著者
舘 卓司 中村 達
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

1)DNAデータと比較形態による双翅類の高次系統解析をおこない,DNAデータでは,ヤドリバエの単系統性およびクロバエとの姉妹群関係を示した.形態研究では,ハエ類成虫の後胸部の比較形態学をおこない,その側板の相同性を再定義した.環縫群とアタマアブ科では腹部との関節構造を持ち,それが共有派生形質であることを示した.2)ブランコヤドリバエ属の寄主利用の変遷は,これまでに記録された寄主情報を分子系統樹上で最適化することによって解明された.3)アワヨトウを使ってヤドリバエ2種の累代飼育実験のベースを構築された.これは将来的にヤドリバエの一齢幼虫の寄主適応能力を調べるためである.
著者
中村 佳敬
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度は、雷嵐に伴って発生するシビア現象と雷放電活動を全世界的に解析し、シビア現象をもたらす積乱雲と雷放電の全球的な分布・傾向を推定するため、全球落雷位置標定装置による全球の発雷分布と気象衛星による全球の降水分布の関係について研究を行った。本研究で使用した全球落雷位置標定装置は、世界50か所以上にVLFセンサを設置しており海洋上を含めた全球の雷放電活動をモニタリングしている米国ワシントン大学のWorld Wide Lightning Location Network (WWLLN)であり、全球の降水分布は米国海洋大気圏局の気象衛星に搭載されているマイクロ放射計Microwave Humidity Sounder (MHS)のデータセットから得られた固体降水量の鉛直積算値であるIce Water Path (IWP)を使用した。米国ワシントン大学に滞在し、これらの観測機器で得られた雷放電活動と固体降水量との関係を比較した結果、海域と陸域とで傾向が異なるものの、発雷頻度とIWPは指数関係にあることが明らかとなった。この発雷-降水関係を利用し、発雷観測を基とする衛星降水未観測域における降水量推定の可能性を示した。得られた雷放電と降水量の関係は光学観測に基づく推定結果と異なる傾向を示している。これは、中和電荷量等雷放電の規模が今まで考慮されていなかったためであると考えられ、今後の課題として陸域と海域、光学観測と電磁波観測で得られた関係性の違いを説明するために、雷撃のエネルギー量の観点からの解析が挙げられる。モデル構築の面では、本年度は気象庁非静力学モデルに対して、広帯域レーダシステムが種子島で観測した発雷を伴う雷嵐について電荷構造を推定した。この際、放電過程を導入した結果、一つの雷嵐の盛衰過程での電荷構造を再現した。雲放電が再現された一方で,本事例ついては対地放電が再現されなかったため、今後の課題としては落雷位置標定装置による対地放電の観測結果との比較評価が挙げられる。
著者
中村 輝石
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

到来方向に感度を持つ暗黒物質探索実験において、新しい出器NEWAGE-0.3b'開発・生能評価を行ったのちに神岡地下で探索実験を行った。この検出器は、2010年に行われた前回の測定時に比べると次のような改良が施されている。①角度分解能と標的質量から最適化されたドリフト長40㎝とμ-prcを完全に覆うことができるGEMを用いて2倍の体積がある。②低圧ガスを用いることでより短い飛跡に関しての角度分解能を定義できることにより、エネルギー閾値が100keVから50keVに低減している。③新しいデータ取得システムの導入により、飛跡の形状が持つエネルギー損失の情報を用いてガンマ線バックグラウンド事象を効果的に除去できる。④冷却活性炭を用いたガス循環システムと検出器内のドリフトケージを低バックグラウンド素材であるPEEKに置き換えることでバックグラウンド源であるラドンの量を1/50以下に低下できる。2013年の7月から11月にかけて0.327㎏・daysの測定を行い、その間安定性を確認するために定期的にエネルギー校正や検出効率の測定を行った。測定の結果、200GeV/c2の質量の暗黒物質に対して577pbのSD散乱断面積の上限を得た。これは、前回測定時より約10倍感度が高く、方向に感度を持つ実験における世界最高感度を更新した。また、Geant4のシミュレーションを用いて残存バックグラウンド事象について詳細な調査を行い、画像検出器として用いているμ-PICの絶縁体部に含まれる放射性不純物の寄与が大きいことを突き止めた。今後、低バックグラウンドμ-PICの開発が進むとさらに10倍の感度向上が見込まれ、DAMAの主張する領域の探索が可能となる見通しを作った。
著者
福嶋 祐介 中村 由行 早川 典生
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本研究の目的は下層密度流先端部の流動特性を乱流モデルにより解析し明らかにしようとすることである。下層密度流先端部の乱流構造、連行機構を明らかにするため、室内実験を行った。実験は淡水で満たされた水槽内に塩水を流入させて、下層密度流を形成させる。測定は密度流先端部に注目して行い、導電率計を用いて塩分濃度を測定した。また、流速の測定には水素気泡法を用いた。水路床勾配を変化させてこのような測定を行い、先端部の諸特性と水路床勾配、流入密度フラックスとの関係を調べた。このような室内実験により、代表的な密度フロントの一つである下層密度流先端部の流速分布特性と密度分布特性の変化を水理条件の変化と対応させて把握した。次に代表的な二方程式乱流モデルであるkーε乱流モデルを用いて下層密度流の非定常数値解析手法の開発を行った。数値解析手法としては、差分法、有限要素法等があるが、本研究ではこれらの手法に比べて数値的に安定であるとされ有限体積法を用い、基礎方程式である微分方程式を離散化する。数値解析はかなり複雑であり、その妥当性を検討するため、予備計算を行った。対象としたのは、下層密度流定常部である。この計算結果を下層密度流定常部の実験結果、及びkーε乱流モデルを用いた定常部の相似解と比較し、本解析手法の妥当性を確認した。この解析手法により、下層密度流先端部の数値解析を行い、その流動特性を調べた。計算結果として得られるものに流速分布と密度分布、先端部の形状が得られ、これらを実験値と比較し、解析結果が下層密度流先端部の流動特性をうまく説明できることがわかった。
著者
高橋大斗 中村嘉隆 高橋修
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.16, pp.1-6, 2013-11-07

近年のモバイル端末の高性能化に伴い,モバイル端末が扱うファイルサイズは肥大化している.ファイルサイズの肥大化への対応のため,アドホック通信を用いたモバイル端末間のファイル転送方式は今後さらなる改良が求められる.また,モバイル端末間でのファイル転送の際には,中継役を不要とするアドホック通信が適していると考えられる.本研究ではアドホック通信におけるファイル転送効率化の手段として,マルチホーミングと TCP マルチコネクションに焦点を当て,モバイル端末間における効率的なファイル転送方式を提案・実装した.本提案方式の有効性を示すべく,無線通信環境の変化時におけるスループットの変動などにも注目し,その評価を行った.
著者
周 杰 高橋 聖 中村 英夫
出版者
日本信頼性学会
雑誌
信頼性シンポジウム発表報文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.24, pp.67-70, 2011-11-07

システムの高信頼性・高性能の要求を応えるため、マイクロカーネルを用いるマルチコアシステムの構築について検討する。複数のプロセッサを搭載したシステムにおいて、アーキテクチャの性能向上率への影響を考慮してオペレーティングシステム機能を分散することでシステムの高信頼性を実現する。この思想のもとに、マイクロカーネル技術を用いてマルチコアシステムモデルの構築とその実現手段について報告する。
著者
佐伯 裕治 清水 正明 白沢 智輝 中村 豪 高木 将通 Balazs Gerofi 思 敏 石川 裕 堀 敦史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.15, pp.1-7, 2013-04-18

メニーコアプロセッサ向けの OS として,Linux カーネルと軽量カーネルが連携して管理するヘテロジニアス構成の OS を開発している.軽量カーネル上においても Linux カーネルのシステムコールを提供するために,軽量カーネルで実現されない Linux システムコールの処理は Linux カーネルに委譲する.引数がデータ領域を示すシステムコールの場合,転送が必要なデータの構造は API 仕様に依存するため,300 種類以上の Linux 互換システムコールに個別に対応したデータ転送を実装する必要がある.本稿では,システムコール処理対象となるデータを同一仮想アドレスへのメモリマップを行う方式により,軽量カーネルに個々のシステムコール処理を実装することなく Linux カーネルに委譲する機構と,その基本評価結果について報告する.We have been developing a heterogeneous OS composed of Linux and lightweight kernels for manycore processor. In order to provide all Linux system calls in the lightweight kernel, those primitives which are not provided by the lightweight kernel are delegated to the Linux kernel. Each system call differs in the number of arguments and argument types, and thus the code transferring arguments and results is implemented in each delegating system call. It is impractical to implement all Linux APIs, i.e., more than 300 system calls. Therefore, we developed a delegation mechanism of system calls without individual implementation to pass the data between the lightweight kernel and Linux using a memory mapping technique. In this technique, a user-level virtual address space in the lightweight kernel is mapped to the same position in a Linux process. We report the result of basic evaluation of system calls on lightweight kernel developed on Intel(R) Xeon PhiTM Coprocessor.
著者
和田基 塚本潤 小林弘明 高橋昭宏 坂本龍一 佐藤未来子 天野英晴 近藤正彰 中村宏 並木美太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.5, pp.1-8, 2013-04-18

細粒度 PG (Power Gating) 制御を行うプロセッサでは,温度やキャッシュのヒット率などの動的なスリープ要因を適切に反映した命令列を実行することが重要である.本発表では,JIT コンパイラの生成するコードに対して,動的要因として実行時のチップ温度を考慮した細粒度 PG 制御を最適化する方式を提案する.筆者らが研究している Geyser アーキテクチャの細粒度 PG 方式を QEMU ベースである AndroidEmulator によってシミュレートした評価実験において,PG 制御を行わない場合と比較し,VM と JIT コンパイラおよび生成されたコードを実行するプロセス全体で平均 6%,最大 22% でリーク電力を削減することができた。
著者
甲村 圭司 中村 佳朗
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集B編 (ISSN:18848346)
巻号頁・発行日
vol.79, no.804, pp.1489-1499, 2013 (Released:2013-08-25)
参考文献数
10

Aerodynamic noise with discrete frequencies is generated in an unexpected way from a slit between a flat plate, which is placed in parallel to the main flow, and a wedge that is placed normal to the flow. To study this phenomenon, we examined the discrete frequency noise generated by a subsonic air jet flow from a slit. It was found that the slit height and the plate length have considerable effects on the noise generation. In addition, the discrete frequency noise was generated only when the values of these parameters are within a limited range. Furthermore, it was found that the noise frequency is proportional to the jet velocity and is inversely proportional to the plate length. Finally, it was made clear from the present study that the interaction of the vortex, which is generated from the shear layer due to a wedge, with the wake of a flat plate is a major cause for the discrete noise due to a slit.
著者
澤田 純男 古川 愛子 中村 晋 鍬田 泰子 後藤 浩之
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

固体である地盤を伝播する地震波は重力の作用を無視するが,流体に近い性質を持つと考えられる液状化地盤では重力の作用を無視することができるとは限らない.重力の作用を考慮した数値解析手法によって,液状化地盤を伝播する波をシミュレートしたところ,せん断剛性の低下に対応して表面波が流体中の重力波に似た性質をもつようになること,またスロッシング現象が顕著になることを明らかにした.
著者
中村 菜々子 井澤 修平 山田 クリス 孝介 亀山 倫華 田上 明日香
出版者
兵庫教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本人労働者4609名を対象とした横断的調査,3235名を対象とした縦断的調査,400名を対象とした実験を実施して,ストレスの過小評価という認知的変数が精神的健康やメンタルヘルス知識,メンタルヘルス情報の評価に与える影響を検討した。研究の結果,(1)ストレスの過小評価の傾向は,女性より男性でより強かった,(2)過小評価傾向の強い男性は,メンタルヘルスリテラシーが低かった,(3)過小評価傾向は,1年後のメンタルヘルス不調を有意に予測した,(4)過小評価傾向とメンタルヘルス情報の評価との関連は明確ではなかった。労働者のストレス対策では認知的変数も考慮する必要性が示唆された。
著者
阿久沢 正夫 高橋 隆之 中村 康男 竹之下 浩和 原 由香 森園 充 坂本 紘 岡本 嘉六 出口 栄三郎
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.313-317, 1989
被引用文献数
6 1

鹿児島県内を管轄する4ヵ所の畜犬管理センターに集められた犬について, レプトスピラ (8種類の血清型<I>autumnalis, hebdomadis, australis, icterohaemorrhagiae, canicola, pyrogenes, hardjo, pomona</I>) に対する抗体調査を1984年5月から1987年3月に行った. 性別による陽性率は雄26.2%, 雌18.8%で雄の方が高く, また推定年齢別の比較では, 加齢とともに陽性率は増加する傾向を示した. 県全体では, 806頭中190頭 (23.5%) が1種類以上の血清型に対して陽性であった. 地域別では, 加世田が204頭中57頭 (27.9%) で最も陽性率が高く, ついで宮之城が197頭中53頭 (26.9%), 国分は198頭中44頭 (22.2%), 鹿児島市が最も低く207頭中36頭 (17.4%) であった. 各地域の月別の陽性率は, 季節に関連する変動は認められなかった. 県内4ヵ所での各血清型抗体の検出数および検出率で, 各地域とも最も多いのは<I>icterohaemorrhagiae</I>であった. 次に多く検出されたのは鹿児島市と国分では<I>canicola</I>で, 加世田と宮之城では<I>hebdomadis</I>であった. 今回の調査において, 1972年から1979年の南九州における調査では検出されなかった<I>australis, pyrogenes, pomona</I>および<I>hardjo</I>に対する陽性反応が認められた. 検査した犬はすべて臨床的には健常であり, 同時に行った血液検査でも, BUNの値が正常範囲内ではあるが抗体陽性の犬は陰性の犬よりも有意に高い値 (P<0.05) を示したにすぎなかった.
著者
中村 宏 天野 英晴 宇佐美 公良 並木 美太郎 今井 雅 近藤 正章
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.55, pp.79-84, 2007-06-01
参考文献数
9
被引用文献数
17

我々は、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(CRESTタイプ)の「情報システムの超低消費電力化を目指した技術革新と統合化技術」領域において、平成18年度より「革新的電源制御による次世代超低電力高性能システム LSI の研究」の研究課題を実施している。本プロジェクトは、回路実装、アーキテクチャ、システムソフトウェアの各階層が真に連携・協調し、革新的な電源制御を実現することで高性能システム LSI の消費電力を格段に低下させることを目指している。本稿では、本プロジェクトの構想と目標達成への戦略について述べると共に、現在実施している各研究項目の一部について概要を述べる。We have started a research project of "Innovative Power Control for Ultra Low-Power and High-Performance System LSIs" since 2006 supported by Japan Science and Technology Agency as a CREST research program. The objective of this project is drastic power reduction of high-performance system LSIs. We are planning to achieve this goal by innovative power control realized by tight cooperation and cooptimization of various design levels including circuit, architecture, and system software. In this paper, we present the plan, the strategy, and the current status of our project.
著者
中村 逸郎
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

現代ロシアでは、メドヴェージェフ大統領とプーチン首相による双頭政治体制が強化されています。政治権力の集中にともない、社会では市民団体などの非営利団体の活動が衰退しているように考えられています。しかし今回の調査では、中央集権化がすすむ一方で、人権擁護団体や宗教組織が政治権力と真っ向から対峙しなくても、独自の運動を展開している実態が浮き彫りになりました。