著者
島田 裕之 牧迫 飛雄馬 土井 剛彦 吉田 大輔 堤本 広大 阿南 祐也 上村 一貴 伊藤 忠 朴 眩泰 李 相侖 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101181, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor: BDNF)は、標的細胞表面上にある特異的受容体TrkBに結合し、神経細胞の発生、成長、修復に作用し、学習や記憶において重要な働きをする神経系の液性蛋白質である。BDNFの発現量はうつ病やアルツハイマー病患者において減少し、運動により増加することが明らかとなっている。血清BDNFは主に脳におけるBDNF発現を反映していると考えられているが、その役割や意義は明らかとされていない。この役割を明らかにすることで、理学療法における運動療法が脳機能を向上させる機序をBDNFから説明することが可能となる。本研究では、高齢者を対象に血清BDNFを測定し、その加齢変化や認知機能との関連を検討し、血清BDNFが果たす役割を検討した。【方法】分析に用いたデータは、国立長寿医療研究センターが2011 年8 月〜2012 年2 月に実施した高齢者健康増進のための大府研究(OSHPE)によるものである。全対象者は5,104 名であり、BDNFの測定が可能であった対象者は5,021 名であった。アルツハイマー病、うつ病、パーキンソン病、脳卒中の既往歴を有する者、要介護認定を受けていた者、基本的日常生活動作が自立していない者を除外した65 歳以上の地域在住高齢者4,539 名(平均年齢71.9 ± 5.4 歳、女性2,313 名、男性2,226名)を分析対象とした。血清BDNFは−80 度にて冷凍保存後ELISA法により2 回測定し、平均値を代表値とした。認知機能検査はNCGG-FATを用いて実施した。記憶検査として単語の遅延再生と物語の遅延再認、遂行機能として改訂版trail making test B(TMT)とsymbol digit substitution task(SDST)を測定した。分析は、5 歳階級毎に対象者を分割し年代間のBDNFの差を一元配置分散分析および多重比較検定にて比較した。BDNFと認知機能検査の関連を検討するため、認知機能低下の有無で対象者を分類し、t検定にてBDNFを比較した。認知機能の低下は、年代別平均値から1.5 標準偏差を除した値をカットポイントとした。また、認知機能に影響する年齢、性別、教育年数を含んだ多重ロジスティック回帰分析を実施した。従属変数は認知機能低下の有無とし、独立変数は年齢、性別、教育年数、BDNFとした。BDNFはピコ単位での微量測定値であったため4 分位でカテゴリ化して分析を実施した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は国立長寿医療研究センターの倫理・利益相反委員会の承認を得た上で、ヘルシンキ宣言を遵守して実施した。対象者には本研究の主旨・目的を説明し、書面にて同意を得た。【結果】年齢階級別のBDNF(平均 ± 標準誤差)は、65 〜69 歳が21.8 ± 0.1 ng / ml、70 〜74 歳が20.9 ± 0.1 ng / ml、75 〜79 歳が20.5 ± 0.2 ng / ml、80 歳以上が19.6 ± 0.3 ng / mlとなり、加齢とともに有意な低下を認めた(F = 24.8, p < 0.01)。多重比較検定の結果、70 〜74 歳と75 〜79 歳間以外の比較では、すべて有意差を認めた。認知機能低下の有無によるBDNFの比較では、単語再生、TMT、SDST(すべてp < 0.01)において有意に認知機能低下者のBDNFが低値を示した。多重ロジスティック回帰分析では、BDNFはSDSTと有意なトレンドを認め(p < 0.01)、Q(4 24,400 pg / ml)に対してQ(1 17,400 pg / ml)のSDST低下に対するオッズ比は1.6(95%信頼区間: 1.2-2.2, p < 0.01)であった。その他の項目に有意差は認められなかった。【考察】PhillipsらはBDNFmRNAがアルツハイマー病患者の海馬において減少していることを明らかとし、BDNFの減少が病態成立に対して何らかの役割を持つと報告した。運動の実施は海馬におけるBDNFやTrkB受容体の発現量を上昇させることが明らかにされている。また、Eriksonらは1 年間の有酸素運動が海馬の容量を増加させ、その変化量と血中BDNFは正の相関をすることを明らかにした。しかし、血中BDNFの研究は少なく、加齢変化や認知機能との関連性は十分明らかとされていなかった。本研究の結果から、血清BDNFは加齢とともに低下を示し、各種認知機能低下との関連を認めた。とくにSDSTとは、年齢、性別、教育年数と独立して関連を認めたため、記憶以外の機能に関してBDNFが何らかの役割を持つのかもしれない。今後は介入前後のBDNFの変化と各種認知機能の変化との関連を検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】今後の日本の後期高齢者数の増大は、認知症者の増大を引き起こし、その根治的治療法がない現時点において、運動による予防対策は重要である。理学療法士は、その対策の中核的存在になるべきであり、運動と脳機能改善に関連する知見を集積することは理学療法にとって重要な役割を持つといえる。
著者
中居 賢司 平野 三千代 伊藤 忠一 宮川 朋久 加藤 政孝
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.173-179, 1988-04-30 (Released:2010-09-09)
参考文献数
11

ホルター心電図でST-Tを評価するために, (1) 限られた誘導数と胸部双極誘導に伴う問題, (2) 虚血性と非虚血性―特に体位性ST-T偏位の鑑別, (3) 24時間記録における意義と問題について検討した.ホルター心電図によるST-Tの評価として; (1) ST偏位は用いた誘導により異なり (CM5>CC5, m-II>m-aVF) , CM5誘導は不関電極の影響を受け新たなST偏位を生ずる可能性がある. (2) 体位性ST-T偏位の多くは瞬時に変化し, STトレンドグラムはBox型を呈する. (3) 虚血型ST偏位は60秒以上の経過を有し, STトレンドグラムはcrescendo-decrescendo型を呈する.ST偏位は用いた誘導および体位により異なる可能性があり, その規準化は難しい. (4) 虚血型ST偏位の判定および発生機序の評価には虚血時の心拍数の応答にも留意すべきである.今後, 記録方式を含め機器の改良, 誘導法の標準化が必要と考えられる.
著者
小川 基彦 萩原 敏且 岸本 寿男 志賀 定祠 吉田 芳哉 古屋 由美子 海保 郁夫 伊藤 忠彦 根本 治育 山本 徳栄 益川 邦彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.359-364, 2001-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
16
被引用文献数
5 7

1998年にツツガムシ病と診断された患者416人の臨床所見について解析を行った. 主要3徴候である刺し口, 発熱, 発疹は, それぞれ86.5%, 97.7%, 92.3%の患者に, またCRP, GOT, GPT, LDH上昇が, それぞれ957%, 84.8%, 777%, 90.7%に認められた. これらの所見はほとんどの患者に認められ, 診断に有用であることが示された. また汎血管内凝固症候群が21人に認められ, 命を脅かす疾病であることがうかがわれた. リンパ節腫脹は49.7%の患者に認められ, そのうち74.6%は局所にのみ腫脹が認められた.さらに, 腫脹した部位が刺し口の近傍に認められる傾向があった. また, 大部分の刺し口は痂皮状で, 腹部や下半身 (特に下肢) などに認められた. 一方, 刺し口, 発疹が, それぞれ13.5%, 77%の患者には認められず, 風邪などと誤診されやすいことも示唆された. また, 血清診断で陰性であった患者においては, 主要3徴候は約半数に, 刺し口は約70%の患者に認められた.したがって, 現在の血清診断法では診断できないツツガムシ病が存在する可能性が推察された.今回の解析によって全国レベルでの臨床医学的側面があきらかとなり, 今後の診断および治療に役立つものと考えられる. 一方で, 臨床所見だけからは診断が難しいケースが明らかとなり, 血清診断法の改良の必要性も示唆された.
著者
伊藤 忠弘
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.24-34, 1994-11-30 (Released:2016-12-03)
被引用文献数
2

The present studies were conducted to examine the effects of the controllability and stability of self-handicapping and the style of self-handicapping on observers' impressions. Subjects were requested to read a description of a person (self-handicapper) who acquired or claimed a handicap before a test. The results showed that (a) contorollable and unstable handicaps augmented the perception of responsibility and reduced observer's intention of helping behavior, (b) uncontorollable and stable handicaps reduced the perception of self-handicapper's confidence and success-probability, and (c) claimed self-handicapping was perceived more negatively than acquired self-handicapping. These results suggested the negative effects of self-handicapping on self-handicappers in both a short term and a long term.
著者
小川 基彦 萩原 敏且 岸本 寿男 志賀 定祠 吉田 芳哉 古屋 由美子 海保 郁夫 伊藤 忠彦 根本 治育 山本 徳栄 益川 邦彦
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.353-358, 2001-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
13
被引用文献数
3 3

ツツガムシ病の全国の発生状況について, 1998年に実施した調査票をもとに解析を行った. 1998年の患者は416人で, 24の都道府県で発生し, 過去3年間とほぼ同数であった. 患者には性差は認められず, 51歳以上の割合が723%と高かった. また, 患者の32.0%および1a5%が農作業および森林作業に従事しており, 高い割合を占めた. 患者の発生は, 九州地方で全体の56.2%を占め, 続いて関東地方の20.7%, 東北・北陸地方の19.0%となり, これらの地方だけで全国の959%の発生があった.また, 月別にみると, 東北, 北陸地方では4~6月と10~12月の両方に発生がみられ, 九州, 関東などそれ以外の地域では10~12月に発生が多くみられ, 地方ごとの流行時期が示された. さらに, 九州地方における流行株を患者血清の抗体価から推測した結果, 新しい血清型のKawasaki, Kuroki株がこの順に多く大部分を占め, 地域差は認められなかった. また, この地方では標準株 (Kato, Karp, Gilliam株) ではなく, 新しい血清型を使用しないと診断できない患者が24人認められた. この結果から, 他の地域でも流行株の調査および診断に使用する株を検討する必要が示唆された. 今回初めてツツガムシ病のわが国における全体像が明らかになり, 今後の発生予測, 適切な診断と治療および予防を行うにあたり極めて重要な情報が得られた.
著者
伊藤 忠
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.22-32, 1992

『五勺の酒』の語り手である「僕」は、一九四五年八月十五日<終戦の日>の一日を「かずかずの犯した罪が洗われて行く気がして泣けた」と手紙に記述したが、同僚の国語教師「梅本」の復員は今におき戦中の「犯した罪」が洗われていないことを物語っていた。「僕」の「君」宛の手紙はそうした「犯した罪」、自ら埋めようのない「訴えようのない」<空白>を「五勺のクダ」として<語る>ものであった。いわば「僕」の「犯した罪」の視座から『五勺の酒』を考えてみたのである。
著者
藤井 澄三 小川 和男 斎藤 徹 板谷 泰助 伊藤 忠正 岡村 公生
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.321-324, 1995-02-15 (Released:2008-03-31)
参考文献数
26

Oxidation of 1-benzyladenine (12) with m-chloroperoxybenzoic acid in MeOH or in MeOH-0.5 M phosphate buffer (pH 6.6) has been found to afford 1-benzyladenine 7-oxide (13) as the main product. Nonreductive debenzylation of 13 gave adenine 7-oxide (14) in 63% yield. The structure of 13 was unequivocally established by an X-ray crystallographic analysis.
著者
伊藤 忠夫 Tadao Itoh 中京大学教養部
雑誌
中京大学教養論叢 = Chukyo University bulletin of the Faculty of Liberal Arts (ISSN:02867982)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.999-1070, 1990-02-28

モンボト〓の『言語の起源と進歩について』その源泉, 創まり, 背景特に弁護士図書館に注目してこの論文は, モンボド〓の『言語の起源と進歩について』 (全6巻, 1773-1792) の源泉と初期の展開を同時代の知的背景に照らして検討し, その時代の文脈におけるこの著作の目的と意義のより充分な理解を目的とする。この論文は, モンボドによる弁護士図書館所蔵の文書・著作の広範な活用と, この図書館の創設と結び付いていた16世紀のスコットランド法学の人文主義的伝統の彼に対する影響とに, 特に関心を向けている。この論文は, 『言語の起源と進歩について』の最初の二巻を集中的に検討しているが, それは, この二巻が言語の自然的歴史と普遍文法を扱い, モンボドの言語観の真髄を含んでいるからである。しかし, 修辞学 (残りの四巻の主題)は, 背景として必須のものであり, 従って, 概括的な形で扱われている。モンボドの主要な目的は, イングランドとの合邦以後のスコットランドが直面している言語的, 文化的, 哲学的な諸問題に対する解答を提供することであったこと, そして, 彼の解答は, 「スコットランド啓蒙運動」をその本来の人文主義的諸原理に立ち帰らせることを含んでいた, との主張が提出されている。言い換えれば, ロックとヒュームによって提起された「人間の経験的科学」の代わりに, モンボドは, アリストテレス的な技能の言語の諸原理に基づく人間的科学を提案したのであった。モンボドの哲学的, 言語的, 法学的諸見解は, 完全に首尾一貫している, との主張も提出されている。
著者
大坪 義昭 伊藤 忠夫 飯田 秀重
出版者
The Remote Sensing Society of Japan
雑誌
日本リモートセンシング学会誌 (ISSN:02897911)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.440-448, 2000

メコン河下流域には湛水の常襲地域が広範に分布しており,地域の社会・経済発展を阻害している。頻発する湛水被害を軽減し,安定的な農業生産を確保するためには広範囲におよぶ湛水被害状況を迅速かっ継続的に把握する必要がある。現在は農家の聴き取り調査によりその状況を把握しているが,被災後の対応検討に反映できる十分な情報を得ることが出来ていない。<BR>このため,湛水災害の発生に即応し,撮影場所,撮影日などが指定できる全天候型レーダ観測衛星であるRADARSATのSAR画像に注目し,その利用を試みた。この結果,湛水被害の時系列画像を合成した湛水図の作成が可能となった。
著者
伊藤 忠夫 Tadao Itoh 中京大学教養部
出版者
中京大学教養部
雑誌
中京大学教養論叢 = Chukyo University bulletin of the Faculty of Liberal Arts (ISSN:02867982)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.1155-1203, 1996-04-26

言語変化における目的論という古代からの問題は最近, 幾人かの理論家によって改めて提起されており, 歴史言語学に関する多くの会議で議論の焦点となっている。Lass の新実証主義に対する Anttila と Itkonen のような学者の目的論支持の主張は, Peirce の哲学に頼ることによって強化され, より広い視野を得ることができる, というのは, 彼の記号の理論と目的因の独創的概念は, 言語構造と言語変化の目標の本性に直接的に適用されているからである。記号と記号行為の Perice の理解, と同時に Aristotles の文脈における動力因関係と目的因関係についての彼の説明を詳しくたどることを通して, 言語変化の「テロス」'telos' は, 図形化, つまり, 意味の諸関係が形態の諸関係に映される記号行為学的図形の形成, として浮かび上がってくる。目的論は, 従って, 言語構造の本体の不可分の一部として見られる時には, 汎時的な記号行為的全一体としての言語の十分な理解に対する理論的基盤という原理的地位をもっていることが明らかにされている。
著者
伊藤 忠弘
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
心理學研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.367-374, 1999
被引用文献数
16

The purpose of this study was to examine self-enhancement tendency of Japanese people when evaluating self and others, and study the relation between the tendency and self-esteem. In Study 1, subjects were asked to evaluate themselves and an average undergraduate of their age in terms of several attributes. Results showed that self-evaluations were more favorable than evaluations of the average undergraduate on such personality attributes as kindness and diligence, which they rated more important, and less favorable on such attributes as appearance, sociability, and financial resource. In addition, subjects with low self-esteem were likely to appraise themselves more negatively than those with high self-esteem, but the two groups showed the same level of self-enhancement when rating themselves on personality attributes. In Study 2, subjects provided percentile rankings of themselves on ten attributes in relation to undergraduates of their age. Results indicated that more than half of the subjects thought that they were above average (better-than-average effect) on such personality attributes as kindness.
著者
牧迫 飛雄馬 島田 裕之 吉田 大輔 阿南 祐也 伊藤 忠 土井 剛彦 堤本 広大 上村 一貴 BRACH Jennifer S. 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.87-95, 2013-04-20

【目的】日本語版-改訂Gait Efficacy Scale(mGES)の信頼性と妥当性を検証することを目的とした。【方法】地域在住高齢者240名を対象とした。そのうちの31名については,自記式による日本語版mGESの評価を2回実施した(評価間隔14〜20日間)。日本語版mGESの妥当性を検証するために,運動機能(chair-stand test,片脚立位時間,通常歩行速度,6分間歩行距離),生活空間,転倒恐怖感との関連を調べた。【結果】日本語版mGESは高い再検査信頼性を示し(級内相関係数[2,1]=0.945,95%信頼区間0.891〜0.973),すべての運動機能および生活空間と有意な相関関係を認めた。従属変数を転倒恐怖感の有無,独立変数を性別,各運動機能,生活空間,日本語版mGES得点としたロジスティック回帰分析の結果,転倒恐怖感と有意な関連を認めた項目は,性別(女性),通常歩行速度,日本語版mGES得点であった。【結論】高齢者における歩行状態の自信の程度を把握する指標として,日本語版mGESは良好な信頼性および妥当性を有する評価であることが確認された。
著者
伊藤 喜雄 平泉 光一 加瀬 良明 小澤 健二 青柳 斉 伊藤 忠雄
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

米主産地の現地調査及び流通業者からの情報提供により、新食糧法下の米流通の規制緩和は、従来の自由米市場ですでに発生していた産地間競争に加えて、卸・小売等の業者間競争を本格的かつ全国的に展開させていることが分かった。具体的には、以下の点である。1.新潟県や北陸3県、島根県などコシヒカリ品種に代表される良食味米の主産地や、大都市近郊産地の千葉・兵庫・滋賀県などでは、生産者及び農協レベルで計画外流通の販売対応が拡大しつつある。そこでは、生産者グループ・法人組織や農協において、栽培協定や品質管理、販売促進の強化など多様な産地マーケティングが展開している。2.スーパーや米卸業者、米小売専門店等の中には、上述の主産地と直接的な取引関係を結ぶ業者も多数登場している。その結果、産地ブランドの地域的細分化が進み、産地間及び流通業者間で競争が激しくなっている。特に、過剰下の買い手市場の中で、大手スーパーの産地掌握が強まっており、農協の米マーケティングの展開に大きな影響を与えている。3.北海道や東北、熊本・佐賀県などの非良食味米産地では、米需給関係の過剰基調のもとで、生産者及び農協の当初の自主販売の動きは止まり、計画流通による連合会での統一販売対応に回帰しつつある。そこでは、米流通再編の担い手である大手スーパー等に対して、経済連・全農の組織再編による系統米販売体制の強化が模索されている。4.米国や中国の海外ジャポニカ米主産地に関しては、産地レベルでの技術開発では食味よりも収量志向が強く、国産米と競合する現地のブランド米(良食味米)は量的には極めて少ない。そのため、品質面で日本との競争力は現在時点では小さいと言えそうだ。2年間の実態調査により,現下の米産業の競争構造に関して以上の点が明らかになった。
著者
谷 直樹 野口 明則 竹下 宏樹 山本 有祐 伊藤 忠雄 中西 正芳 菅沼 泰 山口 正秀 岡野 晋治 山根 哲郎
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.8, pp.1536-1541, 2007-08-01
被引用文献数
11

今回,我々は直腸癌術後の膵および肝転移に対する1切除例を経験したので報告する.症例は78歳の男性で,1993年に直腸癌に対して直腸切断術,肝S7の同時性転移に対する肝部分切除を施行した.術後は無再発に経過していたが,11年目の2004年10月腫瘍マーカーの高値を指摘され,腹部遺影CTを施行したところ膵体部および肝S4に腫瘍を認めた.ERCPで膵管の途絶を認め膵体部癌および肝転移を疑い膵体尾部脾合併切除および肝部分切除を施行したが,病理組織学的検査の結果はともに11年前の直腸癌からの転移であった.大腸癌の膵転移はまれな病態であるが,初回手術から長期間を経てから生じること,経過中に肺,脳,肝臓など多臓器に血行性転移を生じる例が多いこと,予後不良であるなどの特徴を有するので治療上の注意が必要である.本邦報告例の検討から,初回手術後長期経過して発見された膵転移は切除後の予後が比較的期待できる可能性があると考えられた.