダイアモンドバー,直・弯曲ケリソン,剥離子,鉗子等を使用する.結果:手術時間は初期2時間が,20例以降1時間に短縮した.下肢症状・腰痛VASは有意に減少した.Macnab評価の満足率は83%であった.術後血腫はなかった.硬膜損傷は2例にあり,fibrin patch法で修復した.結語:持続水灌流の鮮明視野下で,レンズ先端は組織に近接し毛細血管も拡大され,止血が丁寧にできるため,術後血腫が少ない.外筒は使用せず器具の作業範囲に制限がなく,骨掘削量が少なくて済む.
著者
服巻 孝 中村 満夫
出版者
一般社団法人 溶接学会
雑誌
溶接学会論文集 (ISSN:02884771)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.337-342, 1992-08-05 (Released:2009-06-12)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

Copper to copper lap joint was made by the resistance heating, applying pressure simultaneously. The copper plate was pre-soldered and the alloyed layer was pre-formed by using Pb-50Sn solder and then joint mechanism of press-soldered joints was analyzed.The reason of enhancing strength and heat resistance heated by applying voltage in press-soldered joints is summarized as follows.(1) Solder composition turns to Cu-Sn alloy composition.(2) Joint layer with higher melting point was formed in which Cu increases and Sn decreases.(3) In terms of the crystal structure, Cu3Sn, Cu6Sn5 and Cu(α) phases turns to Cu41Tn11 and Cu(α) phases which have high heat resistance.
著者
中村 綾子 大崎 進 早渕 尚文
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.343-352, 2001-08-15 (Released:2011-03-14)
参考文献数
12
被引用文献数
3 2

2000年6月から11月までの福岡県久留米市中央浄化センターの放流水と下水汚泥中の99mTc, 123I, 67Ga, 201Tl, 111Inと131Iの放射能濃度を測定した。あわせて, 処理区域内の四つの医療機関に対して, 患者に投与した放射性医薬品の投与量の調査も実施した。処理場の放流水中には, 投与量の99mTcでは約1.1%, 123Iでは約1.5%, 67Gaでは約4.3%, 201Tlは約0.4%の放射能が検出された。これらの核種の濃度は, 法令で定められた濃度限度の約1/100000に相当した。131Iは, 処理場の汚泥中のみで検出され, 放流水中では検出されなかった。汚泥中の131Iの有効半減期は, 汚泥の連続測定から概算して約5.5日であった。下水処理システムにおける核医学で使用した放射性核種の移行過程を, コンパートメントモデルを用いて分析した。その結果, 下水処理場へ流入している排水中の放射性核種の濃度が, 濃度限度の約1/10000から1/1000程度であると推察された。
著者
中村 千晶 Chiaki Nakamura
雑誌
教育学論究 (ISSN:18846149)
巻号頁・発行日
no.3, pp.53-61, 2011-12-25