著者
佐川 孝広 濱 幸雄 塚本 康誉
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.239-245, 2015-03-31 (Released:2015-03-27)
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

本研究では現在JIS規格はあるがほとんど生産されていない高炉セメントA種に着目し、高炉セメントA種の強度発現と水和反応に及ぼす無水石こうや石灰石微粉末の影響について検討した。水和反応の評価にはX線回折/リートベルト解析の外部標準法を用いた。その結果、高炉スラグ微粉末の混合量が20%の高炉セメントA種を用いたモルタル圧縮強度は、初期材齢で普通ポルトランドセメント(OPC)の75%程度、材齢91日までにOPCと同等となった。無水石こうや石灰石微粉末の混和による圧縮強度の変化は、水和反応解析により求めたセメントや高炉スラグ微粉末の反応率、水和生成物量、空隙量の変化でよく説明できた。
著者
小田 寛貴 山田 哲也 塚本 敏夫 加藤 丈典
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

緑青は,青銅器に発生するさびである.これは青銅中の銅と大気中の二酸化炭素から生成されたものである.また,緑青は一旦形成されるとそれ以上新たな緑青の形成を阻止する性質をもっている.そこで,本研究では,緑青の放射性炭素年代測定の実現を目的とした基礎研究を行った.まず,緑青に含まれる炭素の抽出法を開発した.その上で,考古学的な年代の判明している青銅器に適用し,その炭素がさびの形成された当時の大気中二酸化炭素に由来するものであることを実証した.以上の成果によって,緑青の放射性炭素年代から,そのさびが形成された年代が得られ,さらに青銅器が使用された年代を求めることが可能であることを示した.
著者
西田 知照 小林 洋一 塚本 尚久
出版者
公益社団法人精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.111-116, 1989-01-05

Vibrations and noises of gears consist of the average component and the fluctuating one. The former is the component which always appears in each tooth meshing. The latter is the component which fluctuates about the average component. In the first report, it was described that the moving average method was very effective for extracting the average component. In that report, a steady rotation of gears was assumed. However, the number of revolution of gears always fluctuates more or less in actual gear equipments. In this report, the generation of the side band waves due to the fluctuation is explained and the allowable value of the fluctuation ratio is given to extract the average component.
著者
藤田 貴行 塚本 哲 多田 茂
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.77, no.780, pp.3017-3024, 2011 (Released:2011-08-25)
参考文献数
35
被引用文献数
2

1/f noises, the power spectrum density (PSD) of signals inversely proportional to the frequency, have been observed in various types of physical and physiological systems; e.g. current and heart beat. 1/f noise is suggested to be generated by superimposing stochastic processes. Among stochastic processes, autoregressive process is suitable for analyzing physical and physiological systems in that the autoregressive process is time-discrete. A time-discrete model is suitable for analyzing those systems because those systems are observed in time-discrete manner as well. However, it is obscure whether 1/f noises are generated by superimposing those autoregressive processes. In this study, first order autoregressive (AR(1)) processes were superimposed with varied the process parameter and a driving noise. As a result, PSD of superimposed time sequences was inversely proportion to the frequency when the process parameter and a driving noise were a uniformly distribution and white noises, respectively. This result suggests that 1/f noises could be generated from the superimposing AR(1) processes when the process parameter is distributed uniformly.
著者
山崎 桃子 石川 匡子 塚本 研一
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】おいしさを損なわない減塩にはうま味や風味の付与が有効だと言われているが、魚醤はその両方を有しており、減塩による味の物足りなさを補うことが期待できる。そこで本研究では、魚醤を利用した新規減塩調味料の可能性について検討した。<br />【方法】食塩水(0.234、0.584、1.0%)にグルタミン酸(以下Glu)[0.015%(検知閾値相当)、0.03%(認知閾値相当)、0.08%(認知閾値以上)]、アラニン(以下Ala)[0.0825%(検知閾値相当)、0.1%(認知閾値相当)、0.3%(認知閾値以上)]をそれぞれ添加した水溶液を調製し、二点比較法にて塩味強度の官能評価を行った。また、塩分濃度1.0%に希釈した市販魚醤にAlaを添加し、塩味強度を評価した。この際、食品に用いた際の減塩効果を検討するため、イノシン酸(以下IMP)を添加したお吸い物として呈示した。<br />【結果】食塩水にGlu、Alaをそれぞれ添加した結果、いずれのアミノ酸も認知閾値以上の添加で塩味増強が確認できた。Gluを添加した食塩水にAlaを加え、アミノ酸の相乗効果による塩味増強を評価した結果、Alaを認知閾値以上添加した際に塩味増強が表れ、GluとAlaの混合比が2:1の際に最も効果が高かった。魚醤にIMPを添加したお吸い物を作製し評価した結果、GluとAlaの比が1:8の際、塩味増強が高かった。この際、うま味と甘味の強度が同程度となり、魚醤希釈液よりも香りや苦味が抑えられ、より味強度が増した。また、魚醤希釈液の塩分濃度をさらに低下させてもAlaにより味の物足りなさを補うことができ、減塩効果が期待できることが分かった。以上より、魚醤を用いた減塩調味料の開発が可能であることが示唆された。
著者
塚本 智宏
出版者
名寄市立大学
雑誌
市立名寄短期大学紀要 (ISSN:09165975)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-16, 2007-03

本論文では,まず,ヤヌシュ・コルチャック(1878-1942)の子どもの権利思想を支えた子ども観=人間観の内容・特質を概観したうえで,彼が子ども(本論文では特に乳児期の子ども)のなかに探究しようとしていた人間性とはいかなるものであったのか,またそこでの子どもと大人の関係や子どもと大人の本質的な異同についてどのように考えていたのか,これらの点について彼の代表的な作品『子どもをいかに愛するか(家庭の子ども)』を具体的に読み進めながら考察し,彼が「子どもの権利の尊重」という場合の子どもに対する大人の態度がいかなるものであったのかを明らかにしたい。
著者
近藤 玲介 塚本 すみ子
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.243-254, 2009-08-01 (Released:2012-03-27)
参考文献数
31
被引用文献数
2 5

北海道北部に位置する利尻火山は,山麓部が新期および古期火山麓扇状地に覆われるが,古期火山麓扇状地の堆積要因や形成年代には不明な点が多い.本研究では,古期火山麓扇状地面が最も広く発達する利尻火山西部において,扇状地堆積物を記載するとともに形成年代を推定した.利尻火山西部の扇状地堆積物は上部と下部の2ユニットに大別され,上部ユニットには複数の層準にレスおよびその再堆積物が挟まれる.これらの層準から試料を採取し,石英微粒子法によるOSL年代測定を行った.この結果と層相の特徴を総合すると,古期火山麓扇状地の下部ユニットは,沓形溶岩流の噴出後から約22 kaまでの間に,沓形溶岩流噴出に伴う不安定斜面形成の影響を受けながら急速に堆積した.そして,上部ユニットは約22 kaから完新世初頭まで,すなわち最終氷期極相期以降の寒冷な気候環境の影響を受けて断続的に堆積し,扇状地を形成したことが明らかとなった.これらのことから,古期火山麓扇状地の地形発達は,利尻火山の活動と気候環境が複合的にかかわりあった結果であることを示す.
著者
塚本 浩 上田 尚靖 堀内 孝彦
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.361-368, 2011-10-31
参考文献数
24
被引用文献数
2 6

TNF receptor-associated periodic syndrome(TRAPS)は常染色体優性遺伝形式の家族性周期性発熱疾患である.TRAPSではI型TNF受容体(TNFRI)をコードするTNFRSF1A遺伝子について100以上の遺伝子変異が報告されており,かつ浸透率は85%以上と高い.本邦からはC30R, C30S, T61I, C70S, C70G, C88Y, N101Kの7種類の変異が報告されている.変異TNRIは小胞体内に停滞し,ミトコンドリアからの活性酸素産生を介してMAPキナーゼを活性化状態にする.ここに細菌感染等でToll様受容体からのシグナルが付加され,炎症性サイトカイン産生誘導が起こることが本症の病態形成に関与していると考えられている.臨床所見として発熱期間は平均21日間,発熱間隔は1から数ヶ月である.発作期には,発熱と共に,皮疹,筋痛,関節痛,腹痛,漿膜炎,結膜炎,眼窩周囲浮腫などの随伴病変を伴う.治療としては,副腎皮質ステロイド剤とTNF阻害薬エタネルセプトが発作の重症度や発作期間の短縮に有効である.エタネルセプトでは発作頻度も減少するが無効例も存在する.最近では,IL-1受容体拮抗薬アナキンラやIL-6受容体拮抗薬トシリズマブの有効性も報告されている.厚生労働省のTRAPS研究班(代表者:堀内孝彦)は2010年に,本邦のTRAPS患者の病態に即した診断基準を作成するため全国の実態調査を行い,現在遺伝子解析が進行中である<br>
著者
佐々木 裕昭 寺田 努 塚本 昌彦
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.1-6, 2011-05-06

人通りの多い場所においては,歩行者どうしの接触などの事故がしばしばみられる.これは,歩行者が他者の行動を事前に知ることが困難であることが原因の 1 つだと考えられる.一方,自動車は各車両が自身の行動をランプの点灯などの形で事前に周囲に提示することで安全でスムーズな交通を実現している.そこで本研究では,身に付けた LED などのデバイスでウインカなどの自動車の情報提示機能を実現することで,歩行者が周囲に自身の情報を提示するシステムを提案する.また,その直観性や視認性を評価するため,提案システムを実環境で使用した評価実験を行い,提案システムの有用性を確認した.At crowded places, there are many accidents such as bump between walkers. One of reasons for these troubles is that it is difficult for each people to predict the behaviors of other people. On the other hand, cars communicate with other cars implicitly by presenting their contexts using equipments such as brake lamp. In this paper, we propose a system for visualizing user context for surrounding people by information presentation methods based on those in cars, such as wearing LEDs for realizing brake lamp. Evaluation results using our prototype system confirmed that our method transmitted user context visually intuitive.
著者
杉山 雄一 塚本 友子 堀井 郁夫
出版者
The Japanese Society for the Study of Xenobiotics
雑誌
薬物動態 (ISSN:09161139)
巻号頁・発行日
vol.16, no.supplement, pp.84-85, 2001-09-17 (Released:2007-03-29)
参考文献数
2

Capecitabine, an orally administered triple prodrug of 5-FU shows tumor-preferential exposure of 5-FU by being sequentially metabolized to 5-FU by three enzymes, which show relatively specific organ expression. To investigate the mechanism of tumor-preferential exposure of 5-FU after oral administration of capecitabine, a physiologically based pharmacokinetic model describing the pharmacokinetic behaviors of capecitabine and its metabolites including 5-FU in humans was constructed. The factors that have the greatest influence on the pharmacokinetics of 5-FU after administration of capecitabine were clarified by sensitivity analyses. The sensitivity analysis demonstrated the exposure of tumor tissue to 5-FU depends mainly on the activity of both thymidine phosphorylase (producing enzyme of 5-FU from the precursor, 5'-DFUR) and DPD (eliminating enzyme of 5-FU) in tumor tissue, as well as blood flow rate in tumor tissue with saturation of DPD activity resulting in higher 5-FU AUC in tumor tissue. The therapeutic index of capecitabine was found to be at least 17 times greater than that of other fluoropyrimidine, including doxifluridine, the prodrug of 5-FU, and 5-FU over their respective clinical dose ranges.
著者
渡邉拓貴 寺田努 塚本昌彦
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)
巻号頁・発行日
vol.2013-UBI-39, no.9, pp.1-8, 2013-07-24

ウェアラブルコンピューティング環境では,装着型センサを使った状況認識に注目が集まっている.一般的に用いられるセンサは加速度センサやマイクだが,前者は複数のセンサのデータを統合するために通信を行う必要があり,後者は音のみに頼っているため実際にそのユーザが関係している音なのかが分からない.そこで本研究では,超音波によってユーザの行動,周囲に居る人,現在居る場所などの情報を取得し,ボイスレコーダなどの音声記録に埋め込む手法を提案する.ユーザはマイクと超音波を発する小型スピーカを装着し,これらの距離を表す音量の変化と,ジェスチャの速度を示すドップラー効果を利用してジェスチャを認識する.また,環境や人に超音波 ID を発信する小型スピーカを装着することで,ユーザがどこにいたか,近くに誰がいたかという情報も同時に記録する.これにより,会話音等の環境音,ジェスチャ,ユーザのいた場所,会った人物のデータすべてがマイクのみで記録できる.提案手法では他者による環境音が無い場合,平均 86.6% の精度で認識でき,他者から発せられる環境音がある場合,平均 64.7% の精度で認識できた.
著者
塚本 明 安田 絹子 田村 陽介 町田 浩之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.116-128, 2009-02-15
参考文献数
6

Cell Broadband Engine(Cell/B.E.)はコンピュータエンタテインメントシステムであるPLAYSTATIONR3(PS3)のCPUとして知られていますが,CPUの中に9個のヘテロジニアスなプロセッサコアを持ち,Folding@homeなどのための高性能なアクセラレータとしても活用されています.この解説ではCell/B.E.のアーキテクチャ,プログラミングモデル,最適化技法について概要を説明し,Cell/B.E.の性能を引き出す手法を紹介します.また,医療やファイナンスなどの産業アプリケーションにおけるCell/B.E.の有効性と,実際の活用例を紹介します.