- 著者
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坂元 章
- 出版者
- NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
- 雑誌
- シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.1, pp.56-67, 2003-06-25 (Released:2020-11-02)
- 参考文献数
- 43
- 被引用文献数
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1
本論文では,日本において見られてきた,暴力性に関するテレビゲーム悪影響論と,それに対する社会心理学的研究の内容と経緯が解説された.テレビゲームの悪影響論は,5年程度のサイクルで盛んになっており,これは,テレビゲーム業界,司法,行政に対して大きな社会的影響力を持ってきたことか紹介された.また,悪影響論の中でも,暴力に関するものはもっとも盛んに出されてきたが,それについての研究は1997年までは少なく,それ以降になって急増したことが指摘された.そうした研究では,暴力的テレビゲーム使用が人々の暴力性を高めるとする結果がしばしば得られており,現在では,テレビゲームの悪影響を支持する方向に研究者の意見が傾いているとされた.また,最近になって,影響がよく検出される傾向があり,これは,ゲームソフトの現実性が高まったために,テレビゲーム使用の影響力が強まっていることを反映しているのではないかと述べられた.本論文ではまた,将来における悪影響論や研究の状況や課題についても論じられた.今後は,研究が量的にも質的にも充実し,テレビゲームと暴力の問題に関する多くの問いに答えられることが必要であること,そのためには,異なる分野を含む,研究者や実務者などの間の連携が重要であることが指摘された.最後に,こうした研究において日本が一定の役割を果たすべきであることが強調された.