著者
飯原 大稔
出版者
岐阜大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では、抗がん剤投与に関連する急性(点滴後0-24時間)の悪心・嘔吐の予防効果において5-HT3受容体拮抗薬の注射薬に対する内服薬の非劣勢を証明するために、岐阜大学医学部附属病院呼吸器内科で高・中リスクの抗がん剤を投与された患者を対象とし、アザセトロン錠(アザセトロン群)とグラニセトロン注射液(グラニセトロン群)を用いてオープンラベル無作為化比較試験を実施した。本邦では急性悪心・嘔吐の予防には注射薬が主に用いられているが,内服薬が使用可能となれば薬価が注射薬の約4分の1と安価である(グラニセトロン注射薬:5,667.0円、アザセトロン錠:1,480.4円)ことから医療費抑制においては非常に有利である。現時点で本研究に組み入れられた患者数は106名で、その内の試験が終了した90名について解析を行った。有用性の一次評価項目は急性期に中~高度の悪心なし、嘔吐なし、救済的制吐薬投与なしの3条件を満たす完全制吐率とした。2次評価項目として遅発期(24-120時間)の完全制吐率、全期間(0-120時間)の完全制御率、血液毒性、非血液毒性とした。急性期の悪心・嘔吐おけるアザセトロン群およびグラニセトロン群の完全抑制率はそれぞれ97.7%および97.8%となり有意な差は認められなかった。遅発期および全期間における完全制御率はアザセトロン群およびグラニセトロン群の完全抑制率はそれぞれ68.2%および65.2%となり有意な差は認められなかった。副作用の評価においては、血液毒性および非血液毒性共に両群間に有意な差は認めなかった。これまでの結果より医療経済的に優れているアザセトロンの経口投与はプラチナ製剤を含む肺がん化学療法において有用な薬剤と考えられた。
著者
守倉 正博 田野 哲 梅原 大祐
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究により基礎的なスロット付きアロハ方式を用いたネットワークコーディング技術による多段中継システムについて,送信権に関して優先度をつけることにより,スループットが最適化される事を計算機シミュレーションおよび理論的に明らかにした.さらに,物理レイヤの熱雑音や電波干渉が無線中継システムに与える影響について理論的に明らかにした.また広く用いられているIEEE 802. 11規格による無線LANを用いた場合の宅内無線中継システムにおいて, CWmin制御やAIFSN制御を用いた新しい考案方式により,ネットワークコーディングを用いた場合のスループット特性の改善や,音声信号に対するQoS制御が可能であることを計算機シミュレーションにより示した.
著者
跡見 順子 長尾 恭光 八田 秀雄 柳原 大 桜井 隆史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、運動を生み出すための細胞内外の張力伝達構造である細胞骨格及び細胞外基ECMとその分子シャペロン・ストレスタンパク質を中心に、筋・関節、それらの培養細胞を用いて適切・適度な運動の基盤研究を行い、適切適度な運動の評価軸を明らかにした。1)細胞骨格の分子シャペロンαB-クリスタリン(αB)のC末領域:α-crytallin domainが、細胞骨格・チューブリンの熱変性抑制に働く。2)拍動する心筋細胞でGFP-αBは横紋を示し構造タンパク質の動的なケアをしている。3)αBのN末は、MAP-微小管の脱重合抑制効果を示す。4)不活動でコラーゲン特異的分子シャペロンHSP47が減少し、重力負荷で増加する。筋芽細胞でも同じ結果を示す。その応答はきわめて早く新たな重力応答領域が発見される可能性がある。5)2℃の温度の上昇により培養筋細胞の分化促進及び筋の遅筋化の促進がある。6)マイルドなトレッドミル走でラットの膝関節のIII型コラーゲン、ヒアルロン酸合成酵素などECMタンパク質mRNAに変化が観察され細胞環境創成にも適切適度がある。7)座業がちな高齢者ではリン酸化αBはとくに沈殿分画で増加し、ユビキチン化タンパク質が増加、分解が減少している。8)個体レベルでのホメオスタシス維持機構HPA軸末端の副腎で、運動によるグルココルチコイド合成の活動期直前の上昇にはHSP70がシャペロンとして機能することから、細胞・身体の両面での適切適度な運動のマーカーとしてストレスタンパク質が有用である。運動は生命、細胞そのものへの働きかけであることから、とれを理解する教育へ応用するために、東京大学における1年必修授業に「身体運動と生命科学」を導入し、細胞で考えることの重要性、遺伝子との関係性などに関する教育プログラムを作製し導入した。受講者へのアンケート結果から運動の本質的な効果の理解に貢献したことが示された。
著者
今村 文彦 後藤 和久 松本 秀明 越村 俊一 都司 喜宣 牧 紀男 高橋 智幸 小岩 直人 菅原 大助 都司 嘉宣
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

千年に一度程度発生する低頻度巨大津波災害であるミレニアム津波ハザードの事例を取り挙げ,災害史学から明らかにされる史実に加え,地質学・堆積学・地形学・地震学など科学的な手法に基づいて補完することで,沖縄および東北地方でのミレニアム津波ハザード評価を検討した.まず,八重山諸島において津波で打ち上がったサンゴ化石(津波石)の分布調査および解析により,1771年明和津波に加え,850,1100 yrBPの2期存在する可能性が示された.さらに,仙台平野でも学際的な調査を行い,869年貞観地震津波に加え,1260や2050yrBPされた.2011年東日本大震災で得られた津波被害関数などの検討も実施した.
著者
河原 大輔
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究は、アメリカ映画におけるポスト古典映画の諸相を明らかにするべく、近年積極的に行われてきたポスト古典論争の再検討を、とりわけインディペンデント映画研究、ニューメディア論との比較検討から重点的に行った。インディペンデント映画研究においては、とりわけ、ポスト古典初期ともいえる60年代後半からそのキャリアをスタートさせたデイヴィッド・リンチを主たる研究対象とし、彼の作品の製作・配給・上映形態がいかなる変化を遂げてきたのかを検証した。そこで明らかになったのは、深夜上映からブロックバスター、テレビドラマ、ウェブサイトへと、変則的ながらもゆるやか移行を見せるリンチの製作態度が、ポスト古典論を展開する理論家が提示してきた現代アメリカ映画の諸特徴と連動するのみならず、90年代以降のニューメディア論とも共振しているということである。また、テレビドラマのパイロット版を映画として公開したり、ウェブサイトでの公開用に撮影したデジタル映像を映画館でフィルム上映したりする近年のリンチの変則的な製作態度を、オールド・メディアとしての映画からインターネットをはじめとするニューメディアへの移行という直線的なメディア史の記述方法に疑問を投げかける重要な事例として検討した。これらの結果判明したことは、現代はむしろ、ヘンリー・ジェンキンスが説くように、新旧のメディア双方が乗り入れ、奇妙な同居を見せる時代として理解されるべきであり、このように理解したとき、リンチの映画および60年代以降のポスト古典映画は旧来の古典映画とニューメディアを段階的に繋ぐ領域として、より広義にはポストモダンへの移行を記述するメディアとして、意義深い視点を提供するであろうということである。研究成果は日本映画学会および日本アメリカ学会において順次発表される予定である。
著者
梅原 大祐 田野 哲 守倉 正博 杉山 隆利
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.276, pp.65-70, 2009-11-05

デジタルデバイドや不感地帯の解消を目的として無線中継局を用いた無線アクセスシステムが検討されている.前回の報告では,各無線ノードにCSMA(Carrier Sense Multiple Access)プロトコルを実装した2ホップ無線アクセスシステムにおいて,ネットワークコーディングを適用しない場合と適用した場合の双方において,中継ノードを介したエンドノード間が隠れノードでない場合とある場合のスループットを評価した.本稿では,中継ノードを介したエンドノード間が隠れノードである場合においてスループットに対するRTS/CTS(Request To Send/Clear To Send)の効果について検証する.RTS/CTSを導入したときのオーバーヘッドを評価するため,提案スループット解析モデルにIEEE802.11aのPPDU(PLCP Protocol Data Unit)フレーム構成,IFS(Interfame Space)時間及びスロットタイムを適用する.ここで,PLCPはPhysical Layer Convergence Protocolの略である.解析の結果,オーバーヘッドの増加にかかわらず,RTS/CTSとネットワークコーディングにより高いコーディングゲインが得られることを明らかにする.
著者
飯高 茂 水谷 明 藤原 大輔 中島 匠一 岡部 恒治 川崎 徹郎
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究においては主に高校数学の数学教育のあり方を様々な面から研究した。平成13年度から15年度まで9月と1月に数学教育の研究会「数学教育の会-夏の集会、冬の集会」を開催し、大学、高校、教育行政、学会など幅広い数学教育関係者が70名前後集まり、論文の発表と討論を行った。具体的事項を挙げる。1 新しい学習指導要領での新科目「数学基礎」について、その構成、具体的な素材の展開などが研究会でくり返し発表され議論された。その結果は「数学教育研究数学教育の会編集」に詳しく発表され実際の教育現場で活用された。2 研究代表者は、高等学校数学の科目「数学C」で学習される「いろいろな曲線」の内容をさらに研究し、専門的な数学の立場に立った研究書「平面曲線の幾何」他を出版し研究成果を公表した。3 高校から大学の数学教育の中心は微積分であるが、その社会での有用性の研究を行った。4 学力向上のためには数学的活動の活発化が大切で、そのための様々な素材や方法が研究された。また、簡単な内容でも数学的に深い研究ができる例が発表された。5 数学の勉強を日常化するのに有効な方法として、携帯型ゲーム機にグラフ電卓の機能を付加して生徒がゲーム感覚の延長で数学を視覚的に捉えるここを可能にするソフトを開発した。これを用いて関数のグラフを身近なものとし、数学力を確かにつけることが期待できる。6 これらの研究成果を「数学教育研究数学教育の会編集」にまとめ2002年1月、2003年1月、2004年1月に出版し、各方面に配布した。また、数学的活動の例示集「数学教育研究番外編コンピュータを用いた数学的活動数学教育の会編集」を2002年2月に出版した。
著者
長嶋 祐二 市川 熹 神田 和幸 原 大介
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は,手話の非手指信号の言語学的機能やコミュニケーションのための認知機能を解明し,その結果を手話画像の符号化,アニメーション生成などに適用することである.本研究では,下記の主な項目について成果を得た.1.認知的機構の解析では,事象関連電位N400計測に基づいた意味処理過程解析の検討を行った.その結果,手話・文字による意味的逸脱単語でN400が観察され電位は文字刺激で大きいことがわかり,呈示モダリティによって処理過程の違いを示した.対視線データの計測では,視線の停留と習熟度との相関を示し,理解度が上がれば顔への停留率が向上する結果を得た.2.解析支援システムでは,電子タグ付けならびに,磁気センサーからの3次元データを描画するシステムの構築を行った.この支援システムにより,映像と生理データを同期して解析することが可能となり,解析時間の効率化が図れた.3.記述・解析部では,手話の階層的形態素NVSモデルの非手指信号の記述機能の強化を行なった.4.対話モデルの解析では,抑制-非抑制手話を解析し,抑制部位の調動が表出可能な身体動作へ変形するメカニズムの存在が示唆された.また,手話の遅延検知限は100〜200msであることを明らかにした.音声会話と比較して,手話は遅延に関して寛容であることを示した.5.画像符号化では,さまざまなサイズの手話映像の評価から読み取りには,空間解像度より画像のフレームレートが重要であることがわかった.上記の成果を基に手話動画像符号化として新しいAdapSync符号化を提案した.本研究を通して得られた成果は,国際会議をはじめ電子情報通信学会論文誌・学会誌,ヒューマンインタフェース学会論文誌・学会誌などに掲載あるいは掲載予定である.尚,本研究の成果をうけ、手話の対話解析を通し脳科学的な認知科学的側面からの理解機構解明の作業を続行している。
著者
松尾 敏郎 西山 俊宏 松原 大典 木村 磐根
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播
巻号頁・発行日
vol.98, no.169, pp.15-22, 1998-07-09

オーロラヒスは準静電的ホイスラーモード波で, 低エネルギー電子ビームによるincoherent Cerenkov radiationによって発生すると考えられているが、この発生機構では地上でオーロラヒスが観測されているのにも拘らずヒスの波面法線角はレゾナンスコーン近い角度で下方伝搬するため電離圏を突抜け地上に到達するのは難しい。本研究ではオーロラ出現時の極域磁気圏の電子密度分析をISIS-I衛星のトップサイドサウンーダで観測された空間的な電子密度分布を考慮した電子密度モデルを導入する事により, 準静電的ホイスラーモードで伝搬するオーロラヒスが地上で観測されうる事を明らかにし, 特にオーロラが観測地点の赤道側に出現した時でも地上で観測される事を明らかにした。
著者
梅原 大祐 平野 智也 田野 哲 守倉 正博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.60, pp.19-24, 2008-05-22
被引用文献数
7

無線システムのシステム容量の拡大を目的として,マルチホップによる無線中継ネットワークが検討されている.一方,システム容量の拡大の一つの技術として,ネットワークコーディングが注目されている.本稿では,不均一なトラヒック環境下における,2ホップ無線中継Slotted ALOHAシステムに対して,ネットワークコーディングを適用した場合のスループット,パケット送信回数,伝送遅延を解析的に導出する.解析結果は中継ノードのバッファの状態に関する待ち行列システムを解くことによって導かれる.
著者
遠原 大地 後藤 玲子 伊東 弘樹 森 一生 鳥越 繁治 中川 辰二 因泥 栄一郎 武山 正治
出版者
日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.255-260, 2004-04-10
被引用文献数
2 2

We developed a support system for pharmaceutical counseling services using a handheld computer loaded with HS-WIN. HS-WIN is standard software for pharmaceutical counseling services that is compatible with Windows X-P, 2000 and 98. Our support system is linked to the pharmacy network system of Oita University Hospital. It enables various kinds of information to be retrieved from the pharmacy network system and shown on the display of a handheld computer. This includes drug information, names, sex, birth dates, heights and weights of patients as well as clinical department and ward-related information. The handheld computers are the VAIO PCG-U 1 and PCG-U 3 (SONY, Inc.) and they are used at the bedside. To evaluate the effectiveness of our system,we measured the time required for the management of medication histories and patient counseling records for three wards.The system was able to reduce the time required per patient by an average of 34 minutes.
著者
松下 伸行 日原 大輔 後 輝行 吉村 真一 暦本純一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.3664-3674, 2002-12-15
被引用文献数
20 27

実世界の状況を積極的に利用する拡張現実システムのための,新しいID認識カメラシステムを提案する.人の見ている事物に応じて情報を提示する拡張現実システムは,実世界状況を積極的に利用しているが,ID認識技術が近距離でのみ利用であったために理想環境でしか実現していない.そこで,目の前から遠くまでのユーザの見ている事物を,区別するのに十分な空間解像度を持つ新しいID認識システムが必要である.本研究では光ビーコンと高速イメージセンサを利用することで,普通のカメラとしてシーンを撮像するだけでなく,ビーコンのIDを近距離から長距離まで認識できるID認識システムを提案する.このシステムをIDカメラシステムと呼ぶ.IDカメラシステムを実装し,特性評価を行った結果,実環境で使用するのに十分ロバストであることが確認された.IDカメラシステムをネットワーク型携帯端末に搭載することで,実環境において拡張現実システムの構築が可能である.This paper describes our design and implementation of a new IDrecognition system called the ID Camera system. Although AR systemspresent information according to things that people are looking at inthe real world, the present ID recognition systems can be used only inan ideal environment. Therefore, a new long range ID recognitionsystem is required. In this paper, we propose an ID recognition systemusing Optical IDs and a high-speed image sensor. The ID sensorcaptures a scene as an ordinary camera as well as recognizing the IDof the beacon from a long distance. We implemented the ID Camerasystem and performed characteristic evaluations. A mobile AR systemcan be realized by combining this ID Camera system and a PDA with awireless network.