著者
久米 功一 鶴 光太郎 佐野 晋平 安井 健悟
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.54-74, 2018-11-29 (Released:2018-11-29)
参考文献数
29

本稿では,経済産業研究所が実施したアンケート調査の結果を用いて,増税の是非と社会保障の縮小・拡大という選択に対して,信頼や公共心などの個人の意識がどのような影響を与えるかを分析した.特に,増税せずに社会保障の拡大を求める人々の特徴をみると,税負担と社会保障増減の整合性を取るような財政中立的選択を支持する人々に比べ,政府・他人への信頼や公共心が低い一方,政府への依存が強く,市場経済に懐疑的であった.また,教育水準,時間当たりの所得,相対所得が低かった.これらの結果は,将来に向けて財政・社会保障の持続可能性を確保していく上で,政府・他人に対する信頼や公共心を醸成していくことが重要であることを示唆している.
著者
安井 健 横田 一彦 長野 宏一朗 芳賀 信彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-5, 2013 (Released:2013-04-11)
参考文献数
10
被引用文献数
7 1

〔目的〕特定機能病院において退院支援は重要であり,1大学病院における理学療法士の退院調整への関与状況を調査した.〔対象と方法〕対象病院の理学療法部門および退院支援専門部署が介入した患者の,3ヶ月間での転帰と両部門の重複介入の状況,理学療法士による在宅調整の実施状況を,整形外科とそれ以外の依頼科に二分して比較した.〔結果〕理学療法部門と退院支援専門部署が重複介入している患者で転院率が有意に高かった.整形外科以外の患者では,整形外科の患者に比して在宅調整への介入率が有意に高かった.〔結語〕特定機能病院では,整形外科以外の分野で理学療法士の在宅調整への積極的な関与が求められることが示唆された.
著者
安井 健 鷲尾 智子 横田 一彦 粟井 直子 中原 康雄 緒方 直史 芳賀 信彦
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1569, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】副腎皮質ステロイドは自己免疫疾患をはじめ広く使用される薬剤であるが,投与期間が長期に及ぶことが多く,入院期間も長くなりがちである。副作用としての筋力低下は,遅発性に近位筋優位に生ずる点,生化学的検査所見の乏しさと確定診断の困難さ,発症の個人差などから見落とされやすく,ベッドを用い,階段の使用などに制限のある入院生活においては,転倒などの問題が顕在化してから主科よりリハ依頼があることがほとんどであった。当院では,理学療法を必要とする対象者の実態を把握し,もれなく早期から介入することを目的に,病棟と連携した試みを行っており,その内容と経過を報告する。【方法】対象病棟は,アレルギーリウマチ内科および呼吸器内科の専有病棟で,対象者は,ステロイドの長期加療(パルス療法と後療法,中等量(0.5mg/kg/day)以上からの漸減投与など)により長期入院が予定され,かつ,加療前の段階では歩行が自立しており,運動器障害による理学療法(PT)の介入の必要性が低いと考えられる患者である。この中で,病棟看護師のスクリーニング評価によって筋力低下が疑われた場合,看護師がリハサイドに報告するとともに主科にリハ依頼を提案,依頼のあった患者に対してPTを行った。スクリーニング評価の内容は,①近位筋の筋力評価(SLR,ブリッジ,頭部拳上,ベッドフラットからの起き上がり,ベッド端座位からの起立の各動作の可否やできた回数を,加療前と加療開始後4週毎に評価),②筋力低下の自覚症状を聴取,または患者からの自己申告,の2項目で,家屋状況の聞き取り(階段の有無,ベッド等の所有状況,しゃがみ立ちの必要性など)を補助項目とした。また患者への啓蒙のため,パンフレットを作成して対象者へ配布した。【倫理的配慮,説明と同意】リハ医学に関する後ろ向きの疫学研究に関して,東京大学医学部倫理委員会の承認を得ている。【結果】平成25年4月1日~10月31日に対象病棟を退院した患者のうち,ステロイド加療にて1か月以上入院した患者は28名(男8名,女20名,平均年齢60.0±15.6歳)であった。このうち,入院中を通して歩行が自立していたのは21名(男5名,女16名,平均年齢60.2±15.3歳),その中でPTが介入したのは6名(すべて女性,平均年齢57.8±15.0歳)で,すべてスクリーニングを通して依頼があった患者であった。歩行が自立していなかった7名は,入院前から有する運動器障害や呼吸障害の増悪,術後の廃用などの理由で既にリハ依頼があり,すべてにPTが介入していた。スクリーニングで選定された6名はすべて,上記①では問題を呈さなかったが,ステロイド加療開始後1ヶ月前後(平均36.2±20.5日,中央値28日,最大値77日,最小値23日)で自覚症状を呈し,PTの介入に至った。すべて自宅退院したが,自宅環境では,6名中5名において,階段昇降や床からの起立動作が必要であるなど,入院環境とのギャップがあった。診断のために%クレアチン尿の計測を行った症例はなかった。骨格筋の状態を,CT画像による大腿部や股関節周囲筋の筋量の変化で確認できた症例が1名あり,腸腰筋および大殿筋の明らかな萎縮を示していた。PTによる筋力評価は,起立や階段昇降の動作方法の介入中の変化や,入院前に行っていた方法との比較により行った。PT開始時の筋力低下の程度にはばらつきがあり,介入頻度は週2~5日で適宜調整した。退院時,6名中4名は入院前レベルの筋力まで回復せず,動作方法の指導や在宅環境調整を必要とした。【考察】スクリーニング症例はすべて,入院生活上では歩行に制限がなく,今回の関与がなければPTが介入することなく自宅退院となり,退院後の生活に困難さを生じた可能性がある。スクリーニングにおいては,とくに筋力低下の自覚症状の出現に着目することが有用である。生化学的検査所見に乏しいが,CT画像で筋量の推移を評価できる場合がある。PTによる筋力の評価では,全身性疾患や,呼吸・循環器系の障害をもつ症例には計測機器を用いた最大筋力の測定にはリスクを伴うため,起居動作や階段昇降における動作方法とそれに要する筋力に着目することが有効で,退院時指導の際にも有用である。【理学療法学研究としての意義】病棟看護師と連携することで,ステロイド筋症が疑われる患者へのPTによる早期かつ適切な対応が可能となり,円滑な自宅退院に寄与できる。
著者
渡邊 智子 安井 健 田中 敬一 布施 望 鈴木 亜夕帆 佐々木 敏 山下 市二 安本 教傳
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.314-320, 2011-03-30 (Released:2011-04-27)
参考文献数
10
被引用文献数
3 4

The principal 705 Japanese foods were selected from the Standard Tables of Food Composition in Japan — 2010 — (Standard Tables) because these foods are known to contain available carbohydrates including starch, glucose, fructose, sucrose maltose and/or lactose. Individual available carbohydrate contents were calculated and tabulated based both on the estimated saccharide (carbohydrate minus dietary fiber) content of each selected food in the Standard Tables and the starch and sugar content of the food included in The McCance and Widdowson’s The Composition of Foods, USDA National Nutrient Database for Standard Reference and other sources. Because the compiled tabulated form, the Japanese Starch and Sugars Presumptive Composition Tables (JSSPCT), is harmonized with the Standard Tables, one can utilize the data in the JSSPCT as a reference for research and other purposes until and after the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology or other national organization publishes the official tables for available carbohydrate composition of foods in Japan.
著者
安井 健
出版者
農林省食品総合研究所
雑誌
食品総合研究所研究報告 (ISSN:03019780)
巻号頁・発行日
no.47, pp.p11-15, 1985-11

サトウモロコシ(品種名; Sumac)を栽植密度および施肥量をかえて栽培し,可溶性固形物および可溶性糖類含量に与える栽培条件の影響を検討した。栽植密度の影響は可溶性固形物,スクロースおよび可溶性糖類含量に現れ,これらの含量は密植区(33340本/10a)の方が,標準区(16670本/10a)に比べ,多かった。施肥量の影響はフルクトースおよび単糖類含量に現れ,これらの含量は少肥区(N,10kg/10a)が,標準区(N,20kg/10a)および多肥区(N,30kg/10a)よりも,多い傾向があった。
著者
安井 健 松本 万里 渡邊 智子 安井 明美
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.171-180, 2021 (Released:2021-08-26)
参考文献数
7

日本食品標準成分表2020年版 (八訂) (以下, 2020年版) では, 日本食品標準成分表2015年版 (七訂) (以下, 2015年版) で利用していたエネルギーの計算方法を変更している。本講座では, 2020年版のエネルギー計算方法, 特に, 2020年版で利用している収載値の不確かさの程度によって, 利用可能炭水化物 (単糖当量) あるいは差引き法による利用可能炭水化物のいずれかを用いるかを決定する方法について解説する。次いで, 2020年版に収載している食品のエネルギー値について, 2015年版のエネルギー換算係数とエネルギー計算方法によるエネルギー値とを比較し, 食品群別, 2015年版でエネルギー計算に利用したエネルギー換算係数の由来別および2020年版でエネルギー計算に利用した主なエネルギー産生成分の成分項目の組み合わせ別のエネルギー値の違いを説明する。さらに国民健康・栄養調査の基礎データを用いて, 摂取エネルギーへのエネルギー値の変更の影響を見る。
著者
安井 健悟
出版者
社団法人 日本印刷学会
雑誌
日本印刷学会誌 (ISSN:09143319)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.164-172, 2006 (Released:2009-06-15)
参考文献数
19

The development of the recent ink jet printing technology is remarkable for the quality of printing. It has the imaging quality as well as photograph has. Dye has been used for ink so far. However, dye has weak points about tolerance to water and color fastness to light. It is the driving force to change dye inks to pigment inks. However, the needs of the water based pigment inks decrease to develop UV inks or Solvent inks. In addition, the improvements of fastness to light for dye have promoted the decreasing. A turning point comes for the water based pigment inks. This paper describes such a situation of the water based pigment inks.
著者
常盤 昌良 孫 俊明 中岡 睦雄 別荘 大介 安井 健治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PE, 電子通信用電源技術
巻号頁・発行日
vol.95, no.517, pp.79-86, 1996-02-15
被引用文献数
1

本論文は、パワーマイクロ波発生のためのソフトスイッチング用対応IGBTと駆動回路モジュールを用いたマグネトロン駆動用ゼロ電流スイッチング高周波インバータ形DC-DCコンバータを取り上げ、従来からの準ゼロ電流スイッチングモード直列共振形DC-DCコンバータと出力電力制御にかかわらずゼロ電流スイッチング動作が可能となる完全ゼロ電流スイッチング直列共振形コンバータを対象とし、マグネトロン負荷の非線形性並びに3巻線高周波高電圧トランス、必要に応じてIGBTのマクロ回路モデルを考慮した場合のトランスの寄生回路パラメータを利用した電流共振形インバータ形スイッチング電源の計算機援用シミュレーション回路解析と特性評価について述べたものである。
著者
井上 宣子 大草 知子 名尾 朋子 李 鍾国 松本 奉 久松 裕二 佐藤 孝志 矢野 雅文 安井 健二 児玉 逸雄 松崎 益徳
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.109-115, 2005-08-31
被引用文献数
2

心筋細胞間のギャップ結合の発現・分布はコネキシン蛋白の半減期が短いことにより様々な病態において直ちに変化しうる.高頻度電気刺激(RES)によるギャップ結合リモデリングへの効果はいまだ明らかにされていない.培養5日目のラット心室筋細胞に120分間3HzのRESを負荷した.RESによりCx43蛋白質および遺伝子発現量は60分後には有意に増加した.免疫染色においても同様の結果であった.心筋細胞中のangiotensin II (AngII)は15分後に約2倍に上昇した.MAPK系のリン酸化型ERKは2峰性に5分と60分で, またリン酸化型JNKも15分と60分で著明に活性化された.リン酸化型p38 MAPKは5分後に1峰性に活性化された.細胞外電位記録法により心筋細胞の興奮伝播特性の変化を解析したところ, RESにより伝導速度は有意に増加した.これらの変化はlosartanにより抑制された.RESによるCx43の発現増加はまたERK, p38の特異的阻害剤にても抑制された.RESは, 早期より心筋細胞内のAng II産生を増加し, MAPK系を活性化することによりCx43発現量を増加させた.その結果, 細胞間の刺激伝播異常を引き起こし, 不整脈基質の一つとなる可能性が示された.
著者
澤田 傑 上坂 克彦 加藤 知行 森本 剛史 小寺 泰弘 鳥井 彰人 平井 孝 安井 健三 山村 義孝 紀藤 毅
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.11, pp.2190-2194, 1996-11-01
参考文献数
17
被引用文献数
4

症例は52歳の女性.1981年7月,S状結腸癌を伴う大腸腺腫症の診断で結腸全摘および直腸低位前方切除術を施行した.1985年8月,CTで腹腔内デスモイド腫瘍が疑われタモキシフェン,スリンダクの内服治療を行い臨床上縮小した.1995年7月,内視鏡にて十二指腸多発性腺腫,および十二指腸下行部のVater乳頭対側に3個の腺腫内癌を診断した.9月7日全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除の予定で開腹したが,小腸間膜を広範に巻き込むデスモイド腫瘍のため再建不能と判断し十二指腸壁を切開し主だった腫瘍を摘出,小ポリープは可能な限り焼灼した.大腸腺腫症に十二指腸病変は高頻度に合併するが,傍乳頭部領域以外の部位から発生した多発性十二指腸癌の報告例はまれである.また,この際腸間膜のデスモイド腫瘍を併発すると外科的治療に制約が加えられることが有りえるので治療法の選択上注意が必要である.