著者
山下 和彦 野本 洋平 梅沢 淳 高野 千尋 太田 裕治 井野 秀一 伊福部 達 小山 裕徳 川澄 正史
出版者
社団法人日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 : 日本エム・イー学会誌 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.121-128, 2007-03-10
被引用文献数
2

The aim of this study was to evaluate the postural control ability using stabilogram-diffusion analysis (SDA). Any parameters of SDA were compared with several parameters of body sway derived from recordings of the center of pressure (COP) with the aid of a static force platform. The subjects were 38 elderly healthy volunteers. They quietly stood on a static force plat form with open and closing eyes. As the results, there was a significant correlation between the diffusion constant derived from the parameters of SDA and the parameters of COP with eyes open and closed. The correlation was found to be greater in the closing eye condition than that in the open eye condition. The correlations between diffusion coefficients and the range and mean of anterior-posterior velocity were greater than the correlations between the diffusion coefficients and the range and mean of the lateral velocity. Thus, the muscle of the tibialis anterior and the planter muscles was suggested.
著者
三浦 貴大 藪 謙一郎 荻野 亮吾 堤 可奈子 檜山 敦 廣瀬 通孝 伊福部 達
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.21-29, 2017-01-15

高齢者や障がい者の円滑な移動のために,さまざまな場所のバリアフリー化が進展している.しかし,当事者が事前に一連の経路の状況を知るには,さまざまな団体が提供した情報を総合する必要がある.一方で,アクセシビリティ状況を発信するボランティア団体もあるが,継続的なアセスメントには労力を要するため情報更新が滞りがちである.そこで本研究の目的を,実地でのアクセシビリティ状況を共有するためのシステム開発と,ボランティア支援の効率化スキームの提案とした.我々が開発したシステムでは,各地点のバリアフリー状況を地図上に概要マーカとして表示するほか,その地点の画像,関連テキストなどを記録できる.また,投稿された情報をボランティアが簡易的に整理できる.本システムの支援効果を確認するために,2つのボランティアグループにて本システムを評価した.この結果,本システムは実地でのアクセシビリティ状況の収集・整理に効果的だと分かった.また,ボランティアの経験や知識,参加意識の高さに応じて支援方策を変える必要性を示した.
著者
伊福部 達
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.325-328, 2001-05-13
参考文献数
5
被引用文献数
2

21世紀に到来する超高齢社会と高度情報社会においては高齢難聴者が急増することは必死であり,それをどう解決するかが社会的にも大きな問題になっている.特に老人性難聴と呼ばれる高齢難聴者は言葉は聞こえても,その意味が理解しにくくなるという文章理解能力に支障を来す.その原因として言葉を処理する速度が低下したり,イントネーションやアクセントなどの韻律を処理する能力が低下するという仮説がある.ここでは,老人性難聴者の補聴手段として注目されている音声変換方式を例に取り,その効果や将来の課題について述べる.
著者
井口 雅一 池井 寧 佐藤 誠 伊福部 達 廣瀬 通孝 舘 すすむ
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究の目的は、平成7年度に発足する重点領域研究「人工現実感に関する基礎的研究」の計画案を策定することである。本重点領域には、人間と仮想世界の関わり方に応じて4つの研究分野を設けている。これらの分野ごとに研究分担者の会合が開催され研究項目の設定や具体的な研究の進め方について議論が行われた。本重点領域では、各分野において専門的議論を進展させると同時に横断的視点を総合することで、基礎学問としての体系化を図ることを目指している。このため現在までに4つの分野の研究班の代表者による打ち合わせ会を開催し、各分野の分担と連携に関する意見交換を行なった。ここでは本重点領域が申請された時点以来の技術的展開も踏まえた議論が行なわれ、分担領域相互の再度の調整が行なわれた。この結果に基づいて、各分担領域の研究計画調書が起草され提出されている。さらに、本重点領域研究の総括班に参加予定の研究者を招いた研究会合を開催し、学際的な視点からの情報提供を受け、新たな研究項目の洗い出しも行なっている。これらの結果を総合して、本重点領域全体についての研究計画書が作成された。また、本重点領域研究が発足した後の全体会議の開催予定や、研究成果の公開の方法等についても、既に議論を開始している。その中で主要な会合や公開シンポジウムについての具体的な日程の調整や、研究予算の管理事務の方針などの運用面の検討も行なわれた。これらの結果により、重点領域研究の円滑な推進のための最終的なグランドデザインがまとめられている。
著者
伊福部 達 敦賀 健志 吉田 直樹 井野 秀一 吉永 泰 脇坂 裕一 上見 憲弘 和田 親宗 大西 敬三
出版者
北海道大学
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
1999

本課題の目的は、水素吸蔵合金(MH)アクチュエータを改良して新たな介助機器やリハビリ機器を開発し、高齢社会および地域産業に貢献することである。具体的には、1.寝たきりを防ぐために,被介助者をベッドから車椅子および車椅子からベッドへの移乗する機器,2.脳卒中などによる手足の麻痺や骨折による筋-関節系の拘縮のための関節可動域訓練で必要となるリハビリ機器(CPM)のために利用する。1については,昨年度から引き続き,MHアクチュエータの小型化,高速化、および軽量化を行い,被介助者の生体特性を踏まえた実用性の高い移乗機器の第2号を試作した。さらに、日本製鋼室蘭製作所に隣接する日鋼記念病院で実際の被介助者を対象として移乗介助機器を使用し、現場からの高い評価を得た。2のCPMのためのアクチュエータとしては高分子材料をベローズとして利用することで,極めて小型軽量にすることができ,関節周りに柔軟に装着できるような構造を実現でき,しかも水素漏れは数十日で5%程度であり,金属ベローズに比べて桁違いに廉価にすることができた。今後は,CPMのための最適なヒューマンインタフェースを構築するとともに,使い捨てのCPMを想定し,製品化の道を探る予定である。以上の成果が評価され、福祉機器の開発と販売を行っている会社の協力を得て、この介助機器とCPMを実用化するための組織ができ、科学技術振興事業団からの支援により,来年度から製品化へ向けての具体的な作業に入ることとなった。さらに、この課題の総括として、どのMHアクチュエータがどのような場面で、どのような被介助者に有効であるかを明確にし、将来の需要を見込みながら、高齢社会と地域産業にどこまで貢献できるかを展望した。
著者
稲永 潔文 伊福部 達
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.402, pp.55-60, 2012-01-19

ヘッドホン・イヤホンの測定には,実使用状態に近くかつ測定結果の再現性の良い測定プラットフォームが求められ,その一つとしてIEC60318-7(60959)準拠のHATSにIEC60268-7準拠の耳介モデル(Pinna simulator)を組み合わせたものが推奨されている.しかし既存のHATSをベースとして,別規格の頭部と耳介モデルを機械的および音響的に満足させる測定プラットフォームの実現は容易ではなかった.そこでこれら規格を忠実に再現したHATS (SAMAR : Southern Acoustics Mannequin for Acoustic Research)を新たにPC上の3Dデータとして設計し,実際に作成してヘッドホン・イヤホンの測定用プラットフォームとしての検討と考察を行った.
著者
伊藤 和幸 伊福部 達
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.527-535, 2005-02-01
被引用文献数
18

本研究では, 重度肢体不自由者向けに視線を利用した意思伝達システム(視線入力式文字入力装置・環境制御装置)を安価に提供できるようなシステムを開発する.視線の検出には, 画像処理ボードを利用した高精度・高機能なものが市販されているが, それらを使用するとコストダウンが困難であり実用に結び付かないという欠点があるため, 本研究ではビデオキャプチャした画像をソフトウェア的に処理することで視線検出を行い, システムにかかるコストの削減を図った.近年のパソコン性能の向上により, ノートパソコンの使用も可能でありシステムのコンパクト化も実現できた.
著者
伊福部 達 中邑 賢龍 福島 智 田中 敏明 畑一 一貴
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本課題の目的は、筋・神経系障害(筋萎縮や失語症・発話失行)により発話が困難になった障害者のために、テキスト情報に加えて、リズム、抑揚、笑い、怒りなどのノンバーバル情報を表出できるような実用的な発話支援機器を開発するところにある。平成22年度は、21年度に提案した実施項目に従って遂行し、以下のような成果が得られた。実施項目:昨年度はウェアラブルPCとポインティング・デバイス(P.D)を用いて、音声を生成するパラメータを直接的に指やペンの動きで制御できる「構音障害者の音声生成器」を試作した。本年度は、これを利用して家庭内やリハビリ現場を想定し、生成された連続音声や感情音がどこまで正確に認識され得るのかを評価し、誰もが利用できるようにios上でプログラムをダウンロードできるようにした。評価結果:(a)昨年度の評価結果から、摩擦音(サ行)が出だしにあるような連続音声の認識率が低かったことから、P.D上に摩擦音を出せる領域を設け、音声の認識率と操作性の複雑さの観点からその有用性を評価した。その結果、操作性はそれほど負担にならないこと、全ての連続音声を認識させえることなどを確認した。(b)イントネーションやアクセントも付加できるように、表面圧センサの付いたRDを用いて、筆圧や指の押圧により非言語音を生成できるようにした。その評価から、「急ぎ」、「笑い」、「怒り」などを表わす抑揚を30分程度の訓練で単語に付加できるようになった。以上から、使用頻度の高い音声ほど何かを緊急にリアルタイムで伝えたいときに有用であることを確認した。(c)本インタフェースを同時に、多くのユーザに利用してもらうために、歌を生成できるような「音声楽器」へ拡張するとともに、本プログラムをウェブ上でダウンロードすることによって、スマートフォンにより誰もが利用できるようにできるようにした。
著者
橋場 参生 上見 憲弘 及川 雅稔 山口 悦範 須貝 保徳 伊福部 達
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1240-1247, 2001-06-01
被引用文献数
16

電気式人工喉頭は, 癌(がん)などの理由によって喉頭を失った人々の重要な発声補助機器である.しかし, 電気式人工喉頭で発声した音声は, 単調で非常に不自然であり, その改善が望まれていた.また, 従来の電気式人工喉頭はすべて海外からの輸入品であり, 国産の製品は存在しなかった.我々は, この自然性の問題を解決するために, 電気式人工喉頭で発声した音声に抑揚を負荷する方法などを提案し, 実験を進める一方, 1993年より電気式人工喉頭の製品化に着手し, 1998年に国産初の電気式人工喉頭を実現した.開発した新型の電気式人工喉頭は, マイクロコンピュータを内臓しており, 抑揚のある自然な発声が可能であるほか, 音程のデータを利用して歌を歌うこともできる.本製品は, 既に1000台以上が利用されており, アンケート調査の結果, 約7割の購入者より良好な反応が得られている.本論文では, まず, 抑揚制御機能を備えた新型電気式人工喉頭の開発経過と機能について述べ, 次に, 購入者からの評価結果と今後の課題について述べる.
著者
村田 拓司 福島 智 中野 泰志 伊福部 達 大西 隆 苅田 知則
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.選挙のアクセシビリティの研究平成16年度:電子投票と選挙に関する新見での選管担当者と障害有権者への聞取調査の結果、有権者は同システムの有用性に満足するもそのアクセシビリティ配慮がより広範には活用できていないこと等が明らかになった。17年度:新見調査を踏まえ、都市部の四日市での同様の調査の結果、(1)高齢者の筆記の不安解消、点字の書けない全盲者や知的障害者が独自に投票できたが、(2)両市とも電子投票導入時や機種選定時の障害者の参加機会がなく、引きこもりがちな障害者向け啓発が困難で、配慮とニーズの齟齬があり、(3)電子投票の信頼性への要求が高く、(4)投票機も改良の余地があり、(5)第三者認証、最低限アクセシビリティの法文化も必要なこと等が明らかになった。2.総合支援システムの研究16年度:(1)模擬電子投票後アンケートの分析やバリアフリー専門家討論会による電子投票のアクセシビリティ調査、(2)上記の新見調査の結果、電子投票機の最低限アクセシビリティの確認と、より多様な障害者向けユーザビリティに残る課題、アクセシビリティ等の客観的評価手法やその配慮保障のための法制整備の必要性等が明らかになった。17年度:四日市調査等の結果、(1)点訳選挙公報等の情報入手が困難で、(2)知的障害者も支援次第で参加可能なこと等、選挙参加促進の総合支援策の必要性が明らかになった。3.選挙とまちづくりの研究16年度:バリアフリーのまちづくりのための当事者参加型ワークショップの分析の結果、投票環境整備にはまちの日々のあり方が重要で、障害者のバリアを、彼らを交えたワークショップを通して体験的に理解する必要性が明らかになった。17年度:四日市調査の結果、公共施設の投票所のバリアフリー化が進むも最寄りの小規模集会所等を投票所にするのに難があること等が明らかになった。
著者
金田 清志 白土 修 但野 茂 伊福部 達
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1992

1)平成5年度にひきつづき、寒冷暴露下での脊髄損傷者の自律神経系に及ぼす影響を調査するため、人工気象室を利用し、常温(気温24℃、湿度50%)の前室から低温(気温5℃、湿度50%)の環境下に被験者を移動させ寒冷に暴露し、血圧、麻痺のある下肢の血流・皮膚温の変化を測定し解析した。健常者では寒冷暴露と同時に下肢血流量は急激に減少、下肢の体表温度も低下した。血圧の上昇も認められた。再度常温に暴露すると徐々に血流・体表温度とも回復する経過を示した。しかし、脊損者においては寒冷暴露によっても下肢血流量は減少せず、外部環境の影響を受け体表温度は低下した。血圧の変化もなかった。麻痺のレベルが下位胸髄以下では、健常人と類似した変化が認められたが、その変化はわずかであった。従って、脊損者では放射・伝導・対流により体表面からの熱放散が容易に生じることが判明した。冬期間用車椅子試作者と,従来型電動車椅子の走行試験とデータ解析を行った。過酷なアイスバーン状態を想定し、室内に仮設した斜度1/10のスロープに氷板を張って走行試験を実施した。登坂性能および発進性能は、試作車に明らかな優位性が確認された。走行時の加速度を測定し駆動輪スリップ度を評価した。ここでスリップ度Kは、進行方向の加速度を積分して得られる実走速度(La)とモータパルスカウントから得られる理論速度(Lp)の比率(La/Lp)で表わした。K=0で駆動輪がスリップしていない状態、K>0で駆動輪の空転度合、K<0で慣性力によるすべり度合がわかる。雪路の低速モード(3.0Km/h)走行では、市販タイプは、発進時からスリップしているが、試作車はスリップなく安定した走行をしている。高速モード(6.0Km/h)走行では、各車一定のスリップ度を示しながら走行している。しかし、制動時には,試作者はほとんどスリップなく停止した.
著者
藪 謙一郎 伊福部 達 青村 茂
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.117-124, 2009-09-25
参考文献数
12
被引用文献数
1

我々は先に発話障害者のために,ユーザ自身の手指の動きからリアルタイムに音声を生成する発話支援方式を提案し,ペンタブレットと小型パソコン(PC)を用いた音声生成器を試作した。その評価実験から,子音を含むような連続音声やリズムをつけた音声を生成できることを示した。本論文ではさらに,表現を豊かにするために抑揚やメロディを付加する方法を提案した。具体的には,(1)押圧センサを持つタッチパネルを利用して押圧力で抑揚を制御する方法,および(2)本音声合成器と音楽用MIDIキーボードとを接続してメロディを表出させる方法を考案し,有用性を評価した。方法(1)では,笑い声や動揺を表わすような感情表現を作り出せること,方法(2)では,短時間の練習で童謡などの簡単な歌を歌わせることができた。以上から,これらの方式は,家族間の会話あるいは音声リハビリテーション時において,リアルタイムに感情を表現する補助手段として効果的であることが示唆された。
著者
和田 親宗 伊福部 達 井野 秀一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎
巻号頁・発行日
vol.95, no.237, pp.53-58, 1995-09-14
被引用文献数
10

我々は音声スペクトルを振動パターンに変換しそれを人差し指の腹に呈示することによって聴覚代行を行う装置、タクタイルボコーダの改良研究を行っている。我々は刺激を電光掲示板のように指腹上を流すというスウィープ呈示方式を考案しその評価を行ってきた。その際、触覚の疲労や時には指先に不快な感覚が生じることを経験した。この不快感は振動刺激が指腹上を流れることに起因するものと想像されたので、今回、点字のような凸点刺激をスウィープさせて呈示することにより問題を軽減できるのではないかと考えた。また、盲人による点字の読解能力を考慮すると,スウィープする凸点パターンは振動パターンよりも識別の面でよりよい刺激方法になることも想像された。そこで振動刺激を用いた場合、凸点刺激を用いた場合、両者を組み合わせた場合の3つの場合について、絶対閾値、二点閾値、疲労の状態からそれらを評価した。その結果、絶対閾値、二点閾値についてはほとんど差が見られなかったが、凸点刺激だけの場合には疲労の影響を最も受けにくかった。このことより長期間使用するタクタイルボコーダの刺激方法は凸点刺激が実用的であろうと推察された。
著者
伊福部 達 橋場 参生 松島 純一
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.903-910, 1991-12-01
被引用文献数
41

本論文では、人工喉頭音声や合成音声の音質改善を目的に、母音の自然性を決める要因を調べた。音声の中でも定常な母音は、ほの一様な波形がピッチ周期ごとに繰り返された時間構造を持っている。しかし、まったく同じ形の波形が繰り返されているわけではなく、その形は時間と共に微妙に変化している。ここでは、このような波形の時間変動を「波形ゆらぎ」と呼ぶことにし、繰り返し周期の変化である「ピッチゆらぎ」とは区別し、母音に含まれる波形ゆらぎと音声の自然性の関係を心理物理実験に基づいて調べた。加工音声資料内での自然性の比較実験から、母音の自然性には波形ゆらぎの時間的推移が極めて重要であり、正しい順序で並べられた32個程度のピッチ波形が高い自然性を得る上で必要であることが推論された。また、自然性を決める要因は広い周波数範囲にわたって存在しているが、その中でも、高調波成分の周りの&mnplus;18Hz程度の側波が重要であることが推論された。更に、試作したパイプ挿入式電気人工喉頭音声による評価実験でこれらの推論を裏付けるような結果が得られた。
著者
青木 直史 伊福部 達
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, 1996-09-18

合成音声における自然性の再現を目的として、母音合成時に不規則信号を音源信号に付加する試みがなされてきている。いわゆるmixed excitation音声合成方式として知られる方法は、バズ音源と白色雑音源の併用によってLPCボコーダ等の線形分離音声合成システムによる合成音声の音質の向上を目的としている。ここで提案する音声合成方式も同様に音源信号を周期信号と非周期信号の和で表現する。周期信号には-12dB/octの声帯フィルタを通過したパルス列信号を用いる。非周期信号には1/fゆらぎのクラスに分類される不規則信号を用いる。本方式は音声知覚に重要なacoustic cueを再現することによる合成母音の自然性の向上を目的としている。
著者
青木 直史 伊福部 達
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声
巻号頁・発行日
vol.96, no.565, pp.25-32, 1997-03-06
被引用文献数
4

持続発声母音の自然性の要因として、ピッチゆらぎ(ジッタ)および振幅ゆらぎ(シマ)が重要な役割を担っていることが知られている。本研究では、これまでの報告で考察されているものよりも長時間のジッタおよびシマの解析から、これらが1/f^βゆらぎ、ここで、β&sime;1の特徴を示すことを明らかにした。さらに、1/fゆらぎとしてモデリングしたジッタおよびシマが、白色特性のジッタおよびシマよりも、正常な持続発声母音の知覚を喚起させるうえで有効であることを音響心理実験によって明らかにした。