著者
吉澤 英里
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.10-15, 2020-07-31 (Released:2020-07-31)
参考文献数
23

This study focused on social anxiety and examined the effects of approval motivation (including praise-seeking needs and rejection-avoidance needs) and fear of evaluation (including fears of positive and negative evaluations) on social anxiety (social interaction anxiety and the deficit of self-efficacy in interactive social situations). A survey was conducted among university students. The results indicated that positive regressions from fears of positive and negative evaluations to social interaction anxiety were significant. Moreover, positive regressions from rejection-avoidance needs to fear of positive evaluation, fear of negative evaluation, and social interaction anxiety were also significant, whereas negative regressions from praise-seeking needs to fear of positive evaluation, and social interaction anxiety were significant. In addition, negative regressions from praise-seeking needs to the deficit of self-efficacy in interactive social situations were significant. These results indicate that (1) praise-seeking needs, which are a part of approval motivation, decreased social anxiety and fear of positive evaluation, and (2) praise-seeking needs were related to self-efficacy in interactive social situations.
著者
澤海 崇文 望月 正哉 瀧澤 純 吉澤 英里
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-10, 2023-05-15 (Released:2023-05-20)
参考文献数
33

In recent years, some forms of interpersonal communication labeled “ijiri” have played a significant role among the youth. This paper investigates what type of affective experience ijiri is perceived to cause compared with similar behaviors like teasing and bullying. We recruited 312 university students and asked them to answer questions about the possible affective experiences that arise in either of the agents (actor or receiver) in response to each type of behavior. The rating was done from the standpoint of either the actor, receiver, or third party. Results revealed that compared with the other two types of behavior, ijiri was perceived to cause lesser negative affective experiences. Affective experiences entailed by each type of behavior were influenced by the role of the respondent and that of the appraisal target. Future research is warranted to investigate the generalizability of the findings, given the limitations of self-reported measurements and conceptualization of affects.
著者
水上 博喜 吉澤 康男 笹屋 昌示 根本 洋 佐々木 純 葛目 正央 成原 健太郎 真田 裕
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.669-672, 2006-07-31 (Released:2010-09-24)
参考文献数
10
被引用文献数
4

症例は74歳, 男性. 腹痛の増悪を主訴に当院を受診し, 右上腹部の圧痛, 軽度の反跳痛を認めたが, 血液検査ならびに画像検査上明らかな異常所見はみられず, 急性腹症の診断で経過観察入院となった. 入院後, 腹痛の増強, 腹部膨満が出現し, 2日後の血液検査所見より膵炎による腹膜炎が疑われた. 腹部造影CT所見では, 膵臓には異常がなく, 右上腹部に腹水の貯留が出現していた. 診断目的に腹水穿刺を行い, 胆汁様腹水が採取されたため, 胆汁性腹膜炎と診断して緊急手術が行われた. 開腹所見では, 胆嚢体部肝床部側に穿孔を認めたが結石はなく, 術中胆管造影造影検査でも, 総胆管結石や走行異常はみられず, 胆嚢摘出術と腹腔ドレナージを行った. 病理組織学的検査では, 胆嚢は穿孔部を除き, 粘膜構造は正常であり, 穿孔部周囲の血管に血栓などの病変は存在せず, 特発性胆嚢穿孔と診断された. 腹水の細菌培養検査も陰性であった.
著者
川端 博子 秋廣 ひとみ 吉澤 知佐
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.153-161, 2009-02-15

快適な空調環境と発汗を伴う暑熱環境を想定した状況下で,サマーウールのワンピースの下に着用する裏地キャミソールを例とする着用試験をもとに春夏向け衣料にふさわしい裏地に関する知見を得た.(1)ウール素材のワンピースの着用試験から,快適環境下では,裏地キャミソールを使用することによって肌触りとやわらかさを向上させ,快適感を高めることが明らかとなった.しかし,発汗の生じる暑熱環境下では,貼りつきや蒸れ感が高まり,快適感は低下する傾向がみられた.(2)付与水量を違えた裏地の貼りつき抵抗試験から,フィラメント無撚糸で構成される平滑な一般裏地では,貼りつき抵抗は大きくなるが,擬麻加工糸やスパン糸のもので抵抗は小さいことが示された.(3)着用評価から,空調された快適な環境下で発汗のない場合にはやわらかく,肌触りがよく,吸湿性のよい一般型のキュプラ裏地のキャミソールが好まれた.一方,暑熱環境で発汗のある状態では,貼りつき感の小さい裏地キャミソールの評価が高く,擬麻加工糸やスパン糸で構成される凹凸のある裏地がふさわしいことが明らかとなった.中でも,スパン糸のキュプラ裏地では,2環境下での快適性評価に有意な差はみられず,発汗の有無に関わらずともに高い評価が得られた.
著者
吉澤 和徳
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.112-120, 2016-07-05 (Released:2019-04-25)
参考文献数
61

Current understanding of the phylogenetic placement and higher-level systematics of the order Psocodea (“Psocoptera”+Phghiraptera) was reviewed. Recent molecular phylogeny and phylogenomics placed Psocodea to the sister of the Holometabola, but those studies could not reject the monophyly of Paraneoptera (Psocodea +Condylognatha) statistically. Therefore, monophyly of Paraneoptera, as strongly suggested morphologically, remains a well-founded and highly likely hypothesis. Monophyly of the Psocodea and the placement of Phthiraptera within the “Psocopteran” suborder Troctomorpha are well established morphologically and molecularly. Monophyly of all“Psocopteran” (Trogiomorpha, Troctomorpha including Phrhiraptera, and Psocomorpha) and Phthirapteran (Amblycera, Rhynchophthirina, and Anoplura) suborders is also well supported morphologically and molecularly, but monophyly of the Phthirapteran suborder Ischnocera is controversial.
著者
原田 知佳 吉澤 寛之 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.122-136, 2009 (Released:2009-03-26)
参考文献数
42
被引用文献数
10 4

本研究は,社会的迷惑行為および逸脱行為といった反社会的行動に及ぼす自己制御の影響過程について,脳科学的基盤が仮定されている気質レベルの自己制御と,成長の過程で獲得された能力レベルの自己制御の2側面に着目し,気質と能力の因果関係を含めた包括的モデルの検討を行った。対象者は高校生・大学生の計641名であり,自己制御の気質レベルはBIS/BAS・EC尺度を,能力レベルは社会的自己制御(SSR)尺度を用いた。分析の結果,次の知見が得られた。(1)SSRの自己主張的側面はBIS/BAS,ECからの直接効果が示されたのに対し,自己抑制的側面はECからの直接効果のみが示された。(2)気質レベルよりも能力レベルの自己制御の方が,反社会的行動により強く影響を及ぼすことが示された。(3)社会的迷惑行為と逸脱行為とでは気質レベルの自己制御からの直接効果に差異が示され,前者はEC,BASからの直接効果,後者はBIS/BASからの直接効果が示された。(4)能力レベルの自己制御と逸脱行為との関連については,自己抑制と自己主張の交互作用的影響が認められ,自己抑制能力を身につけずに自己主張能力のみを身につけると,他者を配慮せずに自己中心的な行動を行う自己主張能力として歪んだ形で現われるために,逸脱行為に結びつきやすい傾向が示された。以上の結果に基づき,反社会的行動に及ぼす自己制御の影響過程,社会的迷惑行為と逸脱行為との相違点および共通点について議論した。
著者
吉澤 剛
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.31-37, 2020-04

ノルウェーにおける新型コロナウイルスの感染拡大は4 月上旬にコントロール下に入ったとされ,社会的機能を少しずつ再開していく方針が発表された.政府の危機対策管理は分散的な構造となっており,省庁間の調整支援機関が機能を発揮している.ノルウェー公衆衛生研究所(NIPH)では,多様な市民に対するわかりやすい情報やアドバイスのほか,最新の学術研究の見取り図も提供するなど,俯瞰的で包括的な活動を展開する.ノルウェーの専門機関は,過去の危機において市民とのコミュニケーションにたびたび失敗しているものの,政府や専門家に対する市民の信頼は篤く,情報を通じて伝えられる専門家の知的謙虚さや個人的感情をもとに冷静に判断を下しているとみられる.この冷静さはコロナ以後における新たな日常の「奇妙さ」と対峙し,それを保持していく鍵でもある.
著者
吉澤 剛 ファン・エスト・ リニー 吉永 大祐 田中 幹人 標葉 隆馬 小長谷 明彦
出版者
Chem-Bio Informatics Society
雑誌
Chem-Bio Informatics Journal (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.164-172, 2018-12-01 (Released:2018-12-01)
参考文献数
38
被引用文献数
5

分子ロボティクスは環境の変化に適応し、自己組織化、進化できる人工的な分子システムの創成を目的とした学術領域である。本稿では分子ロボティクス技術の分野で責任ある研究・イノベーションをどのように促進するかについて検討する。そのためにまず、遺伝子組換え技術やナノテクノロジー、合成生物学やゲノム研究などの先進技術の日本における初期発展段階での社会的反応から教訓を得た。それは《適切な》専門家・ステークホルダーの発見と巻き込み、規制の更新、科学コミュニケーションにおける科学者および市民の巻き込みである。分子ロボティクスの社会的側面に関する学術的・社会的議論の現状として文献レビューや未来ワークショップ、シナリオワークショップを実施した。そこでは幾多の倫理的・社会的・政治的・文化的課題を提起し、次の数十年で起こる望ましい/望ましくないシナリオを描いた。Twitterのテキストマイニング分析では、幅広い市民において分子ロボティクスについての意識や関心、知識がまだ限定的であることを明らかにした。結論として、分子ロボティクスが責任あるイノベーションを可能にするには、分子ロボティクスの発展のスピードを掌握すること、技術的潮流を監視すること、テクノロジーアセスメントのための安定的な知識基盤を確立すること、そして分子ロボティクス研究者と社会科学者との持続可能な相互関係を構築することである。
著者
吉澤 道夫 水下 誠一 日本学術会議 核科学総合研究連洛委員会原子力基礎
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.319-324, 1999 (Released:2010-02-25)
参考文献数
2
被引用文献数
1

放射線や放射性同位元素の利用は, 基礎及び応用の諸科学, 工業, 農水産業, 医療等の広い分野で進められ, 現在の社会にとって欠かすことの出来ない手段となっている。一方, 放射線や放射性同位元素はその発見当時から人体への影響が研究され, 不用意な被ぼくが悪影響を及ぼすことが知られてきた。このために, 安全のための規制が設けられ, その取扱いは厳重な管理の下に行われている。わが国で放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律 (以下「放射線障害防止法」という。) が定められた当時, 放射性同位元素の利用は, 原子炉等で製造された物を入手して利用するという形態であり, 短時間に減衰し消滅する放射性同位元素は, 加速器を用いた原子核の研究など限られた場所と分野以外には利用の方法が無かった。このため現在の規制は, 短時間に消滅する放射性同位元素を扱うことを想定していない。近年, 医療の分野では, 加速器を用いて短寿命の放射性同位元素を製造し, 人体機能の研究や診断に用いる技術が大きく発展し, 生理学的・生化学的機能を調べる上で欠かすことの出来ない重要な手法となっている。このような手法が医療行為として行われる場合には医療法による規制を受け, 研究に用いる場合には, 放射線障害防止法の規制を受ける。しかし, 研究や診断に用いた短半減期放射性同位元素は短時間に消滅するので, 使用した器具, 投与した動物などは一定の短期間管理すれば, 現在のような放射線管理の必要はなく, その取扱いについて特別の考慮が必要である。このため, 当専門委員会では, 前期に引き続き今期当初より陽電子放出断層撮影 (PET) の使用に係る安全性について, ワーキンググループを設置し検討してきた。検討の結果PETに使用される短半減期放射性同位元素の使用に関する規制について以下のように適正化することを提言する。「短半減期放射性同位元素を用いた放射性薬剤として製造法が確立され, 長半減期放射性同位元素の混入してないことが確認された薬剤について, これを使用した器具, 投与された動物などは, 期間を定めて管理した後, 定められた測定方法により安全性が確認された場合, 放射性物質で汚染されたものとしての管理の必要のないものとして処理できることとする。安全性の確認法, PET用放射性薬剤以外の放射性同位元素の混入防止策等について指針を定めて早急に実施すること。」