著者
服部 健作 今井 益隆 中村 拓郎 堀口 敬
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.3_11-3_20, 2009 (Released:2011-12-22)
参考文献数
26

実環境における冬期の凍結融解,夏期の乾燥あるいは湿潤環境,淡水と塩水環境を想定してJIS A 1148 A法の応用を試みた。これらの実験結果から,環境条件および試験液の違いがコンクリートの耐凍害性に及ぼす影響は顕著であり,凍結融解行程に常温水中環境を設けた場合は相対動弾性係数の低下が顕著となる一方で,常温気中環境を設けた場合では耐凍害性が著しく向上した。また,スケーリング試験であるRILEM CIF/CDF試験の結果と比較することでJIS A 1148 A法によるスケーリング劣化評価の可能性も検討した。本研究の範囲内で,質量減少率が5%以内の供試体においては塩水を用いたJIS A 1148 A法とCDF試験のスケーリング量に良好な関係が認められ,JIS A 1148 A法において,相対動弾性係数の評価とともにスケーリング劣化評価の可能性が認められた。
著者
岸本 朗 井上 雄一 松永 慎次郎 中村 準一
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

現在、精神科臨床においては、複数の抗うつ薬に抵抗してうつ状態が持続するいわゆる難治性うつ病者の存在が問題となっている。難治性うつ病者にみられる臨床的特徴は急性期にみられるような高コルチゾール(COR)血症がしばしば観察されるところにある。そこで本研究は平成7-8年にかけて、難治性うつ病者に対して、COR合成阻害薬であるmetyraponeを投与するとともに、corticotropin-releasing hormone(CRH)を健常者や通常(非難治性)のうつ病者を対照として、難治性うつ病者に対して負荷し、それに対するadrenocorticotropic hormone(ACTH)やcortisol(COR)の反応を観察したものである。その結果、計9名の難治性うつ病者に対して1日量2,000mgまでのmetyraponeを、計16回にわたって使用したところ、双極性障害のみにおいて寛解が観察されたが、大うつ病では寛解が観察されなかった。また高COR血症が消失してもうつ状態の持続をみるものがあった。次に合計68名の対象について、100μgのCRHを静脈内に注射投与して得られたACTHやCOR反応を健常者や各うつ病者群と比較すると、難治性うつ病者においてはCRHに対するACTH反応,COR反応が服薬治療を受けている非難治性うつ病者、あるいは未治療者などにおけるそれらより有意に不良となっていた。以上の研究結果から、難治性うつ病者にみられる高COR血症は状態依存性ではあるが、必ずしもうつ病の原因とはなりえないこと、CRHに対するACTH,COR反応の不良性は長期間続く高COR血症のために下垂体や副腎皮質の反応性が不良となったものと考えられた。またCRH負荷試験は真の難治性うつ病から、不十分な抗うつ薬療法が行われているために、臨床効果が得られないうつ病者(すなわち偽難治性うつ病者)を区別する極めて有用な指標となるものと考えられた。
著者
中村 世名
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.40-51, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
16

競争行動の採用傾向と企業成果の関係を探究してきた競争ダイナミック研究は,優位性が非持続的な市場で企業が生き残っていくためには,積極的な競争行動の採用が必要であると主張してきた。主張を経験的にテストするために,彼らは,積極的な競争行動を行動の量,複雑性,および競争的異質性の3つの次元で捉え,3つの次元と企業成果の因果関係を分析してきたが,その際,因果関係の複雑性,非対称性,および同結果性については考慮してこなかった。本論は,これらの性質を有する因果関係の分析に適した手法であるfsQCAを用いて,積極的な競争行動(製品導入行動)の3つの次元と企業成果(市場シェアの拡大/縮小)の関係を探究した。清涼飲料水産業のデータを用いた分析の結果,市場シェアの拡大に成功した企業に共通する2つの製品導入行動の採用傾向と市場シェアの維持に失敗した企業に共通する2つの製品導入行動の採用傾向がそれぞれ見出された。
著者
山田 直史 中桐 実奈美 山脇 香菜 新實 祐理 伊東 秀之 宗歳 日光里 山崎 勤 中西 徹 中村 宜督
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.11, 2018 (Released:2018-08-30)

【目的】ハーブとして料理やアロマオイルに利用されるローズマリーは,古くから薬草として含有成分の機能が利用されていた。有名な伝承として,手足のしびれを患っているハンガリーの王妃に,修道士らが治療薬としてローズマリーをアルコールに漬け込んだものを勧めたところ、王妃はみるみる回復されたうえ、みるみる若返り、70歳という年齢で20代のポーランド王に求婚されたというものがある。本研究では,ローズマリーの抽出物(溶媒:水またはエタノール)を用いて,抗酸化活性,メラニン生成阻害効果,抗糖化活性およびがん細胞増殖抑制効果について測定した。【方法】ローズマリー葉を水またはエタノールに20分漬け抽出液とした。抗酸化活性はDPPHラジカル捕捉活性法で,メラニン生成阻害効果はドーパとマッシュルーム由来チロシナーゼを用いて,抗糖化活性はグルコースとアルブミンの糖化反応によるAGEs生成量測定で,がん細胞はMCF-7(乳がん細胞株),MDA-231(乳がん細胞株),SW-982(滑膜肉腫株)を用いた。【結果】エタノール抽出物では,すべてで高い機能性が確認された。このような機能性の影響から,伝承のような若返りの言い伝えが残っているのではないかと憶測される。
著者
中町 敦子 中村 恵子 四宮 陽子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.151-158, 2004-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
12
被引用文献数
2

デュラム小麦のセモリナ粉100%使用,標準ゆで時間11分のスパゲティを用いて,ゆで時間を5~20分まで変えて試料を調製し,アルデンテについての官能評価,水分含量・ゆで歩留測定,拡大写真撮影,糊化度測定,破断試験を行い,以下の結果を得た. 1)官能検査の結果,9,10,11分ゆでが「アルデンテである」と評価され,10,11分ゆでが「少し芯がある」,「好ましい」と評価されたので,好ましいアルデンテは10,11分ゆでであった. 2)日本人のアルデンテの10,11分ゆでは,ゆで歩留2.3~2.4,水分含量63~64%に相当し,これらは中心の白い芯がなくなった状態で,糊化度は90%以上であった. イタリア人のアルデンテはゆで歩留2.1~2.2とすると,ゆで時問8~9分,水分含量約60%に相当し,中心にまだら状に白い芯が残り,糊化度は約80%であった. 3)破断曲線を微分すると,ゆで時間の違いによってダブルピーク,肩,シングルピークの3つに分類された. 日本人が好む10,11分ゆではシングルピークの形で,イタリア人が好む8,9分ゆでは肩がある形であった. 破断曲線の微分はスパゲティの芯のゆで状態の指標になった. 4)20分放置により,拡大写真撮影では中心部への水分移動が見られたが,糊化度はゆで直後と差が認められなかった. また破断曲線の肩はシングルピークになり,破断特性値は全体的に低下した.
著者
井福 裕俊 中山 貴文 坂本 将基 齋藤 和也 小澤 雄二 福田 晃平 中村 朱里
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学教育学部紀要 (ISSN:21881871)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.267-272, 2017-12-19

The purpose of the present study was to classify standing posture of the upper grade elementary school children in the second sexual stage into five types according to Kendall's method, and to clarify factors affecting those postures by using seven muscle strength or flexibility tests. A total of 196 children (104 boys, 92 girls) were analyzed. Only 22% of children were a good posture even if the ideal and military postures were combined, whereas a bad posture, i.e., kyphosis-lordosis, flat-back and sway-back postures, accounted for 78%. The deviation of the body's center of gravity was significantly shorter in the good pasture than in the bad posture. When principal component analysis was applied to the data for seven muscular strength or flexibility tests, military posture had high overall evaluation of muscular strength and flexibility and kyphosis-lordosis posture was lower, whereas ideal posture was mainly held by muscular strength and flexibility of lower body and flat-back posture was mainly held by those of upper body. These findings suggest that it is necessary to improve muscle strength and flexibility in order to improve the bad standing posture of upper grade elementary school children.
著者
望月 恒子 諫早 勇一 中村 唯史 岩本 和久 谷古宇 尚 越野 剛 井澗 裕
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

「辺境と異境」という視点からロシア文化の研究を行った。具体的には、第一に、極東、サハリンなどの辺境と中央(モスクワ、ヨーロッパ・ロシア)との文化的相互作用を研究した。第二に、中国・日本やヨーロッパにおける亡命ロシア社会の文化活動について、文学、美術、宗教など多岐にわたる分野で、その特徴を調査研究した。非中心といえる「辺境と異境」を視点とすることによって、ロシア文化を包括的に捉えることができた。
著者
小森 祥太 坪井 崇 鈴木 将史 中村 友彦 勝野 雅央
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001740, (Released:2022-07-22)
参考文献数
15
被引用文献数
2

症例は71歳女性.63歳でパーキンソン病を発症し,66歳からウェアリングオフ,その後ジスキネジアも出現した.3日前からジスキネジアの増悪,前日から発熱あり,高クレアチンキナーゼ血症を認め入院.筋強剛を伴わず覚醒中に持続する重度ジスキネジアを認め,dyskinesia-hyperpyrexia syndrome(DHS)と診断した.全身管理と抗パーキンソン病薬の大幅な減量を行い,2週間で改善した.イストラデフィリンの過量服薬がDHSの誘因と考えられた.DHSは稀ではあるが致死的となり得る合併症であり,早期の診断が求められる.治療として,全身管理とともに抗パーキンソン病薬の減量が重要である.
著者
筒井 優 中俣 恵美 有末 伊織 酒井 菜美 糸乘 卓哉 中村 達志 峯林 由梨佳
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.G-62_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【目的】 超高齢社会を迎える日本では、在宅医療・介護が推進され地域包括ケアシステムの構築や健康日本21(第二次)に代表される疾病・介護予防など予防施策に力が注がれている。先行研究において、機能維持と身体活動量には密接な関係があると指摘されており、身体活動量を把握し、維持・向上を目指すことで、生活習慣病や自立度の低下など将来的な疾病の予防も可能であると考える。現在、身体活動量を評価する指標としてLife space assessment(以下LSA)や歩数計が広く用いられている。本研究では、LSAと腕時計型歩数計を用い身体活動量を評価し、両者のメリット・デメリットを検証するとともに両者を補填できる新たな評価指標の検討を目的とした。 【方法】在宅脳卒中患者12名(男性9名・女性3名、平均年齢68.1±9.9歳、発症後の経過年数15.6±7.5年)を対象に、LSAによる身体活動量の調査に加え、腕時計型測定装置ChargeHR(fitbit社製)を使用し、1週間装着(入浴時除外)を依頼、1日の歩数を調査をした。LSAと歩数の関連性は統計解析ソフトSPSSを用い、Spearmanの順位相関係数による解析を行った。さらに、アンケートを作成し、移動手段・活動内容・歩行時間を個別調査し身体活動量との関係を検討した。 【結果】LSA平均値が59点±29、歩数平均値が6367±3994歩であった。LSAと歩数に関する解析結果では相関係数r=0.618、有意確率p=0.043となり中等度の正の相関が認められた。しかし、LSAが51点と同得点の対象者間でも歩数に約5000歩の差異があるなど、LSAの得点と歩数に大きな差が生じた対象者もいた。LSAと歩数に差がみられた対象者3名をアンケートにて個別分析すると、歩行時間が長くその主な内容は近隣の散歩であった。  【考察】LSAと歩数には相関がみられるが対象者間で差異が生じていることが明らかとなった。その要因として①LSAは歩行補助具を用いると点数が低値となる②LSAが同程度であっても介助者による車での送迎より公共交通機関を利用する事で活動量が高値となるなど移動手段により歩数に差異がでる③日課として近隣を散歩しているなど移動先での活動内容や活動習慣が影響した事が考えられた。これらの事よりLSAは、生活の広がりを把握する事が可能だが、歩数には歩行時間・移動手段・活動内容が影響する為、実際の身体活動量とするには課題がある事が明らかとなった。一方腕時計型歩数計は、詳細な身体活動量の調査をする事が可能であり具体的な数値としてフィードバックが可能である為、意欲向上に繋がるメリットがあったが、アプリとの連動など管理が複雑なうえ機器が高価であり、データ収集には人的・時間的・金銭的に負担が大きく、個別調査には有用だが大規模調査を行うのは困難である。今後大規模調査を行うには、LSAで把握できない身体活動量に影響を及ぼす因子である歩行時間・移動手段・活動内容を聴取し点数化できる評価指標を検討する必要がある。 【倫理的配慮,説明と同意】本人に十分な説明のうえ、研究協力の同意を文書で得た。また、研究に参加しなくても何ら不利益を受けないこと、一旦承諾してもいつでも中断できることを保証した。関西福祉科学大学倫理審査委員会の承認を得た。承認番号【1601】
著者
宮代 一 小林 陽 中村 龍哉 関 志朗 三田 裕一 宇佐美 章
出版者
The Electrochemical Society of Japan
雑誌
Electrochemistry (ISSN:13443542)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.321-325, 2006-04-05 (Released:2012-03-20)
参考文献数
23
被引用文献数
2 4

Olivine structured LiFePO4 cathode is the promising cathode active material for lithium secondary batteries due to its low cost and quite excellent reversibility. On the other hand, lithium polymer secondary batteries (LPBs) have been studied for the purpose of large-scaled batteries (for example, electric power load leveling). In this study, we prepared LPBs using the LiFePO4 cathode. By measuring the charge-discharge properties and electrochemical impedance spectroscopy, basic properties were investigated compared with the LPBs using the 4V-class LiCoO2 cathode.
著者
井奈波 良一 中村 秀喜 古野 利夫 有泉 誠
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
尿酸 (ISSN:03884120)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.165-167, 1984 (Released:2012-11-27)
参考文献数
8

We measured the levels of serum uric acid and serum lipid peroxides generated by oxygen radicals in 19 healthy young males.There were no significant correlations between serum uric acid levels and body weights, nor between serum blood urea nitrogen levels and serum creatinine levels. However, there was a significant correlation between serum uric acid levels and serum lipid peroxides levels. As uric acid is thought to be an important scavenger of singlet oxygen and radicals, these results suggests that serum uric acid competes with the increase of serum lipid peroxides.
著者
松尾 聡 中村 陽祐 松尾 紀子 竹内 裕美
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.57-62, 2021-03-20 (Released:2022-03-20)
参考文献数
12

頭部低位に体位変換(Head-down tilt:HDT)すると、交感神経活動が抑制され一過性に血圧が低下する。この血圧応答は、HDT による体液の頭方移動で圧受容器が賦活された結果生じたと考えられるが、前庭器が関与する可能性がある。そこで頸部前屈により頭位変換し、同様の応答が起こるか麻酔ウサギを用いて調べた。腹臥位、水平位を保ち、45° 頸部を前屈し、頭部を下方に 5 秒かけて頭位変換した。そして 1 分間その姿勢を維持し、動脈圧と腎交感神経の活動を記録した。この頸部前屈刺激によって、交感神経活動が抑制され一過性に動脈圧が低下した。動脈圧低下応答は自律神経節遮断薬であるヘキサメソニウムの投与で消失し、両側前庭障害群で著明に減弱した。これらの結果は、HDT や頸部前屈によって左右を軸に頭部を下方に頭位変換する前庭刺激が、交感神経抑制を介し動脈圧を低下させることを示唆している。
著者
中村 恵子 田上 不二夫
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.114-124, 2018-10-31 (Released:2020-01-05)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究の目的は,うつ症状を伴う不登校生徒に対する別室登校での学校環境調整と,そこで行われた対人関係ゲームの効果の探求である。クライエントは優秀児であったが,小学3年から継続して標的いじめの対象となり,中学2年の夏から不登校に陥り,仮面うつ病と診断された。10か月余にわたる薬物療法と並行して,中学3年8月から別室登校での個別学習支援と1日3時間の対人関係ゲームを行ったところ,急速に症状が改善し,2か月後に寛解した。クライエントは,支援開始後約1か月で症状消失が認められたが,対人関係ゲームの中断で再発し,再開後に症状が消失した。 対人関係ゲームの中断は,その効果を評価する支援チームの教師と,教育活動としての適切性を否定する管理職との意見の不一致によるものであった。しかし,その適切性に対する意見が一致し,ゲームの許可が得られると,症状は消失した。症状の発現は,支援環境を提供する教師への信頼感に影響されていることがうかがわれた。また,対人関係ゲームには,①対人不安の拮抗制止,②仲間や教師との関係形成の促進効果が認められた。別室登校での仲間とのゲーム経験は,学校環境認知をポジティブに再構成し,その適応力を促進した。
著者
西垣 哲太 加藤 英明 鈴木 智代 佐野 加代子 中村 加奈 堀田 信之 佐橋 幸子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.132-139, 2022-07-20 (Released:2022-07-20)
参考文献数
21

背景:抗菌薬適正使用支援(AS)の中核をなすのは前向き監査と臨床へのフィードバックである.しかし,そのための業務時間を確保することは時として困難である.2018年4月診療報酬改定での加算による専従職員の確保がAS業務に与えた影響を解析した.方法:2017年4月から2020年3月までの36カ月の1,094件のAS介入症例を後方視的に分析した.この間,当院の抗菌薬適正使用支援チーム(AST)は専任医師1名と専任薬剤師(勤務時間の50%をASTに従事)による週に3回の活動(期間A),専任薬剤師による平日毎日(期間B),専従薬剤師(同80%)による平日毎日(期間C)でAS活動を行った.それぞれの期間でのASTによる介入件数,臨床医の受け入れ率,対象患者の入院期間,30日死亡率,院内の抗菌薬使用量(DOT/1,000 patient-days)を比較した.結果:期間AからCにおける月あたりのAS介入件数の中央値は,それぞれ18,27および47件であった.AS介入件数は医師の受け入れ率と正の相関があり(R=0.685,p<0.001),広域抗菌薬使用量(R=-0.386,p=0.020)およびcarbapenem系抗菌薬使用量と負の相関があった(R=-0.614,p<0.001).臨床医の受け入れ率は期間Aと比較して期間Bで26.1%(95%信頼区間[CI]18.4,33.7),期間Cで9.7%(95%CI 2.0,17.3)上昇した.期間Aと比較して期間Bでは広域抗菌薬使用量は-16.85(95%CI -27.49,-6.21),carbapenem系抗菌薬使用量は-15.84(95%CI -19.48,-12.21)減少した.結論:AS担当薬剤師の業務時間を確保することによって,AS介入件数が増加し,臨床医の受け入れ率の上昇,抗菌薬使用量の削減につながると考えられる.

1 0 0 0 吉野朝史

著者
中村直勝 著
出版者
星野書店
巻号頁・発行日
1935