著者
村木 美貴 小林 重敬 中井 検裕
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.19-24, 1994-10-25 (Released:2019-02-01)
参考文献数
12

THIS PAPER DEALS WITH USE MIXTURE IN INNER LONDON, AND ATTEMPTS TO CLARIFY HOW DEVELOPMENT PLAN CAN CONTROL TO THIS. OUR ANALYSIS, FIRSTLY REVIEWS URBAN PLANNING SYSTEM, ESPECIALLY, PLANNING AGREEMENT, WHICH IS KNOWN AS "PLANNING GAIN". THEN, WE FOCUSED ON THE STRATEGIC POLICIES FOUND IN THE UNITARY DEVELOPMENT PLANS. FROM THE ANALYSIS, IT WAS FOUND THAT THE NEWLY HOUSING ARE PROVIDED ACCORDING TO MIXED-USE DEVELOPMENT. LOCAL AUTHORITIES, THEREFORE, RELY ON THE NEGOTIATION AND PLANNING AGREEMENT IN ORDER TO MATERIALIZE THE PROVISIONS OF HOUSING AND OTHER FACILITIES WHICH ARE NECESSARY IN INNER URBAN AREAS.
著者
塩井 太介 宮下 充 渡辺 大貴 日下 佳祐 伊東 淳一 中西 俊貴 小林 和博
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.141, no.7, pp.520-531, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
30

This paper proposes a multiport converter based on a flying capacitor converter topology for use in a battery management system. The proposed circuit operates in discontinuous current mode and pulse frequency modulation in order to reduce inductor volume. The circuit achieves load fluctuation compensation and maximum power point tracking of the photovoltaic (PV) system by deciding duty ratio based on load current and PV output current. According to the experimental results, an efficiency of more than 95.8% was achieved under all operation conditions. In addition, the maximum efficiency reached 98.8% at the rated load (750W). Furthermore, the inductor volume reduced by 85.5% compared to that of the conventional circuit using two inductors.
著者
小林 優介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.213-218, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
27

本研究は、都市計画や緑地計画のために、斜面林の環境経済価値の評価することを目的とする。このためにヘドニック・アプローチを用いて分析を行う。本研究の対象地域は、東京都の南西部の7区とする。まず、斜面林の外部経済効果を評価するために、ヘドニック・アプローチにより、地価と傾斜別の樹林地との相関について考察する。そして、傾斜の閾値により、地価評価地点から250m以内に含まれる傾斜の閾値未満の樹林地セル数と、地価評価地点から250m以内に含まれる傾斜の閾値以上の樹林地セル数の2つの説明変数により分析を行う。この2つの説明変数について、5%有意水準を満たすかどうかを明らかにする。次に、自由度調整済み決定係数が最大でAICが最小となった閾値により、各区の斜面林、平地林、斜面の非樹林地、平地の非樹林地の分布の分析を行う。その結果、以下のようになった。1)両線形型、半対数型ともに、閾値を14度以下にした場合の斜面林の外部経済効果はプラスとなり、5%有意水準を満たした。2)両線形型、半対数型ともに、2度を閾値とした場合の外部経済効果が地価と最も相関が高かった。
著者
上野 綾 小林 国之
雑誌
北海道大学農經論叢 (ISSN:03855961)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.87-97, 2020-12-31

In recent years, the labor shortage in agriculture has become more serious, and it has become difficult to secure the temporary labor force that has been procured in the region. On the other hand, young people are becoming more interested in rural areas, and the temporary labor force may be an opportunity for exchange between urban and rural areas. In this article, we analyze the acquisition of agricultural part-time workers not only as a means of securing a labor force but also from the perspective of exchange between urban and rural areas in order to discuss a new solution to the problem of securing a labor force in agriculture. This study (1) considers the possibility for agricultural part-time workers to attract people with diverse interests to the region, (2) analyzes the cooperation implementation system between agriculture and other efforts and the host entity, (3) and clarifies the establishment of relationships with the region by people who visit the region through agricultural part-time jobs. When considering an agricultural part-time job as a form of urban-rural exchange, it is necessary for the area that provides the agricultural part-time job to be aware of the interests of employees and to build a business that makes the best use of the characteristics of the area. In addition to farm work hours, it is also important for the employer side to provide opportunities for exchange, such as exchange time and participation in local events.
著者
平野 大信 小林 孝男
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.787-793, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
3

近年,省資源,省コストなどの観点から,段ボール原紙の軽量化が進行することが予測されている。このような状況において懸念される段ボール原紙の品質トラブルの1つに,巻取の吸湿シワが挙げられる。吸湿シワとは,巻取が吸湿することによって,胴面にドラム缶状の膨れシワが発生する現象であり,その発生メカニズムから,吸湿伸びが大きいこと,座屈のしやすさ,の2点が主な要因として考えられる。しかし,これらに関連する物性と実際に発生する吸湿シワとの関係について,系統的に調査した例は見当たらない。そこで,段ボール原紙巻取における吸湿シワ発生要因を解析するために,異なる複数の工場にて抄造した巻取を同一条件下で保管し,各巻取の吸湿シワ発生状況および水分変化率の調査を実施した。その結果,巻取間で吸湿シワの発生状況,水分変化率に差異が見られ,吸湿シワ発生状況とその関連原紙物性との重回帰分析から,吸湿シワ発生要因として,剛度,吸湿伸び,地合の3要素が重要であることがわかった。吸湿伸びは水分伸縮係数と水分変化率の積の形で表され,水分変化率はワインダー巻取り時の初期水分と原紙の平衡水分に影響されるが,特に初期水分の寄与が大きいと見積もられた。また,有限要素解析シミュレーションから,地合改善は吸湿シワの発生を遅らせる効果はあるものの,一旦吸湿シワが発生してしまえば,成長を抑制するだけの効力は持ち合わせていないことが示唆された。
著者
村瀬 仁美 上山 洋平 小林 達明 高橋 輝昌 徳地 直子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.115, pp.P1043, 2004

関東地方の暖温帯に分布するコナラ二次林群落としてクヌギーコナラ群集、クリーコナラ群集等が知られている。互いに丘陵地を中心にその分布域を接している。土壌条件で前者は、孔隙率が高く、A層が深く腐植に富み、pHが相対的に高い理化学性の良好な土壌に主として立地し、後者は、孔隙率が低く、A層が浅く腐植が相対的に乏しく、pHが低い強酸性の理化学性の悪い土壌に立地している(辻、1991)。一般的に、前者のような土壌の窒素の無機化速度は、後者のような土壌に比べると速く、硝化率も大きいと考えられる。また、硝酸態窒素を利用する植物は硝酸還元酵素活性(Nitrate Reductase Activity:NRA)も高くなると考えられる。Tokuchiら(1999)は、花崗岩質山地の斜面下部で無機化速度が速く、硝化率も高く、斜面上部では逆の傾向があることを示し、それらの立地に対応した植物-土壌系が成立することを示唆している。Koyama&Tokuchi(2003)は、それらの立地を代表する樹種3種の実生の硝酸還元酵素活性を調べ、立地の硝化能力と対応することを示した。<BR> 本研究では、平面的に群落分化が見られる狭山丘陵で植物-土壌系の関係を調べようとした。<BR> 調査地は、東京都武蔵村山市および瑞穂町と埼玉県所沢市に広がる東西11km、南北4kmの狭山丘陵の西端にあたる野山北・六道山公園内のコナラ、クヌギなどの様々な夏緑樹林が混生する林分に設けた。対象樹種は、アオハダ、アカマツ、ヒノキ、アカシデ、イヌシデ、クリ、クヌギ、アラカシ、コナラ、ムクノキ、エノキ、コウゾ、コブシ、クロモジ、ミツバアケビ、ヒサカキ、コアジサイ、ウワミズザクラ、モミジイチゴ、ネムノキ、フジ、ウリカエデ、アカメガシワ、ヌルデ、イヌツゲ、マユミ、ゴンズイ、アオキ、ミズキ、リョウブ、ネジキ、ヤマツツジ、エゴノキ、マルバアオダモ、ムラサキシキブ、クサギ、ウグイスカグラ、ガマズミ、コバノガマズミ、オトコヨウゾメ、サロトリイバラ、アズマネザサの計42種で、2003年8月下旬から10月上旬の晴れた日の10時30分から12時30分の間に各樹種、3個体ずつ葉をランダムに採取し、Havill et al.(1974)に従い、NRAを測定した。<BR> 各樹種のNRAは数値が高い順に、ムクノキ・ミツバアケビ・コウゾ・コブシ・ムラサキシキブ・エノキ・アズマネザサ・マルバアオダモ・モミジイチゴ・ヌルデ・ウグイスカグ・イヌシデ・リョウブ・クサギ・エゴノキの「高」グループ15種、ミズキ・コナラ・イヌツゲ・アラカシ・アカメガシワ・マユミ・ガマズミ・アカシデ・ゴンズイの「中」グループ9種、ウリカエデ・アオハダ・コバノガマズミ・フジ・ネムノキ・コアジサイ・クヌギ・ヤマツツジの「低」グループ8種、サルトリイバラ・ヒサカキ・クロモジ・ウワミズザクラ・ネジキ・クリの「なし」グループ6種と区分された。これらをクヌギーコナラ群集とクリーコナラ群集の2つの植生タイプに大別すると、クヌギーコナラ群集は、「高」グループが、ムクノキ・コブシ・ムラサキシキブ・エノキ・アズマネザサ・ヌルデ・イヌシデ・エゴノキの8種、「中」グループが、コナラ・アラカシ・マユミ・ガマズミ・アカシデ・ゴンズイの6種、「低」グループが、フジ・クヌギ・ヤマツツジの3種、「なし」グループが、サルトリイバラ・ヒサカキの2種の計19種となり、クリーコナラ群集は、「高」グループが、ミツバアケビ・マルバアオダモ・ウグイスカグラ・リョウブ・エゴノキの5種、「中」グループが、コナラ・イヌツゲ・アラカシ・ガマズミ・アカシデの5種、「低」グループが、ウリカエデ・アオハダ・コバノガマズミ・ネムノキ・コアジサイ・ヤマツツジの6種、「なし」グループが、ヒサカキ・クロモジ・ウワミズザクラ・ネジキ・クリの5種の計21種となった。<BR> NRAが「高」や「中」を示した樹種は理化学性の良好な土壌に主に生育しているものがほとんどであった。また、例外はあるものの、同科の種のNRAは同グループに属している傾向を示した。<BR> 以上から、クヌギーコナラ群集ではNRAが「高」、「中」の樹種が多く、クリーコナラ群集はクヌギーコナラ群集に比べ、「低」、「なし」の樹種が多くなったことから、狭山丘陵を構成している樹種のNRAは2つの植生タイプに対応する傾向があることが示唆された。
著者
小池 一樹 小林 良太郎 加藤 雅彦
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.2, pp.593-600,

コンピュータの発展による利便性の向上と同時に,コンピュータへの攻撃や情報の窃取を目的としたマルウェアの数も増加しており,その種類は多岐にわたる.また,2017 年 5 月に大流行した WannaCry を始め,マルウェアは従来よりも容易に亜種を作り出すことが可能となっている状況もマルウェア増加の一因である.その対策として,既存のマルウェア検知手法でも,その特徴的な挙動に着目したアンチウイルスソフトが多くのコンピュータで利用されている.本研究ではそれら検知手法に加わる新たな手法として,プロセッサ情報を特徴量とした機械学習による亜種マルウェアの検知を提案する.検知機構の構成要素は,プロセッサ情報の取得を行うハードウェア部と,機械学習による学習・判別を行うソフトウェア部の 2 つに分けられる.本稿では検知機構の実装へ向けた予備評価として,提案機構のハードウェア部のエミュレーションを行い,取得したプロセッサ情報の有用性を確認した.
著者
小林 達治
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.35-47, 1971-12-27 (Released:2017-05-31)
被引用文献数
2
著者
小林 仁美 金子 健彦 多賀 昌樹
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.77-84, 2019-08-01 (Released:2019-10-15)
参考文献数
31

【目的】月経前症候群(PMS)の発現には様々な因子が関連しており,これまでに睡眠時間や栄養素摂取,欠食の有無,やせや肥満,運動習慣などとの関連が報告されている。食物には様々な栄養素が含まれていること,時代と共に食事内容は変化することを考えると,食事を選択する際の意識・傾向を含め,継続的,多角的な視点でPMS症状との関連を解析する必要がある。そこで本研究では,女子大学生を対象にPMS症状と食生活習慣の関連について検討することを目的とした。【方法】52名の女子大学生を対象とし,PMS症状に関する調査,食事調査および食生活習慣調査を実施した。PMS症状はMDQ(Menstrual distress questionnaire)を用いて評価し,MDQスコアと栄養素および食品摂取量の相関を求めた。平均値の比較には対応のないt検定を行った。【結果】MDQスコアと栄養素等摂取量との相関を検討したところ,動物性たんぱく質,動物性脂質,飽和脂肪酸,飽和脂肪酸エネルギー比率,コレステロールと正の相関,炭水化物と負の相関が認められた。食品摂取量では肉類,卵類,乳類と正の相関,穀類および砂糖・甘味料類の摂取量と負の相関が認められた。また,食生活習慣調査では食品の組み合わせや調理方法を考慮しない者はMDQスコアが高く,PMS症状が強かった。【結論】栄養素や食品の摂取量とPMS症状の程度には相関が認められることが明らかになった。食生活習慣の改善はPMS症状を緩和するために有効な手段の一つである可能性が示唆された。
著者
小林 玲音
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.56-63, 2011-02-28 (Released:2011-09-01)
参考文献数
20

全身麻酔中の体温の低下により出血量増加,術後感染,周術期心筋梗塞など多くの合併症が発症する.従って,温風吹送式加温器や特殊な被覆類を用いて対処しているが,使用台数が制限され,操作が煩雑であるため常時施行するのは難しい.一方,術中に投与するだけで術中の体温の低下が軽減すると報告されているアミノ酸製剤の輸液は安価で,特殊な操作も一切不要なため簡便である.しかし,その投与によって血清インスリン値が上昇し,低血糖が発症する可能性が示唆されている.そこで,全身麻酔下に股関節手術が予定された39症例において,アミノ酸製剤を麻酔導入前1時間に輸液し,術中の低体温予防効果と血糖値の推移を検討した.対象は人工股関節置換術および回転骨切り術を予定された39名でアミノ酸製剤を5ml・kg-1・h-1で輸液した群(A群)と2.5ml・kg-1・h-1で輸液した群(B群)およびアミノ酸製剤非投与群(C群)の3群に対象患者を無作為に分けた.全群において麻酔導入前1時間に輸液を行ったが,A群は混合アミノ酸製剤(アミパレン®)を5ml・kg-1・h-1,一方,B群は混合アミノ酸製剤(アミパレン®)と酢酸リンゲル液(ヴィーンF®)を同時に2.5ml・kg-1・h-1ずつ投与した.C群は酢酸リンゲル液(ヴィーンF®)5ml・kg-1・h-1だけを投与した.食道温を麻酔導入直後から麻酔導入後120分まで測定し,血糖値,血清インスリン値,血清アドレナリン値,血清ノルアドレナリン値などはアミノ酸製剤投与前,麻酔導入直後,麻酔導入後15分,30分,60分,90分,120分に測定した.体温は3群において麻酔導入後より経時的に低下したが,低下度はA群で最も小さく(p<0.05),A群とC群との間には麻酔導入後15分から120分まで有意差を認めた.血清インスリン値は麻酔導入直後にA群とB群では著しく上昇した.その程度はA群では投与前値の15倍,B群では投与前値の5倍であった.3群における血糖値の推移は近似し,各測定時期の平均値は80-100mg・d-1であった.血清インスリンの増加にもかかわらず,全群において低血糖は見られなかった.血清アドレナリン値,血清ノルアドレナリン値には全測定期間中において3群に有意な差は認められなかった.股関節手術において,麻酔導入前1時間にアミノ酸製剤の輸液投与により,術中の体温低下を軽減でき,また,危惧された低血糖も起こさなかった.術中の低体温予防として,麻酔導入前のアミノ酸投与は有用と思われた.
著者
塩田 真吾 髙瀬 和也 酒井 郷平 小林 渓太 籔内 祥司
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.85-90, 2018

<p> 情報セキュリティ関連のインシデントの増加や新しい学習指導要領などを踏まえると,今後,情報モラルだけでなく,情報セキュリティ教育の実施が学校教育での課題になる。しかし,情報セキュリティ教育の従来の指導方法については,セキュリティ対策やトラブル事例を紹介するという指導が中心であり,知識は身につくものの,どこか他人事として捉えてしまい,「自分ももしかしたらトラブルにあうかもしれない」という当事者意識を促すことは難しいという課題があった。そこで本研究では,中学生に「自分ももしかしたらトラブルにあうかもしれない」という当事者意識を促すことを目的とした情報セキュリティ教材の開発を行い,その成果を考察した。トラブル事例の「あやしさ」を自ら発見し判断させるために,スマホ画面を模したカード教材の開発を行い,授業を実践したところ,当事者意識とセキュリティ対策への意欲の向上が見られた。</p>
著者
小林 豊 吉岡 雅代 稲葉 達也 鈴木 豊秀 榊間 昌哲 井出 和希 川崎 洋平 山田 浩 北村 修 米村 克彦
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.31-38, 2015 (Released:2018-04-02)
参考文献数
19

高リン血症は血管石灰化や生命予後に関連した病態であり、保存期慢性腎臓病(CKD)から血清リン値の管理が重要である。一方、保存期CKDに使用可能なリン吸着薬である沈降炭酸カルシウム(炭酸Ca)は胃酸分泌抑制薬の併用による効果減弱と、カルシウム含有による血管石灰化が懸念される。そこで当院薬剤部は内科医師に対し、これらの情報提供を行い、処方状況の変化に関する調査と、薬剤師による情報提供が医師の処方意識にどのような影響を与えたかについてのアンケート調査を行なった。対象は2014年1月の時点でリン吸着薬の処方を受けている保存期CKD患者のうち、1)炭酸Caと胃酸分泌抑制薬を併用している、2)血清リン値>4.5 mg/dL、を満たす患者の主治医とした。リン吸着薬の処方を受けている保存期CKD患者16名全てが炭酸Caを服用しており、12名が胃酸分泌抑制薬を併用していた。併用患者のうち血清リン値>4.5 mg/dLである患者は7名であった。情報提供により7名中5名においてリン吸着薬の変更や胃酸分泌抑制薬の中止がなされた。処方変更された5名中2名は血清リン値が低下し、2名は上昇し、1名は血液検査実施前に透析導入となった。情報提供対象患者以外においても処方の見直しがなされ、両薬剤の併用率は75%から21%と有意に減少した。アンケート調査の結果、薬物相互作用について6名中4名の医師が「知らなかった」と回答、意識変化では6名全員が「変化あった」と回答した。「今後は血管石灰化の危険性を回避するため可能な限りカルシウム非含有リン吸着薬を使用する」などの意見も得られた。これらのことから、薬剤師による積極的な情報提供は医師の処方意識に影響を与え、処方を見直すきっかけになることが示唆された。今後は他の薬物相互作用についても介入を検討し、有効性と安全性の高い薬物療法の提供により医療の質の向上に寄与していきたい。