著者
久保田 敦 横野 光 高村 大也 奥村 学
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

本研究ではジャンル毎の特徴を用いた日本語テキストの文書校正手法を提案する。 提案手法では,既存手法で使用される文脈情報の特徴以外に,内容語に情報を付加 することで難易度や文体を考慮した校正を行う。 その結果,文脈情報のみでは解決できない訓練データに未出現の語に対する問題等に対して,付加した情報を用いて解決できることを示す。
著者
久保 陽太郎 渡部 晋治 中村 篤 小林 哲則
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.8, pp.1-6, 2010-02-05

識別学習は,デコーダの出力する認識仮説と比較して正解ラベルの尤度を相対的に高めることで識別に特化したモデルを得るための手法であるが,経験的に過学習しやすいことが知られている.近年,音響モデルの識別学習において過学習を軽減するため,最小相対エントロピー識別が音響モデルの識別学習に導入されてきた.この手法ではパラメタ推定の不確実性をパラメタ分布によって表現することで適切に取り扱うことを可能としており過学習に強いと考えられるが,従来の実現法では大量の認識仮説,および大量のトレーニングデータを取り扱うには膨大な量の計算を単一のコンピュータで実行しなければならなかった.そこで,本研究では,ラティス型認識仮説表現を導入することで認識仮説の数に対する計算効率を,また勾配法に基づく並列化可能な最適化法を導入することでトレーニングデータの数に対する並列計算効率を向上させた.提案法を用いることで,最小相対エントロピー識別学習に必要なステップのほぼ全てがグリッドコンピュータのような並列計算環境で実現可能になり,また,従来の N-best に基づく認識仮説表現では表現しきれないような膨大な数の認識仮説に対する最適化が行なえるようになった.In order to improve the performance of automatic speech recognition, discriminative training methods are introduced for training processes of acoustic models in speech recognizers. Recently, minimum relative entropy discrimination (MRED) training of acoustic models is introduced in order to prevent overfitting problems in discriminative training methods by representing parameters as random variables. Despite of these advantages, the conventional implementation of MRED lacks scalability to the amount of training dataset and the number of the hypothesis label sequences obtained from decoders. In this study, we attempt to improve scalability of MRED training. The lattice-based representations of the hypothesis label sequences are introduced in order to improve scalability due to the number of the hypothesis label sequences. Further, the gradient-based optimization method is introduced in order to ensure parallelism in the MRED training method. By incorpolating proposed methods, it is confirmed that the MRED training procedure can now be performed in parallel computing environments such as grid computers. Furthremore, the large number of the hypothesis label sequences can be handled in the MRED by using hypothesis lattices obtained from decoders.
著者
大野 友和 久保木 和義 平田 さくら
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.13-19, 2001-08

明治大学図書館は、国際協力事業の一環として、韓国にある私立大学の一研究所の図書館づくりを支援した。翰林(ハンリン)大学校日本学研究所(池明観所長)日本語図書約3万冊を、わが国の国立情報学研究所目録所在情報サービス(NACSIS−CAT)を利用して整理するためのシステム構築、目録作成指導、図書館づくり指導等について、支援活動を行ってきた。本稿では、それら指導・支援に対する図書館としての考え方、システム化過程、図書館整理システムの概要、図書の整理方針の策定と整理方法及びNACSIS−CAT入力の為の要員要請過程などについて報告する。
著者
福島 勲 久保 閲男
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.513-536, 1997-07

日本南極観測隊の通信部門では, 内陸調査旅行の際にブリザードなどの影響により深刻な雪雑音通信障害に遭遇してきた。その主たる原因は, バーチカルホイップアンテナの尖端で生じるコロナ放電と考えられてきた。本論では, 従前の各観測隊が経験した南極における雪雑音による通信障害の実例を調べ, その雑音発生のメカニズムと雪雑音障害の軽減方法について検討し, 雪雑音の影響が少ない調査旅行隊用のアンテナとして, 雪上車に取り付け可能な小型・高効率のトランスミッションラインアンテナの開発結果を述べる。
著者
大久保 英子 岩谷 和子
出版者
島根県立大学短期大学部
雑誌
紀要 (ISSN:02889226)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.40-49, 1965-01-30

1.体重,身長を昭和35年の厚生省値に基づいて,斉藤,船川の分類をすると,一般に「上」が多く,「下」が少なく,平均値でも上位にあり,殊に体重が著しかった.しかし,地域別に比べると,新市内が男児,女児ともに低位であった.2.生下時体重では未熟児9.2%,成熟児74.7%,過熟児1.4%であった.3.K. I.は船川値より新市内の4カ月以内に低位を示し,更に新市内の女児に低位の月令が多かった.栄養法別では優良児は人工栄養に,やせ,栄養失調症は母乳栄養に多い傾向があった.地域別にみると優良児は旧市内に,やせ,栄養失調症は新市内に多い傾向があり,そのうち,母乳栄養法での差は僅かであるが,混合栄養,人工栄養法においての優劣は著しかった.4.栄養法の割合いは,母乳栄養33.3%,混合栄養27.5%,人工栄養39.0%であって,地域別ではそれぞれ,旧市内が,33.1%,24.5%,42.45%であり,新市内では34.0%,36.1%,29.9%であった.5.離乳の開始は6カ月までに63.3%が開始しており,最も多いのは5カ月で,平均5カ月21日であった.栄養法別では混合栄養が最も早く次いで母乳栄養で,人工栄養が僅かに遅い傾向がみられた.なお10カ月以後に開始したものには旧市内1.3%,新市内2.6%あった.6.離乳の完了は12カ月〜16カ月のもので51.8%であり,人工栄養,旧市内に多く,8〜9カ月で完了しているものも旧市内に9例あった.7.歯牙の発生の最高月令は7カ月で,6カ月までに38%の乳児に生歯が認められた.なお,一年以後に萠出をしたものが母乳栄養児に1名あった.8.栄養法別の歯牙発生では6カ月までに萠出した乳児は母乳栄養32.1%,混合栄養33.4%,人工栄養45.7%であり,月令別の最高はそれぞれ母乳栄養と混合栄養7カ月,人工栄養6カ月で,人工栄養児に早く萠出する傾向があった.赤ちゃんコンテストには,比較的めぐまれた保育を受け,発育のよい乳児が参加することが多く,島根でも保育環境のよいと思われる集団において,旧市内と新市内の発育と栄養についての実態を把握することができた.その結果は前述の如く身体発育では身長よりも体重の優れた乳児が多く,栄養も良好で,前報における幼児の場合と反対の傾向を示し,乳児の保育栄養方法等にはかなりの努力が伺われ,殊に人工栄養児がよくなっているものの,地域的にはなお差が著しく,改善の強化が望まれる.この調査にあたり御指導頂きました烏大医学部小児科教室,木村隆夫博士,また資料の作成に御協力頂いた松江市公衆衛生課,岡坂あさの,加村〓子の両保健婦長並びに本学生活専攻尾添和子,黒崎悦子,山崎佑子の諸嬢に対し感謝いたします.
著者
渡邊 啓貴 滝田 賢治 羽場 久美子 田中 孝彦 小久保 康之 森井 裕一
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

平成19年度は、研究代表者・分担者はそれぞれ3年計画の趣旨に沿って3年目の計画を無事に終了した。研究代表者、渡邊啓貴は、フランスに渡航し、フランスの立場について、パリ政治学院、フランス国際問題研究所、在フランス日本大使館を訪問、意見交換・情報収集を行った。また、韓国では梨花女子大学、延世大学、マレーシアではマレーシア大学、戦略研究所、経済研究センターをそれぞれ訪問し、意見交換・情報収集を行った。研究分担者、羽場久美子は、ロシア(ウラジオストク、アカデミー歴史学研究所)、ドイツ(ベルリン、フンボルト大学)、同小久保康之はベルギー、同滝田賢治は、米国(ワシントンDC)、同森井裕一は、ドイツを訪問し、研究課題に即したネットワーク形成と情報収集を行った。平成19年10月下旬には、パスカル・ペリノー教授(パリ政治学院・フランス政治研究所所長)、12月初旬には、ジャン・ボベロ教授(Ecole Pratique des hautes etudes)を招聘し、シンポジウムや研究会合を開催した。(10月23日「サルコジ政権の誕生と行方」(於日本財団)、12月11日科研メンバーとの会合(日仏会館))いずれも盛会で、フロアーなどからも多くの質問が出され、積極的な議論が行われた。以上のように研究計画第3年度としては、予定通りの実り大きな成果を上げることが出来、最終年度を締めくくることが出来たと確信している。
著者
ウィワッタナカンタン ユパナ 浅子 和美 北村 行伸 小田切 宏之 岡室 博之 伊藤 秀史 福田 慎一 小幡 績 寺西 重郎 伊藤 秀史 福田 慎一 小幡 績 久保 克行
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究プロジェクトは、東アジアにおける企業の大株主のさまざまな役割について明らかにした。企業を支配している大株主は、ファミリー、銀行、政府であり、モニタリング、企業・グループの組織構造、所有・経営権の構造、政界進出等の大株主の行動が、企業パフォーマンスに与える影響を動学的に分析した。これらの企業レベルの行動は、経済政策、経済危機といったマクロ経済レベルにまで影響を与えていることがわかった。
著者
仁平 恒夫 金岡 正樹 久保田 哲史 森嶋 輝也
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

水稲、畑作露地野菜、酪農の企業的農業経営体を、事業構造と展開過程、生産量等に基づき類型化し、費用・収益構造等の分析により競争優位の源泉を摘出しビジネスモデルとしてまとめた。また、農業生産法人のバリュー・チェーン構築に重要なブランド戦略を明らかにした。さらに、酪農のTMRセンターを対象にコスト低減のための飼料作物立地配置モデルや、企業的経営体の基幹従業員のモチベーション向上のため職務満足度が判断できる簡易手法を開発した。
著者
平塚 良子 植田 寿之 藤田 博仁 久保 美紀 戸塚 法子 牧 洋子
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究の目的は、福祉サービス利用者の生活事象を環境との関係で捉えるために多次元的・全体的・総合的に把握するエコマップ(eco-map)の評価尺度の開発を行い、利用者の生活支援に資することにある。加えて、人間と環境との関係理論の構築をも遠望している。研究方法は開発した評価尺度(評価モデル)をソーシャルワーカーに実験的に適用してもらい、評価尺度の妥当性、客観性、信頼性等々を図りつつ安定した評価モデルを導き出すというものである。最終年にあたる今年度の成果の特徴は、下記の通りである。1)評価モデルの最終的な精査を行い、最終版の評価モデルを導き出した。方式は初年度のデジタル型の方式を採った。物理的環境概念をより反映させ、評価の妥当性を高めるために評価尺度には「非該当」を導入した。2)評価において正確さを高めるために、(1)「エコマップ評価簡易版」と(2)評価項目、評価基準等の詳細な説明を加えた「評価ブックレット」を作成した。3)最終版評価モデルを、2)を活用しつつソーシャルワーカー(19名)が実践事例に適用するようにした。評価モデルとしては、おおむね安定性を保持することができ、本研究の評価尺度開発はおおむね目的が達成できた。4)適用結果の分析デザインにはデジタルやアナログ的発想を採り入れた。(1)評価項目と環境とをクロスさせつつ分析するアナログ方法、(2)評価項目4群に分けて図式作成し相関させつつ評価点から分析するアナログとデジタルの混合的方法、(3)試みとして実践の1事例を統計的に分析するデジタル的方法。分析手法の開発は今後の課題。5)人間と環境との関係についての全体的な特性が抽出できた。今後より詳細な分析を図りたい。6)本研究は、評価尺度開発が中心となったが、今後、集積した事例数を総合的に分析する手法の開発を手がけ、人間と環境との関係理論の構築を図りたい。(以上の詳細については研究成果報告書に記載)
著者
久保 勇
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

当該助成研究開始前より整理済の延慶本『平家物語』における音楽記事一覧から、他の諸異本に共有されない独自な傾向を抽出、「読み本系」と称され、「読まれる」享受を前提とする該本本文に口頭(音声)伝達を意識されていると推される「音声字解(注釈)傾向」を指摘(「延慶本『平家物語』と<音楽>-巻六の音楽記事から叙述方法をさぐる-」2005・3)した。現存最古と見なされる「読み本系」の該本が如上のように、音声理解を前提とする本文を有している可能性があることから、「語り本」以前「読み本系」先行成立という通説に、未だ検討の余地が残されているという問題提起をおこなった。当該助成研究開始前より着目していた『発心集』等、中世期の文芸思潮の中、「音楽」を考える上で重要な「数寄」の問題に着手、「数寄者」と称される人物の心象をめぐって、延慶本は「心」が「澄まされた」状態にあることを一つの価値として表象している点に注目、検証作業をおこなっている。(同上論文)中世以降の古典文学世界において、「延喜聖代」は理想的帝政期を表し、『平家物語』でも「秘事」として別巻に同章段名を掲げる諸本があるが、延慶本においては清盛死去関連記事群内に「延喜帝堕地獄説」が展開しており、一般に音楽をはじめとする理想的文化形象期とされる当該帝政期に、独自な価値認識が指摘できる。そこには、「高倉院≒堀河院」といった、延慶本の物語世界における理想帝政期の認識が基盤となっている傾向がうかがえる。具体的には巻六冒頭などに潜在する「礼楽思想」との関連において考究すべき問題が残されている。現状では、延慶本の成立と直接繋がらないが、『平家物語』と盲僧琵琶との関連について、当該助成によって調査をおこなっている。九州、筑前・薩摩に本拠を置く盲僧琵琶は、何れも天台宗の管轄となっており、自身の『平家物語』の天台圏成立説と関わりを有する。調査によって、島津久基氏「筑紫路の平曲」等の研究で注目された筑前地域の再検討の必要性が明かとなった。近時看過されている感のある、筑後一宮・高良大社伝来の覚一本の存在、筑前盲僧琵琶拠点・成就院の存在等々、当該助成期間内には成果を発表し得なかったが、追跡調査を進め、論文・HP等で順次公表していく予定である。
著者
久保 雅義 津金 正典 笹 健児 榊原 繁樹
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.313-322, 1997
参考文献数
8
被引用文献数
3

A lot of studies about mooring ship motions have done in recent decades, but they are focused on cargo handling criteria. At some ports in open sea, mooring ships move so hard and sometimes mooring lines or fenders are broken. So, when we think about mooring criteria, we have to consider a lot of parameters. In this paper, we study about these parameters and we pick up some cases of mooring accidents at the harbor face to Pacific Ocean. And we find out the results as follows : (1) We can't argue about the mooring criteria correctly if we focus only on ship motions. (2) We can clear up the relation between cargo handling criteria and the mooring criteria. (3) Mooring accidents tend to take place in winter season than other seasons in these cases. (4) In most of those accident cases, mooring ships should shift to offshore earlier stage. (5) The required time length when ships shift to offshore depends on the ship type, the cargo handling way, etc. (6) The difficulty of wave prediction makes so hard to make out mooring criteria. (7) We have to consider long period wave in case of considering the mooring criteria. (8) There are trade off relations between the safety of mooring ship and the berth efficiency. (9) It is necessary to grasp the effect of moored ship motions by wave and wind correctly, if we want to avoid mooring accidents.
著者
吉良 芳恵 井川 克彦 村井 早苗 久保田 文次 斎藤 聖二 櫻井 良樹 久保田 博子
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

1、宇都宮恭三氏から拝借した宇都宮太郎(陸軍大将)の資料(日記15冊と書類約1700点、書簡約4600通、写真約300点等)をもとに、宇都宮太郎関係資料研究会を立ち上げ、平成15年度から1点毎の資料整理を行って、書類と書簡の目録・データベースを作成した。2、全日記の解読・翻刻(入力作業)を行い、書類や書簡と照合しながらその内容の分析を行った。その過程で、中国での情報収集活動をもとに、宇都宮が陸軍のアジア政策を立案し、中国革命への種々の関与・工作を行ったこと、諜報活動資金を陸軍機密費だけでなく岩崎久弥からも得ていたこと、二個師団増設問題で妥協工作を行ったことなど、新しい歴史事実が明らかとなった。中でも、朝鮮軍司令官時代の3・1独立運動時の対応(堤岩里事件等)や、「武断政治」的統治策を批判して「文化政治」的懐柔工作を行ったことなどは、従来知られていなかった事実でもあり、日本の植民地研究に大きく寄与することになるだろう。また陸軍中央の人事についても具体的背景が判明したことは収穫であった。3、書簡の一部(特に上原勇作書簡)の解読・翻刻を行い、「長州閥」と「反長州閥」との闘いの実態を明らかにすることができた。4、日露戦争期における英国公使館付武官としての役目や行動を、英国調査や書類の解読で明らかにすることができた。特に、英国の新聞に英国陸軍軍制改革案を投稿したことや、明石工作などの対露情報工作資金の実態が判明したことは、今後の日露戦争研究に寄与することになるだろう。5、佐賀県での調査により、宇都宮太郎の父の切腹事件が幕末維新期の佐賀藩の藩政改革に関係していることを確認できた。6、書類中の任命関係資料により、人物辞典等の誤りを訂正することができた。7、平成17年2月26日に日本女子大学で国際シンポジウム「宇都宮太郎関係資料から見た近代日本と東アジア」を開催し、招聘した英国や中国の研究者等と共に、宇都宮太郎関係資料の歴史的価値を、そのアジア認識を含めて、広く学会に紹介した。8、岩波書店から2007年4、7、11月に3巻本として宇都宮太郎日記を刊行することになった。
著者
伊藤 敬雄 大久保 善朗 須原 哲也
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本邦における自殺者は3万人を10年連続で超え、自殺率は先進国の中においても極めて高し状態で推移している。本研究において、睡眠の量的不足と不規則な睡眠習慣が、直接的もしくは間接的に自殺企図・自殺衝動のリスクを増大させる可能性があると報告した。まず、われわれは認知症高齢者での自殺研究で、画像解析から血管性認知症では基底核の多発性梗塞、アルツハイマー型認知症では左側前頭葉の萎縮が、自殺衝動性との関連性を伺わせる報告をした。次に、われわれは、救命救急センターに搬送された自殺企図者を対象に再自殺率の調査を行った。自殺企図の背景には、その時代を反映した心理的、環境的、社会的、文化的精神病理と家族内関係の問題が複雑に絡み合って存在している。自殺の背景因子把握と精神症状評価をしたうえで、長期に渡るケースマネジメントを行うことが自殺企図者に対して必要であることを報告した。また、気分障害圏、統合失調症圏、そして中高年者の自殺企図の特徴として、致死性の高い自殺企図手段を選択する場合が他群に比して多く認められた。うつ病と中高齢者における自殺企図と衝動性の関連において、脳器質的要因、とくに左側前側頭葉の萎縮と、そのほか、気分障害の既往歴、睡眠障害の既往、そしてアルコール乱用・依存者に強い関連性を指摘した。しかし、当初考えられていたセロトニン系の問題を検討したが、本年度の研究ではそれ以上の生物学的関連を見出すことは出来なかった。自殺率が一向に減少しない本邦において、今後、心理社会学的な自殺予防の取り組みとともに、中高齢者の症例数を重ねることで、自殺企図・自殺衝動と生物学的要因の関連について解明を図って行く必要性がある。