著者
小川 敬也
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

DFT計算に基づいて、常温・常圧においてNH3合成を行う[ArylN3N]Moの3本のAryl部分を電子供与性の固体に結合させて、安定化・反応性向上するか理論的に検証した。Amido部分がプロトン化された状態とのエネルギー差を調べたところ、Aryl部分が短い炭素鎖の場合、安定化することがわかった。カリウムをおいたモデルでは、炭素鎖を伝ってAmidoの窒素原子にも電子供与されてプロトン化されやすくなり、炭素鎖の自由度が十分でない範囲で、不安定化することがわかった。MD計算も行ったところ、PCETを起こすプロトン源・電子源のみが炭素鎖の立体障害をすり抜けて反応しやすいことがわかった。
著者
古見 嘉之 清水 聰一郎 小川 裕介 廣瀬 大輔 高田 祐輔 金高 秀和 櫻井 博文 前 彰 羽生 春夫
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.204-208, 2019-04-25 (Released:2019-05-16)
参考文献数
9
被引用文献数
2 7

一般的にN-methyl- tetrazolethiol(NMTT)基を持つ抗菌薬による凝固能異常や腸内細菌叢の菌交代に伴うVitamin K(VK)欠乏による凝固能異常がよく知られている.今回我々は,NMTT基を有さない抗菌薬で,絶食下で凝固能異常をきたした症例を経験したので,報告する.症例は91歳,男性.体動困難を主訴とし,気管支炎による慢性心不全急性増悪の診断にて入院.禁食,補液,抗菌薬に加え利尿剤にて加療.第3病日,左前頭葉出血を発症し,保存的加療,末梢静脈栄養を10日間投与後,中心静脈栄養を投与した.抗菌薬の投与は14日間の後,終了となった.経過中28病日,カテーテル関連血流感染を発症した為,中心静脈栄養から末梢静脈栄養に変更し,バンコマイシン(VCM),セファゾリン(CEZ)が投与された.投与初日のプロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)は1.2だったが,徐々に上昇し第35病日目に7.4と延長.対症療法としてメナテトレノン10 mg,新鮮凍結血漿(FFP)を投与した.血液培養にてメチシリン感受性コアグラーゼ非産生ブドウ球菌が検出され,VCMは中止とした.中止後第36病日目でPT-INRが1.1まで改善するも第42病日目では1.9まで上昇したため,CEZによるVK欠乏と考え,再度VK,FFPの投与を行い改善した.CEZが終了後,PT-INRは正常範囲内に改善した.Methyl-thiadiazole thiol(MTDT)基を持つCEZは稀ではあるが凝固因子の活性化を阻害すること,長期間の禁食下での抗菌薬投与は腸内細菌による内因性のVKの産生抑制により凝固能異常を招く可能性があり,この双方が本症例では関与する可能性が考えられた.凝固能の定期的検査によるモニタリングが必要である可能性が示唆された.
著者
久米 篤 安岡 慶子 廣瀬 茂樹 大槻 恭一 小川 滋
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.114, pp.87, 2003

<B>はじめに</B>樹木は,多数の同じような形をした葉(個葉)によって構成されている。個葉は,その機能的な独立性のため,測定や解析の最小単位として扱われることが多い。しかし,ここで問題になるのは,多くの場合,一枚一枚の葉の機能的なバラつき不明であり,実質的な蒸散・生産能力評価が難しいことである。樹冠において,光合成・蒸散量のある時間における単葉ごとの違い,あるいは樹冠の位置による違いは大きい。その一方で,久米ら(2002)は,数枚の単葉の光合成の日平均値を用いることによって,単木レベルの樹冠蒸散量を高い精度で推定した。このことから,単葉が示す分散特性には時間や位置に依存した特殊性が存在することが伺われるが,理論的根拠は示されていなかった。そこで,樹冠における蒸散・光合成のばらつきを,年間の観測データから解析し,その特性を抽出し,樹冠における1枚の葉がどの程度の代表性を持つのかを明らかにし,何故数枚の単葉の光合成の日平均値によって,樹冠蒸散量を高い精度で推定できるのかを明らかにした。<BR><B>方法</B>対象林分は,九州大学福岡演習林のマテバシイ人工林(22年生)で,平均樹高は9mである。この林分には1998年に微気象観測用と樹冠観察用の2つの観測タワーが建設され,微気象観測用タワーでは,日射・長波放射・気温・相対湿度・風速が高さ別に10分間隔で測定されており,林内には林内雨・樹幹流・土壌水分・樹液流測定用ヒートパルス装置などが測定・設置されている。この樹冠観察用タワーを用いて,マテバシイの樹冠の個葉の光合成・蒸散速度の日変化を2000年7月から2001年7月まで,LI-COR LI-6400を用い,晴天日に10回(日)測定した。測定は,光量子入射量(PAR),CO2濃度,葉面飽差,葉温などが,実際の環境条件にできるだけ近くなるように調節し,葉面の位置や方向の違いが反映されるようにした。樹冠を上層と下層の2層に分け,それぞれの層で3つの別の枝についている葉を,朝から夕方まで1時間から2時間おきに測定した。そして,葉の本来持っている光合成能力のバラツキを測定するために,2001年7月初旬に樹冠頂部で5本の別の樹の枝に付いている葉について,葉内CO2濃度(Ci)と光合成速度(A)の関係(A-Ci曲線),またPARと光合成速度(A)の関係(A-PAR曲線)を測定した。<BR><B>結果及び考察</B> 2000年7月に,樹冠最上層の葉において,A-Ci曲線と,A-PAR曲線を測定した結果,異なる樹木の枝につく葉の間のバラツキは非常に小さかった。従って,個々の葉が本来持っている潜在的光合成能力には大きな差がない。ところが,野外の日変化の過程,特に夏季の晴天日においては,光合成の日中低下の影響で,この関係から大きく外れ,潜在的光合成能力を元にした光合成-蒸散モデルが,夏季においては上手く適合しなかった(過大評価する)。このことは,ペンマン-マンティース式による蒸散量の計算結果との比較においても示された。<BR> ある時間における光合成・蒸散速度の個葉間のバラツキは比較的大きい。これは,(1)葉の向きが様々であり,その位置によってある時間における光の当り方が大きく異なること,(2)午前中に強光が当っていた葉では,午後には光合成の日中低下の影響で午前中に光が当っていなかった葉よりも光合成速度が低下することなどが原因として挙げられる。それにもかかわらず,野外で一日を通して1__から__2時間おきに測定したデータから求められた光合成・蒸散速度の平均値,あるいは日積算値では,個葉間のバラツキは年間を通して小さかった。この理由は,(1)樹冠上部においては,どの位置の葉も太陽の移動のために1日に当る光の量にはあまり大きな差がないこと,(2)日中低下が生じる葉でも,午前中にはかなりの量の光合成を行っており,午後の低下の影響があまり大きくならないこと,(3)樹冠下部においても,日光合成量は上部からの積算葉面積指数の増加に伴ってほぼ同じように減少し,樹冠の同じ層に位置する葉同士では日平均値のバラツキは小さいためであることがわかった。<BR> これらの結果は,マテバシイの樹冠において,一枚の葉の代表性は高く,同時に多くの葉をたくさん測定するよりかは,少数の葉を1日を通して測定するほうが,実際の光合成蒸散量の推定には有効であると同時に,その精度にもかなり信頼性が置けるものであることを示している。また,樹冠内のいくつかの異なった高さ(異なった積算葉面積指数)の位置で測定すれば,より高い精度の推定値を得ることができるであろう。<BR>
著者
小川 日出丸
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.40, pp.14, 2018

<p>宝石質ブルーサファイアの産地はいくつかあるが、もっとも重要な産地のひとつとしてインドシナ地域がある。</p><p>タイ、カンボジアそしてベトナムでは 12~6Ma と 3~0.5Ma をピークに玄武岩活動が活発化したとされている。前期には多量のソレアイト玄武岩の噴出が広域でおこり、溶岩台地が形成された。後期ではアルカリ玄武岩の噴出が限定的小規模な地域でみられた。重要なことに、このアルカリ玄武岩によってルビーサファイアが地表に運ばれたことである。</p><p>その後、長年にわたって玄武岩の風化・漂流作用により、山地、平野部や河川に玄武岩に包まれていたルビーサファイアが残留・漂砂・体積されていった。現在、インドシナ各地にルビーサファイアの宝石鉱床の存在が報告されている。</p><p>カンボジアではルビーサファイアの宝石産地として首都プノンペン西方のチャムノップ、北方のパムテメイ、プノンチョンなどがあるが、最も著名な産地としてパイリンがあげられる。</p><p>パイリンは、プノンペンの北西約 400kmほどの距離にあるタイ国境の地域である。街中心からタイ国境までは 10kmあまりで、国境地帯は山地地帯となっている。</p><p>20 世紀末の内戦時は、宝石という財源をおさえるため、ポルポト派が最後まで存在していた地域のひとつである。そして国境をまたいで、タイの宝石産地であるチャンタブリ~トラートに隣接している。パイリンでは宝石の採掘場として以下の形態がみられた。</p><p>①国境地帯の山地</p><p>②火山岩が露頭する独立丘陵</p><p>③平野部の田園地帯</p><p>④南部の山地より流れ出る大小の河川</p><p>一部の鉱区では動力機器を使用した採掘も存在するが、多くはスコップや棒を使用した人力に頼った小規模なものが多い。手工業採掘は深度5m以浅の採掘のみ許可という規則があるため、深い縦穴は見られなかった。</p><p>パイリン産ブルーサファイアの濃色石には通常、加熱処理による色の改善(明るい色調へ)がおこなわれている。そこで今回、現地で入手した試料に加熱処理を施して色の変化と、紫外可視、赤外部の分光スペクトルの変化について観察した。</p><p>青色は Fe<sup>2+</sup>-Ti<sup>4+</sup>によるが、パイリン産は Fe-rich のため Fe<sup>3+</sup>、 Fe<sup>2+</sup>-Fe<sup>3+</sup>、 Fe<sup>3+</sup>-Fe<sup>3+</sup>による吸収が大きく、これらが暗色の原因といえる。また通常光と異常光方向の色調の差が大きいのが特徴である。加熱処理による淡色化に伴い、透過率や吸収ピークに変化がみられた。赤外領域では、 OH 吸収がほぼ消失した。</p><p>それらの結果と、パイリンの採掘状況について報告する。</p>
著者
本庄 勝 牧戸 知史 山里 敬也 岡田 啓 片山 正昭 小川 明
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.214-230, 2002-02-01
参考文献数
15
被引用文献数
5

無線環境での動画像通信では、動画像符号化器の要求品質を満たすために、誤り訂正符号等によって符号化データを保護する必要がある。しかしながら誤り訂正符号は、一般に、訂正能力が高いほど処理能力が必要で、ビデオホンのような即時性を要求する動画像メディアでは利用が困難となる。そこで本論文では、誤り訂正復号と動画像復号を統合した、低遅延、低劣化を可能とする即時型動画像並列復号方式を提案する。この方式の最大の特徴は、一つの誤り訂正符号に対して処理時間と訂正能力の異なる二つの復号化器を用意して、動画像の並列復号を行う点である。暫定処理で得られた訂正復号結果で画像(出力画像)を復元する一方、十分な訂正処理をした信頼度の高い結果で画像(参照画像)を復元することで、フレーム間の誤り伝搬を防ぎ、画像品質の劣化を抑制する。この特性を、3次元DPCM予測符号化器を使用して解析的に明らかにする。そこで参照値に誤りがなければ通信路雑音による画質劣化は最小になること、予測フィルタの相関値が高いほど、参照画像での雑音の影響が大きく、またこの場合でも参照画像に誤りがなければ、通信路雑音の影響は復元画像にはほとんど影響を与えないことを示す。具体例として、H.263と連接符号のモデルを用いて計算機シミュレーションによる評価を行っている。この結果、並列復号方式は、グレースフルデグラデーションが実現され、特にレイリーフェージングチャネルではその効果が大きく現れることを示す。また低ビットエネルギー対雑音電力比においても画質はアナログライクな劣化になり、同じ客観評価値であっても主観評価に与える影響は小さいことを示す。
著者
小川義洞 著
出版者
同窓軒
巻号頁・発行日
vol.初編, 1883
著者
西 朋里 小川 祐樹 高 史明 高野 雅典 森下 壮一郎 服部 宏充
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.WI2-E_1-9, 2021

<p>With the rise of Internet TV and other new media, people are now viewing the news through a variety of conduits. In addition, the influence of news media on people is changing. Viewers can post comments in Internet TV, and these comments has the viewers' opinions of the news contents. Therefore, analysis of viewers comments is important in revealing the effect of the news. In addition, these comments are posted based on the morality of the viewers, and point of view of morality is considered important in the analysis of viewer comments in news. Therefore, this study purpose is to clarify the opinion on Internet TV news programs from a moral-based analysis viewers' comments. This study analyzed the trend of viewer comments on ABEMA news programs using comment length and the application of two methods. First, the morality of viewer comments was analyzed by calculating the moral/immoral expression rate for each program using the moral foundation dictionary. Second, the distributed expressions of viewer comments (calculated by Doc2Vec) were clustered by k-means++, and program trends were analyzed using the cluster characteristics. The results indicated that there was no difference in comment length between the two program types. Comments on soft-news programs had a high moral/immoral expression rate for politics or current events. In contrast, comments of hard-news programs did not show a characteristic trend. A viewer can easily participate in the discussion, because the soft-news program deals with the same news for a long time as the news content is limited compared to the non-discussion program.</p>
著者
小川 知可良
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.627-630, 1977-09-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
1
被引用文献数
1

明利・小川酵母を, 今秋 (11月1日) より本会で製造販売することになった。そこで本稿では, この酵母を開発された小川氏に, 本酵母が持つ諸特性, 実際の仕込方法等について, データをもとに解説願った。品質の多様化が呼ばれている昨今, 明利・小川酵母が全国に配布されるようになったことは, 業界にとって福音といえよう。
著者
山田 安紀子 出口 利定 小川 仁
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.51-60, 1985-06-30 (Released:2017-07-28)

本研究は、聴覚刺激に対する乳児の吸啜反応の変化について探ることを目的とした。吸啜反応は、空の哺乳びんの底に取り付けた圧力センサによって計測し、刺激音は、ホワイトノイズと音声の2種類を用いた。同時に行動観察を行ない、吸啜反応結果と併せて検討した。対象は、生後1ヵ月の正常乳児47名とした。実験の結果、聴覚刺激による吸啜頻度の変化は、回復パタンと抑制パタンの2つに大別できた。回復パタンは聴覚刺激による覚醒反応を、抑制パタンは定位反応を反映していると考えられた。刺激の種類による差は行動反応において認められ、特にモロー反射の生起率は、ホワイトノイズの方が音声より有意に高いことが示された。以上から、聴覚刺激が吸啜反応に影響を及ぼすことが示され、吸啜反応を聴力検査の指標として用い得る可能性が示された。