著者
高瀬 冴子 坂田 脩 長島 典夫 吉田 栄充 三宅 定明 石井 里枝
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.301-306, 2017-08-15 (Released:2017-08-15)
参考文献数
15

福島第一原発事故以降,食品の放射能汚染が懸念されていることから,γ線スペクトロメトリーを用いて,日本に流通する梅加工食品100検体(2015年から2016年に購入)の放射能調査(134Cs及び137Cs)を実施した。134Csは6検体から検出され(0.82~12 Bq/kg),137Csは40検体から検出された(0.65~69 Bq/kg)。最も放射能濃度が高かった検体は梅エキスであり,134Csと137Csの和は81 Bq/kgであった。この濃度は一般食品の規格基準値の5分の4程度であった。放射性セシウムが検出された梅加工食品を1年間摂取した場合の成人の預託実効線量は最大で約1.7 μSvであった。
著者
吉田 徳夫
出版者
関西大学
雑誌
關西大學法學論集 (ISSN:0437648X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.1-27, 2004-02-25
著者
五味 壮平 深田 秀実 吉田 等明
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.8, pp.105, 2008

ここのところ、mixiなどの巨大SNSとは別に、地域をベースとした、より小規模のSNS―地域SNS―が、全国各地で設置され、運営が行われるようになった。これらのSNSは、地域情報化のツールとして、地域活性化地域イメージの醸成、地域アイデンティティの確立などを支援するものとして期待されている。 本研究では、平成19年11月に運用が開始され、現在発展途上にある「もりおか地域SNS」を分析対象として、1)地域SNSによって醸成・共有されうる地域イメージとは、 具体的にはどのようなものか?2)地域SNSの構造や機能には、巨大SNSと比較して どのような特徴があるのか?ということについてアプローチする。これらの作業を通して、地域SNSがどのような役割を担いうるか、その可能性について考察する予定である。
著者
吉田意安
出版者
西田勝兵衛
巻号頁・発行日
vol.[7], 1641
著者
對馬 宣道 栗田 明日香 大森 聖 菊地 萌 鈴木 波 前田 亮輔 太田 能之 吉田 達行 中尾 暢宏 田中 実
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.343-348,図巻頭1p, 2014-03

日本ウズラの卵の斑紋は,極めて特徴的であり人々の目を惹くため,1960年代の研究者たちの興味は,もっぱら卵管の卵殻腺部からの色素分泌と,卵殻表面への色素沈着に向けられていた。また,これらの研究者が,対象とした日本ウズラの卵殻色素と言えば,独特の斑紋の形成に深く関与しているプロトポルフィリンであった。そのため,1970年以降も日本ウズラの卵殻色素に関する研究は,プロトポルフィリンに着目したものばかりであった。そのなかで,Pooleは日本ウズラ卵の卵殻色素としてプロトポルフィリンの他に,ビリベルジンが存在することを指摘している。彼はその論文のなかで,日本ウズラの卵を割って内側(卵殻膜側)を観察したとき,卵殻内側の色が薄茶色をしているものと,緑色をしているものの2つに大別できることを示している。さらに,彼は内側の色が緑色をしている日本ウズラ卵殻から抽出した溶液を用いて,その吸収スペクトルをとったところ,プロトポルフィリンのピーク(波長415nm)以外に,波長680nm付近に異なるピークが存在することを見出した。Pooleは,この波長680nmにピークを示す物質をビリベルジンであろうと推測している。最近,日本ウズラの卵殻腺部からの抽出液を用いて,質量分析を行った研究によると,卵殻腺部にはプロトポルフィリンの他に,ビリベルジンが存在することが明らかにされている。
著者
吉田 幹生
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.12-19, 2009

本論では、七・八世紀の異類婚姻譚が様々な展開の可能性を孕んでいたことを確認した上で、異類との別れに注目するところから、離別する二人の未練や葛藤の情が次第に描き出されてくる様を論じた。この流れは、異類という側面を希薄化させ、愛し合う二人の悲恋という点を強調していくようになるが、それがやがて王朝物語の領域に引き取られつつ一つの命脈を保っていくことについても見通しを述べた。
著者
山根 優一 吉田 英樹 森 聡 山田 将弘
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.248, 2016

<p>【目的】</p><p>近年,脳卒中患者に対する上肢への電気刺激療法として,末梢神経電気刺激療法(Peripheral nerve stimulation:以下,PNS)の効果が注目されている.下肢に対するPNSの報告は散見する程度で,感覚障害に対する報告も,我々が調査した限りではほとんどない.また,40分間以上の報告が多く,患者の体力面や集中力を考慮すると,臨床での適応は困難であることが多い.今回,重度感覚障害を呈した回復期脳卒中患者に対する短時間の下肢PNSと課題指向型練習の併用が,下肢の感覚障害と歩行能力に及ぼす影響をABデザインで検討したので報告する.</p><p>【方法】</p><p>症例は右視床梗塞で左片麻痺を呈した50代の男性であった.発症前より,糖尿病で両下肢に感覚鈍麻があったが,脳梗塞発症後,感覚障害の程度と範囲に増悪を認め,表在感覚は脱失していた.本研究開始時,発症後36病日経過しており,Brunnstrom stage 上肢Ⅴ,手指Ⅵ,下肢Ⅵで著明な麻痺は認められず,歩行は4点杖で自立していた.主訴は両下肢末梢の感覚脱失,立位・歩行時の膝折れ感であった.電気刺激装置は低周波治療機器(イトーESPURGE, 伊藤超短波社製)を使用した.電気刺激条件は対称性二相性パルス波,周波数100Hz,パルス幅250μsec,刺激強度は筋収縮が視覚的に確認できない感覚閾値とした.刺激部位は麻痺側脛骨神経とし,電極間距離5cmで電極を貼り付けた.治療時間は20分間とし,課題指向型練習を併用して行った.課題指向型練習は椅座位で,両足関節の底背屈運動を行った.評価項目は,足部触覚,振動覚,Functional assessment for Hemiplegic Gait(以下,FAHG),10m歩行の所要時間とした.足部触覚は非麻痺側大腿部を10とし,麻痺側の足背部,踵部,母趾球,小趾球の触覚をNumerical Rating Scale(以下,NRS)で測定した.振動覚検査は音叉(C-128Hzアルミ音叉,ニチオン製)を用いて,麻痺側大腿骨外側上顆を10とし,麻痺側内果をNRSで測定した.10m歩行の測定は,助走路と減速路をそれぞれ除いた10mの所要時間をストップウォッチで2回測定し,速かった方を代表値とした.研究デザインはABデザインを採用し,基礎水準期(以下,A期)を課題指向型練習のみとし,操作導入期(以下,B期)をPNS併用で課題指向型練習を行った.A期とB期の期間はそれぞれ1週間であり,計2週間の実施期間とした.治療介入は1日1回とし,週7日の介入とした.評価は介入前,A期終了後,B期終了後に行った.</p><p>【結果】</p><p>足部触覚は,介入前では足背部0,踵部3,母子球0,小趾球1,A期終了後では足背部0,踵部0,母子球0,小趾球0,B期終了後では足背部0,踵部2,母子球1,小趾球0であり,著明な変化は認められなかったが,足底の知覚領域が拡大したという内省報告が得られた.振動覚は介入前2,A期終了後3,B期終了後5であった. FAHGは介入前6点,A期終了後8点,B期終了後12点であった.10m歩行の所要時間は介入前23.88秒,A期終了後23.75秒,B期終了後20.75秒であった.</p><p>【考察】</p><p>結果より,PNSと課題指向型練習の併用は,表在感覚よりも深部感覚を優位に改善する可能性が考えられた.下肢PNSと課題指向型練習を併用したことで,20分間という短時間でも感覚野の興奮性が増大した可能性が考えられた. FAHGが改善した理由としては,下肢PNSに伴う麻痺側下肢の感覚障害の改善が考えられる.また,PNSでは運動野の興奮性が増大することも報告されている.下肢PNSにより麻痺側下腿三頭筋の筋出力が向上し,麻痺側下肢の荷重応答期から立脚中期にかけての下腿の前傾が可能となり,10m歩行の所要時間や歩行速度に変化を認め、歩行能力を改善したと考えられた.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は飯塚市立病院倫理審査会に承認を得て行った.症例には治療主旨,安全性と個人情報の取り扱いについて口頭と書面で説明し,署名にて同意を得た.</p>
著者
岩佐 一 吉田 祐子 鈴鴨 よしみ
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.151-160, 2019-03-15 (Released:2019-03-26)
参考文献数
38

目的 食生活は,生物・心理・社会・文化的存在としての人の満足感と密接に結びついており,食生活に関する満足度の評価には多面的な尺度が必要である。本研究では,日本全国に居住する地域高齢者を対象とした標本調査を行い,鈴鴨他(2001)の「食事関連QOL尺度」(18項目版)とその短縮版における計量心理学的特性を検討した。まず,①18項目版の因子構造の確認を行い,その結果をもとに,②短縮版を作成した。次いで,18項目版・短縮版における,③信頼性,④性差ならびに年齢差,⑤妥当性の検証を行った。方法 日本全国に在住する地域高齢者(60~84歳)1,200人を無作為抽出して郵送調査を行い,849人から回答を得た(参加割合70.8%)。このうち,「食事関連QOL尺度」18項目に欠損の無い者780人(男性367人,女性413人)を分析の対象とした。「食事関連QOL尺度」(5件法,18項目),外部基準変数(主観的幸福感,食満足感,食欲,食事の制限,咀嚼,共食の回数,惣菜・インスタント食品の利用頻度,食に関する情報収集,食品摂取多様性),基本属性(居住形態,教育歴,経済状態自己評価,有償労働,健康度自己評価,生活機能,生活習慣病,飲酒,喫煙)を分析に用いた。結果 確証的因子分析を行ったところ,適合度は許容範囲であり,先行研究で報告された4因子解が再現された(『Ⅰ食事の楽しみ』,『Ⅱ食事の充足感』,『Ⅲ食事環境』,『Ⅳ食の多様性』)。8項目を選出し短縮版を作成した。「食事関連QOL尺度」得点(18項目),各下位尺度得点(因子Ⅰ~Ⅳ),短縮版得点(8項目)におけるα係数はそれぞれ,0.94,0.86,0.89,0.77,0.72,0.90であった。「食事関連QOL尺度」得点,各下位尺度得点,短縮版得点をそれぞれ従属変数として2要因分散分析(性別:2水準,年齢:5水準)を行ったところ,すべての変数において,女性のほうが男性よりも得点が高かった。一方,年齢差は認められなかった。総菜の利用頻度において有意な相関は認められなかったほかは,外部基準変数との間に概ね中等度以上の相関が認められた。結論 地域高齢者を対象として,「食事関連QOL尺度」(18項目版)とその短縮版の信頼性・妥当性を確認した。今後は,健康アウトカムを外部基準として「食事関連QOL尺度」の関連要因,予測妥当性の検証を行うことが課題である。
著者
兼子 智 高松 潔 吉田 丈児 小川 真里子
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は精子側技術の向上、媒精環境の効率化によりICSIに依存することなく受精胚を得ることを目的として、授精に供するDNA断片化陰性精子の高精度分画、2. DNA断片化初期像、頭部空胞、先体反応誘起能観察による精子品質管理、3.卵管様微少流路内で運動精子分離、先体反応誘起、受精を同時に行う人工卵管法により、媒精に要する精子の質的向上と量的な下限値の低下を図ることに成功した。本法を顕微授精反復不成功例(250例、406周期)施行し57症例が妊娠し、49例が分娩に到った。ICSI反復不成功例が本研究で確立した高効率媒精システムにより妊娠に至る可能性があることが示された。
著者
吉田 睦 中田 篤
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本邦における氷下漁撈は、かつては諏訪湖、八郎潟で展開してきた氷下曳網漁やその他の漁法による寒冷地特有の生業形態であるが、現在はほぼ北海道に限定されて実施されている。中でも網走湖ではこの氷下曳網漁が動力化して毎年恒常的に実施されており、地域経済にも一定の地位と役割をしていることが確認できた。他方で、ワカサギを主要漁獲目標とする網走湖の氷下漁撈の状況は、近年の温暖化傾向やそれに関連する可能性もある水産資源の資源状況や生態などとも関係して、資源、漁獲量とも厳しい状況にあることが判明した。調査期間の2014年から2017年にかけては、近年では最も漁獲量の少ない期間であり、今後の動向が注視される。
著者
長山 宗美 吉田 鐵也
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 = BULLETIN OF THE KYOTO UNIVERSITY FORESTS (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.261-275, 1989-12-13

京都市内の一児童公園 (面積1800m_2) において, 公園の空間配置の変化が利用者の行動にあたえる影響を評価する目的で, 1989年6月に行動追跡調査法を使って子供の利用行動を調査した。当該公園では, 1958年に同様の行動軌跡の採取が行われている。その調査後, 自由広場中央部に花壇が設置された。公園の空間配置の改変によって利用行動がどの様に変化するかを比較した。子供の公園の利用時の行動軌跡のパターンは4つに分類できた。A 遊具中心の軌跡 B 遊具中心, 広場も利用するが円運動的軌跡 C 遊具と広場の軌跡 D 広場の軌跡 年齢が上がると, 遊具施設周辺のみを利用するA型から広場を主に使うD型への移行が可能になる傾向がある。改変後, 遊具中心に広場での活動をともなうB型が早い年齢で出現するようになった。すなわち, 中央花壇の設置という改変は, 低年齢児の中央進出を促進したといえる。改変により, 公園内のもっとも広いオープン・スペースが400m_2から200m_2にまで縮小したため球技など広い面積を要する遊び行動を阻害することが予想されたが, 子供たちは工夫して (花壇を含めるなど) 球技を行っていた。実際の球技に要する面積は, 広場が広い時でも200m_2未満が多かった。また, 改変後の方が空間利用密度のバラツキが小さくなり, 空間がより有効に利用されるようになった。
著者
儀保 翼 森本 哲司 吉田 圭 森内 優子 小川 えりか 高橋 悠乃 鈴木 潤一 石毛 美夏 渕上 達夫 高橋 昌里
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.87-91, 2017-04-01 (Released:2017-05-02)
参考文献数
12

集団食中毒で,急性脳症を合併した腸チフスの小児例を経験した.海外渡航歴はなく,発熱や消化器症状を主訴に入院.便・血液培養からSalmonella typhi が同定され,腸チフスと診断した.入院後みられた急性脳症は,後遺症なく治癒した.急性脳症発症時の髄液でIL-8,monocyte chemoattractant protein-1 が高値をとり,脳症発症にこれらのサイトカインの関与が示唆された.
著者
バンディ イシュワル クマール 田村 幸雄 吉田 昭仁 キム ヨンチョル チングシャン ヤン
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
風工学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.179-184, 2012
被引用文献数
1

6種類の高層建物の圧力模型を用いて境界層風洞内に都市部を模した気流のなかでの風圧力分布を測定する風洞実験を行なった。6体のうち5体は正三角形平面を有する、ストレート、コーナーカット、60度ヘリカル180度ヘリカル、360度ヘリカルで、残りはクローバーのような形をした平面を有するものである。得られた風圧力分布を積分して揚力と抗力を算出した。風方向と風直行方向の全体風力の平均成分と変動成分についてまず論じる。ここではねじれ角度や隅部形状の変化が空力特性に与える影響を明らかにする。さらに揚力のパワースペクトルについて論じる。
著者
和田 孝明 吉田 昌平 吉川 信人 豊島 康直 秋本 剛 杉之下 武彦
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101699-48101699, 2013

【はじめに、目的】 従来の自転車エルゴメーターを用いた体力テストで求められる最大無酸素パワー(MAnP)はペダル負荷が重く、低回転数で得られるパワーのみの評価であった。それに加えて吉田らは、ペダル負荷が軽く、高回転で得られるピーク回転数を評価することで動作の特異性を予測することが可能なPrediction of Instantaneous power and Agility performances used by pedaling test(PIA pedaling test)を考案した。 本研究では、大学生男子サッカー選手と高校生男子サッカー選手においてPIA pedaling testを実施し、それぞれの世代のパフォーマンスの特異性について検討することを目的とした。【方法】 大学生男子サッカー部(関西1部リーグ)53名(年齢19.4±1.1歳、身長173.5±7.2cm、体重167.6±17.4cm、体重62.4±8.7kg)と高校生男子サッカー部(京都府ベスト4)40名(年齢16.2±0.7歳、身長167.6±17.4cm、体重62.4±8.7kg)を対象とした。 自転車エルゴメーターにおけるパワー発揮能力の評価はcombi社製PowerMaxVIIを使用し、十分なウォーミングアップの後に体重の5、7.5、10%の各負荷でそれぞれ10秒間の全力ペダリングを実施し、中村らの方法にて最大無酸素パワー(MAnP)を求めた。セット間の休息は2分とした。パワー発揮能力の指標はMAnPにおける体重当たりの仕事量(HP)と、5%負荷におけるピーク回転数(HF)とした。大学生と高校生のパワー発揮能力について検討した。統計処理には大学生と高校生のHPとHFのそれぞれの比較に対応のないt検定を用い、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 今回の研究において対象者に研究内容を十分に説明し同意を得た。【結果】 大学生はHPが13.4±1.3watts/kgであり、HFは187.6±10.1rpmであった。高校生はHPが13.7±1.6watts/kgであり、HFは178.8±12.5rpmであった。大学生と高校生のHPに有意差はないが(p=0.34)、HFでは大学生が高校生より有意に高かった(p<0.01)。【考察】 PIA pedaling testで評価されるHPは、股関節伸展筋力を中心とした脚伸展筋力を主動作筋とし、実際の動作における垂直跳びと相関を認めた(吉田ら、2007)。また、HFは股関節屈曲筋力を中心とした脚屈曲筋力を主動作筋とし、実際の動作におけるアジリティーと相関を認めた(吉田ら、2009)。したがって、同じ自転車エルゴメーターにおける全力ペダリングであっても、負荷の違いによりその主動作筋は変化し、評価の対象となる筋やパフォーマンスは異なる。このことからPIA pedaling testは、狭義の体力要素の中でも瞬発力やアジリティーといった動作の特異性を客観的に評価が可能になると考える。 本研究の結果は、大学生と高校生を比較し瞬発力に有意差は認められなかったが、アジリティー能力において大学生が有意に高値を示していた。Hiroseら(2010)は、成長段階であるユース年代のフィールドテストにおいて20mや40mスプリントのような単純課題のパフォーマンステストでは成長に伴う順位変動が低く、シャトルランのような複雑な課題によるフィールドテストでは、成長に伴う順位変動が大きいことを報告している。つまり、瞬発力の要素が大きくなる20mや40mスプリントでは、そのスピードがタレント的素因に影響していると考えられるが、アジリティーの要素が大きくなるシャトルランのような複雑な動作では、成長過程によるトレーニングやそれに伴う環境的な要因に左右されることが考えられる。したがって、ユース年代のトレーニングではアジリティーに対するトレーニングを積極的に行わせることや、その主動作筋と考えられる脚屈曲筋力に対するアプローチを行うことが、パフォーマンスの向上の一要因となると考えた。【理学療法学研究としての意義】 今回の我々の結果から大学生、高校生サッカー選手の基本的体力要素である瞬発力とアジリティーについてその特徴が明確となった。また成長段階であるユース年代の選手ではアジリティーを向上させるトレーニングを導入することで、パフォーマンス向上に寄与できると考える。