著者
吉田 達郎 小笠原 靖 岡田 千穂 押賀 佐知子 赤野 裕文 畑江 敬子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.60, 2008

<BR>【目的】<BR> 食酢を用いた減塩調味は実際の料理で広く利用されているが、どの程度の食酢の添加が減塩に効果があるのか詳細な検討は為されていない。本研究は実際の料理において食酢の添加が塩味に及ぼす影響を官能評価によって調べ、食酢を用いた減塩調味に関する知見を得ることを目的とした。本研究では、食塩濃度が異なり塩味強度が有意に識別される2種の料理が、食酢の添加で塩味強度が有意には識別されなくなることを減塩効果と定義した。<BR>【方法】<BR> 1)具材を含む中華スープ;酸度0.01~0.04%となる量の食酢を食塩濃度の低いスープにのみ添加し、食塩濃度の高いスープと塩味強度を2点識別法で比較した。2)サンラータン;両方のスープに酸度0.135%となる量の食酢を添加した場合を同様に調査した。3)豆腐;醤油に食酢を加えた酢醤油を豆腐にかけた場合の塩味強度を醤油単独の場合と比較した。また、食酢の代わりに水で希釈した醤油の評価も実施した。<BR>【結果】<BR> 1)では米酢で酸度0.01%、穀物酢で0.02%、米黒酢で0.04%分の食酢の添加で減塩率12.5%の減塩効果が確認された。2)では3種の食酢で減塩率12.5%および25%の減塩効果が確認された。3)では減塩率12.5%の減塩効果は確認できなかったが、同じ食塩濃度での比較では希釈した醤油よりも酢醤油の方が塩味が有意に強かった。1)3)で食酢の添加による塩味の増強効果が確認されが、その場合の食酢の濃度範囲や減塩効果は限定的であった。一方、3)で酸味を感じるために塩味が弱くても嗜好されたことや2)で酸味を強く利かせた場合に塩味の差が識別されなくなったことから、塩味の不足を酸味で補う調味法もまた有効な減塩法であると考えられた。
著者
吉田 あゆみ 北爪 浩三 松本 尚子
出版者
群馬県畜産試験場
雑誌
群馬県畜産試験場研究報告 (ISSN:13409514)
巻号頁・発行日
no.8, pp.27-35, 2002-03
被引用文献数
1

餌が豚に与える影響を調べるため、桑の葉粉末を無添加、1%、3%添加した飼料を当場で生産したランドレース種系統造成豚「グンマL」とデュロック種の二元交雑種(LD)に給与したところ、以下の結果を得た。1.一日平均増体重は、桑の葉粉末添加量の違いによる差は認められなかった。2.糞尿からのアンモニア発生量は桑の葉粉末添加による明確な差は認められなかった。3.豚ロース肉の加塩保水性及びコレステロール値は桑の葉粉末添加により低下する傾向が見られた。4.豚ロース肉を用いた官能検査では桑の葉粉末3%添加飼料を与えた豚肉の方が、桑の葉粉末無添加飼料を与えた豚肉より色合いが好ましいという評価が得られた。しかし、鶏肉で差の認められた軟らかさ、美味、総合の各項目では差は認められなかった。
著者
太田 昌徳 石黒 昌生 岩根 覚 中路 重之 佐野 正明 土田 成紀 相沢 中 吉田 豊
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.51-57, 1985 (Released:2007-12-26)
参考文献数
13
被引用文献数
2

大腸疾患 (大腸ポリープ, 大腸憩室) 発生に対する食物繊維の抑制効果をみるため, 弘前市およびその近郊の市町村にて, 大腸ポリープ50症例, 大腸憩室33症例の食事調査を国民栄養調査方式にのつとり施行した. 対照は国民栄養調査実施家庭とし, 3群の食物繊維摂取量の比較検討を行なつた. その結果3群の1日当りの食物繊維摂取量は大腸ポリープ群18.2±5.44g, 大腸憩室群17.4±5.07g, 対照群21.1±6.57gで疾患群が対照群より有意に少なかつた. また大腸ポリープ群, 大腸憩室群の間に差はみられなかつた. 成分別では疾患群, 対照群の間でヘミセルロース, セルロース量に有意差が認められたが, リグニン量には差がなかつた. 以上の結果より食物繊維摂取量の増加が大腸ポリープ, 大腸憩室の発現を抑制する効果があると示唆された.
著者
吉田 正広
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、ロンドンにおける第一次大戦の戦死者追悼記念碑や式典のあり方を、企業、地域社会、国民国家さらに帝国に至る重層的なアイデンティティ形成の問題として考察する。その際、記念碑の様式や式典のあり方にコミュニティ毎の違いがあることに着目し、地域社会の特質や政治との関連で記念碑や式典を考察する。ロンドン・シティの狭い区域内に数多くの記念碑が点在する。それは決して偶然ではなく、シティの金融機関に勤める従業員の多くが志願して戦死したことと関係する。初年度は、ロンドン・シティの調査と分析を実施した。2017年11月12日(日)リメンバランスサンデーの正午ごろに、王立取引所前のロンドン部隊記念碑前で始まった追悼式典を実際に観察し、その様子を動画および画像に収めた。これはコミュニティの追悼のあり方を知る上で重要な機会となった。また、金融機関や教会、鉄道の駅の記念碑など、11月12日の追悼式典後の記念碑の様子、とくに奉納されたポピーの花輪の文面を画像に収め、式典参加者やそのメッセージを資料として入手した。現地調査後半では、かつてのロンドンの波止場地区であるポプラー周辺や、さらにロンドン東部のイーストハム、ウェストハムに残る企業の記念碑を調査した。研究成果としては、イングランド銀行記念碑の設立に関する一次資料を分析し、職員たちによる記念碑設立活動の詳細を明らかにした。それはイングランド銀行の職員たちの自発的な活動として追悼委員会を通じて行われた。同委員会は、職員の階層や所属する部門の特質を反映した。また、職員総会での委員長ブライアントの演説を分析すると、世界の金融センターとしての自負心やその中枢としての自行への誇りが、強い愛国心を表明させたこと、また、自行の敷地拡大時における教会の解体や物質文明を担うことへの罪意識が、記念碑としての十字架建立の提案に至ったことを確認した。
著者
坂元 浩樹 堀江 雄二 吉田 宏 宮崎 智行
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.597-599, 1994-05-31 (Released:2009-03-27)
参考文献数
7

An inverted pendulum system mounting a gyroscope was reported. The slanted pendulum was brought to be vertical by applying a control force of a gyroscopic moment. The state-space equations were derived to confirm that the system was controllable. The optimal regulator was designed and the region of its optimal poles was determined by simulation. In experiments with state feedback control obtained from those poles, the gyro-pendulum was kept upright more than an hour and half.
著者
吉田 功 広谷 鏡子 広谷 鏡子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.2-19, 2019

「放送のオーラル・ヒストリー」では、オーラル・ヒストリーの研究方法を用いて、放送関係者の証言から放送史をひもとくことを目的にインタビューを実施してきた。今回は、戦後沖縄放送史を取り上げる。戦後、沖縄は、米軍の直接統治下におかれ、日本本土から政治、経済、法制度において完全に切り離され、それは、社会、文化の面にも及んだ。放送史も同様で、成立経緯、様相ともに全く異なっている。放送機能も失われた廃墟の中、米軍によるラジオ放送がゼロから立ち上がり、日米政府や社会の情勢に翻弄されながら確立されていく過程で、その重要な局面に深く関わってきた人がいる。元沖縄放送協会会長・川平朝清(91)である。彼は戦後の沖縄において、放送の立ち上げから本土復帰まで、一貫して放送に関わった稀有の存在である。各局面において放送の当事者のひとりである川平朝清がどう考え、どう行動したのか、そして、行動の背景になにがあったのか、に焦点をあて、沖縄の放送史が立体的に浮かび上がることを目指す。
著者
吉田 毅
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.53-68, 2016

<p> 本稿の目的は、中途身体障害者の車椅子バスケットボール(以下「車椅子バスケ」)への社会化に関する研究の一環として、交通事故に遭い受傷した後に車椅子バスケとともに他種目への参加というキャリア、言わば複線的スポーツキャリアを形成していった元カーレーサーが、受傷してから車椅子バスケへの社会化を遂げていくプロセスで寄与した主な具象的な他者について解明することであった。それにあたり困難克服の様相にも着目した。方法はライフヒストリー法を用いた。ここでは、対象者へのインタビューで得た語りを基にライフヒストリーを構成した。主な知見は次の通りである。<br> 対象者は受傷したことにより、障害との闘いをめぐる困難及びレース活動からの現役引退をめぐる困難を経験した。氏が前者を克服していくプロセスで寄与した主な他者としては、〈かけがえのない他者〉(父親)及び〈寄り添う他者〉(親友)が見出され、これらは〈親密圏〉を築く他者とも捉えられた。また、氏は車椅子バスケとともに、受傷前に貴重であったレース活動をレクリエーション的に継続することで後者を克服していった。氏にとってはいずれも貴重であり、車椅子バスケへの社会化を遂げていくプロセスはそれらが並行する様相を呈していた。このプロセスで寄与した主な他者としては、車椅子バスケへと〈誘う他者〉(入所仲間)及び〈導く他者〉(車椅子バスケクラブの先輩)、車椅子バスケ活動の精神的支えとなる〈寄り添う他者〉(親友)、それにレクリエーション的なレース活動へと〈つなぐ他者〉(レース仲間)が見出された。これらのうち〈誘う他者〉以外は親密圏を築く他者とも捉えられた。</p>
著者
菅野 洋光 西森 基貴 遠藤 洋和 吉田 龍平 ヌグロホ バユ ドゥイ アプリ
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

北日本における4月と8月の月平均気温は、季節が異なっているにもかかわらず、1998年以降、強い負の相関関係を示している(Kanno,2013)。前回の大会では、これがIPOにより判別される気候ステージ(-IPO)で発現しており、ラニーニャモードによるSSTの応力の弱さと偏西風循環に内在された独自の変動に影響されている可能性があることを指摘した。また、インドネシア付近の対流活動の重要性についても明らかにした。今回は、対流活動の中心に位置するインドネシアの農作物生産性の変動について、IPOに基づく気候ステージを考慮した解析を行った。<br>北日本の月平均気温偏差は気象庁HPよりダウンロードした。客観解析データはJRA55を、多変量解析は気象庁のiTacs (Interactive Tool for Analysis of the Climate System)を用いて行った。インドネシア農作物収量データは、イネ、トウモロコシ、ダイズの3種類で、1993年~2015年の期間、34の州のデータをインドネシア農業省より入手した。このうち、26の州についてはデータの欠落がなく、以下の解析にはそれらのデータを用いている。一般に途上国での農作物生産性は、栽培技術の進歩により時間の経過とともに増加する。そこで本研究では、全期間のデータに一次回帰計算を行い、回帰式からの偏差を解析対象データとした。また、近年の気候ステージについては、England et al.(2014)によるIPOのステージ区分を用い、また生産性と海洋変動との比較には、標準的なPDOインデックスを用いた。<br>図1にはインドネシアにおけるイネの生産性の一次回帰式からの偏差と年平均PDOインデックスの時間変化を示す。全期間(1993-2015年)を通すと相関係数は0.34となり、統計的に有意ではない。そこで、IPOによる気候ステージを考慮して、2001年以前(概ね+IPO)と2002~2013年(概ね-IPO)とで分けると、前者はR=+0.78、後者はR=-0.70で、ともに危険率5%以下で統計的に有意となった。また、エルニーニョが発生した2014年以降は、一転して同時的な変動に移行したようにみえる。トウモロコシでは、イネと同様に、全期間を通すとR=0.22となり、統計的に有意ではないが、IPOステージを考慮すると、2001年までがR=0.84、2002~2013年までがR=0.71となり危険率1%以下で統計的に有意となる(図略)。図2にはダイズの例を示す。こちらはIPOステージとの関係は明瞭ではなく、全期間を通して有意な正の相関を示す(R=0.57)。このような作物ごとの差異についてその原因を考察するため、JRA55を用いたインドネシア域(10S-5N, &nbsp;95E-140Eの矩形領域)における年積算解析降水量を計算し、PDOと比較した(図3)。その結果、全期間を通して降水量とPDOは負の相関を示し(R=0.67)、特に1997年以降が明瞭でR=0.76となる。すなわち、イネ、トウモロコシの生産性については、-IPO期間は降水量の年々変動に強く影響されていることが分かる。また+IPO期間については数年の幅はあるが、PDOと降水量とが比例している時期と重なっており、こちらも概ね降水量に影響されていると言える。一方、ダイズについては解析期間を通してPDOと正の相関を持ち、イネ、トウモロコシとは異なった変動を示している。これは、インドネシアではダイズはmain cropではなくcatch cropであるため、特に-IPO期間ではイネ、トウモロコシが不作の際に補完的に作付けられ、それが降水量変動と負の関係を示す原因として考えられる。
著者
藤倉 良 カリミ シャフルディン アンドリアヌス フェリー 武貞 稔彦 吉田 秀美 眞田 陽一郎 澤津 直也 寺末 奈央
出版者
法政大学公共政策研究科『公共政策志林』編集委員会
雑誌
公共政策志林 = Public policy and social governance (ISSN:21875790)
巻号頁・発行日
no.6, pp.27-37, 2018-03

インドネシア,スマトラ島に建設されたコトパンジャン・ダムによって1990年代に移転した村落の生活再建について研究成果をレビューし,2017年に行ったフィールド調査と合わせて長期的に評価した。移転は村落ごとに行われ,移転民には水没した財産に対する100パーセントの金銭補償に加えて,政府が造成したゴム園の無償提供もしくはアブラヤシ園の有償提供が行われた。10村がゴム園を2村がアブラヤシ園を選択した。しかし,ゴム園では政府の約束とは異なり,住民の移転時には未整備であり,整備されて収穫が得られるまで,住民は生活再建に支障をきたした。そのような状況の中で,ナマズの養殖と加工を開始した村落では,副収入により所得が増加した。アブラヤシ園を選択した村落では,収穫が得られるまで賃金労働する場が提供され,分譲された農地をローンで購入することができた。さらに,移住してきたジャワ人を労働力として使うことで農園を拡大し,所得を大幅に増やすことができた。住民が移転後も農業によって生活を再建することが前提となる計画の場合には,実際に収穫が得られるまでの生活支援が必要である。さらに,政府は移転民が予想通りに農業収入が得られない場合に備えて,副収入源を得る機会を提供することが望ましい。
著者
吉田 雄介
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.597-613, 2002-12-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
37

Relying on the data gathered from field work, this research note aims to explore the spatial spread of zilu (cotton carpet) hand-weaving industry from the 1950's until the beginning of 1970's in Meybod of Yazd province, Iran.The division of labour of zilu weaving within each unit is articulated on the basis of skill seniority, i. e., unskilled and highly skilled labour. Young boys from the age 5 or 6 participate in unskilled tasks to help skilled workers or master weavers: they beat the weft with a beater comb. A weaver begins as a boy working for his master, and after several years, progresses to skilled work, and eventually becomes an independent master. This skill seniority plays a crucial role in the spatial dispersion of this industry.The author divided the development and change of zilu industry over the past two decades in Meybod into three stages. These three stages are as follows:(1) Zilu weaving industry have a long history in Meybod and can be traced from its history back to the Middle Age. But until the beginning of 1950's, zilu weaving industry had only existed in neighboring villages around Bashnighan which is a part of the center of Meybod region. The mode of zilu production was principally household-based and its labour supply was mainly provided by household members with additional apprentices from outside.(2) Since the beginning of the 1950's when zilu was in heavy demand suddenly, master weavers of Bashnighan have begun to utilize child labour in the surrounding villages to raise the productive capacity and to increase the number of looms within their workshops. These new children labour were literally wage labour rather than arduous apprentices. As a result of these changes, the mode of production of zilu weaving industry has been changed to the manufacture mode.(3) From the end of the 1950's zilu weaving workshops began to be located in surrounding villages of Bashnighan gradually. Practically there was no constraint for a young weaver who had learned weaving skills in Bashnighan to seek independence. Newly independent weavers could also acquire the necessary capital outlay to establish their own workshop and buy some materials with assistance from their family members or merchants. Eventually zilu workshops were widely distributed all over the Meybod region.
著者
石津 宏 下地 紀靖 與古田 孝夫 宇良 俊二 与那嶺 尚子 下地 敏洋 柳田 信彦 仲本 政雄 比嘉 盛吉 秋坂 真史 名嘉 幸一 吉田 延
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.347-355, 2000-06-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
25

ICUに入室した患者でも, ICU症候群を発症する者としない者である.ICUに3日以上在室し, 安静I度を強いられた患者のうち, せん妄, 不穏, 失見当, 幻覚, 独語などのICU症候群をきたした患者30名(男性22名, 女性8名)とICU症候群をきたさなかった患者30名(男性21名, 女性9名)の両群について, ICU症候群の発症に関わると思われる諸要因について比較検討した.その結果, 原疾患, 既往歴, 職業, 喫煙, 飲酒歴, 入室状況, 栄養状態などでは, 両群に有意な差はみられなかったが, ICU症候群では, 睡眠状態の不良(p<0.01), 6本以上の接続ライン(p<0.01), 家庭における同居数が多い患者(p<0.001)において有意差がみられた.これらを説明変数とし, ICU症候群発症者を目的変数として重回帰分析を行ったところ, 「同居家族数」「睡眠状態」の2項目に有意な関連がみられた.精研式INVでは, Z因子に有意な関連がみられ(p<0.05), エゴグラムでは, 有意ではないがM型にやや多い傾向がみられた(p<0.10).虚血性心疾患とタイプAとの関連は従来述べられているが, ICU症候群発症者とINVとZ因子との関連も注目すべきである.また同居家族の多い者は孤独になった時のコーピング能力になんらかの弱さがあるのではないかと推測され, 前もって家族の面会を多くするなど孤独を防ぐ対策は, 発症予防に役立つことが示唆される.
著者
吉田 充
雑誌
日本獣医生命科学大学研究報告 (ISSN:18827314)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.8-16, 2013-12

2002年に高温加熱加工・調理食品中にアクリルアミドの存在が確認されて以来,食品におけるアクリルアミドの生成,様々な食品中の濃度,食品からの摂取量推定に関する研究・調査が進められてきた。日本においても,トータルダイエットスタディに加えて,日本やアジア特有の食品を含めた市販加工品や,炊飯米を含めた調理食品の分析が行われた。アクリルアミドの毒性と摂取量とをあわせて考えると,食品中のアクリルアミドの人の健康に対するリスクは無視できず,低減の努力が必要と考えられる。そこで,食品規格に関する政府間機関Codexでも,2009年にじゃがいも加工品と穀物加工品に関するアクリルアミド低減のための実施規範が採択された。食品におけるアクリルアミドの生成抑制や,食品中のアクリルアミドのリスク管理のためには,簡易迅速な分析方法の確立が望まれていたところ,2011年にアクリルアミドのEIA検出キットが開発された。また,アクリルアミドの分析の精度管理に関しては,加熱食品をマトリクスとした標準物質や分析の技能試験も供給されており,利用しやすい状況になっている。
著者
周琵琶湖花崗岩団体研究グループ 橋本 勘 久田 義之 沓掛 俊夫 中野 聰志 西橋 秀海 西村 貞治 澤田 一彦 杉井 完治 多賀 優 竹本 健一 天白 俊馬 吉田 源市
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.380-392, 2000
参考文献数
22
被引用文献数
6

田上花こう岩体(東西方向約20km×南北方向約8km)は,後期白亜紀末の"琵琶湖コールドロン"形成に関わった環状花こう岩体のうちで最も南に位置する.田上花こう岩体は,粒度と組織から4つの岩相に区分される(中〜粗粒黒雲母花こう岩,中〜粗粒斑状黒雲母花こう岩,細〜中粒斑状黒雲母花こう岩,細粒黒雲母花こう岩).田上花こう岩体は,丹波帯のジュラ紀付加コンプレックスと新期領家花こう岩と考えられる観音寺花こう閃緑岩に貫入している.観音寺花こう閃緑岩を含む岩体の北西部に貫入している花こう斑岩岩脈は,雁行状配列を示している.同じく岩体の北西部では,湖東流紋岩類に属すると考えられる珪長質火砕岩を捕獲または伴う石英斑岩岩脈が産する.これらの岩脈群は,"琵琶湖コールドロン"形成時の環状割れ目を充填しているものと考えられる.主要・微量元素全岩化学組成上,観音寺花こう閃緑岩は田上花こう岩とは異なる特徴を持つ.岩脈類も,微量元素組成の点で田上花こう岩類とは異なり,特に石英斑岩は湖東流紋岩類の秦荘石英斑岩に似ている.田上花こう岩は,琵琶湖南部周辺の花こう岩類と密接な成因的な関係を有する.
著者
堀 光代 阿久澤 さゆり 下山田 真 吉田 一昭 長野 宏子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.205, 2005

【目的】国内産・県内産小麦の生産量が年々増加している現状である。各地で生産から消費までの取り組みについて行われているが、今回は、製粉工程が異なる岐阜県内産小麦について製パン性を比較検討することを目的とした。【方法】2003年に岐阜県で生産された小麦「中国152号」と「タマイズミ(関東123号)」の2種類について製粉工程の違いから(細)と(粗)に分類した計4種類と、対照として外国産小麦1CW(カナダ産)を用いた。パンの材料配合は、小麦粉に対し、砂糖(6.8%)食塩(2.0%)酵母(1.12%)水(68.0%)とした。小麦粉は粒度分布と色差を測定し、ドウはファーモグラフによるガス発生量の測定を行った。ホームベーカリーにてパンを焼成後、質量・体積・色差等の測定とあわせてパンの品質評価と官能検査を行った。【結果】(1)小麦粉の粒度分布は(細)と(粗)では差が認められ、色差も感知できる程度の差が見られた。(2)ガス発生量は、県内産小麦粉は対照である1CWと異なった結果を示し、ガス保持力等に差が見られた。(3)パンの比容積は1CWが高く、県内産小麦粉両品種の(細)と(粗)ではいずれも(粗)ほうが低い比容積であった。色差の測定結果は、小麦粉の測定値より製パン時の色差に顕著な差が見られた。パンの品質評価では、(粗)が(細)より低い評価であった。両品種の(細)における比較は、品質評価では外観は1CWに劣る評価であったが、味・香りは1CWに近い評価であり、官能検査の結果もほぼ一致していた。
著者
西田 好宏 吉田 大志 吉田 大志 Yoshida Taishi
出版者
福井工業大学
雑誌
福井工業大学研究紀要 Memoirs of Fukui University of Technology (ISSN:18844456)
巻号頁・発行日
no.43, pp.21-28, 2013

This paper describes a method to recognize a character handwritten in the air. This recognition method uses the motion direction instead of positions of the device. It also doesn't use the information of pen up and down. It selects and orders character candidates with DP (dynamic programming) matching. We prototyped an application software that recognize a character by using mouse movements. In this time, we made virtual key input motion for input method editor. We could edit a sentence by using handwritten gesture recognition.
著者
加藤 幸宣 高林 哲司 坂下 雅文 意元 義政 徳永 貴広 二之宮 貴裕 森川 太洋 吉田 加奈子 野口 恵美子 藤枝 重治
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.261-266, 2018 (Released:2018-12-26)
参考文献数
37

好酸球性副鼻腔炎(ECRS)は,鼻腔内に多発性鼻茸を有し,鼻茸・末梢血中に好酸球増加を伴う難治性副鼻腔炎である。次世代シーケンサーを用いた,鼻茸のRNA-sequencingにおけるtranscriptome解析では,ECRS患者の鼻茸でCST1の発現が高い傾向にあった。我々はCST1がECRSの病態に関与していると考え,ECRSの鼻茸内でのCST1の発現や働きについて詳細な検討を行った。CRSwNP患者の鼻茸内におけるCST1の発現に関して,real-time PCRを用いたmRNAの発現・免疫組織化学を用いた解析では,non-ECRS患者群に比べて,ECRS患者群でCST1が有意に高発現していた。特にCST1はsevere ECRSの鼻茸上皮で強い発現を示していた。つまり,CST1の発現は,ECRSの難治性や再発性と関連する。ECRS由来の鼻茸上皮細胞を精製し,IL-4+dsRNA+CST1で刺激すると,IL-4+dsRNAで刺激した時に比べて,TSLPの発現が有意に上昇した。鼻茸上皮細胞へのTSLPあるいはIL-33の刺激は,CST1の発現を誘導した。また,ECRS由来の鼻茸線維芽細胞に対するCST1の刺激は,CCL11とperiostinの発現を誘導した。CST1は鼻茸内において,ECRSの鼻茸形成・増悪に関わる様々な因子と相互作用することにより,Th2/好酸球性炎症として作用し,鼻茸の重症化,難治性,再発に関わる。ECRSの鼻茸に対して,CST1をtargetとした治療戦略が有用となる可能性がある。本稿では,CST1のECRSにおける役割を中心に解説する。