著者
諸角 誠人 小川 由英 田中 徹 山口 千美 北川 龍一
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.1025-1031, 1987-06-20
被引用文献数
2

尿中蓚酸の大部分はグリシンおよびアスコルビン酸からの内因性由来とされている.これに対し,グリコール酸やグリオキシル酸は,尿中蓚酸にとって重要な前駆体とはされていない.そこでウィスター系雄性ラットを用い,上記のグリシン,アスコルビン酸,蓚酸,グリコール酸およびグリオキシル酸をそれぞれ3%の濃度で食餌に添加したものを投与する5群と無添加のものを投与する対照群との計6群に分け,どの物質が過蓚酸尿症とそれに伴う尿路結石症を誘発するか実験を行なった.実験食開始より4週目ではグリシン投与群,アスコルビン酸投与群,蓚酸投与群および対照群において尿路結石症を認めなかった.しかし,グリコール酸投与群およびグリオキシル酸投与群において尿路結石症の作製に成功した.結石は赤外線分析にて蓚酸カルシウムより成っていることが同定された.蓚酸投与群,グリコール酸投与群およびグリオキシル酸投与群において尿中蓚酸濃度および1日排推量は他群に比し有意に上昇し,逆に尿中カルシウム濃度および1日排推量は他群に比し有意に低下した.3%グリコール酸添加食または3%グリオキシル酸添加食により,ラットに過蓚酸尿症が起こり,その結果蓚酸カルシウム結石症が発症し得た.一方,3%蓚酸添加食では尿路結石症を認めず,3%グリシン添加食および3%アスコルビン酸添加食では過蓚酸尿症も尿路結石症も認められなかった.
著者
渡部 俊広 北川 大二
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.297-303, 2004-05-15
被引用文献数
4 8

調査用トロール網の漁獲からズワイガニ類(ベニズワイガニとズワイガニ)の現存量を正しく推定するために,袖先間隔を基準とした調査用トロール網の採集効率を推定した。調査は,太平洋東北沖において2000年6月に,曳航式深海用ビデオカメラを用いてズワイガニ類の生息密度を観測後,トロール網の操業を行った。トロール網の採集効率は,生息密度に対するトロール網の掃過面積と漁獲個体数から求めた密度との関係から回帰分析によって求めた。調査用トロール網の採集効率を0.30,その95%信頼区間を0.23〜0.37と推定した。
著者
大場 恵典 高須 正規 西飯 直仁 細田 祝 鬼頭 克也 松本 勇 張 春花 北川 均
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.313-316, 2007-03-25
被引用文献数
2

4ヵ月齢の黒毛和種牛がガスクロマトグラフィー/マススペクトメトリーによってオロット酸尿症と診断された.これまでに黒毛和種牛でオロット酸尿症の報告はない.下痢を呈し,ヘマトクリットは低く,小赤血球と棘状赤血球が観察された.低蛋白および高アンモニア血症を示し,尿沈渣に針状のオロット酸結晶を認めた.ウシuridine monophosphate synthaseのDNA解析ではサイレント変異のみを認めた.
著者
高須 正規 大場 恵典 井口 智詞 西飯 直仁 前田 貞俊 北川 均
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.985-987, 2007-09-25
被引用文献数
2

高血糖の黒毛和種牛のインスリン分泌能評価のためにプロピオン酸負荷試験(PTT)を試みた.症例牛はグルコース負荷試験(GTT)でインスリン分泌の低下が示され,インスリン依存性糖尿病と診断された.正常牛ではPTTに対するインスリン分泌が認められたが,症例牛では認められなかった.GTTと同様に,PTTで症例牛のインスリン分泌の低下が示されたので,PTTが牛の糖尿病の診断に応用できる可能性が示唆された.
著者
石原 勝也 北川 均 佐々木 栄英
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.739-745, 1988-06-15

犬糸状虫性血色素尿症(caval syndrome)例の外頸静脈から, フレキシブル・アリゲーター鉗子を用いて, 右心房と三尖弁口部の犬糸状虫を摘出後, さらに肺動脈内の犬糸状虫を摘出した. 23例の外来患畜では, 右心房及び三尖弁口部の犬糸状虫はすべて摘出され, このうち16例(69.6%)では肺動脈から1〜36隻が摘出された. 実験例9例では, 右心房から2〜34隻の犬糸状虫が, また, 6例の肺動脈からは3〜21隻の犬糸状虫が摘出された. 残留糸状虫数は0〜11隻で, 平均摘出率は83.2%であった. 24時間後, 実験例の右心系循環動熊は, 摘出後回復した5例では, 摘出前に比べ右心拍出量, 心指数及び一回拍出量が増加傾向を示したが, 予後不良では4例中3例で減少した. 肺動脈圧と右心室圧は, 摘出前はほぼ正常値から著しい高値まで様々であったが, 摘出後は予後の良否にかかわりなく増減不定に変化し, 関与因子が複雑であることが示唆された.
著者
西田 智子 原島 徳一 北原 徳久 柴田 昇平 北川 美弥 山本 嘉人
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.555-562, 2004-02-15
被引用文献数
1

永年草地の多年生雑草であるワルナスビについて,その播種時期とワルナスビの播種当年4月に播種したオーチャードグラスとの競合が出芽および生育に及ぼす影響について調査した。プラスティックコンテナを使い,ワルナスビ種子を4-8月までほぼ1ヶ月おきに裸地条件(裸地区)とオーチャードグラスとの競合がある条件(OG区)で播種した。裸地区では,7月播種区を除いて80%以上の出芽率であった。一方OG区では,5月播種区までは45%以上の出芽率となったが,それ以降はほとんど出芽しなかった。播種翌年の5月末における萌芽数は,裸地条件4-6月播種区では,播種当年に出芽した個体のほぼ全部が萌芽したと考えられたが,OG区ではほとんど萌芽しなかった。播種当年9月および翌年5月におけるワルナスビの生育は播種月が早いほど優っており,裸地区ではそれが顕著であった。OG区の生育は裸地区に比較して非常に少なく,生育量の傾向は播種翌年の5月における萌芽数の傾向と良く一致した。以上の結果から,OGが繁茂した草地でのワルナスビ実生の定着は困難なものと推察された。
著者
北川 進 水谷 義 遠藤 一央 藤戸 輝明 張 浩徹 近藤 満
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

電場印加下観測用にワイドボア個体NMRプローブを新規設計、作製をした。観測用高出力アンプは米国AMT社製のM3200を使用した。サンプルセルは、0.5mm〜2.0mm厚のダイフロン製板の両側から二枚の厚さ1.0mmのITOガラス板を挟むことによって作製した。検出器部のゴニオヘッド内にあるサンプルセル挿入部(ダイフロン製)は回転可能とし、NMRマグネットの磁場に対して-90°〜+90°配向した電場を印加することが可能であるように作製した。^1Hデカップルの際発生する熱を下げるため、NMR本体からチューブで冷却風を強く送り、サンプルセル周りの熱上昇を防ぐ処置を取った。高電圧発生装置として、高電圧高速電力増幅器を用い、直流電圧を0V〜500Vに渡って印加することができるようにした。電場応答性を示すサンプルとして室温でネマチック相である液晶分子4-Cyano-4'-n-pentylbiphenyl(5CB)を用い、25℃下で段階的に電場を磁場に対して垂直に印加しながら^13C CPNMRを測定した。その結果、電場を段階的に印加した状態で測定することにより、電場に依存する分子の局所的運動や電子状態などの様々な情報が得られることが分かった。別途、双極子を有する配位子を組み込んだ多数の配位高分子結晶の合成に成功した。
著者
北川 治男
出版者
麗澤大学
雑誌
麗澤学際ジャーナル (ISSN:09196714)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.A15-A25, 1997

人間は不可避的に老い、そして死ぬ存在である。しかし人間が人間たるゆえんは、掛け替えのない自己自身や他者の生命の減衰と亡減を強く意識し、自覚する存在であるところにある。老年期とは、各人の人生のあらゆる側面において「縮減(リダクション)」が迫られる時期である。縮減とは、身体的諸機能が衰えること、退職、社会的活動や影響力の減少、配偶者との死別などを含む。老年期を迎えるに当たって、我々は「縮減の哲学」をもつことが必要となる。リダクションは、縮小、減少、減力などを意味する言葉で、生産、製造、産出などを意味するプロダクションとは対をなし、その対局に位置する言葉である。老年期を迎えるとき、我々は、生命の発展を期し事物の創造に携わる「生産(プロダクション)」という視点で人生の意味を捉えてきたそれまでの生き方から、かげりゆく生命力や影響力に直面して「縮減(リダクション)」という視点で自己の人生の意味を捉え直し、自己の人生哲学を再構成していくことが迫られるのである。老年期は、縮減における、縮減を通じての「自己成全(セルフ・フルフィルメント)」の時期である。それは生の充実や発展ではなく、生の全局面における縮減を前提にして、自分なりのまとまりのある人生を築き上げていく時期である。我々は老年期において、自己の縮減という自己の有限性の自覚を介して生き方の機軸の転換が求められる。それは同時に、人生の意味の深化でもある。老年期は、より深いところで自己の人生の意味を受け止めていくことのできる時期でもある。老年期には「生産(プロダクション)の哲学」から「縮減(リダクション)の哲学」への転換が求められるが、それは今日の限りない生産と消費の循環という高度産業社会の価値観や信念体系と真っ向から対立するものである。老年期に求められる「縮減の哲学」は、現代社会の哲学と全く相反するものになっているので、現代に生きる我々は、老いと死を受容することが本当に難しくなっている。だからこそ老いと死の受容の問題を生涯学習の中核的な課題に据え直すことは、高度産業社会の価値観や信念体系に基本的な反省を促すうえで必須の課題でもある。今日のように困難になった老いと死の受容のためには、介添えが必要である。老いと死の受容は、老いつつある人・死にゆく人と、当人を取り巻く近しい人々の間に、揺るぎない確固とした信頼関係が成り立っていなければ達成できない。また老いと死の受容を試み、受容にチャレンジする人の真摯な企て・生き方は、身近に居る後続世代の人々に深い形成作用を及ぼす。人間の生を、出生から死にいたるまでのライフ・サイクル全体から捉えれば、「発達(ディベロプメント)」の彼方に横たわる縮減を視野に入れた人間形成論が必要になってくる。この新たな人間形成論は、子供と大人の発達や異世代間の相互規制をも含む人間形成だけではなく、人間の生の必然的契機である縮減を受容することによる自己成全までを考察の対象とするものである。このような人間形成論に基づけば、若い世代も老年世代も、老いと死という人生に不可避の事態をいかに受容していくのかが、生涯学習の必然的な課題となるのである。