著者
石原 大地
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.203-208, 2021-12-19 (Released:2022-01-20)
参考文献数
15

本稿では,ラカトシュの可謬主義の見地から,数学の発展を弁証法的に解釈することの意義と課題について考察した.また,算数・数学教育において弁証法的発展を志向した授業を構想することが如何なる教育的意義を持ちうるか,前述の議論を踏まえながら検討した.そこでは,今日の算数・数学教育で重視される「数学的な考え方」の一側面や,教育課題についても触れながら,教育的意義として,先行研究で指摘されているものに加えて,⑴ 子どもの統合的な考察を促す,⑵ 教師の数学観の変容の二点を指摘した.また,具体的な学習場面についての検討から,弁証法的発展を志向した授業の構想が可能であることを示した一方で,弁証法的解釈の限界として弁証法的トリアーデでは捉えられない授業の局所的な側面があることについて指摘した.
著者
豊永 悟史 小原 大翼 宮崎 康平 古澤 尚英
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.28-41, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
37

地方環境研究所(以下,「地環研」)は,都道府県及び指定都市(以下,「都道府県等」)の出先機関として環境行政を推進するための調査や研究を担っており,その研究成果は都道府県等の行政施策へ活用されること(以下,「行政活用」)が求められる。そこで,研究成果の行政活用の実態とそれに影響する要因を把握することを目的としたアンケート調査を行った。全国的な政策課題であるPM2.5に関する研究を対象として,関連業務を担当する地環研と行政部署に対して,それぞれ個別にアンケートを送付し回答を得た。個別の研究単位では,「活用有」と回答された研究は25%(n=36),「活用無」と回答された研究が72%(n=104),「無回答」が3%(n=5)であり,「活用無」の研究が大半を占めた。都道府県等単位では,「活用有」の研究がある地環研では,「活用有」の研究がない地環研に比べて実施した研究の数が多いという関係が認められた(p<0.05)。この結果から,研究の数が多く「活用有」の研究がある地環研(n=12),研究の数が多く「活用有」の研究がない地環研(n=13),研究の数が少なく「活用有」の研究がない地環研(n=22)の3タイプに地環研を分類することができた。個別の研究の行政活用の有無及び地環研のタイプごとに,各回答項目を集計した結果に統計検定を適用し,研究成果の行政活用に影響を与える主な要素を評価した。その結果,研究単位では研究の「立案・計画」及び「取組体制」の二つの要素が,都道府県等単位では「専門性」と「行政部署との連携」の二つの要素が影響していると推測された。これらの要素は相互に関連しており,行政活用を推進していくためにはバランスを維持しながら各要素を強化していくことが重要であると考えられた。
著者
福井 謙太郎 藤井 亮吏 田原 大輔 早川 洋一 古屋 康則
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.173-186, 2007-11-26 (Released:2011-12-02)
参考文献数
39
被引用文献数
1

Gonadal development and serum profiles of sex steroids in reproductive KAJIKA, Cottus sp.SE (small egg type), were monitored over a 12-month period. The female reproductive cycle was divided into the following 5 periods based on oocyte development: recovery period (May to August), cortical alveoli formation period (September), vitellogenic period (October to December), reproductive period (January and February) and spent period (March and April). Based on ovarian histological observations, females may spawn 2 or 3 times in one reproductive period. Serum levels of estradiol-17β increased during the vitellogenic period, indicating regulation of the vitellogenetic progress. Serum 17, 20β-dihydroxy-4-pregnen-3-one in females exhibited high levels only during the reproductive period, suggesting a role in inducing final oocyte maturation. The male reproductive cycle was divided into the following 5 periods based on testicular histological observations: resting period (June to August), spermatogonial proliferation period (September), spermatogenic period (October and November), reproductive period (December to February) and spent period (March to May). Parasperm formation, which is known in some cottidae species, was noted, occurring in the sperm ducts during the spermatogenic period, but only in the main testicular lobes during the reproductive period. Serum 11-ketotestosterone levels in males increase of continually during the spermatogenic period, suggesting a role regulation of spermatogenesis in this species.
著者
西原 大樹 辰巳 浩 吉城 秀治 堤 香代子
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.A_125-A_133, 2016-02-05 (Released:2016-02-05)
参考文献数
10

本研究では、自転車専用通行帯及び車道路肩部のそれぞれ幅員の違う路線において、視点を解析することができるアイマークレコーダを用いた自転車走行実験を行い、自転車を追い越していく自動車から受ける影響に関して分析を行った。その結果、調査対象路線の中で走行空間幅員が 1m と最も狭かった路線においては、自動車の追い越し台数が増加するにつれて自らの走行場所である車道路肩を注視する時間や回数が増加していた。また、「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」で望ましいとされている幅員 1.5 m以上の、幅員が 1.85 mの路線においては自転車を追い越す自動車台数が増加するほどサッカードが発生していること、それよりもさらに幅員の広い路線では注視挙動に自動車交通の影響がみられなくなることが明らかになった。
著者
落原 大治
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.72-80, 2023-01-10 (Released:2023-01-10)
参考文献数
38
被引用文献数
1

デジタル化の進展の中で,自律的・積極的な消費者と他律的・偶然的消費を好む消費者の2極化が進む。偶然的消費を好む消費者が求めるのは,文脈依存的で瞬間的な消費や予測不可能な衝動的な満足である。消費行動に伴うインスピレーションはこの衝動的な満足を満たすとともに,後続する購買関連行動を動機づけることができる。本稿では,この偶然的な消費に対応したマーケティングを考えるにあたり重要な「消費者インスピレーション」について既存研究の整理を行った。消費者インスピレーションの「メカニズム」「先行要因」「効果」の3つの視点で検討した結果,今後の研究課題として,(1)消費者インスピレーション拡散的な性質に対応するためのマーケティングによる観点の設定の検討,(2)デジタル環境に対応した個人差要因と状況要因とその対応方法の検討,(3)消費者インスピレーションの認知的効果の検討の3つを提示した。
著者
長峯 聖人 菅原 大地
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.93.21231, (Released:2022-11-01)
参考文献数
35

Mixed emotions are defined as the co-occurrence of positive and negative emotions. In recent years, research has often focused on individual differences in the experience of mixed emotions. In this study, we conducted two studies to develop the Japanese version of the Trait Mixed Emotions Scale (TMES) which can assess the tendency to experience mixed emotions in daily life. Study 1 revealed that the Japanese version of TMES has certain level of internal consistency and that the pattern of correlational relationships of the Japanese version of TMES with explicit variables are consistent with previous studies and theoretical assumptions. Furthermore, Study 1 suggested that the TMES can be interpreted with three subscales. Study 2 revealed that the Japanese version of TMES has acceptable test-retest reliability and that the factor structure of TMES in Study 1 was replicated. Finally, some issues and prospects for future research on mixed emotions were discussed.
著者
桑原 大輔 梅原 拓也 中村 早也香 木藤 伸宏
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-9, 2022-09-30 (Released:2022-10-01)

[目的] 本研究の目的は、健常者の片脚立位における姿勢制御機能の良好と不良で、等尺性股関節外転筋力および股関節周囲筋の筋厚と筋輝度に違いがあるか明らかにすることとした。[方法] 男性健常者13名26肢とし、片脚立位における姿勢制御機能を良好と不良の2群に分けた。アウトカムは、等尺性股関節外転筋力、筋厚と筋輝度とした。得られたデータを用いて、2群の差の比較と実質的効果量を算出した。[結果] 等尺性股関節外転筋力および股関節周囲筋の筋厚や筋輝度は、2群間で有意差も中等度以上の実質的効果量も認めなかった(P<0.05)。 [結論] 本研究で扱った対象者および片脚立位の姿勢制御機能評価指標では、等尺性股関節外転筋力や筋厚・筋輝度は、大きく関与しない可能性が示された。
著者
大原 大
出版者
一般社団法人 日本UAS産業振興協議会
雑誌
次世代移動体技術誌 (ISSN:24355453)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-11, 2022 (Released:2022-03-16)
参考文献数
20

2022年,ドローンは有人地帯における目視外飛行(BVLOS)が可能となり,貨物輸送などを含めてチームでの利活用を行う場面が増えることが想定される。有人航空機では,複数人によるチームでヒューマンエラーを防止し安全運航を行うための手法として,CRM(Crew Resource Management)と呼ばれるスキルがあり,運航に携わる者は定期的な訓練でスキルを維持することが求められている。航空機事故は約6-8割が人的要因によるものと指摘されているため,ドローン関連人材の育成においてもCRMを有効活用することで事故防止に貢献できると期待される。
著者
玉澤 基良 稲山 正弘 青木 謙治 落合 陽 河原 大 稲田 勲保
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.26, no.63, pp.525-530, 2020-06-20 (Released:2020-06-20)
参考文献数
10

Wood bracing shear walls are usually installed in not only residential houses but also medium or large-scale wooden buildings. It is no problem to provide bracings in residentials. But, in case of providing bracings in medium or large-scale wooden buildings, it will be difficult that the bracings exert its strength of shear walls which is prescribed in Japanese Building Code. The purpose of this study is to clarify the specification for exerting its strength in medium or large-scale wooden buildings throughout the racking test of full-size shear wall. And the purpose was achieved by this experiment.
著者
田中 博 野原 大輔 横井 みずほ
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.611-630, 2000-10-25
被引用文献数
5

本研究では、韓国のIce Valleyと福島県の中山風穴の現地観測結果を基に、0次元モデル、流路に沿った1次元モデル、鉛直断面としての2次元モデルを開発して、風穴循環の一連の数値シミュレーションを行なった。これらの風穴は、周辺の稀少な高山植物の生育により国の特別天然記念物に指定されているが、近年氷の減少傾向が見られ、その原因究明が急務となっている。現地観測および数値実験の結果として、以下のことが明らかになった。(1)風穴循環の主な駆動力は、外気と崖錘内部の気温差による水平圧傾度力である。(2)崖錘内部の空気の滞留時間は約2日であり、平均的な風穴循環は、約1mm/sと推定される。(3)春から夏にかけてのカタバ風としての冷風穴循環は、秋から冬にかけてのアナバ風としての温風穴循環と入れ替わる。(4)崖錘表面に植生が殆どないIce Valleyの場合、夏季の安定したカタバ流とは対照的に冬季には不安定による対流混合が発生し、このような風穴循環の夏冬非対称性が、崖錘内部の平均温度を下げる熱フィルターの役割を果たす。外気が暑ければ暑いほど、崖錘内部のカタバ風が強くなることは注目に値する。Ice Valleyや中山風穴における夏期氷結の謎は、部分的ではあるが、この風穴循環のメカニズムによって説明することができる。
著者
佐藤 裕二 七田 俊晴 古屋 純一 畑中 幸子 内田 淑喜 金原 大輔
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.101-104, 2021-09-30 (Released:2021-10-21)
参考文献数
6

目的:2021年6月に,2020年6月(医療保険導入後2年2カ月)の社会医療診療行為別統計が公表されたので,これを前報の実施状況と比較することで,最新の口腔機能低下症の検査・管理の実態を明らかにすることを目的とした。 対象と方法:2019年6月,2020年6月および2021年6月に発表された社会医療診療行為別統計により,医療保険導入後2カ月,1年2カ月,2年2カ月の口腔機能低下症の検査・管理の実施状況を調査した。 結果:「65歳以上の初診患者」は225万人(2019年),188万人(2020年),125万人(2021年)と減少していた。そのため,2019年から2020年にかけての検査・管理件数はわずかな増加(1.2倍)であったが,初診患者数に対する実施率は1.8倍になった。 考察:検査・管理件数は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響も考えられ微増(21.2%増)にとどまったが,普及は進みつつある。ただし,口腔機能低下症の有病率と比べると依然として実施率は少ない。 結論:口腔機能低下症の検査・管理は普及してきたが,さらなる普及に向けた努力が必要であることが示された。
著者
菅原 大
出版者
日本鉄道技術協会
雑誌
JREA : 日本鉄道技術協会誌 (ISSN:04472322)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.35673-35676, 2011-01-01
参考文献数
1
著者
坂井 隆敏 北原 大吉 鳥丸 亮 松本 清
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1449-1454, 2004-12-05
参考文献数
13
被引用文献数
2

近年,地雷埋設地帯や爆薬製造工場近辺において,爆薬関連化合物による環境汚染が問題となっている.爆薬2,4,6-トリニトロトルエンは,環境中に放出されると2,4-ジニトロトルエン(2,4-DNT)や2-アミノ-4,6-ジニトロトルエン(2-ADNT)などに変換される.これらは,人体に対する毒性や変異原性,発がん性等が危惧され,環境中における濃度や分布状況の把握が急務である.これら化合物の迅速かつ高感度な測定法の確立を目的として,化学発光酵素免疫センサーを構築した.目的物質に対する抗体を作製し,免疫センサーを構築することで,わずか15分の測定時間でおよそ10~1000 ng/mlの2,4-DNT及び2-ADNTの測定が可能であった.相対標準偏差は0.8~7.1%(<i>n</i>=3)と比較的良好なものであった.また,抗原・抗体反応を行う際の流量を低下させることにより,更に高感度な測定が可能であった. <br>
著者
稲原 大翔 元井 直樹
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.142, no.2, pp.86-94, 2022-02-01 (Released:2022-02-01)
参考文献数
27

This paper proposes a search algorithm using particle swarm optimization (PSO) with virtual pheromone for swarm robots. Swarm robots are attracting attention in disaster relief works to search for victims. The search algorithm involves a combination of global and local searching. The conventional search method consists of random walk as the global search and PSO as the local search. However, random walk is not efficient in complex environments. For efficient searching, PSO with virtual pheromone is used for the global search. The virtual pheromone drives the swarm robots to an unsearched area, dose not need map data, and has low calculation cost. In addition, it is not necessary in the proposed method to switch algorithms between global and local searching. The validity of the proposed method was confirmed from the simulation results.
著者
梶原 智之 西原 大貴 小平 知範 小町 守
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.801-824, 2020-12-15 (Released:2021-03-15)
参考文献数
50
被引用文献数
1

本研究では,日本語の語彙平易化のために,評価用データセット・辞書・実装や評価を支援するツールキットの 3 種類の言語資源を整備する.我々は既存の小規模な単語難易度辞書をもとに単語難易度の推定器を訓練し,大規模な日本語の単語難易度辞書および難解な単語から平易な単語への言い換え辞書を自動構築する.本研究で構築する評価用データセットを用いた評価実験によって,この辞書に基づく語彙平易化システムが高い性能を達成することを示す.我々のツールキットは,辞書の他,語彙平易化パイプラインにおける主要な手法を実装しており,これらの手法を組み合わせたシステムの構築および構築したシステムの自動評価の機能を提供する.
著者
土屋 雅美 河添 仁 江面 美緒 橋口 宏司 飯原 大稔 橋本 浩伸
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.664-671, 2020-11-10 (Released:2021-11-10)
参考文献数
18
被引用文献数
2

We developed an international journal club, using an online meeting tool, as an evidence-based medicine training program intended for healthcare professionals and students. This study aimed to evaluate the outcome of the journal club via a questionnaire survey. We administered the questionnaire to 53 healthcare professionals and students who participated in the journal club between February 2019 and April 2020. Respondents showed positive improvement scores after participating in the journal club, compared with those before, as conveyed through the use of a seven-point Likert scale. The median scores of critical thinking skills, discussion skills in English, evidence-based practice skills, and the sense of freedom to ask questions and make comments after participating in the journal club were significantly improved from 4 (interquartile range [IQR]: 2 - 5) to 5 (IQR: 4 - 6); 3 (IQR: 2 - 4) to 3 (IQR: 2 - 5); 3 (IQR: 2 - 5) to 4 (IQR: 3 - 6); and 3 (IQR: 1 - 5) to 3 (IQR: 2 - 6), respectively. Moreover, they expressed interest in the opportunity to share articles on topics of interest with other professionals from different disciplines, to exchange clinical practice ideas concerning topics of interest, and to explore differences in clinical settings between Asia and the MD Anderson Cancer Center. They also expressed great appreciation for the online meeting format, novelty, and overall qualities of the journal club. These findings suggest that an international journal club for healthcare professionals and students could be useful in an evidence-based medicine training program and communication in English.