- 著者
-
原 俊彦
- 出版者
- 北海道社会学会
- 雑誌
- 現代社会学研究 (ISSN:09151214)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, pp.99-117, 1997-06-30 (Released:2009-11-16)
- 参考文献数
- 28
「テクノロジーが申し分のない発達をとげれば,それは魔法と見分けが付かなくなる」というアーサー・C・クラークの言葉が示すように,西暦2001年を目前にして,我々は,マルチメディアパソコンやインターネットの普及,シミュレーションをべースとしたバーチャルリアリティ技術の登場など,急速な情報技術革新の波に呑み込まれようとしており,このような変化が最終的にどのような社会を生み出して行くのか,あるいは,どのような社会を生み出しうるのかという問題は,極めて今日的な社会学的テーマとなりつつある。そこで本稿では,まず,近年の情報技術革新の発展方向を(1)デジタル化(2)メディアの融合(3)ネットワーク化(4)データベース化(5)仮想現実化という5つの側面から分析し,それらがメディアをどのように変貌させうるかについて検討する。次に,エンタテインメント,商取り引き,行政,教育の4分野を例に,これらの情報技術の背景に想定されている潜在的社会需要を探り,いわゆる「マルチメディア・ブーム」の社会的モチーフについて考察する。最後に,仮に現在進行しつつあるメディアの変貌が全面的に実現するとすれば,それが,どのような生活環境の変化を産み出すことになるのかについて,メディア接触時間の拡張や現実感覚の変化,情報メディアの環境化などの問題を取り上げ,「仮想現実社会の到来」の可能性を提示する。