著者
三浦 伸也 千葉 洋平 佐野 浩彬 前田 佐知子 池田 千春 田中 亜紀子 高橋 美佐 半田 信之 臼田 裕一郎
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.s1, pp.s23-s26, 2020 (Released:2020-10-09)
参考文献数
2

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)下では密閉空間・密集場所・密接場面の3つの密を避けることが推奨されている。発表者らは出水期や風水害等に向けて、都道府県や市区町村といった自治体が COVID-19下において、内閣府防災等が提示した通達をどのように活かし、自然災害への備えを行っているかを網羅的かつ俯瞰的に把握するため、日本全国の都道府県および自治体のWebサイトを検索し、COVID-19下における「避難」もしくは「避難所」等に関する情報(以下、「COVID-19×災害時避難に関する情報」)の発信を行っている事例を網羅的に収集した。この情報収集の過程で、ツイッター、ネットニュース、新聞などのメディアが情報収集をどのように促進し、情報を「集める」から情報が「集まる」兆しを感じさせたのか。情報収集、ひいてはアーカイブ構築と本来の目的以外のメディアでの情報発信などをどのように捉え、メディアと協働し、アーカイブを構築していくのが望ましいのかについて議論したい。
著者
鈴木 幹生 新留 和成 前田 健二 菊地 哲朗 宇佐美 智浩 二村 隆史
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.154, no.5, pp.275-287, 2019 (Released:2019-11-15)
参考文献数
54
被引用文献数
2

ブレクスピプラゾール(レキサルティ®)は,大塚製薬がアリピプラゾールに続いて創製した,世界で2番目のドパミンD2受容体部分アゴニスト系の新規抗精神病薬である.本剤はセロトニン5-HT1A受容体及びD2受容体に対しては部分アゴニストとして,5-HT2A受容体に対してはアンタゴニストとして作用し,セロトニン・ドパミン神経系伝達を調節することから「セロトニン・ドパミン アクティビティ モジュレーター:SDAM」という新しいカテゴリーに分類される薬剤である.非臨床薬理試験において本剤は他の非定型抗精神病薬と同等の抗精神病様効果を示すとともに,錐体外路症状(カタレプシー),高プロラクチン血症,遅発性ジスキネジア等の副作用発現リスクが低いことが示唆された.また,抗精神病薬でしばしば問題となる過鎮静,体重増加に関連するヒスタミンH1受容体に対する作用は弱い.さらに本剤は,複数の認知機能障害モデルにおいても改善作用を示した.国内外で実施された臨床試験の結果から,本剤は統合失調症の急性増悪期及び長期維持療法に有効であることが示されている.また有害事象については,非臨床薬理試験で示唆されたとおり,錐体外路症状,高プロラクチン血症,体重増加の発現が低いことが示された.さらに非定型抗精神病薬で問題となっている脂質代謝異常の発現も低かった.加えて,アリピプラゾールで問題となっていたアカシジア,不眠,焦燥感の発現頻度が少なかったことは,セロトニン神経系への作用が強力であることや,D2受容体に対する固有活性がアリピプラゾールより小さいという本剤の特徴に基づくものと考えられた.これらのことから,本剤は既存の抗精神病薬の中でも最も合理的な薬理作用を有する薬剤の一つであると考えられ,優れた有効性と安全性・忍容性プロファイルを示す薬剤として統合失調症患者の治療に貢献できることが期待される.
著者
前田 伸也 吉田 勇一 窪田 秀明 桶谷 寛
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.25, 2007 (Released:2008-02-01)

【はじめに】 脚延長術後の理学療法は、相対的に短縮する軟部組織の柔軟性維持を目的とした可動域訓練を行なうが、下腿延長例の足関節背屈よりも大腿延長例の膝関節屈曲の可動域改善が乏しい様に思われる。そこで下腿延長と大腿延長の下肢可動域と骨延長量を調査し、これらを比較したので報告する。【対象】 軟骨無形成症で低身長を呈し、脚延長術を実施した下腿延長例7名14肢、大腿延長例5名10肢のうち、調査可能であったそれぞれ6名12肢、4名8肢を対象とした。手術時平均年齢は下腿延長例で14歳3ヶ月、大腿延長例で17歳3ヶ月であった。なお、全例でorthofix創外固定器を使用した。【方法】 下腿延長例では膝伸展位での足関節背屈角度(DKE)、大腿延長例では膝関節屈曲角度(KF)をそれぞれ術前と延長後1ヶ月、その後1ヶ月毎に延長後7ヶ月まで調査し、各調査時の左右平均角度を求め、それぞれで術前との比較を実施した。骨延長量は、それぞれの平均延長量を求め比較した。【結果】 DKE、KFそれぞれにおいて分散分析を実施し、DKEは、術前と延長後1ヶ月、術前と延長後7ヶ月は有意差がなかったが、延長後2~6ヶ月までの5ヶ月間は術前と比較して可動域が減少した。(P<0.05)。KFでは延長後1~7ヶ月までの7ヶ月間は、術前と比較して可動域が減少した(P<0.05)。骨延長量は、下腿で平均74.7mm、大腿で平均66.9mmであり下腿が大きい結果となった。【考察】 結果より、DKEよりもKFの可動域改善が低いことが示唆された。理由として、下腿延長例は、斜面台での起立訓練や歩行時において、下腿三頭筋の持続したストレッチ効果が得られやすく、早期の可動域改善が可能ではないかと推察された。一方大腿延長例では、下腿よりも歩行時のストレッチ効果が得られず、また大腿部の筋自体も筋張力が大きいため、可動域改善が得られにくい。その他として、平岡らは、大腿延長はピン刺入により腸脛靭帯のスライドが不十分なために膝関節屈曲制限が起きると述べている。以上により大腿延長例では、軟部組織の柔軟性を獲得しにくいことが推察された。また骨延長量も大腿延長例が小さく、延長量を決定する因子として軟部組織の柔軟性が必要であるということが確認できた。これらを踏まえ、大腿延長例の理学療法は、術前に大腿四頭筋のストレッチを実施し、可動域制限を最小限に留めることが必要ではないかと考える。今後も症例数を増やしていき、更に検討したい。【結語】 下腿延長と大腿延長において、骨延長量と下肢可動域を比較した。結果、大腿延長例ではKFの改善が低く、骨延長量も小さい。大腿延長例に関して、術前に大腿四頭筋のストレッチを実施する必要があると考える。
著者
島崎 博也 水野 圭祐 水谷 真康 中村 毅 前田 一範 出口 晃 川村 直人 鈴村 恵理 美和 千尋 森 康則
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
pp.2310, (Released:2018-06-18)
参考文献数
15

【背景と目的】温泉の効果の一つに温熱作用がある.この効果は体温を上昇させ,体温調節機能が作動し,血流量の増大を引き起こす.今回,これらの変化が,浴槽の大きさ,温泉の泉質によるものかを検討した.  【方法】成人健常男性10名(平均年齢25.2歳)を対象として10分間42°Cの入浴を実施した.実施は,大浴槽(約1700L:アルカリ性単純温泉)と家庭浴槽(約300L:温水,0.1%人工塩化物泉)を用いた.測定項目は,深部体温「深部温モニターコアテンプ CM-210」と最高動脈血流速度「超音波血流計スマートドップ45」とし,それぞれの値を入浴中10分目,後安静10分目,20分目,30分目で比較し,さらに各条件で前安静値からの変化を求めた.  【結果】入浴10分目で深部体温と最高動脈血流速度の上昇値は,大浴槽の温泉が家庭浴槽での値に比べ,有意な高値を示した.また,大浴槽の温泉の深部体温は入浴3分目から有意に上昇した.後安静での深部体温は,大浴槽の温泉は15分間,家庭浴槽の人工塩化物泉は16分間,温水は13分間有意な上昇が維持された.  【考察】温泉大浴槽の方が家庭浴槽に比べて,深部体温上昇,最高動脈血流速度が大きかったのは,大浴槽では豊富な湯量により湯温の下降を妨げ,家庭用浴槽での深部体温上昇が継続されたのは,人工塩化物泉が体温上昇を維持させたと考える.
著者
黒川 修行 菊池 法大 秋山 駿介 阿部 由佳 瀨川 琴子 千葉 卓 土井 妥剛 若生 成 犬塚 剛 池田 晃一 木下 英俊 前田 順一
雑誌
宮城教育大学紀要
巻号頁・発行日
vol.55, pp.199-207, 2021-01-29

運動後の手掌冷却がその後の持久的運動のパフォーマンスに及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。運動習慣のある男子大学生10名(20〜22歳)を対象者とした。1回目の多段階漸増負荷試験後に,回復期に手掌冷却を実施した時としなかった時で,2回目の漸増負荷試験の結果と1回目との変化を比較した。手掌冷却はバケツにためた10〜15度の冷水に手を浸漬した。手掌冷却により回復安静期における鼓膜温は有意に低下した。これは冷却部の放熱量が大きくなり,冷やされた血液が身体の深部に戻ることで深部体温が下がったため,深部体温と相関のある鼓膜温が低下したと考えられた。また、手掌冷却により走行距離や最大酸素摂取量の有意な低減抑制が認められた。これは、深部体温の低下により,蓄熱容量が増大したためであると解された。最大酸素摂取量は中枢性疲労により低下する。手掌冷却により蓄熱容量が増大し,中枢性疲労が抑制されたため最大酸素摂取量の低減抑制が起きたと考えられた。運動後の手掌冷却はその後の持久的運動パフォーマンスの低減を抑制し,バケツにためた冷水に手掌を10分間浸漬する程度でも十分な効果が得られると示唆された。
著者
比嘉 聖 帖佐 悦男 坂本 武郎 渡邊 信二 関本 朝久 濱田 浩朗 野崎 正太郎 前田 和徳 中村 嘉宏 舩元 太郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.458-461, 2007 (Released:2007-11-27)
参考文献数
3

脛骨に発生した骨線維性異形成(OFD)に対し,腫瘍切除後の巨大骨欠損をβ-TCPのみにて補填した3症例(男性1例,女性2例,手術時平均年齢14歳11か月)を経験したので報告する.【方法】腫瘍をen blocにボーンソーにて切除し,β-TCPにて骨欠損を補填し,不安定性への対処としてギプス固定またはplateにて固定した.【考察】OFDに対する治療において,単純掻爬骨移植では再発例が多いというのは以前より報告されていることであり,拡大切除を選択している施設も多い.当科でも同様であるが,骨欠損部が大きくなり自家骨のみでは補填困難である.当科ではBone bankのシステムも確立しておらず,症例が若年者であり採骨のリスクを考えβ-TCPのみで対処した.今回の症例ではβ-TCPは骨に置換され現時点では副作用も認められないので巨大骨欠損に対する補填材料として有用と考えられた.
著者
前田 拓人
雑誌
日本地震学会2019年度秋季大会
巻号頁・発行日
2019-08-15

WINファイルは卜部・他(1990)により開発された地震波検測システム(WINシステム)の地震波形ファイルである.防災科学技術研究所よって制定されたWIN32を含めたWIN/WIN32(以下まとめてWINと略す)ファイル形式は,現代の日本国内における連続地震波形流通おける事実上の標準である.WINはデータ容量の小ささやデータの結合性など優れた点を持つが,その反面ファイル形式はやや難解であり,WINシステムで地震波形を使う場合以外には,他フォーマットへの波形記録変換ツールを介するのが常であった.しかし,観測網が稠密化したいま,大容量・連続地震波形記録の解析においては,この波形フォーマットの変換がデータ解析における最大のボトルネックであり,その傾向は今後ますます顕著になっていくと予想される.そこで本研究では,これまでよりもはるかに高速にWINファイルの読み出しができるライブラリを作成した.本ライブラリは,Fortran2008言語のモジュールとして作成した.FORTRANは古典的な言語ではあるが,Fortran2003/2008といった最近の規格では,動的なメモリ確保やオブジェクト指向といった現代的な機能が含まれている.特に,Fortran2008で規格が制定され,最近になって多くのコンパイラで実装された非同期入出力は,WINファイルのような複雑かつ多数のファイルの入力にきわめて有効である.本研究で開発したライブラリでは,他形式へのファイルの変換・保存や,複数のWINファイルの結合などの処理を一切必要とせず,時間的に連続した複数のWINファイルから目的のチャネルの記録をFortranの配列として直接取得できる.中間処理が不要になったことで,処理の単純化のみならず高速化に対して劇的な効果が見込まれる.さらに,本ライブラリはWIN形式とWIN32形式の両方に対応し,ファイル形式の簡易自動判定機能も備えている.また,開発したライブラリでは,WINファイルのファイル内容をそのままメモリイメージとして読み込むロード部分と,メモリ上に格納されたWINファイルから必要なデータを抽出するデコード部分を分離実装した.これらとFortran2008の非同期入出力機能を用いて,あるファイル内容のデコード中に次のファイルをメモリに読み込む並列動作を実現した.このことにより,ロードとデコードのうち片方の処理時間を隠蔽することができ,多数のファイルを読み込む場合に高速化が期待される.このような隠蔽処理は並列数値計算においてCPUやGPU間の通信時間の隠蔽にしばしば用いられてきたが,本報告ではこれをファイル入力に対して活用した.開発したライブラリの性能を評価するため,WIN32波形を読み込むdewin_32プログラムを比較対象とした実験を行った.防災科学技術研究所Hi-net により収録された任意の日付時刻の連続速度波形ファイル1時間分を対象とし,そこに含まれる全てのチャネルを読み出す.WIN32ファイルはLAN上のNASに格納されているものとする.dewin_32と同等の機能を持つツールを今回開発したライブラリに基づいて作成し,読み込み速度を比較した.実験の結果,dewin_32で1時間分のファイルの全チャネルの読み込みと出力に最大621秒かかったところ,本ツールでは,非同期入力なしで267秒,非同期入力ありで236秒で読み込めた.また,Fortran言語上で利用する場合は,そもそも読み込んだデータを一旦ファイルに保存する必要がない.そこでデータの出力に掛かる時間を無視すると,読み込み時間は非同期入力なしで38秒,ありで21秒まで短縮された.実際の解析でHi-net全チャネル1時間分データが利用可能になるまでの時間は,本研究で開発したツールではdewin_32と比べて最大約20倍短縮されたことになる.読み込みのみに限定すると,非同期入力の導入によって性能がおおむね倍になった.比較に用いたWIN32ファイルの1時間分の総容量は約1GBであり,この結果はデータ通信速度に換算すると約400Mbpsに相当する.これは実験環境におけるLAN(1Gbps)の通信の実効速度の上限に近い.すなわち,ネットワークファイルシステムに連続記録が配置されている環境においては,もはやこれ以上の劇的な速度向上は望めない.本研究で開発したライブラリは,周辺ツールや利用マニュアル等を整備の上,オープンソースとして公開する予定である.講演ではアルゴリズムの詳細の説明,高速データ読み込みとその利用の実演,およびコードの公開を行う.謝辞 本研究では防災科学技術研究所により登録ユーザーに対して配布されているwin32toolsを利用しました.記して謝意を表します.
著者
東泉 裕子 水島 諒子 小板谷 典子 黒谷 佳代 西平 順 山本(前田) 万里 瀧本 秀美
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.368-382, 2022-05-15 (Released:2022-05-24)
参考文献数
56

目的 ストレス,メンタルヘルス,睡眠,疲労に関わる軽度な不調(軽度不調)は,それぞれが密接な関係にあるとともに,それらの悪化が生活習慣病等を惹起することが報告されている。客観的な健康指標との関係性が明らかな軽度不調を明らかにすることで,質問票による健康状態の予測が可能になると考えられる。とくに,日常的にストレスを感じる者の割合の高い日本人を対象とした疫学文献を用い,軽度不調に関する質問票と健康指標との関連についてシステマティックレビューを行い,軽度不調の尺度開発に必要な調査票の項目の検討を行うこととした。方法 軽度不調に関する先行研究のキーワードを基に「自律神経系」,「睡眠障害」,「精神およびストレス」,「疲労」についてPubMedを用いて研究論文を検索した。抽出された研究論文は,以下の包含基準(日本人健常者集団を対象に含んでいる,対象集団の特徴について記載がある,研究デザインが分析疫学研究,介入研究およびシステマティックレビューである,軽度不調を質問票で評価している,軽度不調と健康指標との関連を検証している,日本語または英語で書かれている)に沿ってスクリーニングし,10件を採択した。結果 採択論文10件中1件がコホート研究,3件が症例対照研究,6件が横断研究であり,研究対象者は成人期の労働者が5件と多かった。ストレスに関する質問票を用いた報告6件のうち3件で,睡眠に関する報告7件のうち4件で,包括的な健康状態に関する報告2件のうち2件で,それぞれの軽度不調と健康指標との間に統計学的に有意な関連が報告されていた。調査票による仕事に関連するストレス反応の増加は,健康指標の「うつ病発症リスク(オッズ比2.96(信頼区間:1.04-8.42))」の増加と関連していた。また,睡眠の質の低下は「自律神経指標の変化」,「併存疾患の数およびうつ病の比率」および「労働時の傷害のリスク」の増加と関連していた。加えて,健康度スコアは「自律神経指標」との関連が認められた。結論 これらの結果から,軽度不調の評価に必要な質問票には「ストレス」,「睡眠の質」,「包括的な健康状態」に関する質問が必要であることが示唆された。一方,バイアスリスクに適切に対処した研究が限られていることから,今後,コホート研究や介入研究において,本研究で整理した質問票と健康指標との関連について,前向きに検討する必要がある。
著者
森田 渉 清水 武彦 前田 隆秀
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.511-516, 2008-12-25
参考文献数
18

EL/Seaマウスは100%の頻度で第三臼歯を欠如しており,ヒトにおける先天性欠如歯の原因解明に有用なモデルマウスである.EL/Seaマウスにおける歯の欠如は常染色体劣性遺伝性であると報告されているが,歯の欠如の原因遺伝子は未だ明らかにされていない.著者らは過去にEL/Seaマウスの第三臼歯先天性欠如の原因遺伝子を探求し,EL/Seaマウス第3番染色体の123.1から136.9メガベースペア(Mbp)間に野生型MSM/Msマウスの染色体を導入したコンジェニックマウスを作製し,当該領域に欠如歯の原因遺伝子が存在することをin vivoにて証明し,この遺伝子をabsence of the third molars(am3)としたことを報告している.今回,この第9世代のコンジェニックマウス(N9マウス)を用いて交配実験を行い,MSM由来の染色体の導入領域をさらに限局したマウスを作製し,第三臼歯の欠如率を評価することで,am3の存在領域をさらに狭い範囲まで限定し,候補遺伝子を選定することを目的とした.コンジェニックマウスの第三臼歯欠如の頻度と遺伝子型の結果から,マウス第3番染色体の130.7から131.7メガベースペア(Mbp)間の領域に第三臼歯欠如の遺伝要因が存在することが明らかとなった.この領域内に存在するLef1,Hadh,Cyp2u1,Sgms2,Papss1の5遺伝子が候補であることが示唆された.
著者
田中 さや花 西口 雄基 前田 基成
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.343-352, 2017 (Released:2019-09-03)
参考文献数
27

本研究は,なぜ同じ絵画を鑑賞しても人によって作品の印象や視点が異なるのかを,認知的特性の1つである自閉症スペクトラム傾向に注目し,その個人差が絵画の鑑賞にどのような影響を与えるのか検討するものである。予備調査,本調査ともに1枚の絵画を鑑賞してもらい,質問紙に回答を求め絵画の印象や見方を調査した。その結果,自閉症スペクトラム傾向の強い・弱いで作品の印象や視点に個人差が生じることがわかった。例えば,調査で使用した絵画は怪しげな視線のやり取りが描かれていたが,自閉症スペクトラム傾向が弱い人ほど,この視線のやり取りによる不穏な空気に悪い印象を受けるが,自閉症スペクトラム傾向が強い人ほど悪い印象を受けることはないことが推察された。
著者
前田 基成 坂野 雄二 東條 光彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.158-170, 1987-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は,治療セッショソをおって継時的に評定されたセルフ・エフィカシーの変動と,視線恐怖反応の消去にともなう行動変容との関係を明らかにし,知覚されたセルフ・エフィカシーが行動変容の先行要因としてどのように機能しているかを明らかにすることである。学校場面において,極度の視線恐怖反応を示す14歳の少年に対し,系統的脱感作法を適用した。約10ヵ月にわたる治療的介入は,主観的・認知的(SUD,セルフ・エフィカシー),心理生理的(心拍数),行動的(日常生活における恐怖をともなわない行動遂行,行動の自己評定)測度のいずれにおいても顕著な改善をもたらした。各治療セッショソ後に実施された次セッショソまでの1週間を見通したセルフ・エフィカシーの評定と,1週間後に確認された行動変容の関係を詳細に分析したところ,セルフ・エフィカシーの変動が恐怖反応の消去と密接に関係していることが明らかにされた。すなわち,クライエソトがセルフ・エフィカシーを強く認知すればするほど,視線恐怖時の不安反応は弱くなることが観察された。同時に,その逆の現象も認められた。その結果,知覚されたセルフ・エフィカシーが,行動変容の先行要因として機能していることが示唆された。
著者
蔭山 雅洋 岩本 峰明 杉山 敬 水谷 未来 金久 博昭 前田 明
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
pp.13014, (Released:2014-04-04)
参考文献数
31
被引用文献数
6 3

The present study measured isometric muscular strength and mean power elicited by trunk twisting and trunk rotation during pitching in 28 university baseball pitchers aged 18-22 years. Based on the correlations among these measurements, the purpose of the study was to clarify 1) the influence of ball velocity on isometric muscular strength, trunk power output during the stretch-shortening cycle (SSC) and trunk rotation during pitching and 2) the influence of augmentation which is an index of SSC elicited by trunk rotation on trunk rotation during pitching. We also determined mean power and augmentation during concentric (CT) and SSC rebound (RT) throws of medicine balls weighing 5 kg while twisting the trunk. Augmentation while throwing the medicine ball was positively correlated with ball velocity (r=0.619, p<0.01), and augmentation of the medicine ball was positively correlated with torso rotation velocity at 18-27% and at 46-75% (r=0.398-0.542, p<0.05), and trunk twist velocity at 60-66% (r=0.378-0.395, p<0.05) of the second phase (from stride foot contact to instant release of the ball) during the pitching motion. In addition, pitched ball velocity was positively correlated with the velocities of pelvic rotation at 37-78% (r=0.378-0.488, p<0.05), torso rotation at 46-87% (r=0.391-0.711, p<0.05) and trunk twist at 63-83% (r=0.375-0.499, p<0.05) during the second phase of the pitching motion. These results indicate that pitchers with a larger ball velocity can use SSC movement generated by twisting the trunk, which effectively increases trunk rotation from the first half to middle of the second phase, and they can also increase trunk rotation during the second phase.
著者
新津 修平 前田 大輔
出版者
THE LEPIDOPTEROLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.7-11, 2022-03-31 (Released:2022-05-14)
参考文献数
18

In the present study, Psyche casta (Pallas, 1767) is newly recorded in Japan. Illustrations of both adults and male genitalia are provided. In addition, the taxonomic issue around this species is discussed based on morphological characters.
著者
前田 亜紀子 山崎 和彦 野尻 佳代子 栃原 裕
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.103-112, 2006 (Released:2006-09-13)
参考文献数
31
被引用文献数
2

本研究の目的は,濡れた衣服を着用したときの体温調節反応について観察することであった.被験者は健康な成人女子11名であった.人工気候室は,気温30,25,20℃(相対湿度は80%一定)に制御された.衣服の様式は,スウェット上下(様式 S)と T シャツおよび短パン(様式 T)とし,気温と衣服の条件より 5 種条件(30S, 30T, 25S, 25T, 20S)を設定した.衣服の濡れ条件は,D(乾燥),W1(湿った),W2(びしょ濡れ)の 3 種とした.条件 D, W1, W2 における全衣服重量の平均は,様式 S では各々819, 1238, 2596 g,様式 T では各々356, 501, 759 g であった.各濡れ条件において,安静期と作業期を設けた.作業期における踏み台昇降作業のエネルギー代謝率は2.7であった.測定項目は,酸素摂取量,直腸温(Tr),平均皮膚温(Tsk),および主観申告値とした.酸素摂取量は,衣服重量および寒冷ストレスの影響を受けて変化した.Tr の値は,条件 25T と 20S では漸減した.Tsk は環境温に依存して漸減し,特に条件 20S においては著しく低下した.本研究の要点は次の通りである.1)濡れた衣服を着用した場合,気温30℃では着衣の工夫により温熱ストレスは最小に止めることができる.2)気温25℃以下では,軽装の場合,寒冷ストレスが生じ得る.3)衣類が乾燥状態であれ濡れた状態であれ,全身温冷感が中立であるとき,Tsk は約33℃であった.4)濡れた衣服条件における特色は,全身温冷感が「冷たい」側へシフトするとき,平均皮膚温が著しく低下することである.